レッツ・キンツギスタ!
2020.4 全面リニューアル済み
artist 岡田直人さんの器
中級者向け
難易度:
使用粉:金の丸粉2号
仕上げ:丁寧・こだわり
今回のシリーズは「完成度の高さ」にこだわって、頑張ってきれいに仕上げます◎
※ 口元が欠けたカップの「伝統的な本当の金継ぎ修理」のやり方を説明していきます。
このページでは金継ぎ工程の内の
〈刻苧漆の削り~捨て塗り(漆塗り1回目)〉
までの方法を解説していきます。
【前回の作業工程を見る】↓
金継ぎ修理を始めるその前に…
本物の漆を使った修理方法ですので「かぶれる」可能性があります。
※ 万が一、漆が肌に付いた場合はすぐに「油(サラダ油など)」でよく洗って下さい。
油?? そうです。「油」をつけ、ゴシゴシ漆を洗い落としてください。その後、その油を石けんや中性洗剤で洗い流してください。
※ もし、かぶれてしまい、それがひどくなるようでしたら、医者に行って処方してもらってください。
【道具・材料と購入先を見る】↓
作業を始めるにあたって、まずは装備を…
金継ぎでは本漆を使うので「ディフェンシブ」に行きましょう。
ゴム手袋は必需品です◎ 漆をなめちゃいけません◎
※ 作業後、油分多めのクリームを手、腕など、肌が露出していたところ(夏場は脚・足にも)に塗っておくと、カブレにくかった…というコメントをいただきました。
(塗り忘れたときは、毎回、痒くなった…そうです)
気になる方はやってみてください◎
注意:
修理箇所に油分をつけてしまうと、その箇所だけ漆が乾かなくなります。(手脂でも乾かなくなります)
ご注意ください!
※ 修理箇所に油分が付いてしまった場合は、エタノールで入念に拭きあげるか、台所用中性洗剤で洗えば大丈夫です◎
それでは本日の作業に入ります。
気合入れろー!
【刻苧漆の削り】
前回、注ぎ口の成形のために盛った刻苧を刃物で削っていきます。
刻苧漆が乾いたか?の確認
刻苧漆が「乾いたのか?乾いていないのか??」が判断つかない時がありますよね。
その時のジャッジですが、↓こんな感じでチェックしてください。
【乾いた】 |
「カリカリ」している。焼けた食パンみたいに |
【乾いていない】 |
「ボヨボヨ」している |
しっかりと乾いている場合、感触が「カリカリ」っとして、爪やニードルのような先が尖ったモノで引っ掻くと引っ掻いた場所が「白く」線が残ります。それから強く押しても「凹む感触」はありません。
※ 表面はしっかりと「カリカリ」しているのに内側は乾いていない…という場合もあります。
刻苧が乾いていない場合は刻苧に「小さな穴」を数カ所あけるか、(非常に残念ですが)刻苧を取り除いて、やり直してください。
刻苧作りが失敗していると何週間経っても刻苧が硬化しないことがあります。そのまま数カ月放置して乾いたとしても、接着力、強度が下がっているような感もあります。
作業効率も考えると、1週間経っても、刻苧が乾かない時は「やり直し」た方がベターです。
もっと詳しく知りたい方はこちらのページを見てください↓
〈使う道具/材料〉
道具:
下記の道具のいずれか、もしくは複数が用意できると作業がしやすくなります。
①〈平丸〉の彫刻刀
②〈平〉の彫刻刀
③〈カーブ刃〉のカッター
④ 普通のカッター(大)
※ その他、本漆金継ぎで使うおススメの道具・材料の一覧(購入先も)を↓こちらのページにまとめました。
▸ 本漆金継ぎで使う道具・材料ページ
★ ベストな組み合わせは「①〈平丸〉の彫刻刀+②〈平〉の彫刻刀」です。
が、彫刻刀は砥石で研ぐ必要があります。←これって普通の人には厳しいですよね?
ということで、ベストではありませんが「落しどころ」として…
★ 初心者さんには「③〈カーブ刃〉のカッター+④ 普通のカッター(大)」をおススメしています。
「障子用のカーブ刃」は替刃式なので、切れ味が落ちたら刃を変えられます◎
「④ 普通のカッター(大)」は100均のものでオッケーです。
障子用丸刃カッターはホームセンターの「障子貼りコーナー」にありました。刃先がRなので(丸味が付いている)、器の曲面部分、特に「器の内側」部分の削りにもある程度ですが、対応できます。
▪▪▪
想像してみると容易にご理解いただけると思いますが、「凹んでいる箇所に充填した素材」を削るのに、「平らな刃物」では削ることができません。
↑の画像を見てもらうと分かるように、「刃のエッジ」が器に当たってしまって、素材を綺麗な曲線に削ることができないのです。
この図像は分かりやすいように彫刻刀のイラストを使っていますが、カッターの刃でも同じです。
「直刃のカッター」では「内側に湾曲した箇所」を削ることはできません。
【カーブした刃の場合】
▪▪▪
「刃先がカーブした刃物」の場合、「刃のエッジ」が当たらないので、素材を綺麗な曲線に削ることができます。
カッターナイフの場合も「刃先がカーブした」ものの方が、凹んだ部分は綺麗に削れます。
刻苧漆こくそうるし(パテ)が乾いたら、それを刃物で削っていきます。
▪実作業▪
それではカリカリ乾いている刻苧漆こくそうるし(パテ)を削っていきます。
あまり上手に刻苧漆で成形できませんでした(涙)
注ぎ口がですねー、想像以上に難しかったのです。
すんなり形が作れるかと思っていたのですが、読みが甘かったです。
まだまだこれから「形」を詰めいていきます。
「刻苧の削り」とこの後の「錆漆付け」「錆削り」…と作業を進めていく中で少しずつ形を詰めていきます。
最後の「漆塗りを研いだ時」にきれいなラインが出ていればいいのです。
ということは…
・刻苧での成形時点→80%
・刻苧削り時点→85%
・錆付け時点→90%
・錆削り時点→93%
・錆研ぎ時点→97%
・漆塗り/研ぎ時点→99%
こんな感じのイメージで作業工程を進めていきます。
はい。そういうことです。
少しずつ削っていきます。
360度、いろいろな角度から見て「どこのラインがおかしいのか?」をチェックしながら進めていきます。
削りすぎるとまた刻苧漆を付ける羽目になりますので(涙) 気を付けてちょっとずつ削っていってください。
削りのコツ
▪▪▪
刃の「半分くらい」を器に当てて、器の面を基準面のガイドとして利用します。
さらに注意点としては削る時の「刃の角度」です。
削るときの「刃の角度」として…
1.始めは①のように「角度を少し大きめ」につけます。(「刻苧/錆漆側の刃」を少し浮かし気味にする)
2.ちょっとずつ削りつつ、ちょっとずつ刃の角度を〈②→③→④〉と、器のラインと平行にしていきます。こうすると失敗が少なくなります。(たまに失敗しますが)
何で「角度」を付けるの??かと言いますと…
刻苧/錆漆を彫るときは、削り過ぎて凹まないように注意したいわけです。
Aコース
いきなり、刃を器のラインと平行にして削ると「食い込んで」削り過ぎる可能性が高まります。
器の面は基本的に「湾曲」しているので、その「丸味」を意識して削っていかなくてはいけません。何となく削っているといつの間にか食い込んでいて、「削り過ぎた!…(涙)」となることが多いのです。
(特に初心者さんは失敗しがちです)
Bコース
なので、その対処法としては「刃を斜めに当てる」です。
刃の「器側」の部分は器の素地に当てます。
一方、「刻苧/錆漆側」は少し斜めに「浮かす」ようにします。
この「浮かし」によって、「彫り過ぎ(涙)」を防止します。ちょっとずつ、ちょっとずつ斜めに彫っていくわけです。
↑平丸で削っていったのですが…注ぎ口の内側はちょっと無理でした。
ですので…
今回はピンポイントで彫刻刀の「丸刀」も使いました。(あ!ズルい!!)
注ぎ口の外側は再び「平丸」で削りました。
「削り後」の写真を撮り忘れてました。おかしい…。撮ったと思ったんだけど。PC内のどこかにあるかもしれません。
削り終わったら削りカスをウエスで拭き取ります。
【マスキング】
※ 今回、修理しているような「ツルツル・ピカピカ」している器の場合には「マスキング」する必要はありませんが、場合によっては必要となりますので、記載しておきます。
錆漆を充填する際、「器の表面」によってはそれらが汚れとしてこびりついてしまうことがあります。
作業する箇所以外が汚れないようにあらかじめマスキング材で覆っておきます。
マスキングについてもっと詳しい解説を見たい方はこちらのページをご覧ください↓
マスキングした方がいい器とは?
● マスキングした方がいい器
・修理する器の表面(釉薬)が「ザラザラ、マットな質」のもの
・焼き締めの器
・器の表面に「小さな凹凸」がある器
・器の表面に「小さなクレーターやピンホール」がある器
・器の表面を見ても、「ツルツルしているような、でもマットなような…」と判断がつかない場合はケースバイケース
・高台の裏など釉薬がかかっていない部分↑があれば、そこだけピンポイントでマスキングを行います。
※ 高台の裏は釉薬が掛かっていない場合が多いので、注意してください!
● マスキングしなくてもいい器
・修理する器の表面(釉薬)が「ツルツル、ぴかぴかのガラス質」のものでしたら、汚れがついても簡単に落とせます。ですので基本的にはマスキングは行いません。
・小さな凸凹、クレーター/ピンホールがない器
〈使う材料〉
マスキングで使う素材としては
・マスキング「テープ」
・マスキング「液」
の2種類があります。
使い分け方(金継ぎ図書館的な)
▪「テープ」を使用するのは…
・単純な形状にマスキングをする場合
・多少、複雑な形状でも、マスキングをする範囲が狭い場合
▪「液」を使用するのは…
・複雑な形状にマスキングをする場合
● マスキング「テープ」の使い方
① 棒(ヘラなど)
③ マスキングテープ(15~20㎜幅前後)
▪ 動画を見れば一目瞭然です◎ まずはこちらをご覧になってください↓
0:40~3:00まで再生
千切ったテープを修理箇所に沿って、貼っていきます。
その際、ヘラなどの棒を使うと作業がしやすくなります。
㊨:テープが修理箇所に「掛かって」しまったら、テープを棒で引っ張って微調整してください。
意外と融通が利きます◎
テープの貼り方ですが、「修理箇所から1~2㎜前後の隙間を開けた方がいい」と思います。
▪もう少し詳しい解説を見たい方はこちらのページをご覧ください↓
● マスキング「液」の使い方
①④ マスキング液
② 水筆+水+中性洗剤
▪ 動画を見れば一目瞭然です◎ まずはこちらをご覧になってください↓
3:00~7:08まで再生
㊧:筆先で少量のマスキング液を掬います。
マスキング液はどんどん固化していくので、容器の蓋は閉めます。
㊨:修理箇所に触れないように、その周りに塗っていきます。
薄く延ばしながら塗っていきます。
マスキング液がどんどん固化していくので、手早く塗っていきます。
マスキング液が足りなくなったら、その都度、液の入った瓶から少量出して使います。
マスキング液は乾くと「透明」になります。
「質感」としてはゴムっぽい感じです。
擦ると簡単に剥がれてしまいますので、気を付けてください。
▪もう少し詳しい解説を見たい方はこちらのページをご覧ください↓
【錆漆を付ける】
次に刻苧の表面に錆漆を付けていきます。
錆を付けることで
・形の精度を上げていく
・肌のキメを細かくする
〈使う道具/材料〉
道具:
③ 作業盤(ガラスなど)
‣仕立てページ ‣仕立て動画
④ 付けベラ ‣作り方ページ ‣作り方の動画
⑤ 練りベラ ‣作り方ページ ‣作り方の動画
〇 計量スプーン 1/4 (0.25㏄)
※ その他、本漆金継ぎで使うおススメの道具・材料の一覧(購入先も)を↓こちらのページにまとめました。
▸ 本漆金継ぎで使う道具・材料ページ
これらの材料を使って「ペースト状のもの=錆漆さびうるし」を作ります。
錆漆の作り方
作業手順
1.砥の粉を細かく潰す
2.水を少しずつ砥の粉に足しながら、よく練る
3.生漆を少しずつ「水練り砥の粉」に足しながら、よく練る
それでは「錆漆」を作っていきます。
錆漆は…
錆漆=砥の粉+生漆
で出来ています。
配合比は…
【目分量の体積比】
砥の粉 10:7~8 生漆
※ 【体積比】です。お間違いなく。
※ 錆漆の「作り置き」はおススメしません。「使うときに作る」が原則です。
作ってから2~3日くらは乾きますが、どんどん乾きが悪くなっていきます。
とはいえ、「明日も他の器を直すので」という方は、残った錆漆さびうるし(ペースト)を保存してください◎
▸余った錆漆・麦漆・漆の保存方法
1.砥の粉を擦切り1杯
2.生漆を7~8分目
3.作業盤の上で砥の粉を細かく潰す
4.脇に水を少量出す
5.潰した砥の粉に少量ずつ水を加えながら、ヘラでよく練る
6.砥の粉が「まとまる」くらいまで水を加えつつ、練る
7.生漆を少量ずつ加えながら、ヘラでよく練る
8.生漆を全部加えたら出来上がり◎
※ 生漆が多すぎるといつまで経っても乾かない錆漆になってしまいますので、配合比には気を付けてください。
さらに詳しい「錆漆の作り方」を見たい方はこちらをご覧ください↓
ヘラで錆を掬うテクニック
作業に入る前に<ヘラテク>をご紹介します↓
【錆スクイ・テク】
▪▪▪
- 作業板の上で錆漆を薄く均一に広げる。
- ヘラを少し寝かしつつ、横から滑り込ませる。
- 右側から左側へ通す。
- そうするとヘラの先っちょだけに錆漆がつきます。
慣れてくるとテンポよく作業ができて、それだけで気持ちがよくなります。
<同一動作の反復>というのは集中していくととても心地いいものです。
▪実作業▪
それでは器の欠けた凹みに錆漆を充填していきます。
注ぎ口の錆付けの写真を撮ろうと思っていたのですが、写真を撮る余裕がありませんでした。(ムズカシイ!)
が、最近、他のピッチャーの修理「動画」を撮りました。
ピッチャーの「注ぎ口」に錆を付けるときの参考に↓
(6:06~8:28まで再生)
チェックしてみてください。
初心者の方にはこういった3次曲面に錆付けする場合、「小さめの平筆」の方がやりやすいかもしれません。
そう、実は「筆」でも付けられるのです!(初耳でしたか?)
こちらのページ↓の中間部に「平筆で錆漆を付ける」やり方が簡単に載っています。
「おー!筆の方が簡単そう!しかも綺麗にいきそう!!」に見えるかもしれませんが、正直、「どっちもどっち」な感じがします。
けど、今回のようなヘラ付けがかなり難しい場合は「筆付け」もアリだと思います。
ただし、使用後に筆を洗うのが面倒ですよ~◎
それでは、錆付けの続きをやっていきましょう。
ヘラの先っちょに錆漆を取り、それを欠けた箇所に付けていきます。
箆を欠けのエッジに擦りつけるようにして、箆に付いている錆漆を「切り」ます。
欠けた箇所に置いた錆漆を「潰す」ような感じで、箆を右から左に通します。
こんどは反対側に箆を通します。
できれば「上下左右」と箆を通します。
欠けた箇所の生地に錆漆を密着させて、わずかな隙間もないようにします。
口周りのラインを見ながら、それにきれいに繋がるように錆漆を整えます。微妙な力加減が必要ですので、あまり慣れていない方は「そこそこ」で辞めて、無理しないようにしてください◎
乾いてから削れば大丈夫です◎
小さく欠けた個所に錆を付ける時の参考に↓
(5:00~6:17まで再生)
刻苧を充填した箇所にも、その上から錆漆を付けていきます。
「どーして刻苧の上から錆漆をつけなくちゃけないんでかー??」「刻苧の上に漆を塗っちゃいけないんですかー???」
そですね。「錆漆」は面倒だな~って方は、別に漆を塗っても構わないと思います。けど、「塗り」ってのは結構、下地の形や「テクスチャー(質感)」をビビットに拾ってしまいます。
漆を塗る前の下地が「ガサガサ」していたら、塗った後の塗膜の表情も「それなり」の感じになりやすいです。
「特にこだわらない」人や、「今回はテクスチャーを拾いたい」って人は、錆漆抜きでもオッケーだと思います。一度、実際にやってみるのもいいと思います。「お~、こんな表情になるのね」って分かります◎
欠けた箇所のエッジでに沿わせるように(擦りつけるように)ヘラを通して錆漆を切ります。(錆漆を「置く」ということです)
箆の「面」で錆漆を潰すようにしながら、箆を通します。上から下へ。(この画像の角度は見ずらいですね~)
刻苧漆の「ザラザラ」した隙間に錆漆を擦り込みつつ、刻苧の上に錆漆の「層」を作ります。錆漆でコーティングする感じでしょうか。
今度は反対方向に箆を通します。
しっかりと「わずかな隙間」も潰していきます。
こちら側もしっかりと錆漆でコーティングしていきます。
反対方向にも通します。
どでしょ?
ちょっとヘタですね(苦笑)。 いや、口周りは難しいかったです。
あとは錆漆が乾いた後、「削り」と「研ぎ」で修正していきますので大丈夫です◎
こんな感じです。
【 お掃除、お掃除 】
全ての作業が終わったら作業板を掃除します。
テレピン(又はエタノール、灯油など)を垂らして、ウエスやティッシュできれいに拭き取ってください。
caution !
厳密に言うと、掃除をし終わった後の作業板の上には「ごくごく薄っすら」と漆の成分が残っています。
ですので、この作業が終わるまではしっかりとゴム手袋をして、ゴム手袋を外したあとは作業板を含めて漆の道具類を触らないようにした方がいいです。
錆漆を乾かす
錆漆の乾きに1~2日間待ちます。
錆漆が乾くまで1~2日待機してください。
(調子のいい生漆を使うと4~5時間後に次の作業ができますが、一応大事を取って「待って」ください)
錆漆さびうるし(ペースト)はそれ自体に「水分」が入っているので、とくに湿度のある「漆風呂」に入れなくてもしっかりと硬化してくれます。
ですが、
・「古い生漆」
・「乾きの悪い生漆」
・「調合してから数日、取り置きしておいた錆」
…を使っていた場合は乾きが悪いかもしれません。その場合は初めから湿し風呂に入れて、湿度を与えてください。
始めに湿度を与えて、漆に「闘魂を注入」することが大切です◎
※ 水を固く絞った布を中に入れて湿度を高くしてください。
もうちょい詳しく見たい方は↓こちらのページをご覧ください。
【錆漆を削る】
錆漆が乾いたら削り作業に入ります。
錆漆が乾いたか?の確認
錆漆は通常1日でしっかりと乾きます。
(条件がいいと5、6時間で削れる硬度になります)
「時間」以外で乾きのチェックをするやり方ですが、こんな感じ↓で判断してください。
【乾いた】 |
「カリカリ」している。焼けた食パンみたいに。 |
【乾いていない】 |
「しっとり」している |
(6:35~7:00まで再生)
しっかりと乾いている場合、「カリカリ」っとして、爪や棒で引っ掻くと引っ掻いた場所が「白く」線が残ります。それから強く押しても「弾力」を感じません。
※ 万が一、錆漆が乾いていない場合は…
・湿度をかなり高めにした場所に置いて1週間程待つ
・錆漆を取り除いて、やり直す
…上記のいずれかを選択してください。
※ 1週間待ってもあまり硬化していなかった場合は、錆漆を除去してやり直す。
※ 2~3日経っても乾かなかった錆漆は乾くのにすごく時間がかかります。
しばらく待っても、乾かない場合もあります。さらには乾いても「強度が極端に低い」場合もあります。
「やり直し」た方が断然、効率的だし、強度的にも安心できます。基本的にはやり直しをおススメします
やり直す場合はこちらのページ↓を参考にしてください。
〈使う道具/材料〉
道具: 下記の道具のいずれか、もしくは複数が用意できると作業がしやすくなります。
①〈平丸〉の彫刻刀
②〈平〉の彫刻刀
③〈カーブ刃〉のカッター
④ 普通のカッター(大)
※ その他、本漆金継ぎで使うおススメの道具・材料の一覧(購入先も)を↓こちらのページにまとめました。
▸ 本漆金継ぎで使う道具・材料ページ
★ ベストな組み合わせは「①〈平丸〉の彫刻刀+②〈平〉の彫刻刀」です。
が、彫刻刀は砥石で研ぐ必要があります。←これって普通の人には厳しいですよね?
ということで、ベストではありませんが「落しどころ」として…
★ 初心者さんには「③〈カーブ刃〉のカッター+④ 普通のカッター(大)」をおススメしています。
▪実作業▪
注ぎ口の錆漆を削る際の参考になりそうな動画です↓
(9:22~11:00まで再生)
それでは作業の方に入ります。
刻苧を削る時と一緒です。
削り過ぎないように気を付けながら、少しずつ削っていきます。
360度すべての角度から修理箇所のラインをチェックしつつ作業を進めていきます。これ、めんどくさがると「悲しい」ラインになりますよ~。
少し削ってはライン・チェックです◎
平丸彫刻刀の端っこ(エッジの方)を使ったりすると、作業がし易い箇所もあります。
口周りのラインを整えていきます。このピッチャーではこの「注ぎ口」のラインが一番、重要です。
なるべく彫刻刀の削りでラインを出してしまいます。
「彫刻刀は苦手だな~」という方は無理せず、そこそこでやめておいて、次のペーパー研ぎで頑張りましょう◎
彫刻刀で削ってきれいなラインが出たら、続いて耐水ペーパーで水研ぎします。
【錆を研ぐ】
〈使う道具/材料〉
道具:
③ ウエス→スポンジの方が使いやすい
④ 要らなくなったハサミ
⑤ 小さな水入れ
〇 水桶(もあった方がベター)
材料:
① 水差し
② 耐水ペーパー(使うペーパーの番手は下で説明します)
→実は駿河炭が断然おススメ
※ その他、本漆金継ぎで使うおススメの道具・材料の一覧(購入先も)を↓こちらのページにまとめました。
▸ 本漆金継ぎで使う道具・材料ページ
※ 「要らなくなったハサミ」は耐水ペーパーを切るのに使います。
ペーパーを切るとハサミが「ばか」になって他のものが切れなくなります。
要らなくなったものか、100均などで買った安いものを使ってください◎
↑漆研ぎ用の「駿河炭」
「研ぎ道具」としては、実は↑この「駿河炭」が最強のアイテムです◎
できれば使ってみていただきたいです!
‣駿河炭が断然おススメな理由
とはいえ、初心者さんにとっては「炭」は少しハードルが高いので、「耐水ペーパー」と使った説明をしていきます。
● 使う耐水ペーパーの番手(荒さ)について
耐水ペーパーっていろいろな番手(荒さ)がありますが、どの状況で何番くらいを使うのが適しているのか??…ちょっとわかりませんよね。
↓このくらいを一応の基準と考えてください。
錆漆は
何番のペーパーで研ぐ?
▪▪▪
● 削り作業できれいに成形できている場合、#320~400程度で研いでください。
● 先ほどの「削り作業」で、あまりきれいに削れていない(まだまだ凸凹している)場合
↓
まずは耐水ペーパーの#240~320くらい(←粗目)を使って研いでください。
粗い方がどんどん研げますので、効率がいいです。
粗いペーパーで「きれいな曲面の形」を作ります。
↓
滑らかな形ができましたら、仕上げに#320~400程度で軽く研いで、
表面の肌のキメを細かく整えてください。
● 耐水ペーパーの使い方
ちょっと面倒ですが、研ぎ面をよりきれいな形に仕上げるためと、修理箇所以外を傷付けないために、ペーパーにひと手間加えます。
耐水ペーパー
の使い方
▪▪▪
耐水ペーパーを小さく切って使います。
切れ味の落ちたハサミで、耐水ペーパーを1×1㎝くらいに小さく切ります。
それを「三つ折り」にします。
(↑ペーパーを三層構造の「硬い」板にして使います)
ペーパーは少量の水をつけながら研ぎ作業をおこないます。
理由は2つです。
1.研ぐ面積を極力少なくするため
2.平面保持強度を高めるため
【1の理由】
「耐水ペーパー」って研磨力がとても強いので、器の釉薬(表面)を傷つけてしまうのです。
研いだ後、修理箇所周辺の釉薬が薄っすらと曇っているのは、あれは「細かい傷」が付いたからなのです。
なので、「なるべく」ですが、周りの釉薬が傷つかないようにペーパーを小さくして使いたいわけです◎
【2の理由】
「三つ折り」するというのは、ペーパーの「平面保持強度」を高くするためです。
なるべく「研ぐ方の道具」の平面を維持したいわけです。
ペーパー1枚で研いでいると「へなへな」してしまいます。紙なので柔らかいですよね。
それを使って研いでいると↓この「Aコース」のような仕上がりになります。
↑ペーパー1枚で研いでいると「Aコース」になるわけです。
紙一枚だと「研ぐ方の道具」が柔らかいので、「研がれる方のもの=錆漆(←硬いもの)」の形に沿ってしまい、その形通りに研いでしまいます。
錆漆の「山の角の部分(エッジ)」は軽くさらうことはできるのですが、「綺麗な曲面に形作る」ことは難しくなります。
一方、「Bコース」のペーパー3枚重ね(三つ折り)だと、「研ぐ方の道具」の「硬さ」が3倍になるわけです。
「研がれる方のもの=錆漆」の形に引っ張られず、研ぎによって錆漆の形を作っていくことが可能になります。
※ ペーパー1枚に比べて…という話です。
平面維持強度をもっと上げて、「きれいにな形を作る」作業がしたかったら
「漆研ぎ用の“駿河炭”」が断然おススメです。
▪実作業▪
水をちょっと付けて、研いでいきます。
なるべく修理箇所のみを研ぐようにします。
陶器をペーパーで研ぐと傷がついてしまうので、なるべく修理箇所以外は研がないようにしたいわけです。
…けど、完璧にこの作業をこなすのは無理ですよね。
少しは周りも研いでしまいます。
「注ぎ口」の錆漆も綺麗に研いできます。
研ぎ終わりました。…ら、ちょっとした凹みや「ピンホール」が見つかりました。
残念ながら凹んでいます(涙)
↑注ぎ口の形も…まだ、あまりきれいじゃありませんね。
これじゃまだよろしくありません。
うーん、もうちょい!
ということで、修正が必要な箇所が何点か見つかりました。その場合は…もう一回「錆漆」です!!
えー、マジ!?ちょーめんどう!って思いましたね。分かります。そのお気持ち。私がその当事者ですし。
いやいや、でも2回目はそんなに面倒じゃないんですよ。凹みやピンホールを埋めればいいだけですし、形の修正も必要な箇所だけに錆漆を盛ればいいので、そんなに大変じゃありません◎
頑張っていきましょう!
【錆漆付け2回目→削り・研ぎ】
上記した作業の繰り返しなので、2回目の「錆漆付け解説」は端折りました。
「2回目錆漆の削り/研ぎ」作業に入ります。
さぁ、削っていきます!
この注ぎ口は修正が必要でしたので結構、錆漆を盛りました。
この注ぎ口、予想以上に手強かったです。
器を逆さまにしたりして、いろいろな角度からラインをチェックしつつ、削っていきます。
削り過ぎに注意しつつ、ちょっとずつ削っていきます。
せっかくここまで綺麗に形を作ってきたのに、うっかり削り過ぎると「振り出しに戻る」ことになりますので、慎重には慎重を重ねて作業します。
ちょっとした凹みとピンホールにも錆漆を盛ったので、そこも削っていきます。
削り終わったら、次に耐水ペーパーで水研ぎします。
#320∼#400くらいのペーパーを使って研いでください。
研ぎ写真はありません(*_*)
【捨て塗り(漆塗り1回目)】
〈使う道具/材料〉
道具:
② ティッシュぺーパー
④ 蒔絵筆またはインターロン筆
⑥ 練りベラ ‣作り方ページ ‣作り方の動画
⑦ 作業盤(ガラス板など)
‣作り方ページ ‣作り方の動画
○ ゲル板 ○ サランラップ
材料:
① アルコール(テレピン、灯油など)
⑤ 精製漆(今回は”呂色漆”…黒い色の漆)
⑧ サラダ油
※ その他、本漆金継ぎで使うおススメの道具・材料の一覧(購入先も)を↓こちらのページにまとめました。
▸ 本漆金継ぎで使う道具・材料ページ
「生漆」しか持っていないのですが、どうしたらいいですか?
はい、それではこちらへどうぞ ↓
↑ この茶色半透明の漆でも「漆塗り」はできるのですが、半透明だと「どこを塗ったのかわかりにくい」のです(涙)漆に色を付けたい方はこちらへ ↓
使用「前」の筆の洗い方
※ 蒔絵筆(高級な筆)の場合は「漆」で洗ってください。毛が痛みづらくなります。
‣ 蒔絵筆の洗い方の動画
まずは筆をテレピン(または灯油)で洗って筆の中の「油」を洗い出します。
▸ 詳しい作業前の筆の洗い方
どうして筆に「油」が付いてるの??…かといいますと、漆作業で使った筆は最後に油で洗っているからなのです。油で洗うと筆の中に残った微量な漆が乾きません。
漆と油とは相性が悪いのですが、それを利用して、保管するときには油で洗います。
逆に、使う時にはその油を除去します。
作業工程
① 畳んだティッシュに筆を包む
② ティッシュをギュッと摘まんで、筆の中の油を吸い取る
③ 作業板の上に数滴テレピンを垂らす
④ その上で筆を捻ったりしてテレピンをよく含ませる
⑤ 筆をティッシュで包む
⑥ ティッシュをぎゅっと押えて、「油+テレピン」を絞り出す
⑦ 「4→5→6」を2~3回繰り返す
① 折り畳んだティッシュに筆を包みます。
② ティッシュの上に筆を置きます。
④ これを3,4回繰り返して、しっかりと油を搾り取ります
⑤ 作業盤の上にテレピンを数滴、垂らします。
⑥ 筆にテレピンを含ませます。
筆は作業盤の上で捻ったりして、しっかりとテレピンと馴染むようにします。
⑦ ティッシュの上に筆を乗せます。
⑧ ティッシュの上からギュッと摘まんで、「油+テレピン」を絞り出します。
この後、「⑥→⑦→⑧」を2~3回、繰り返します。
この作業で筆のなかの油分をしっかりと除去します。
筆の中に油が残っていると漆が乾かないことがありますのでご注意ください。
「エタノール」などの揮発性の強いもので洗うと、テレピンよりも油分がしっかりと除去できますが、その分、筆への負担も大きくなり、傷みやすくなります。
ですので、金継ぎ図書館では筆が傷みにくいテレピン、灯油などをおススメしています。
ちなみに筆が一番、痛まないのは「漆」で洗うことです。
‣ 漆での筆の洗い方動画
特に高価な「蒔絵筆」を洗う際には漆で洗ってください。
筆に漆を付けて、いきなり塗り始めると、初めのうち、テレピンの影響で薄くなる可能性があります。
ですので、「塗り始める」前に一度、筆に漆を含ませて、筆と漆とを馴染ませてください。
漆の準備
筆の準備が済んだら、今度は漆の用意をします。
漆の中にゴミがたくさん入っている場合などは「濾し紙」で漆を濾してきれいにします。
必要な方はこちらをご覧ください↓
▪実作業▪
12:41~15:03まで再生
塗ります。
修理部分の周りに薄っすらと「錆漆」が残っています。
これは漆を塗って、それが乾いた後に「激落ちくん(メラミン・スポンジ)」で磨いて取ります。
塗りの手順
▪▪▪
始めは極細筆↑を使用
㊧ 塗りの手順は「広い面」も「狭い面(線)」も同じです。
1.㊨ まずは「極細筆」で輪郭を塗っていきます。
キワキワまで塗り残しが無いように気を付ける。かつ、なるべくはみ出さない◎
ここからは「小筆」↑を使用
2.「小筆」輪郭の内側を塗り潰します。
とりあえず内側全体に漆を配ってしまいます。
3.㊧ 修理箇所の「短手方向」(例えば左→右)に小筆を細かく通す。
「隙間」が空かないように、「筆を通した跡」に少し被せるようにして次の筆を通す。
※ 下図を参照してください。
線が細過ぎて、「短手方向に」筆が通せない場合は無理せずスルーしてください。
(Ⓑの細い箇所)
4.㊨ 反対方向の短手側に筆を通す。
これら作業の際、「漆の塗り厚」がなるべく均一になるように意識して、筆を通してください。
ちょっと「漆の厚いところから、薄いところに移動させる」ような感覚です。
つまり、漆の表面を「撫でるように」筆を動かすのではなく、もうちょっと筆圧を上げる感じです。
「筆を通した跡」に少し筆を被せて通す…とは↑こうゆうことです◎
(伝わりますか??)
5.同様に「長手方向」にも筆を揃えて通します。
線が細過ぎて、「短手方向に」筆が通せなかった部分でも、「長手方向」になら通せることが多いので、できるだけ筆を通して、漆の厚みを均一にしておきます。
特に最後の「通し」では、「筆跡(筆を通した筋)」を消すような感覚で、撫でるような筆圧で通してください◎
漆は厚く塗ると「縮む」可能性があります。
ですので、基本的には「薄く」「均一」になるように塗っていきます。
「キワ」塗りの手順
▪▪▪
「極細筆」でキワを塗るときの手順です。
※ 修理箇所の部分だけを「塗り残し&はみ出し無く」きれいに塗りたい場合の話です。
漆がはみ出しても気にしない方針でやっている人は読まなくて大丈夫です◎
↑最初からキワキワを攻めて一発で塗れたら、めちゃくちゃオッケーです◎
ですが、「一発」で「はみ出し&塗り残し」なしで塗るのは至難の技ですよね。
一発でキワを塗ろうとすると下図のように↓
所々、はみ出してしまう箇所が出てきやすくなります。
ですので、「はみ出さないで塗りたいな~」という人は、塗りの一発目からキワのぎりぎりを攻めすぎない方がいいと思います。
(特に技術がついてきていないうちは)
まずは上図↑のようにキワの「ぎりぎり内側を塗る」ような感覚を意識します。
キワの「境界線の内側」を強く意識します。
所々、キワに「塗り残し」があってもいいです。
「はみ出す」よりも「塗り残す」方がいいです◎
もちろん、きわきわまでピタッと塗れたら、それが一番いいです。
次にキワの塗り残しを、筆を何度か通して塗り潰していきます。
筆を何度も通しつつ、修理箇所の「内側から外側(「キワ」の境界線)に向かって」、徐々に漆で塗り潰していくようなイメージでキワ塗りの作業をおこないます。
漆がはみ出した時
の掃除
▪▪▪
● 地塗り以外の漆塗りの場合
(漆の捨て塗り/下塗り/中塗りの場合)
・アルコールをほんのり含ませた綿棒でピンポイント掃除
・アルコールを付けたウエス/ティッシュで全面拭き取ってやり直し
・朴の木ベラでピンポイント掃除
(ルーペで見ながら作業するとやりやすい)
「ちぢむ…ってなんですか??どういうことですか?」
はい、厚すぎると”ちぢみ”が生じます。しわしわになります。しかも中が乾きません。一か月くらい待てば乾きますが。
漆のちぢみ
▪▪▪
● 縮みが起こる条件
① 漆の塗り厚が厚過ぎる
② 乾きが早すぎる
・湿し風呂の中をあまりに高温湿度条件にした場合
・濡れタオルが近すぎる場合
こんな感じになります。シワシワになるわけです。
塗膜表面と塗膜の中の方との乾くスピードに「差」があり過ぎるとこうなるのだと思います。多分。
塗りづらい…
場合は、器物をぐるぐる回して、塗りやすいポジションで塗ってください。
はい。鳩も厚くなるとダメと言っています。
塗り終わりました。
漆を乾かす
作業が終わったら湿度の高い場所に置いて漆を硬化させます。
そう、漆は空気中の水分を取り込んで硬化するのです。不思議な樹液ですね◎
【漆が乾く最適条件】
え~!
「高」湿度!の場所??
はい、その通りです◎
漆が乾く上記の条件を作るために「箱」を用意します。
手っ取り早く手に入る「段ボール」を例にご説明します。
① まず下にビニール袋を敷いて、段ボールが濡れるのを防ぎます。
次に濡らして「固く絞った」キッチンペーパー(もしくはウエス)を中に置きます。
② 作業が終わった器を入れます。できればウエスから少し離した場所に置きます。
(上の画像よりも、もう少し離れた場所に置いた方がいいです)
③ 蓋を閉めて、湿度が逃げないようにします。
④ 鳩は入らないようにします◎
漆の乾きがよくないようでしたら、こまめに湿度を与えます。(5時間おきとか)
大体の場合は、初めに湿度を与えてあげればしっかりと乾きます。
※【箱】…段ボール、コンテナ、発泡スチロール…等々、何でも構いません。
要するに湿度が逃げない(逃げにくい)ように「閉じた空間」が作れればオッケーです。
※【布類】…水を含ませておくためのものですので、何でも構いません。
使っているうちにカビが生えたり、匂いがしてきたりするので、「キッチンペーパー」が使い勝手がいいようです。(匂ってきたら捨てられますから)
漆の乾きに1~2日間待ちます。
??何で「湿度の高い」場所に置くの??乾かないんじゃない?…と思われますよね。
実は漆が乾くメカニズムというのが、普通じゃないんです。
…ということなのです。
漆の世界では「硬化」することを「乾く」と呼んでいる…ってことです。
「ラッカーゼ」が元気に働いてくれると、漆が硬化するということでして、、、
【漆が乾く最適条件】
湿度:70~85%
温度:20~30℃
ということになります。
だたし、この条件は「最適条件」ということでして、この条件を上回っていても、下回っていても、乾きます。
しかし、この最適条件から
●「下回るにつれ」と「乾きづらく」なっていき、「大幅に下回る」と「ほぼ乾かなくなる」こともあります。
●「上回るにつれ」と「乾きづらく」なっていき、「大幅に上回る」と「ほぼ乾かなくなる」こともあります。
のでご注意ください。
「段ボールなんてダサくて嫌!」という方は↓のページを参考にバージョン・アップさせていってください。
使用「後」の筆の洗い方
漆を使った筆は作業後、「油」で洗います。
油で洗わなで、アルコールやテレピンで洗うと筆の中に僅かに残った漆が硬化するので、次第に筆がゴワゴワしてきて使い物にならなくなります。
作業工程
① 折り畳んだティッシュで漆の付いた筆を包む。
② ティッシュを摘まんでギュッと漆を絞り出す。(数回おこなって、しっかりと絞り出す)
③ 筆に油を含ませる。
④ 作業盤の上で捻ったりしながら油を馴染ませる。
⑤ 筆の根元からヘラで「油+漆」を「優しく」しごき出す。
(特に毛先はヘラが強く当たらないようにする。強く当てると毛先が劣化してカールしてきたり、まとまらなくなってきます)
⑥ ヘラで廃油を掬い、ティッシュに吸わせる。
⑦ 再び油を含ませる
⑧ 作業盤の上で、ヘラを使って絞り出す
⑨ 廃油の中に漆分が(ある程度)含まれなくなるまで…つまり「透明度」が高くなるまで繰り返す。
⑩ 最後に綺麗な油を筆に含ませ、軽くティッシュに吸い取らせます。
⑪ 洗い終わった筆は付属のキャップをして保管する
使う道具/材料
・サラダ油
・ゲル板
・ティッシュペーパー
・エッジが鋭くないヘラ(筆洗いベラ)
① 折り畳んだティッシュの上に漆の付いた筆を置きます。
② 両側から筆をティッシュで包んで、ぎゅっと摘まみ、漆を絞り出します。
③ これを数回おこなって、しっかりと絞り出します。
この時点でしっかりと漆を絞り出してしまった方が、この後の「油で洗う」時、筆が早く綺麗になります◎
③ 油の入った瓶に筆を入れて、油を含ませます。
④ ゲル板の上で優しく捻ったり、クネクネ(?)させたりして、筆に油を馴染ませます。
(こんな表現でいいんでしょうか?)
⑤ ゲル板の上で筆の根元からヘラで「油+漆」を「優しく」しごき出します。
※ 「優しく」しごかないと筆が痛みやすくなります。特に「毛先」が痛みやすいので、毛先は軽く触る程度にしてください。
※ 根元に漆が残りやすく、それが影響して、筆先が割れてくると思われますので、入念に掻き出します。
⑥ 筆の中の「油+漆」の廃油がしごき出せたら、ヘラで廃油を掬い、、、ティッシュに吸わせます。
こうして廃油をどかしておくと、作業盤の上が常にクリーンな状態で筆の洗い作業ができます◎
この後は「③→④→⑤→⑥」を繰り返します。
廃油の中に漆分が(ある程度)含まれなくなるまで…つまり「透明度」が高くなるまで繰り返します。
⑦ 最後に綺麗な油を筆に含ませ、軽くティッシュに吸い取らせます。
⑧ 付属のキャップを被せて終了です◎
※ キャップが無かったらサランラップを丁寧に巻いてください。キャップがない、もしくはキャップを作りたいという方はこちら↓を参考にしてください。
▸ 筆のキャップの作り方
使用後の筆の洗い方でもっと詳しく知りたい方は↓こちらのページをご覧ください。
▸ 使用後の詳しい筆の洗い方
【 お掃除、お掃除 】
全ての作業が終わったら作業板を掃除します。
テレピン(又はエタノール、灯油など)を垂らして、ウエスやティッシュできれいに拭き取ってください。
caution !
厳密に言うと、掃除をし終わった後の作業板の上には「ごくごく薄っすら」と漆の成分が残っています。
ですので、この作業が終わるまではしっかりとゴム手袋をして、ゴム手袋を外したあとは作業板を含めて漆の道具類を触らないようにした方がいいです。
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