ファイツ!!
蕎麦猪口
超・初心者向け
難易度:
充填材:刻苧(パテ)+錆漆(ペースト)
使用粉:真鍮粉(金色の金属粉)
仕上げ:簡単・お手軽
今回のシリーズはあまり「完成度の高さ」にこだわらずに、「そこそこ」に仕上げます◎
● 今回の修理の参考になりそうな動画です↓
9分弱の【ダイジェスト】動画です。
これを見れば「割れた器のおおよその金継ぎ修理の流れ」が分かると思います。
「割れた器」の直す手順は…
- 割れた破片を漆の接着剤でくっつける
- 破片の接着時にできた隙間、段差を漆のペーストで埋める
- 漆を2~3回塗り重ねる
- 金属粉を蒔く(蒔絵) → 完成
です。意外とできちゃいそうですよね。
Page 01 ▸ 破片の接着まで Page 01
器 information ▸ 詳しいページへGo
- 器: 明治時代(?)の蕎麦猪口
- 器の特徴: 磁器の絵付け、ややピカピカの釉薬
- 器のサイズ: 直径77㎜、高さ63㎜
- 破損状態: 口元 割れ2ピース+本体(割れの長さ 総計約850㎜)
こちらを直していきます。「本体+2ピースの破片」の【割れ】の修理です。このパターンはよくりますよね。
「割れ」た器はさらに「ひび」も入っている場合が多いので、チェックを怠りなく◎
01 漆で器の素地を固める ▸ 詳しいページへGo
道具 ・小筆 ・練りベラ ・作業板
材料 ・生漆 ・テレピン(エタノールでも可) ・サラダ油 ・ティッシュペーパー
生漆をテレピンで少し希釈します。
体積比(目分量)… 生漆 10:3 テレピン
作業を始める前にテレピンで筆の中の油分を洗い出します。
▸ 詳しい作業前の筆の洗い方
割れた断面全てに生漆を塗布してきます。
ティッシュを押し当てて、ほぼほぼ拭き取ってしまいます。(でもほんの「僅か」に漆が残りますので大丈夫)
作業後に筆を油で洗います。
▸ 詳しい作業後の筆の洗い方
漆風呂に入れます。6h~半日、湿度の高い状態(65%~)にします。
02 割れたピースを接着 ▸ 詳しいページへGo
道具 ・練りベラ ・練りベラ ・作業板
材料 ・生漆 ・小麦粉 ・水
体積比(目分量)… 小麦粉 1:1 生漆 ※水は適量
▸ 麦漆の詳しい作り方ページへ
薄く、均一に塗布していきます。
できたら「乾きかけ」を狙って接着作業をします。私は2~3時間、放っておいてから接着します。
しっかりと押し込んで、なるべく圧着させます。
破片が多い場合は接着する間に所々ズレが生じてしまいます。
全部のパーツがくっついたら、全体のズレを微調整して、なるべく「おおきくズレている」箇所がなくなるようにします。
なるべく「自重」で圧着するポジションをとります。
麦漆の乾き待ち3~4週間。
※ 乾きかけのグッドタイミングで接着できた場合は
1~2週間でしっかりと硬化します。
ここまでの作業手順を詳しく知りたい方はこちらへGo↓ |
03 漆パテの充填 ▸ 詳しいページへGo
道具 ・練りベラ ・刻苧こくそベラ ・作業板 ・サランラップ
材料 ・生漆 ・木粉 ・小麦粉 ・水
麦漆むぎうるし(接着剤)漆に木粉を適量混ぜる。
(ヘラが「ぱっ」と離れるくらい)
大きな隙間、深い隙間に刻苧漆こくそうるし(パテ)を詰めていきます。
少しずつ刻苧漆こくそうるし(パテ)を詰めていきます。
周りの器のラインと滑らかに繋がるように(出っ張らないように)なるべく「ジャスト」の量を詰めていきます。
漆風呂に入れます。(入れなくても大丈夫)1~2週間、硬化を待ちます。
04 漆パテの削り ▸ 詳しいページへGo
道具 ・彫刻刀(平丸刀、平刀) ・障子紙用丸刃カッター ・カッターナイフ(大)
↑これらの中の使いやすいものを使ってください。ベストは彫刻刀の2種をもっているといいです。が、「研げない」場合は、カッターナイフの2種を使うといいです。
器のラインから飛び出した部分を削ります。
05 漆ペースト付け ▸ 詳しいページへGo
道具 ・練りベラ ・付けベラ ・作業板
材料 ・生漆 ・砥の粉 ・水
体積比(目分量)… 砥の粉 10:8 生漆 ※水は適量
▸ 錆漆さびうるし(ペースト)の詳しい作り方ページへ
小さな穴、細かい隙間にペーストを入れていきます。
複数方向からヘラを通して、隙間に錆が入り込むようにします。
器の内側も錆を付けます。
漆風呂に入れます。(入れなくても大丈夫)1~2日硬化を待ちます。
06 漆ペーストの削り・研ぎ ▸ 詳しいページへGo
道具 ・彫刻刀(平丸刀、平刀) ・障子紙用丸刃カッター ・カッターナイフ(大)
↑これらの中の使いやすいものを使ってください。
接着箇所の錆を削ります。
「埋めた」箇所の錆も削ります。
研ぎ
道具 ・水入れよう容器 ・ ウエス ・ハサミ(ペーパー切り専用にしたもの)
材料 ・耐水ペーパー(今回は#600) ・水
※ 耐水ペーパーとは「水を付けながら研げる紙ヤスリ」です。これの方が研ぎの効率が断然よいです◎
1×1㎝にハサミで切ったペーパーをさらに三つ折りにして使います。
器の内側も研ぎます。
もし、この時点でまだ凹んでいる箇所や小さなピンホールなどが見つかったら、もう一度「錆漆」を頑張ってください◎
私はだいたい2回、錆付け、錆研ぎをします。
ここまでの作業手順を詳しく知りたい方はこちらへGo↓ |
Page 03 ▸ 蒔絵・完成まで Page 03
07 漆の下塗り ▸ 詳しいページへGo
道具 ・ティッシュペーパー ・練りベラ ・小筆 ・作業板
材料 ・サラダ油 ・精製漆(今回使ったのは弁柄漆) ・テレピン
作業を始める前にテレピンで筆の中の油分を洗い出します。
▸ 詳しい作業前の筆の洗い方
接着箇所、充填箇所の全てに漆を塗っていきます。
「厚塗り」にならないように気を付けます。
※ 厚く塗り過ぎると、塗膜に「縮み」というシワシワ現象が生じます。
ご用心ご用心。
作業後に筆を油で洗います。
▸ 詳しい作業後の筆の洗い方
漆風呂に入れます。2~3日、湿度のある所(65%~)に置いてください。
08 下塗り研ぎ ▸ 詳しいページへGo
道具 ・水を入れる容器 ・ウエス ・ハサミ(ペーパー切り専用にしたもの)
材料 ・耐水ペーパー(今回は#800) ・水
水を付けながら研ぎます。
「平滑な面」がでるまで研ぎます。
この後、塗りをもう1,2回行うと「ふっくら」とした柔らかい漆の塗面になります。好みに依りますが、「ふっくら仕上がり」をご希望の方は「塗り→研ぎ」を繰り返してください。
09 漆の上塗り ▸ 詳しいページへGo
道具 ・ティッシュペーパー ・練りベラ ・小筆 ・作業板
材料 ・サラダ油 ・精製漆(今回使ったのは弁柄漆) ・テレピン
作業を始める前にテレピンで筆の中の油分を洗い出します。
▸ 詳しい作業前の筆の洗い方
接着箇所、充填箇所、それらすべてをカバーするように塗っていきます。
薄目、均一を心掛けてください。
作業後に筆を油で洗います。
▸ 詳しい作業後の筆の洗い方
漆風呂に入れます。30分程度、湿度のある所(65%~)に置いてください。
10 蒔絵 ▸ 詳しいページへGo
道具 ・柔らかい毛質の筆
材料 ・蒔絵紛(今回は真鍮粉を使用)
十分な量の蒔絵紛を乗せます。
ソフトタッチで蒔絵紛を掃いていきます。紛が少なくなって来たら、適宜足します。
漆風呂に入れます。1週間ほど湿度のある所(65%~)に置いてください。
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金繕い完成
「蕎麦猪口の修理」ページを見る
▸p01 素地の研ぎ~接着まで
▸p02 麦漆削り~刻苧漆の充填
▸p03 刻苧削り~錆漆付けまで
▸p04 錆削り~漆塗りまで
▸p05 漆研ぎ~蒔絵/完成まで