6/6 欠けた青いカップの金継ぎのやり方~蒔絵完成まで

 

 ファイツ!!

 

2020.5 全面リニューアル済み

 

artist 斎藤裕美子さんの器

初心者向け

難易度1.5
充填材錆漆(ペースト)
使用粉真鍮粉(金色の金属粉)
こだわり度丁寧・こだわり
今回のシリーズは「完成度の高さ」にこだわって、頑張ってきれいに仕上げます◎

 

 

※ 口周りが欠けたカップの「伝統的な本当の金継ぎ修理のやり方を説明していきます。

このページでは金継ぎの工程のうち
〈中塗り研ぎ~完成まで〉
のやり方を解説していきます。

 

 

【前回の作業を見る】↓

▸Page 04  繕い錆付けまで

 

 

 

金継ぎ修理を始めるその前に…

 

 

 
【ご注意!】


本物の漆
を使った修理方法ですのでかぶれる」可能性があります。

※ 万が一、漆が肌に付いた場合はすぐに「油(サラダ油など)」でよく洗って下さい
油?? そうです。「油」をつけ、ゴシゴシ漆を洗い落としてください。その後、その油を石けんや中性洗剤で洗い流してください。
※ もし、かぶれてしまい、それがひどくなるようでしたら、医者に行って処方してもらってください。

 

 

【道具・材料と購入先を見る】↓

▸本漆金継ぎで使う道具・材料ページ

 

 

作業を始めるにあたって、まずは装備を…

←:使い捨てゴム手袋 / アームカバー:→

金継ぎでは本漆を使うので「ディフェンシブ」に行きましょう。
ゴム手袋は必需品です◎ 漆をなめちゃいけません◎

作業後、油分多めのクリームを手、腕など、肌が露出していたところ(夏場は脚・足にも)に塗っておくと、カブレにくかった…というコメントをいただきました。
(塗り忘れたときは、毎回、痒くなった…そうです)

気になる方はやってみてください◎

注意:
修理箇所に油分をつけてしまうと、その箇所だけ漆が乾かなくなります。(手脂でも乾かなくなります)
ご注意ください!
※ 修理箇所に油分が付いてしまった場合は、エタノールで入念に拭きあげるか、台所用中性洗剤で洗えば大丈夫です◎

 

 

 

 

【中塗り研ぎ】

 

中塗りを研いでいきます。

作業の目的

目的は…
① 平滑面の精度をさらに上げていく(ほんのわずかな凸凹を消していく)
② 錆地層を完全に漆層で覆う
…ということです。

なるべく「漆を研ぎ破って錆地が出てこない」ようにしたいところです。
…が、修理箇所が凸凹だとどうしても錆地が出てきちゃいます(T_T)

 

〈使う道具/材料〉

 道具:
ウエススポンジの方が使いやすい
④ 要らなくなったハサミ
小さな水入れ
水桶(もあった方がベター)

材料:
水差し
耐水ペーパー
→実は駿河炭が断然おススメ


※ その他、本漆金継ぎで使うおススメの道具・材料の一覧(購入先も)を↓こちらのページにまとめました。
▸ 本漆金継ぎで使う道具・材料ページ

※「要らなくなったハサミ」は耐水ペーパーを切るのに使います。
ペーパーを切るとハサミが「ばか」になって他のものが切れなくなります
要らなくなったものか、100均などで買った安いものを使ってください◎

 

今回は「中塗り(漆塗り3回目)」の研ぎなので、#800~1000程度の耐水ペーパーで研いでいきます。

 

ちなみに使う耐水ペーパーの選択ですが下記の表を参考にしてください。

使うペーパーの
チョイス!
▪▪▪

錆研ぎ ・(きれいに削れていない場合)
#240~#320
・(きれいに削れた場合)
#320∼#400
捨て塗り研ぎ
(漆塗り1回目)
#400~600程度
繕い錆研ぎ #400~600程度
下塗り研ぎ
(漆塗り2回目)
#600~800程度
中塗り研ぎ
(漆塗り3回目)
#800~1000程度

の耐水ペーパーで研ぐのがよろしいかと思います。

 

 

 ● 耐水ペーパーの使い方 

ちょっと面倒ですが、研ぎ面をよりきれいな形に仕上げるためと、修理箇所以外を傷付けないために、ペーパーにひと手間加えます。

 

耐水ペーパー
の使い方
▪▪▪

耐水ペーパーを小さく切って使います。

切れ味の落ちたハサミで、耐水ペーパーを1×1㎝くらいに小さく切ります

それを三つ折りにします。
(↑ペーパーを三層構造の「硬い」板にして使います)

ペーパーは少量の水をつけながら研ぎ作業をおこないます。

 

なんでこんなに「小っちゃくして」使うの??しかも「三つ折り」って、、どういうこと?かと言いますと…
 
理由は2つです。
1.研ぐ面積を極力少なくするため
2.平面保持強度を高めるため
 
【1の理由】
「耐水ペーパー」って研磨力がとても強いので、器の釉薬(表面)を傷つけてしまうのです。
研いだ後、修理箇所周辺の釉薬が薄っすらと曇っているのは、あれは「細かい傷」が付いたからなのです。
 
なので、「なるべく」ですが、周りの釉薬が傷つかないようにペーパーを小さくして使いたいわけです◎
 
【2の理由】
「三つ折り」するというのは、ペーパーの「平面保持強度」を高くするためです。
なるべく「研ぐ方の道具」の平面を維持したいわけです。
 
ペーパー1枚で研いでいると「へなへな」してしまいます。紙なので柔らかいですよね。
 
それを使って研いでいると↓この「Aコース」のような仕上がりになります。

↑ペーパー1枚で研いでいると「Aコース」になるわけです。
 
紙一枚だと「研ぐ方の道具」が柔らかいので、「研がれる方のもの=錆漆(←硬いもの)」の形に沿ってしまい、その形通りに研いでしまいます。
錆漆の「山の角の部分(エッジ)」は軽くさらうことはできるのですが、「綺麗な曲面に形作る」ことは難しくなります。

一方、「Bコース」のペーパー3枚重ね(三つ折り)だと、「研ぐ方の道具」の「硬さ」が3倍になるわけです。
「研がれる方のもの=錆漆」の形に引っ張られず、研ぎによって錆漆の形を作っていくことが可能になります。
 
※ ペーパー1枚に比べて…という話です。
平面維持強度をもっと上げて、「きれいにな形を作る」作業がしたかったら
「漆研ぎ用の“駿河炭”」が断然おススメです。

 

 

 

 ● 駿河炭の仕立て方 

「研ぎ道具」としては、実は「駿河炭」が最強のアイテムです◎

何といっても、耐水ペーパーと違って器に傷が入らない
できれば使ってみていただきたいです!
‣駿河炭が断然おススメな理由

 

 

駿河炭
の仕立て方
▪▪▪

炭は大きな塊で売っているので、自分で小さく切って使います。

① まずはカナノコ(金鋸)の刃で厚さ15~20㎜程度輪切りにします。

② 次に薄い板状になった炭の塊りを、大き目のカッターナイフで「割っていきます」

③ さらにカッターで割って、大小さまざまな面積のものを用意します。

 

使う際は炭の「研ぎ面」を砥石(または耐水ペーパー)の上で研いで、平面にします。

少量の水を付けながら修理箇所を研いでいきます。

修理箇所を研いでいると炭の研ぎ面が崩れてきますので、ちょこちょこと砥石(またはペーパー)に当てて、研ぎ面を修正します。

 

詳しくはこちらのページをご覧ください↓

 

 

 

▪実作業▪

 

金継ぎの漆の塗った部分を研いでいきます

少量の水を付けながら研いでいきます。

 

「中塗り研ぎ」はなるべく研ぎ破らないようにしたいです。

ですが、もし修理箇所が凸凹した状態でしたら、しっかりと研いでいって、研ぎ破ってでも「精度の高い平滑面」を作っていった方が、最終の仕上がりはきれいにいきます。

 

木賊かペーパーで研ぎます。

しっかりと研いでいって、研ぎ破らずにきれいな平滑面になったらそれがベストです◎

が、しかし、漆層を研ぎ破って、「錆地層」が出てきてしまった場合…

 

● ガッツリと錆地が出てきしまった場合

漆塗りをもう一度やった方がいいです。悲しいですが…(T_T)

ファイツ!

 

● ほんのちょっと薄っすらと錆地が出た場合

擦り漆を1,2回施して(乾いてから)、次の「地塗り作業」に移ります。

※ 露出してしまった錆地部分に漆を吸わせることで、地塗りの際の漆の吸い込みを止めます。

 

㊧:生漆(希釈しない)を筆で塗布します。
錆地が出ている箇所だけではなく全体に塗布します。

錆地が出ている箇所は「吸い込み」が止まるまでたっぷりと吸い込ませます。

㊨:ティッシュで拭き取ります。

 

 

作業が終わったら湿度の高い場所に置いて漆を硬化させます。
そう、漆は空気中の水分を取り込んで硬化するのです。不思議な樹液ですね◎

 

【漆が乾く最適条件】

 

え~!
「高」湿度!の場所??

はい、その通りです◎

漆が乾く上記の条件を作るために「箱」を用意します。
手っ取り早く手に入る「段ボール」を例にご説明します。

① まず下にビニール袋を敷いて、段ボールが濡れるのを防ぎます。
次に濡らして「固く絞った」キッチンペーパー(もしくはウエス)を中に置きます。

② 作業が終わった器を入れます。できればウエスから少し離した場所に置きます
(上の画像よりも、もう少し離れた場所に置いた方がいいです)

③ 蓋を閉めて、湿度が逃げないようにします。
④ 鳩は入らないようにします◎

 

漆の乾きがよくないようでしたら、こまめに湿度を与えます。(5時間おきとか)
大体の場合は、初めに湿度を与えてあげればしっかりと乾きます。

※【箱】…段ボール、コンテナ、発泡スチロール…等々、何でも構いません。
要するに湿度が逃げない(逃げにくい)ように「閉じた空間」が作れればオッケーです。

※【布類】…水を含ませておくためのものですので、何でも構いません。
使っているうちにカビが生えたり、匂いがしてきたりするので、「キッチンペーパー」が使い勝手がいいようです。(匂ってきたら捨てられますから)

漆の乾きに1~2日間待ちます。

 

 

 

 

【地塗り(漆の上塗り)】

いよいよ「蒔絵作業」に入ります。

「蒔絵粉」というのはただの「粉」なので、それ単体では定着してくれません。
修理箇所に定着させるための「接着剤」が必要となります。

蒔絵粉の接着剤として使う素材は「漆(そのもの)」です。

 

〈使う道具/材料〉

 道具:
② ティッシュぺーパー
④ 蒔絵筆またはインターロン筆
 練りベラ ‣作り方ページ ‣作り方の動画
作業盤(ガラス板など)
‣作り方ページ ‣作り方の動画
 ゲル板 ○ サランラップ

材料:
アルコールテレピン、灯油など)
⑤ 精製漆(今回は”弁柄漆”=絵漆とも呼びます…赤茶色の漆)
サラダ油


※ その他、本漆金継ぎで使うおススメの道具・材料の一覧(購入先も)を↓こちらのページにまとめました。
▸ 本漆金継ぎで使う道具・材料ページ

 

●  使用する筆 
「蒔絵筆」がベストなのですが、1本¥4,000∼¥7,000-してしまいます。
初心者さんにこの値段はちょっとハードルが高いですよね。
安価な筆でおススメなのは「インターロン」というナイロン製の筆です。
超極細筆
小筆
ひとまずこの2本があればほとんどのケースがカバーできます◎

 

 

 

使用「前」の筆の洗い方

 

 

【ご注意!】
 
今回はテレピンで筆を洗いますが、これはアクリルの筆など「安価な筆」を洗う場合の話です。

蒔絵筆(高級な筆)の場合は「」で洗ってください。毛が痛みづらくなります。
‣ 蒔絵筆の洗い方の動画

 

 まずは筆をテレピン(または灯油)で洗って筆の中の「油」を洗い出します。
▸ 詳しい作業前の筆の洗い方

どうして筆に「油」が付いてるの??…かといいますと、漆作業で使った筆は最後に油で洗っているからなのです。油で洗うと筆の中に残った微量な漆が乾きません。
漆と油とは相性が悪いのですが、それを利用して、保管するときには油で洗います。

逆に、使う時にはその油を除去します。

 

使う道具/材料

テレピン
・ティッシュペーパー


 

 作業工程 
① 畳んだティッシュに筆を包む
② ティッシュをギュッと摘まんで、筆の中の油を吸い取る
③ 作業板の上に数滴テレピンを垂らす
④ その上で筆を捻ったりしてテレピンをよく含ませる
⑤ 筆をティッシュで包む
⑥ ティッシュをぎゅっと押えて、「油+テレピン」を絞り出す
⑦ 「4→5→6」を2~3回繰り返す

① 折り畳んだティッシュに筆を包みます。
② ティッシュの上に筆を置きます。

③ ティッシュの上からギュッと摘まんで、筆の中の油を吸い取ります。
④ これを3,4回繰り返して、しっかりと油を搾り取ります

⑤ 作業盤の上にテレピンを数滴、垂らします。
⑥ 筆にテレピンを含ませます。
筆は作業盤の上で捻ったりして、しっかりとテレピンと馴染むようにします。

⑦ ティッシュの上に筆を乗せます。
⑧ ティッシュの上からギュッと摘まんで、「油+テレピン」を絞り出します。

この後、「⑥→⑦→⑧」を2~3回、繰り返します。

この作業で筆のなかの油分をしっかりと除去します。
筆の中に油が残っていると漆が乾かないことがありますのでご注意ください。

 

 

【ご注意!】

「エタノール」などの揮発性の強いもので洗うと、テレピンよりも油分がしっかりと除去できますが、その分、筆への負担も大きくなり、傷みやすくなります。

ですので、金継ぎ図書館では筆が傷みにくいテレピン、灯油などをおススメしています。

ちなみに筆が一番、痛まないのは「漆」で洗うことです。
‣ 漆での筆の洗い方動画
特に高価な「蒔絵筆」を洗う際には漆で洗ってください。

筆に漆を付けて、いきなり塗り始めると、初めのうち、テレピンの影響で薄くなる可能性があります。
ですので、「塗り始める」前に一度、筆に漆を含ませて、筆と漆とを馴染ませてください。

 

 

漆の準備

 

筆の準備が済んだら、今度は漆の用意をします。

漆の中にゴミがたくさん入っている場合などは「濾し紙」で漆を濾してきれいにします。

必要な方はこちらをご覧ください↓

urushiway▸ 基本的な漆の扱い方・濾し方

 

 

 

地塗りに使う漆の選択

今回は蒔絵粉に「真鍮粉(金色の金属粉)」を使いたいので、「地塗り」の漆には「弁柄漆」を使います。

 

 地塗りに使う漆の選択 

・「金粉」(または真鍮粉)を蒔く場合⇆地塗りは「弁柄漆(赤茶色)」を使う
・「銀粉」(または錫粉)を蒔く場合⇆地塗りは「黒弁柄(黒色)」(または白漆)を使う

これがベーシックな選択です。

 

 根本的な考え方 

地塗りに使った「漆の色味」が蒔いた「粉の色味」にも影響します
例えば、地塗りに「赤色」を使えば、蒔いた粉にほんのり赤味が差します。

【金粉(真鍮粉)の場合】

粉自体の色味としては「黄色=暖色」なので、同系色の「暖色系」の漆を使うと、金色の彩度が高くなって映えるわけです。
もちろん、地塗りに「黒色」を使ってもいいです。その場合は、仕上げた金色がワントーン暗くなった感じに仕上がります。

【銀粉(または錫粉)の場合】

粉自体の色味としては「白っぽい色=無彩色」なので、その地塗りに使う漆の色としても無彩色系の「黒または白」を使うと、銀色がシックで落ち着いた感じに仕上がるわけです。
こちらの方も、もちろん他の色を使っても構いません。
赤色の漆を地塗りに使えば、仕上がった銀色に赤味が差します。

 

 

▪実作業▪

 

「地塗り」に入りますが、まずは塗る際のポイントです。

今回は「真鍮粉」を蒔くので、下記の解説程は薄く塗らないでください。

 

「地塗り」のポイント
▪▪▪
 
※ ここで説明しているのは「金粉/銀粉などを蒔く場合の漆の厚み」についてです。
真鍮粉/錫粉などを蒔く場合は「通常の塗り厚」か、それより「ちょっと薄いくらい」にしてください。
 
 

 

 地塗りの厚み 

超・極薄」に塗っていきます。とにかく薄くです。
かすれちゃいけませんが、そのくらい薄くという感じです。

プレパラートに塗ると向こう側が透けるくらい薄くです。

 

 地塗りの手順 

①「極細筆」で輪郭部分を括っていきます。
②「小筆」で内側を塗り潰します。
③ 全体に漆が塗れたら、最後、上下左右に小筆を通して、なるべく塗り厚を均一に揃えます。

※ 塗りの手順/ポイントについてはこのページの上部での説明と同じです。
‣塗りの手順説明を見る

 

 

 

塗っていきます。

まずは「極細筆」を使って「輪郭」を括っていきます。

インターロンの極細筆(417 丸0号)

 

 

金継ぎの漆の上塗りの方法としては弁柄漆で薄く塗っていく。

↑この写真、いきなり「内側」を塗り始めちゃってます。(昔の私です(T_T))
これ真似しないように気を付けてさい。

 

 漆を塗る手順ですが、こちらのイラストを参考にしてください↓

塗りの手順
▪▪▪

 


始めは「極細筆」↑を使用

㊧ 塗りの手順は「広い面」も「狭い面(線)」も同じです。

1.㊨ まずは「極細筆」で輪郭を塗っていきます。
キワキワまで塗り残しが無いように気を付ける。かつ、なるべくはみ出さない◎

 


  

ここからは「小筆」↑を使用

2.「小筆」輪郭の内側を塗り潰します。
とりあえず内側全体に漆を配ってしまいます。

3.㊧ 修理箇所の「短手方向」(例えば左→右)に小筆を細かく通す。
「隙間」が空かないように、「筆を通した跡」に少し被せるようにして次の筆を通す
※ 下図を参照してください。

線が細過ぎて、「短手方向に」筆が通せない場合は無理せずスルーしてください。
(Ⓑの細い箇所)

4.㊨ 反対方向の短手側に筆を通す。

これら作業の際、「漆の塗り厚」がなるべく均一になるように意識して、筆を通してください。
ちょっと「漆の厚いところから、薄いところに移動させる」ような感覚です。
つまり、漆の表面を「撫でるように」筆を動かすのではなく、もうちょっと筆圧を上げる感じです。

「筆を通した跡」に少し筆を被せて通す…とは↑こうゆうことです◎
(伝わりますか??)



5.同様に「長手方向」にも筆を揃えて通します。
線が細過ぎて、「短手方向に」筆が通せなかった部分でも、「長手方向」になら通せることが多いので、できるだけ筆を通して、漆の厚みを均一にしておきます。

特に最後の「通し」では、「筆跡(筆を通した筋)」を消すような感覚で、撫でるような筆圧で通してください◎
 

この手順で塗っていきます。

 

そんなのわかっとるワイ!
と言われちゃいそうですが、一応、「縁取り」の手順を載せておきます↓

「キワ」塗りの手順
▪▪▪

「極細筆」でキワを塗るときの手順です。

極細筆」↑を使用

  
※ 修理箇所の部分だけを「塗り残し&はみ出し無く」きれいに塗りたい場合の話です。
漆がはみ出しても気にしない方針でやっている人は読まなくて大丈夫です◎
 

 
↑最初からキワキワを攻めて一発で塗れたら、めちゃくちゃオッケーです◎
 
ですが、「一発」で「はみ出し&塗り残し」なしで塗るのは至難の技ですよね。
 

 


一発でキワを塗ろうとすると下図のように↓

所々、はみ出してしまう箇所が出てきやすくなります。

ですので、「はみ出さないで塗りたいな~」という人は、塗りの一発目からキワのぎりぎりを攻めすぎない方がいいと思います。
(特に技術がついてきていないうちは)
 

 


  

まずは上図↑のようにキワの「ぎりぎり内側を塗る」ような感覚を意識します。
キワの「境界線の内側」を強く意識します。

所々、キワに「塗り残し」があってもいいです。
「はみ出す」よりも「塗り残す」方がいいです◎

もちろん、きわきわまでピタッと塗れたら、それが一番いいです。



次にキワの塗り残しを、筆を何度か通して塗り潰していきます。

筆を何度も通しつつ、修理箇所の「内側から外側(「キワ」の境界線)に向かって」、徐々に漆で塗り潰していくようなイメージでキワ塗りの作業をおこないます。
 

 

 

参考になりそうな「塗り」動画です↓


 
0:50~2:57まで再生

 

 

「きわきわ」まで塗っていきます。
ちょっとでも「塗り残し」があると結構、ダサく見えし、自分でもすごく気になってくるので、細心の注意を払います。

 

● どう頑張っても「キワに塗り残しがある」…という方は「メガネ型ルーペ」を掛けながら作業するのがおススメです↓

 

●  ハズキルーペのススメ 

僕の場合、年齢が40代になって、いつの間にか細部が見えなくなっていたので、現在「ハズキルーペ」を購入して使っています。
いつの間にかキワの部分の塗り残しが自分の目では判別できなくなっていたのです。

地塗りの段階で、自分では「完璧にきれいに塗れたつもり」が、実際に金粉を蒔いて仕上げてみると、キワの一部にほんのわずかな塗り残しがあったりするのです。

これは「自分の技術・努力が足りないから」であり、修練あるのみだ!と思ってしばらく頑張っていたのですが、ふと、「これってもしかして僕の目が見えていないのかも??」と思い、思い切っていくつかのルーペ類を試してみたのです。

結果、ハズキルーペでほぼほぼ解決しました◎
技術・努力ではなく、「拡大鏡」が必要だったということです。

ハズキルーペの1.85倍のレンズを使っているのですが、対象物が大きく見えて、断然、描きやすくなりました
キワの塗りの精度も格段に高くなりました

効果絶大ですので「キワの塗り残しが見えない…」という方には100%おススメです。

(ハズキルーペの宣伝みたいですね~)

 

● 一周、ぐるっとキワを塗り終えたら、僕の場合、「ポケットルーペ」で最終確認します。

 


これでチェックすると100%近く、塗り残しを発見することができます◎

ポケットルーペは結構、頻繁に使いますので、僕にとってはマスト・アイテムです。

1枚あたり倍率4倍のレンズで2枚ついています。レンズが大きめのもの(径36㎜)を使っています。
金継ぎでは径の大きいレンズの方が使いやすいと思います。

 

地塗りの漆が
はみ出した時
の掃除
▪▪▪

● 地塗りのはみ出し

【塗っている最中の場合】
・アルコールを付けたウエス/ティッシュで全面拭き取ってやり直し
朴の木ベラでピンポイント掃除
(ルーペで見ながら作業するとやりやすい)

かなりしっかりと拭き取らないと、蒔絵粉が張り付いてしまい、粉が無駄になる。
(拭き取ってもごくわずか漆が「拭き漆状態」で残っているので、蒔絵粉が付いてしまいやすい)
※ テレピン/灯油などの揮発性が遅い溶剤で拭き取ると、漆が薄っすらと残りやすいので、蒔いた粉もくっつきやすい。なのでアルコールを使う。

この「くっついた粉」は乾いてからの掃除はやりやすい。
拭き漆状態のほんのりとした漆で引っ付いているだけなので、磨き粉で軽く取れる

【乾いた後(粉固め前)の場合】
竹木砥or針砥で乾いた蒔絵粉を削る
(ルーペで見ながら作業するとやりやすい)

 
 
蒔絵で「はみ出してしまった箇所」は乾いた後、竹で作った棒で案外簡単に削り取ることができます↓
 

 
「竹木砥たけきど」はただ、竹の「皮側」を削って「尖らせる」だけで出来ます。
簡単に作れます。
竹木砥の作り方の解説ページ/動画は近いうちに用意したいと思います。
 
 

 

漆の上塗りでは弁柄漆をなるべく薄く均一に塗っていく。

 

※ この写真↑は参考にしないでください!

 

 

輪郭が塗り終わったら、その「内側」を普通の小筆で塗っていきます。

 

 

インターロンの小筆( 1026 丸2号)

 

まずは全体にどんどん漆を塗っていきます。

 

金継ぎの塗り工程のコツは、最後に筆を通して塗り厚を均一にすることです。

全体に漆を塗り終わったら、最後に「筆を通し」ます。

 

参考になりそうな動画です↓


 
2:57~3:21まで再生

 

上下左右に筆を通し、なるべく漆を均一な厚みにします。

 

器の外側の漆塗りも最後に筆を通して漆の厚みを均一にする

 

全部塗り終わりました!

 

 

塗り終わったばかりの状態は「筆跡が立って」いて、塗り面が少しガタガタしている場合があります。
空風呂(湿していない場所)に10∼20分程度放置して、筆跡が沈むのを待ちます。

 

以前、この金継ぎ図書館では、地塗りをした後の蒔絵粉を蒔くタイミングは
「塗った漆が乾きかけの時がベスト」
…と説明していましたが、訂正させてください。(スミマセン!)

訂正後
地塗りを極薄で塗って、「直ちに蒔く」
…が正解です◎

※ ただし、地塗りの「筆跡」が立っている場合は、筆跡が沈むまで空風呂(湿していない場所)に10∼20分程度放置してください。

 

「直ちに蒔いた方が良い」理由ですが↓こちらのページで詳しく解説しています。

 

 

放置している合間に筆を洗ってしまいます。

 

 

使用「後」の筆の洗い方

 

漆を使った筆は作業後、「油」で洗います
油で洗わなで、アルコールやテレピンで洗うと筆の中に僅かに残った漆が硬化するので、次第に筆がゴワゴワしてきて使い物にならなくなります。

作業工程 
① 折り畳んだティッシュで漆の付いた筆を包む。
② ティッシュを摘まんでギュッと漆を絞り出す。(数回おこなって、しっかりと絞り出す)
③ 筆に油を含ませる。
④ 作業盤の上で捻ったりしながら油を馴染ませる。
⑤ 筆の根元からヘラで「油+漆」を「優しく」しごき出す
(特に毛先はヘラが強く当たらないようにする。強く当てると毛先が劣化してカールしてきたり、まとまらなくなってきます)
⑥ ヘラで廃油を掬い、ティッシュに吸わせる。
⑦ 再び油を含ませる
⑧ 作業盤の上で、ヘラを使って絞り出す
⑨ 廃油の中に漆分が(ある程度)含まれなくなるまで…つまり「透明度」が高くなるまで繰り返す。
⑩ 最後に綺麗な油を筆に含ませ、軽くティッシュに吸い取らせます。
⑪ 洗い終わった筆は付属のキャップをして保管する

 

使う道具/材料

サラダ油
ゲル板
・ティッシュペーパー
・エッジが鋭くないヘラ(筆洗いベラ)

 

 

① 折り畳んだティッシュの上に漆の付いた筆を置きます。
② 両側から筆をティッシュで包んで、ぎゅっと摘まみ、漆を絞り出します
③ これを数回おこなって、しっかりと絞り出します。

この時点でしっかりと漆を絞り出してしまった方が、この後の「油で洗う」時、筆が早く綺麗になります◎

③ 油の入った瓶に筆を入れて、油を含ませます。
ゲル板の上で優しく捻ったり、クネクネ(?)させたりして、筆に油を馴染ませます
(こんな表現でいいんでしょうか?)

⑤ ゲル板の上で筆の根元からヘラで「油+漆」を「優しく」しごき出します
※ 「優しく」しごかないと筆が痛みやすくなります。特に「毛先」が痛みやすいので、毛先は軽く触る程度にしてください。
根元に漆が残りやすく、それが影響して、筆先が割れてくると思われますので、入念に掻き出します。

⑥ 筆の中の「油+漆」の廃油がしごき出せたら、ヘラで廃油を掬い、、、ティッシュに吸わせます。
こうして廃油をどかしておくと、作業盤の上が常にクリーンな状態で筆の洗い作業ができます◎

この後は「③→④→⑤→⑥」を繰り返します
廃油の中に漆分が(ある程度)含まれなくなるまで…つまり「透明度」が高くなるまで繰り返します。

⑦ 最後に綺麗な油を筆に含ませ、軽くティッシュに吸い取らせます。
⑧ 付属のキャップを被せて終了です◎

※ キャップが無かったらサランラップを丁寧に巻いてください。キャップがない、もしくはキャップを作りたいという方はこちら↓を参考にしてください。
▸ 筆のキャップの作り方

 

使用後の筆の洗い方でもっと詳しく知りたい方は↓こちらのページをご覧ください。
▸ 使用後の詳しい筆の洗い方 

 

 

 

 

 

【 お掃除、お掃除 】

インターネット上で初心者相手の金継ぎ教室

全ての作業が終わったら作業板を掃除します。

テレピン(又はエタノール、灯油など)を垂らして、ウエスやティッシュできれいに拭き取ってください。

 

  caution ! 

厳密に言うと、掃除をし終わった後の作業板の上には「ごくごく薄っすら」と漆の成分が残っています
ですので、この作業が終わるまではしっかりとゴム手袋をして、ゴム手袋を外したあとは作業板を含めて漆の道具類を触らないようにした方がいいです。

 

 

 

 

 

【粉入れ(蒔絵粉を蒔く)】

いよいよ「蒔絵粉」を蒔いていきます。

緊張するかもしれませんが、そんなに難しい作業ではありませんので、きっと大丈夫です◎

 

〈使う道具/材料〉

 

 道具:
② ティッシュぺーパー
③ 絹の真綿 ⑤ 粉鎮

⑥ あしらい毛房

⑦ 筆洗いベラ

作業盤(ガラス板など)
‣作り方ページ ‣作り方の動画

 

材料:
アルコールテレピン、灯油など)
④ 蒔絵粉(今回は真鍮粉を使用)

 


※ その他、本漆金継ぎで使うおススメの道具・材料の一覧(購入先も)を↓こちらのページにまとめました。
▸ 本漆金継ぎで使う道具・材料ページ

 

 

今回は「あしらい毛房(毛先の柔らかい筆)」を使って金粉を蒔きます。

真綿を使ってもオッケーです。その場合の注意点です↓
「絹」じゃなくちゃダメです。「綿めん」を使うと、その繊維が引っ掛かって、汚い仕上がりになります。

● 真綿の仕立て方の解説ページがありますので、初めての方はご覧ください↓

 

● 蒔絵粉にはいろいろな種類あって、それぞれ仕上げ方が異なります。
それらをまとめたページがありますので、興味のある方ご覧ください↓

 

 

 

▪実作業▪

※ 今回は「あしらい毛房(毛先の柔らかい筆)」を使います。
「真綿」を使ってもオッケーです◎

 

 

● あしらい毛房を使う場合はこちらの動画を参考にしてください。↓
 


5:09~10:04まで再生
この動画で使っている金粉は【丸粉3号】です。

 

 

● 真綿で粉を蒔く時の参考動画です↓


8:36~から再生

※この動画では「消し粉」という細かい粉を使っていますが、真綿の使い方は「丸粉2号」も同じです◎

 

 

中の真鍮粉が入った包み紙を小石で押さえます。

金継ぎの蒔絵で使う真鍮粉を筆でで掬う

あしらい毛房(柔らかい毛足の筆)で真鍮粉を少量、掬い取ります。

 

筆に絡ませた金継ぎで使う真鍮粉

とりあえずこんなもんでいかがでしょうか?

 

真鍮粉を漆の上塗りを行った場所に蒔いていく

 

掬い取った真鍮粉を上塗りした漆の上にのせます。
↑これ、ダメなやり方です!

アホー

地塗りした箇所の「脇」に乗せてください。

「多目」に粉を乗せておいてください。

 

真鍮粉を筆で掃くようにして漆の上に移動させていく。

真鍮粉を筆で掃いて、漆の上に掃き込んでいきます。

十分な量の真鍮粉が器に乗っていれば、あしらい毛房で漆の上に払い込んでいっても、筆の毛先が漆につくことはありません◎

 

金継ぎの蒔絵では真鍮粉を使って漆の上にのせていく。

真鍮粉が足りなくなったら、包み紙に入った真鍮粉から掬って補充してください。

 

蒔絵の作業では筆で金属粉を払いながら漆の上にのせていく。

ばさばさと掃いていって…こんな感じです。
オッケーです◎

 

金継ぎの蒔絵作業が完了です

イイです◎
オッケーです。

 

器の外側も蒔絵を行う。真鍮粉を筆で掬う

器の外側も金継ぎの蒔絵の作業を行います。

 

真鍮粉を筆で漆の上にのせて蒔いていく

地塗りした漆の横に、バサッと粉を置いて、あとはサッサッサっと掃いていきます。

 

金継ぎの蒔絵作業が完了

いんじゃないでしょうか?

なるべく包み紙の上で作業をして、掃いた真鍮粉が紙の上に落ちるようにします。

 

金継ぎの蒔絵が終わった器を外側から眺める

オッケー。
金継ぎの蒔絵工程完了。

 

周りに付いた真鍮粉はなるべくあしらい毛房で払い落とします。

残った粉はそのままにして、乾かします。
乾いてから洗い流します。

 

 

漆を乾かす

 

作業が終わったら湿度の高い場所に置いて漆を硬化させます。
そう、漆は空気中の水分を取り込んで硬化するのです。不思議な樹液ですね◎

 

【漆が乾く最適条件】

 

え~!
「高」湿度!の場所??

はい、その通りです◎

漆が乾く上記の条件を作るために「箱」を用意します。
手っ取り早く手に入る「段ボール」を例にご説明します。

① まず下にビニール袋を敷いて、段ボールが濡れるのを防ぎます。
次に濡らして「固く絞った」キッチンペーパー(もしくはウエス)を中に置きます。

② 作業が終わった器を入れます。できればウエスから少し離した場所に置きます
(上の画像よりも、もう少し離れた場所に置いた方がいいです)

③ 蓋を閉めて、湿度が逃げないようにします。
④ 鳩は入らないようにします◎

 

漆の乾きがよくないようでしたら、こまめに湿度を与えます。(5時間おきとか)大体の場合は、初めに湿度を与えてあげればしっかりと乾きます。

※【箱】…段ボール、コンテナ、発泡スチロール…等々、何でも構いません。
要するに湿度が逃げない(逃げにくい)ように「閉じた空間」が作れればオッケーです。

 

※【布類】…水を含ませておくためのものですので、何でも構いません。
使っているうちにカビが生えたり、匂いがしてきたりするので、「キッチンペーパー」が使い勝手がいいようです。(匂ってきたら捨てられますから)

 

 

 

漆の乾きに1週間待ちます。

 

 

真鍮粉を使った場合はこれでお終いです◎

1週間経ったら、台所用の柔らかいスポンジを使って、水を流しながら残った真鍮粉を洗い流します。

これで完成です。
どうぞ食卓でお使いください。

 

※ 3,4種類の真鍮粉を試したのですが、「粉固め(蒔絵粉を蒔いた後、その上から薄く漆を摺り込んでコーティングする作業)」をすると、どうしても「黒っぽく」なっちゃいました。
ですので、金継ぎ図書館では「真鍮粉は蒔きっ放しで完成」ということにしています。
(「消し粉」と同じですね)

 

 

あしらい毛房を洗う

蒔絵作業時にほんの少し、毛棒の毛先に漆が付くことがあります。

1回、2回はほとんど影響がありませんが、繰り返し作業をしているうちに
毛先に「玉」のようなものが形成されてしまいます。
(歯ブラシの「毛先が球」状態になります。)

なので、作業後はアルコールで軽く筆を洗って、毛先の漆分を除去します。

 

 

 

 

 

【金継ぎ完成】

 

欠けた器の金継ぎ修理が完成しました。全体図

 

欠けた器の金継ぎ修理が完成しました。

 

 

欠けた器の金継ぎ修理が完成しました。上から見た写真。

 

 

欠けの金継ぎアップ

 

  欠けた器の金継ぎ修理。外側からアップ。

 

 

欠けた器の金継ぎ部分をカップに水を入れて鑑賞

 

 

カップに水を入れて金継ぎ部分を水に反射させている

 

 

金継ぎ修理部分を月に見立てて、カップに入った水を湖面に見立てる。

 

 

欠けた器の金継ぎ修理が完了

 

 

欠けた器の金継ぎ修理が完成しました。

 

 

 

本日で器の修理は終了となります。
どうも長い間お疲れ様でした。

 

 

 

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