※ 3ピースに割れたティーカップの金継ぎ修理のやり方を説明していきます。本物の漆を使った修理方法ですので「かぶれる」可能性があります。ご注意ください。
今回は金継ぎの工程のうち、〈漆の下塗り研ぎ~蒔絵・完成まで〉のやり方を解説していきます。
STEP 07 漆の下塗り研ぎ
エポキシペースト研ぎで使う道具と材料
- 道具: ③ 豆皿(水入れ用) ④ ウエス ⑤ はさみ(ペーパー切り専用にしたもの)
- 材料: ① 耐水ペーパー(今回は#1000) ② 水
前回塗った漆を研いでいきます。
まずは耐水ペーパーの準備をします。
耐水ペーパーを三つに折って、それに少しだけ水をつけて研いでいきます。
基本的には小さく畳んだペーパーをつまんで研ぎます。
修理箇所以外はなるべく研いで傷つけないようにします。が、どうしたって研いでしまいます。
「なるべく」です。
「なるべく」漆を塗ったところの全部をペーパーで研いで、凹凸を消し、滑らかな面を作ります。
ティーカップの取っ手の付け根ですが、すごく研ぎづらいです。
ここは畳んだペーパーを置いて、爪先で押しながら研ぎます。
漆を研ぎ終わりました。
画像だと「研ぎ前」と「研ぎ後」の差がよくわかりません。
よく見ると研いだところは少し「白っぽく」なっていますし、研いでいないところは「ぴかぴか」しています。
Step 08 漆の上塗り
- 道具: ② ティッシュペーパー ③ 付け箆 (▸ 付け箆の作り方) ④ 小筆 ⑦ 作業板(クリアファイルなど)
- 材料: ① サラダ油 ⑤ 精製漆(今回は呂色漆) ⑥ テレピン
まずは使う前に筆をテレピンで洗って油を洗い出します。 ▸ 詳しい筆の洗い方
毎回、作業が終わったときに筆を”油”で洗います。 ですので使うときにはまず筆の中の油を取り除きます。
- 作業板の上に数滴テレピンを垂らす。
- その上で筆を捻ったりしてテレピンをよく含ませる。
- ティッシュペーパーの上でヘラで筆を優しくしごく。
筆の準備が済んだら、今度は漆の用意をします。
- 漆のチューブの蓋を開ける。
- 作業板の上に少量の漆を出す。
- 筆に漆を馴染ませる。
- 作業板の上に何本か線を引き、漆の量を調節しつつ、含み具合をチェックする。
漆の中にゴミがたくさん入っている場合などは濾し紙で漆を濾してきれいにします。必要な方はこちらをご覧ください。
▸ 基本的な漆の扱い方・濾し方
筆と漆の準備が済んだらいよいよ塗りに入ります。
漆を塗っていきます。
なるべく薄く均一に塗っていきます。
筆は…やはり蒔絵筆を使うと塗りやすいです。筆先はしっかりとまとまりますし(安い筆は筆先が割れます)、何よりも適度な弾力性があるので描くのが楽です(柔らかいのだけど、「腰」があります。安い筆は「腰」がないか、あるいは「硬い」ことが多いです)。
一本の線の両方の「キワ」に塗り残しが生じやすいので、集中して描いていってください。
カップの口回りも塗りづらいですが、慎重に塗り残りの無いように作業をしていってください。
塗り終わりましたら、上塗りした箇所が他に触れないように割り箸などの上に置いて器を宙に浮かしてください。
漆が「乾き始める」まで湿した場所に置いておきます。(40~60分くらいでしょうか?)
塗り終わったら油で筆を洗います。 ▸ 詳しい筆の洗い方
筆は付属のキャップを嵌めて保存します。キャップが無かったらサランラップを丁寧に巻いてください。
キャップがない、もしくはキャップを作りたいという方向けに ▸ 筆のキャップの作り方 ページを作りましたので、ご覧ください。
Step 09 蒔絵
- 道具: ① あしらい毛棒(柔らかい毛質の筆) ③ 重石
- 材料: ④ 蒔絵紛(今回は真鍮粉を使用)
乾き始めた漆の上に蒔絵粉を蒔いていきます。
柔らかい毛質の筆を使います。筆の穂先で蒔絵粉を掬います(穂先に絡ませる感じでしょうか)。
それを漆を塗った個所の隣に置きます。
筆で優しく掃いて、漆の上に乗せていきます。ソフトタッチです。
蒔絵粉が足りなくなったら、包み紙の方から補充して、作業を続けます。
上塗りした漆の上に蒔絵粉を蒔き終ったら作業終了です。
やっと、完成です。
蒔絵をした箇所が他に触れないようにします。割り箸などを利用して宙に浮かしてください。
再び湿した所に器を置いて漆をしっかりと硬化させます。4~5日くらいしっかりと乾かしてあげてください。
ティーカップの本漆金継ぎ修理が完成
蒔絵はティーカップの外側だけに行いました。
内側は上塗りに「青色」の漆を使ってみました。が、ほとんど「黒」っぽく見えますね。
やっぱり内側も「金色」にしようか悩み中です。
前の作業を見る ▸ ②漆の下塗りまで