※ 口元が欠けたお碗の金継ぎ修理の方法を説明していきます。本物の漆を使った修理方法ですので「かぶれる」可能性があります。ご注意ください。
今回は金継ぎの工程のうち、〈錆漆の削り・研ぎ~蒔絵完成まで〉のやり方を解説していきます。
金継ぎの手順 05 錆漆の削り・研ぎの方法
金継ぎの錆削り・研ぎで使う道具と材料(▸ 漆の塗りで使う道具・材料の入手先・値段)
- 道具: ①~④彫刻刀(もしくはカッターなど)、⑨はさみ、⑥豆皿
- 材料: ⑧耐水ペーパー(400番)、⑤水、⑦ウエス
まずはマスキングテープを剥がします。
しっかりと錆漆が乾いています。
錆漆が乾いているかどうかのチェックは爪で軽く引っ掻いてみます。(爪でやるのが怖かったら刻苧箆やシャープペンの先などのとんがっているもので引っ掻いてみます)
それで「白く」跡が付いたら乾いているということです。
いちおう、気を付けてソロソロと剥がします。
マスキングテープの厚み分、錆漆が厚くついています。
彫刻刀で削っていきます。
彫刻刀の刃裏を器に当てながら削るのが綺麗に削る”コツ”です。
錆漆は少しずつ削っていきます。刃裏の半分くらいを器に当てます。
錆漆を削りつつ、上下左右、斜め、いろいろな角度から錆漆のラインをチェックします。
削り足りない部分を見つけつつ、削りすぎないように少しずつ削ります。
錆漆の削りが完了しました。
万が一、削りすぎたら「錆漆付け」に戻ります。残念なのですが戻ります。
どうでしょう?器のラインと錆のラインが綺麗に繋がりました。
刃物での金継ぎの錆漆削り作業が終わったら、耐水ペーパーで軽く研ぎます。
私は耐水ペーパーを1㎝×1㎝くらいの小ささにはさみで切り、それを三つ折りにして使っています。豆皿に出した水を少しだけつけて錆漆を研いでいきます。
今回は何となく乾燥させた木賊を使います。(皆さんはペーパーで研いでください)
- 道具: 豆皿
- 材料: 木賊(とくさ)、水
木賊も使いやすいのであります。
なるべく錆漆の部分だけを研ぎます。とはいえ、錆漆の周りを研ぐときには器も研いでしまいますが。まぁ、しょうがないですよね。
今回は画像のようなガサガサした白いマットな釉薬なので特に気を付けます。
少し水を付けながら研ぎます。このときも研ぎ過ぎ注意です。器の周りとのラインのつながりを見ながら研ぎます。
研いでいると「研ぎ汁」が出てきますので、ちょくちょくそれをウエスで拭き取つつ作業を進めます。
錆漆の研ぎが完了です。
金継ぎの手順 06 漆の下塗りの方法
金継ぎの下塗りで使う道具と材料(▸ 漆の塗りで使う道具・材料の入手先・値段)
- 道具: ④小筆、③付け箆 ( ▸ 付け箆の作り方 )、⑦作業板(クリアファイル)
- 材料: ⑤漆(今回は呂色漆)、⑥テレピン、①サラダ油、②ティッシュペーパー
まずは使う前に筆をテレピンで洗って油を洗い出します。
▸ 詳しい筆の洗い方
研いだ錆漆面に漆を塗っていきます。
漆は厚くならないように気を付けます。器とのキワまでしっかり塗っていきます。
全体に漆が塗れたら、その後、漆がなるべく均一な厚みになるように筆を通します。
塗り面の端から端まで、上下左右と筆を通します。
漆が塗り終わったら湿した場所(湿度65%~)に置いて漆を硬化させます。
2~3日待ちます。
塗り終わったら油で筆を洗います。 ▸ 詳しい筆の洗い方
洗い終わったら筆にキャップをつけて保管します。
キャップがなかったらサランラップで優しく包んでください。
金継ぎの手順 07 漆の下塗り研ぎの方法
金継ぎの下塗り研ぎで使う道具と材料(▸ 使う道具・材料の入手先・値段)
- 道具: ⑤はさみ、③豆皿、④ウエス
- 材料: ①耐水ペーパー(1000番)、②水
前回塗った漆が乾いたら研ぎに入ります。
ぴかぴかと漆が乾いております。
上塗り前なのでペーパーの番手を細かくします。1000番くらいで研ぎます。
水をつけつつ、ペーパーを細かく動かして漆を研ぎます。
まぁ、こんなもので。
研ぐと漆の面がマットになります。
金継ぎの手順 08 漆の上塗りの方法
金継ぎの上塗りで使う道具と材料(▸ 漆の塗りで使う道具・材料の入手先・値段)
- 道具: ④小筆、③付け箆 ( ▸ 付け箆の作り方 )、⑦作業板(クリアファイル)
- 材料: ⑤漆(今回は弁柄漆)、⑥テレピン、①サラダ油、②ティッシュペーパー
まずは使う前に筆をテレピンで洗って油を洗い出します。
▸ 詳しい筆の洗い方
上塗りではなるべく漆を薄く塗っていきます。
全体に漆が置けたら最後に筆を通します。
↑の図のように「左から右へ」と端から端まで筆を通し、それを少しずつ下にずらしながら繰り返します。「左から右」が終わったら、今度は「右から左へ」。その次は「上から下へ」…というように四方から筆を通すことでなるべく漆の塗り厚を均一にします。
塗り終わったら油で筆を洗います。 ▸ 詳しい筆の洗い方
湿度の高い場所(60%~)に置いて少し乾かします。(30分~くらいでしょうか。乾き始めるまで待ちます)
今回使った私の手持ちの漆は「遅く乾く漆」でしたので、湿し風呂に3時間くらい入れておきました。
輪島で修行された蒔絵職人さんに教わった時には「湿した場所に入れない方がいい(つうか、入れちゃダメ)」ということでした。「常温、常湿で乾きを待つ」とのことです。何時間でも。
その日の天候によって左右されますが(それもまたいいですよね。肌でごく微細な変化を感じ取れなければならないので、感覚が鋭敏になっていきます。)、今時期ですと私の持っている漆は6時間くらい待ちました。
確かにこの方がいいのかもしれないな…と思い始めました。もうすこしテストしてみます。
金継ぎの手順 09 蒔絵の方法
金継ぎの蒔絵作業で使う道具と材料(▸ 蒔絵で使う道具・材料の入手先・値段)
- 道具: ①毛棒(または柔らかい小筆)、③重石
- 材料: ④真鍮紛
※ 金粉、銀粉を蒔くやり方のご説明はこちらを参考にしてください。
▸ 欠けた上泉秀人さんカップの金継ぎ方法 ④ 蒔絵
「漆が乾き始め」がきたら、蒔絵を行います。
「乾き始め」ってどうやって判断するの?と思いますよね。まずは今、自分が今、使っている漆の特徴を押さえておくのと(通常、何時間くらいで乾きがくるのか)、実際に塗った漆に「息」を吐きかけて乾きのチェックをします。「吐息」です。
吐息をかけて、一瞬「虹色」が塗面に現れたら「乾きがきている」ということです。
吐息をかけて、漆がしばらく白く曇ったままだと「もう遅い」です。蒔絵のタイミングを逃したということですので、しっかりと漆を乾かした後、それを研いでやり直しです。うう…。
よくわからなかったら、乾く前にとっとと蒔いちゃいましょう。
蒔絵をしましょう。
柔らかい毛質の筆を使って(漆屋さんに「あしらい毛棒」という名前で売っています。やはりこれは毛が柔らかくて使いやすいです)、その穂先で真鍮粉を掬い取ります。
漆を塗った脇に真鍮粉を落とします。
その真鍮粉を筆を使って漆の上に掃いて乗せていきます。
蒔絵紛が足りなくなったら、包み紙の方から補充してください。
包み紙の上で作業をすると、落ちた蒔絵紛が回収されますので都合がいいです。
金継ぎの蒔絵作業が完了しました。
この後、湿した場所(湿度65%~)に置いて漆を硬化させます。
5日くらいでしょうか。(いつも書いていることが変わっている気がしますが)
で、しっかりと乾いたら金継ぎ修理完了です。
欠けたお茶碗の金継ぎ修理完成
田代倫章さんの茶碗はカッコイイですね。
前の作業工程を見る ▸ ①錆付けまで