ファイツ!!
※ 口周りが欠けてしまったお茶碗の金継ぎ(金繕い)修理のやり方を説明していきます。本物の漆を使った修理方法ですので「かぶれる」可能性があります。ご注意ください。
※ 万が一、漆が肌に付いた場合はすぐに「油(サラダ油など)」でよく洗って下さい。
油?? そうです。「油」をつけ、ゴシゴシ漆を洗い落としてください。その後、その油を石けんや中性洗剤で洗い流してください。
今回は金継ぎ工程の内の〈素地固め〉までのやり方を解説していきます。
私、初めてなんですけど、どんな道具とか材料を買えばいいんですか?どこで買えるんですか?? ↓ こちらのページを参考にしてください◎ |
作業を始めるにあたって、まずは装備を…
金継ぎでは本漆を使うので「ディフェンシブ」に行きましょう。ゴム手袋は必需品です◎ 漆をなめちゃいけない◎
器 information
information
- 器の国籍: 不明(多分、東南アジアのどこかの国)
- 器の特徴: 茶色のややマットめの釉薬
- 器のサイズ: 直径 120㎜、高さ 55㎜
- 破損状態: 欠け2ヵ所 (縦 8㎜×横 13㎜ 、 縦 11㎜×横 20㎜)
- 仕上げ希望:
いきなり作業を始める前に、まずは
- 傷の確認(細かいところまで)
- 修理計画を立てる
です。
1. 傷の確認
修理する器の傷の具合を入念にチェックします。意外と自分で気が付いている以外の傷が入っていたりします。「ちいさな欠け」や「薄っすらと入ったひび」は特に見落としがちです。
いろいろな角度から器に光を当てて、チェック、チェックです◎
2. 修理計画を立てる
傷の具合を見て、例えば欠けが大きかったら「刻苧漆こくそうるし(パテ)→錆漆さびうるし(ペースト)」となりますし、欠けが小さかったらいきなり錆でオッケーです。
また、器の釉薬の具合を見て、「ツルツルのガラス質」ならば「マスキングで汚れ防止」をする必要は基本的にはありません(絶対に汚したくない人はもちろんやってください◎)。「ガサガサのマットな表情」だったら、マスキングをした方がいいと思います。
…などなど、作業に入る前にある程度の「計画」や「完成イメージ」を作っておきます。けど、それほど厳密にやる必要はないと思います。経験を積んでいくうちにこのあたりの計画は立てやすくなってきますし、完成イメージに関しては作業を進めていくうちに「変更」「修正」を加えていく方が実はいいと思います◎
なんだか重厚感がありますね。日本とはちょっと違う意匠です。
タイ、カンボジア、ラオス…的な香りがしますね~(←当てずっぽ)
欠けた箇所は2か所。
このくらいの感じでしたら直し易い部類に入ると思います。初めての方でもいけると思います。
こちらの欠けは「刻苧漆こくそうるし(パテ)」で埋めましょう◎
もう一か所の欠けです。
こちらは傷が浅いので錆漆さびうるし(ペースト)でいきます。
01〉 素地固め
道具: ③小筆 ⑤練りべら(大き目のヘラ) ▸作り方 ⑥作業板(ガラス板) ▸作り方
材料: ①テレピン ②ティッシュ ④生漆 ⑦サラダ油
▸ 道具・材料の値段/販売店
※ この作業で使う「小筆」は安価な筆にしてください。陶器の断面に擦り付けるので、毛先が痛みやすいのです。蒔絵筆だとモッタイナイです。
まずは筆をテレピンで洗って筆の中の油を洗い出します。
▸ 詳しい筆の洗い方
【 作業前の筆の洗い方 】 使うときにはまず筆の中の油を取り除きます。
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浸み込みやすくするために生漆をテレピンを混ぜて希釈してください。作業板の上でヘラを使ってよく混ぜ合わせます。
【 生漆の希釈 】 【体積比/目分量】… 生漆 10:3 テレピン ※おおよそ ※ テレピンの代わりにアルコール、灯油でもオッケーです◎ |
いざ、実践!
筆にあまりじゃぶじゃぶ漆を含ませすぎると周りにはみ出しやすくなりますので、気を付けてください。
欠けた箇所に漆を浸み込ませていきます。
漆を塗り終わったら、吸い込まなかった余分な漆はティッシュで拭き取ります。
拭き取るといってもティッシュを「押さえる」ようにして拭き取ってください。
↑ こんな感じで「ポンっ」と置く感じです。
この時、ティッシュを左右に動かしてしまうと作業箇所の周りに漆がついてしまいます。よ◎
といってもちょっとくらいついても全く大丈夫です◎
あまり神経質になり過ぎないように作業してください。
余分な漆がティッシュに吸い取られました。
この「押さえ」作業を数回繰り返します。3,4回もやれば大丈夫です。
この作業も「完全に拭き取ってやる!」って躍起になってやる必要はありません。
もう一か所の欠けも同様の作業をやります。
希釈した漆を塗布します。
鳩、調子に乗っています。
漆の塗布作業が終わったらティッシュで押さえます。
ティッシュは5~6回、折り畳んだものを使います。
パフッと押さえて…
漆を吸い取ります。
この作業を3~4回繰り返します。その際、毎回、ティッシュの吸い取る面を変えてください。漆のついていない、新しい折り面を広げてその面で押さえます。
拭き取り作業が終わったら湿度の高い場所(65%~)に置いて漆を硬化させます。そう、漆は空気中の水分を取り込んで硬化するのです。不思議な樹液ですね◎
湿度が高い場所…って、お風呂場にでも置けばいいんですか??
風呂場…でもいいのですが、風呂場って湿度が100%近くにまでなるので、漆を乾かすにはちょっと「どぎつい」環境だと思います。
(漆は急激に硬化すると「やけ」「縮み」といった厄介な現象が起こりやすくなります)
もうちょっとソフトな環境を用意してあげましょう◎
↑ こんな感じでいかがでしょうか?
え!段ボール…。こんなんでもいいんですか??
はい、大丈夫です◎「段ボールなんてダサくて嫌!」という方は↓のページを参考にバージョン・アップさせていってください。
湿度のある場所(65%~)に6時間くらい置いて漆を硬化させてください。
理想的には「漆の乾きかけ」のタイミングで次の接着作業に入れたらステキです。けど、そのタイミングで次の作業に入るのが難しいようでしたら、なるべく1,2日後くらいに次の作業に取り掛かるようにしてください。
とはいえ、↑これは「厳密に言うと」ということですので、1~2週間空いてしまっても「ヤバイ!」ってことにはなりませんのでご安心ください◎
塗り終わったら油で筆を洗います。
▸ 詳しい筆の洗い方
※ 油で洗わないと筆の中に残った漆が硬化するので次第に筆がゴワゴワしてきてしまいます。
- 筆に油を含ませる
- 作業板の上で優しく捻ったり、クネクネ(?)させたりする
(こんな表現でいいんでしょうか?) - ティッシュの上で、ヘラを使って優しくしごく
- 筆の中の漆分がほとんどなくなるまで、<1~3>の作業を繰り返しす
- 綺麗な油を筆に軽く含ませてキャップを被せる
筆は付属のキャップを嵌めて保存します。キャップが無かったらサランラップを丁寧に巻いてください。
キャップがない、もしくはキャップを作りたいという方はこちらを参考にしてください。
▸ 筆のキャップの作り方
【作業板のお掃除】
全ての作業が終わったら作業板を掃除します。テレピン、エタノールなどを垂らして、ウエス、ティッシュできれいに拭き取ってください。
厳密に言うと、作業板の上には「ごくごく薄っすら」と漆の成分が残っています。
ですので、この作業が終わるまではしっかりとゴム手袋をして、ゴム手袋を外したあとは作業板も含めて漆の道具類を触らないようにした方がいいです。
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