ファイツ!!
合成接着剤を使わずに「漆のみ」でガラス修理する方法を試みました。
「合成樹脂はダンコ反対!漆で直したい。
けど麦漆接着だと接着部分が黒く見えちゃうのよね。あいやー」
とお悩みの方、ちと難易度が高くなるかもしれませんが
参考にしてください。
※ ワイングラスの「ステム(足の部分)」が壊れた!
(↑この問い合わせがすごく多いです)
という場合は、特に「本漆」を使って直す必要もないと思います。
口を付けない箇所でしたら「エポキシ接着剤」でくっつけて、
表面装飾に「新うるし」(←本漆ではありません。「偽」です)
などのカブレない合成塗料を塗れば
ばっちりきれいに見えます◎
その場合の修理のやり方はこちらを参考にしてください。
▸ 簡易・簡単金継ぎのやり方
※ ステム(手で持つ部分)が割れたワイングラスの
金継ぎ修理のやり方を説明していきます。
本物の漆を使った修理方法ですので「かぶれる」可能性があります。
ご注意ください。
※ 万が一、漆が肌に付いた場合はすぐに
「油(サラダ油など)」でよく洗って下さい。
油?? そうです。「油」をつけ、ゴシゴシ漆を洗い落としてください。
その後、その油を石けんや中性洗剤で洗い流してください。
今回は金継ぎの工程のうち、
〈割れた部分の器の素地をやすりで削る~錆漆前の下処理〉
までのやり方を解説していきます。
私、金継ぎ初めてなんですけど、
どんな道具とか材料を買えばいいんですか?
どこで買えるんですか??という方へ
↓ こちらのページを参考にしてください◎
▸ 本漆金継ぎで必要な道具と材料/そのお値段と買えるお店のご紹介
作業を始める前に…
金継ぎでは「本物の漆」を使うので、
直接、漆に触れると「カブレる」可能性が高くなります。
「ディフェンシブ」に行きましょう。
ゴム手袋は必需品です◎
金継ぎとは
金継ぎとは欠けたり、割れたりした器を漆で直す日本の伝統技法です。
漆で接着し、漆で欠けや穴を埋め、漆を塗って、
最後に(うわっつらだけに)金粉や銀粉を蒔いてお化粧をします。
「金(ゴールド)」で接着するわけじゃないのです◎
器 information
- 器: フランスのアンティーク
- 器の特徴: 少しよぼよぼした柔らかい感じのガラス
- 器のサイズ: リム直径66㎜、フットプレート直径69㎜、ステム部分の直径15㎜、高さ135㎜
- 破損状態: ステム部分が割れている
手で持つ部分(ステム)が折れています。
このグラスは以前、一度
「簡漆金継ぎ(合成樹脂+本漆)」で直したんです。
が、しかし、他にもわずかな亀裂が走っていたようで、
今度は他の箇所が割れてしまいました。
〈ガラス金継ぎ step 01〉 素地調整
【 金継ぎの素地調整で使う道具 】 ▸ 道具・材料の値段と売っているお店 info
- 道具: ① リューターのダイヤモンドビット ▸ 作り方 ② ダイヤモンドやすり
ダイヤモンドビットは市販のものを購入したままだと使いづらいので、
簡単なカスタマイズをすると使いやすくなります。
▸ ダイヤモンドビットのカスタマイズの方法
まずは割れた断面と、そのエッジを
やすりで軽く削ります。
今回は「リューター」というマシ―ンを使いました。
みなさんは地道にヤスリで手研ぎしてください。
そんなに面倒じゃないですよ◎
割れた「エッジ」を軽く研ぎます。
これを研かないと危険な気がします。
今まで研がずに修理したことがないので、
研がなかった場合どのくらい危険なのか、
それとも全く問題がないのかはちょっとわかりません。
うーん、試した方がいいんですかねぇ?
まぁ、ひとまず保留です。
接着力を上げるために
割れた面に傷を入れて漆の食いつきをよくします。
ガシッと食いつていただきましょう◎
〈ガラス金継ぎ step 02〉 漆で接着
漆の塗りで使う道具と材料
- 道具: ② ティッシュペーパー ③ 付け箆 (▸ 付け箆の作り方) ④ 小筆 ⑦ 作業板(クリアファイルなど)
- 材料: ① サラダ油 ⑤ 透き漆(お店によっては”木地呂””素黒目”などと呼ばれています) ⑥ テレピン
今回は「”ガラス用”透き漆」なるものを使ってみました。
試しに箕輪漆工で買ってみました。
ガラスへの食いつきがすこぶるよいとの宣伝でしたので。
が…今のところ普通の透き漆と変わらない気がしています。
特段、ガラスへの食いつきがよくなったようにも思えません。
やっぱりツルツルしたところに塗って、
それを引っ掻くと普通に剥がれました(涙)
とはいえ、私の方の扱いに問題があるからなのかもしれませんので、
こちらも判断保留です。
もしかしたらメチャクチャいいかもしれませんしね。
で、「接着」工程なのになぜに「漆」なのよ?アホか、金継ぎ図書館?
と思ったみなさん。正解です。
そうです。いつもなら接着作業は「麦漆むぎうるし
(通常使われる漆の接着剤)」で行います。
本来ならガラスも麦漆で接着作業を行いたいところです。
ガラスの簪かんざしの修理の際には麦漆を使いましたし。
でも今回は麦漆を使いません。
なぜならガラスが透明なので麦漆で接着すると
接着面が黒く目立ってしまって、見た目が悪くなるからです。
あたしはそんなの気にせんわ、という方は麦漆でオッケーです。
ちなみに「漆で接着なんてできるの??」と思いますよね。
できるんです。
漆の技法で「螺鈿」という貝を張り付ける技法がありますが、
あれは漆で貝を貼っているんです。
それから大昔の矢じりなんかも漆でくっつけていましたんですよ。
※ ここで説明しているやり方ですとガラスを通して見える
内側の接着面が「茶透明色」になります。
その内側接着面を「金色」「銀色」にしたい場合は
→「蒔絵で接着面内側を目隠し」をご参照ください。
蒔絵で目隠しした後に麦漆接着をするやり方も
いいのではないかと思っています。
次回、そのやり方を試しますので、ご報告します。
まずは使う前に筆をテレピンで洗って油を洗い出します。
▸ 詳しい筆の洗い方
毎回、作業が終わったときに筆を”油”で洗います。
ですので使うときにはまず筆の中の油を取り除きます。
- 作業板の上に数滴テレピンを垂らす。
- その上で筆を捻ったりしてテレピンをよく含ませる。
- ティッシュペーパーの上でヘラで筆を優しくしごく。
では漆の塗りに入ります。
ガラス用の透き漆を筆で塗っていきます。
↑画像で茶色く見えているのが「透き漆」です。
透明じゃない!んです。
でも、漆ってこういうものなんです。
もともとの「樹液」自体が茶褐色なのでしょうがないんです。
これでも意外と「透けて」いるんです。
グラスの上パーツの接着面に漆を筆で薄く塗っていきます。
”薄く”です。これ重要です。
グラスの下パーツの方にも透き漆を塗っていきます。
接着する断面は両面とも漆を塗るってことです。
漆を塗り終わりました。
こんな感じです。薄くです。
お手持ちのプレパラートにも
同じ厚みになるように漆を塗っておきます。
プレパラートをお持ちでない?
そうですか。そうですよね。持っているわけないですよね。
サランラップかアクリルの板、
もしくはクリアファイルなんかを代用としてお使いください。
修理する器とは別のものに漆を塗って(今回はプレパラート)、
そちらで漆の乾き具合をチェックします。
漆を塗り終わったら、湿した場所に入れておきます。
今回は湿度65%くらいの場所
(今回の室内温度は18度)に40~50分入れておきました。
漆が「乾き始める」のを待ちます。
塗り終わったら油で筆を洗います。
▸ 詳しい筆の洗い方
筆は付属のキャップを嵌めて保存します。
キャップが無かったらサランラップを丁寧に巻いてください。
キャップがない、もしくはキャップを作りたいという方向けに
▸ 筆のキャップの作り方 ページを作りましたので、ご覧ください。
時々、プレパラートを取り出して乾きのチェックです。
私は指でペタペタ触ってしまいますが、
みなさんは触っちゃダメです。かぶれます。
小さなヘラなどで突っついてチェックしてみてください。
ベタついてきたらオッケーです。
この時、しっかりと「ベタつく」まで待ってください。
これめちゃくちゃ勝負所です。
ビビって早めに接着作業に移っちゃダメです。
それはチキン君です。(私は得てしてチキン君です)
接着した後というのは、漆にとっては
外部と遮断された状態になってしまうので
極めて乾きが悪くなってしまいます。
なので接着する前にギリギリまで漆を乾かしてください。
乾かしすぎたらアウトなんですけど…
乾き初めてきていますので、
漆の艶が少しマットになっています。
接着させます。
しっかりと圧着させてください。ぐりぐり。
このまま漆が乾くまで1ヶ月ほど安置させておきます。
漆が乾いたかどうか?チェックができないので、
一応安全をとって乾きに一ヶ月を見ておきました。
一ヶ月経ちました。
乾いている気がします。
しっかりと接着している気がします。
一ヶ月経って、漆の透明度も少し上がりました。
漆って塗ってから2,3ヶ月くらいかけて
少しづつ透明度が上がるんですよ。
知ってました?
あっ、こらっ!
強力・鳩チョップにも耐えられるだけの接着強度が出ました◎
(参考になりませんが)
少し気泡が入っていますが…。
これは解決できる問題なのかどうか今後、研究していきます。
step 03 蒔絵で接着面内側を目隠し
- 道具: ② ティッシュペーパー ③ 付け箆 (▸ 付け箆の作り方) ④ 小筆 ⑦ 作業板(クリアファイルなど)
- 材料: ① サラダ油 ⑤ 今回も「透き漆」を使います ⑥ テレピン
※ 割れたガラスを接着する前や、欠けた部分に錆漆を塗布する前にもこの作業が使えると思います。
接着が完了しましたので、
次は接着面の”目隠し”を行います。
めかくし…??何だ?そんなの金継ぎ本には載ってないよ。
そですね。載ってません。
接着面のちょっとしたズレの段差を埋めようと思います。
普段でしたら錆漆のステップになるのですが、
今回は透明のガラスなので「直」に錆漆を塗布すると
ガラスの内側から黒く見えてしまいます。
なので、その前の作業として蒔絵を行います。
ちょっと何を言っているのかわからないですよね。
説明しづらいところでして、すみません。
ひとまず以下を読み進めていってください。
↓画像はプレパラートにテストしたものです。
透き漆を塗って、それから蒔絵を行いました。
左が真鍮粉で右が錫粉です。
その右側の赤い色は気にしないでください。落書きです◎
透明なガラスに蒔絵を行い、それを裏返し、ガラスを通して見ると
…金色、銀色に透けて見えます。当たり前ですね。
ということで、透き漆を使って一度ガラス面に蒔絵をしておくと、
その上に「錆漆」を塗ったり「麦漆」を塗ったりしても、
それがガラスを透して見えることがなくなります。
私、説明できているでしょうか?意味がよくわからない?そですよね。
あまりうまく説明できている気がしません。
またそのうち実例も含めてご説明します。
それでは作業の方に入ります。
まずは使う前に筆をテレピンで洗って油を洗い出します。
▸ 詳しい筆の洗い方
毎回、作業が終わったときに筆を”油”で洗います。
ですので使うときにはまず筆の中の油を取り除きます。
- 作業板の上に数滴テレピンを垂らす。
- その上で筆を捻ったりしてテレピンをよく含ませる。
- ティッシュペーパーの上でヘラで筆を優しくしごく。
筆の準備が済んだら、今度は漆の用意をします。
- 漆のチューブの蓋を開ける。
- 作業板の上に少量の漆を出す。
- 筆に漆を馴染ませる。
- 作業板の上に何本か線を引き、漆の量を調節しつつ、
含み具合をチェックする。
漆の中にゴミがたくさん入っている場合などは
濾し紙で漆を濾してきれいにします。必要な方はこちらをご覧ください。
▸ 基本的な漆の扱い方・濾し方
筆と漆の準備が済んだらいよいよ塗りに入ります。
接着面に沿って漆を薄く塗っていきます。
漆を塗り終わりましたら、今回はすぐに蒔絵に移ります。
いつもの蒔絵でしたら漆が半乾きになるまで
湿した場所に置いておくのですが、
今回はなるべく蒔絵紛を漆の底に「沈めたい」ので
すぐに蒔絵をします。
塗り終わったら油で筆を洗います。
▸ 詳しい筆の洗い方
筆は付属のキャップを嵌めて保存します。
キャップが無かったらサランラップを丁寧に巻いてください。
キャップを作りたい方、いましたらページを作りましたのでご参考までに
▸ ストローで筆のキャップをつくりましょ
- 道具: ① あしらい毛棒(柔らかい毛質の筆) ③ 重石
- 材料: ④ 蒔絵紛(今回は真鍮粉を使用)
※ 使う蒔絵紛ですが「丸紛」は使わない方がいいと思います。
丸紛は磨かないときれいに発色しないので多分、
この作業には向いていません。試していないのであくまで予想ですが。
「消し粉」でしたら大丈夫かと思います。
筆先で蒔絵紛を掬って、
漆を塗った部分に置いていきます。
筆の穂先で蒔絵紛を掃いていきます。
漆を塗った部分に向かって軽やかなタッチで
掃いていってください。
出来ました。
これを湿した場所に置いて漆を乾かします。
湿度65%くらいの場所に3~4日くらい置いておいてください。
説明の追加です(2016-04-23)
今回行った「目隠し蒔絵」が↑画像の①です。
これをやっておくと、次に錆漆を塗布しても(画像の黒色部分)
それが透けて見えることはありません。
蒔絵でブロックです。はい。
目隠し蒔絵をやっておかないと(画像の②)
ガラスを透して黒く見えます。
実は今回は錆漆の塗布面が小さすぎたせいかどうかわかりませんが、
いまいちこの”目隠し”作業の効果が実証できませんでした。
一部は「効果あり」でしたが、一部は黒く見えてしまいました。
なかなか難しいですね。また何か対策などが分かりましたらご報告します。
〈 次の修理ページを見る 〉 ▸ ワイングラスの修理 ページ②