注ぎ口が欠けたピッチャーの金繕い修理 02/ペースト付け

 

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  レッツ・キンツギスタ!

 

※ 口周りが欠けたピッチャーの金繕い修理のやり方を説明していきます。本物の漆を使った修理方法ですのでかぶれる」可能性があります。ご注意ください。

※ 万が一、漆が肌に付いた場合はすぐに「油(サラダ油など)」でよく洗って下さい。
油?? そうです。「油」をつけ、ゴシゴシ漆を洗い落としてください。その後、その油を石けんや中性洗剤で洗い流してください。

今回は金繕い工程の内の〈刻苧漆の削り~錆漆の削り・研ぎ〉までの方法を解説していきます。

 

【前回の作業工程を見る】

岡田直人のピッチャーの金繕い修理▸  Page 01 / 刻苧漆の充填まで

 

 

 

04> 刻苧漆の削り


道具: ①彫刻刀(平丸刀) ②彫刻刀(平刀) ③障子紙用丸刃カッター ④カッターナイフ(大)
▸ 道具と材料の値段/販売店


上記の道具のいずれか、もしくは複数が用意できると作業がやりやすくなります。

 

おススメは 【 ①と②の彫刻刀 】ですが、「研ぐ」ことができないと、使い捨てになってしまいますので、現実的な初心者用の刃物チョイスとしては 【 ③と④のカッター 】を用意してもらえたらと思います。

③ の障子用丸刃カッターはホームセンターの「障子貼りコーナー」にありました。刃先がRなので(丸味が付いている)、器の曲面部分、特に「器の内側」部分の削りにもある程度ですが、対応できます。

 

 

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刻苧漆こくそうるし(パテ)が乾いたら、それを刃物で削っていきます。

 

で、「乾いたのか?それとも乾いていないのか??」のジャッジですが、↓こんな感じでチェックしてください。

【 乾いた 】

「カリカリ」している。焼けた食パンみたいに。
※ 怒っていません◎

・ 棒で押す→ 凹まない、硬い
・ 引っ掻く→ 白い線が残る

【 乾かない 】

「ボヨボヨ」している

・ 棒で押す→ 凹む

・ 引っ掻く→ 何も残らない

 

引っ掻いてみる→引っ掻いた線が白くなる→乾いている ◎

しっかりと乾いている場合、「カリカリ」っとして、爪や棒で引っ掻くと引っ掻いた場所が「白く」線が残ります。それから強く押しても「凹む感触」はありません。

 

※ 表面はしっかりと「カリカリ」しているのに内側は乾いていない…という場合もあります。

万が一、刻苧が乾いていない場合は刻苧に「小さな穴」を数カ所あけるか、
刻苧を取り除いて、やり直してください。

 

詳しくはこちらへ ↓

▸ 刻苧が乾いていない(ような気がする)時の対処方法

 

 

それではカリカリ乾いている刻苧漆こくそうるし(パテ)を削っていきます。

 

 

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あまり上手に刻苧漆で成形できませんでした(涙)

注ぎ口がですねー、想像以上に難しかったのです。すんなり形が作れるかと思っていたのですが、読みが甘かったです。

まだまだ「形」を詰めいていきます。刻苧の削りと錆漆付け・削り…でちょっとずつ形を詰めていきます。

最後、錆漆を研いだ時に「きれいなライン」が出ていればいいのです。はい。そういうことです。

 

 

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少しずつ削っていきます。
360度、いろいろな角度から見て「どこのラインがおかしいのか?」をチェックしながら進めていきます。

削りすぎるとまた刻苧漆を付ける羽目になりますので(涙) 気を付けてちょっとずつ削っていってください。

 

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↑平丸で削っていったのですが…注ぎ口の内側はちょっと無理でした。

 

ですので…

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今回はピンポイントで彫刻刀の「丸刀」も使いました。(あ!ズルい!!)

 

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注ぎ口の外側は再び「平丸」で削りました。

「削り後」の写真を撮り忘れてました。おかしい…。撮ったと思ったんだけど。PC内のどこかにあるかもしれません。

 

 

 

 

05> 錆漆付け


道具 ③作業板 ▸作り方  ④付けベラ ▸作り方  ⑤練りベラ ▸作り方
材料 ①水  ②生漆  ⑥砥の粉

▸ 道具と材料の値段と売っているお店


 

 

錆漆さびうるし(ペースト)を作ります。

 

体積比(目分量)… 砥の粉 10 : 8 生漆  ※ 水は適量

 ▸ 詳しい錆漆の作り方ページ

  1. 砥の粉を潰す
  2. 水を少量ずつ足しつつ、練る。
    チューブ入りの練りからし」くらいの状態になるまで水を加えつつ練る
  3. 次に「漆」を少しずつ足しつつ、練る
  4. 完成

 

※ 錆漆の「作り置き」はおススメしません。「使うときに作る」が原則です。作ってから2~3日くらは乾きますが、どんどん乾きが悪くなっていきます。

とはいえ、「明日も他の器を直すので」という方は、残った錆漆さびうるし(ペースト)を保存してください◎
 ▸ 余った錆漆・麦漆・漆の保存方法

 

【錆漆の作り方動画】

 

 

錆漆さびうるしという細かいペースト状のものを付けていきます。

ん?ってことは刻苧漆こくそうるし(パテ)で凹んでいても大丈夫なんじゃない??

そうです。正解◎でもやっぱり、錆漆の前段階で下地が綺麗にできていた方が、仕上がりも綺麗になりやすいです。

 



 

それでは器の欠けた凹みに錆漆を充填していきます。

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と、その前に<箆テク>をご紹介します。

 

  1. 作業板の上で錆漆を薄く均一に広げる。
  2. ヘラを少し寝かしつつ、横から滑り込ませる。
  3. 右側から左側へ通す。
  4. そうするとヘラの先っちょだけに錆漆がつきます。

 

慣れてくるとテンポよく作業ができて、それだけで気持ちがよくなります。 <同一動作の反復>というのは集中していくととても心地いいものです。

 

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注ぎ口の錆付けの写真を撮ろうと思っていたのですが、写真を撮る余裕がありませんでした。(ムズカシイ!)

で、注ぎ口は飛ばして◎、他の箇所の錆付けでご説明します。

ヘラの先っちょに錆漆を取り、それを欠けた箇所に付けていきます。

 

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箆を欠けのエッジに擦りつけるようにして、箆に付いている錆漆を「切り」ます。

 

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欠けた箇所に置いた錆漆を「潰す」ような感じで、箆を右から左に通します。

 

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 こんどは反対側に箆を通します。

できれば「上下左右」と箆を通します。
欠けた箇所の生地に錆漆を密着させて、わずかな隙間もないようにします。

 

口周りのラインを見ながら、それにきれいに繋がるように錆漆を整えます。微妙な力加減が必要ですので、あまり慣れていない方は「そこそこ」で辞めて、無理しないようにしてください◎
乾いてから削れば大丈夫です◎

 

刻苧を充填した箇所にも、その上から錆漆を付けていきます。

「どーして刻苧の上から錆漆をつけなくちゃけないんでかー??」「刻苧の上に漆を塗っちゃいけないんですかー???」

そですね。「錆漆」は面倒だな~って方は、別に漆を塗っても構わないと思います。けど、「塗り」ってのは結構、下地の形や「テクスチャー(質感)」をビビットに拾ってしまいます。
漆を塗る前の下地が「ガサガサ」していたら、塗った後の塗膜の表情も「それなり」の感じになりやすいです。

「特にこだわらない」人や、「今回はテクスチャーを拾いたい」って人は、錆漆抜きでもオッケーだと思います。一度、実際にやってみるのもいいと思います。「お~、こんな表情になるのね」って分かります◎

 

 欠けた箇所のエッジでに沿わせるように(擦りつけるように)ヘラを通して錆漆を切ります。(錆漆を「置く」ということです)

 

箆の「面」で錆漆を潰すようにしながら、箆を通します。上から下へ。(この画像の角度は見ずらいですね~)

刻苧漆の「ザラザラ」した隙間に錆漆を擦り込みつつ、刻苧の上に錆漆の「層」を作ります。錆漆でコーティングする感じでしょうか。

 

今度は反対方向に箆を通します。

しっかりと「わずかな隙間」も潰していきます。

 

こちら側もしっかりと錆漆でコーティングしていきます。

 

反対方向にも通します。

 

どでしょ?

ちょっとヘタですね(苦笑)。 いや、口周りは難しいかったです。

 

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あとは錆漆が乾いた後、「削り」と「研ぎ」で修正していきますので大丈夫です◎

 

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こんな感じです。

 

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錆漆が乾くまで1~2日待機してください。
(調子のいい生漆を使うと4~5時間後に次の作業ができますが、一応大事を取って「待って」ください)

 

 錆漆さびうるし(ペースト)はそれ自体に「水分」が入っているので、とくに湿度のある「漆風呂」に入れなくてもしっかりと硬化してくれます。

けど、古い生漆や乾きの悪い生漆を使っていたり、数日、取り置きしておいた錆を使った場合は乾きが悪いかもしれません。その場合は漆風呂に入れて、湿度を与えてください。

 

※ 水を固く絞った布を中に入れて湿度を高くしてください。

 

もうちょい詳しく見たい方は↓こちらへ

▸ 段ボール漆風呂の作り方

 

 

 

 

06> 錆漆の削り


道具: ①彫刻刀(平丸刀) ②彫刻刀(平刀) ③障子紙用丸刃カッター ④カッターナイフ(大)
▸ 道具と材料の値段/販売店


上記の道具のいずれか、もしくは複数が用意できると作業がやりやすくなります。

 

おススメは 【 ①と②の彫刻刀 】ですが、「研ぐ」ことができないと、使い捨てになってしまいますので、現実的な初心者用の刃物チョイスとしては 【 ③と④のカッター 】を用意してもらえたらと思います。

③ の障子用丸刃カッターはホームセンターの「障子貼りコーナー」にありました。刃先がRなので(丸味が付いている)、器の曲面部分、特に「器の内側」部分の削りにもある程度ですが、対応できます。

 

 

乾いた錆漆さびうるし(ペースト)を刃物で削っていきます。

乾いたのか乾いてないのか、よくわからないんですが…という方は↓こんな感じでチェックしてください。

【 乾いた 】

「カリカリ」している。焼けた食パンみたいに。
※ 怒っていません◎

・ 棒で押す→ 凹まない、硬い
・ 引っ掻く→ 白い線が残る

【 乾かない 】

「しっとり」している

・ 引っ掻く→ 白い線が残らない
・ 棒で押す→ なんだか「弾力」を感じる
(↑この状態は全然、乾いていません!)

 

 

引っ掻いてみる→引っ掻いた線が白くなる→乾いている ◎

しっかりと乾いている場合、「カリカリ」っとして、爪や棒で引っ掻くと引っ掻いた場所が「白く」線が残ります。それから強く押しても「弾力」を感じません。

 

※ 万が一、錆漆さびうるし(ペースト)が乾いていない場合は…

  • 湿度をかなり高めにした場所に置いて2~3週間待つ
    (2~3日経っても乾かなかった錆漆は乾くのにすごく時間がかかります。
    「やり直し」をおススメします
  • 錆漆を取り除いて、やり直す

上記のいずれかを選択してください。

やり直す場合は…

詳しくはこちらへ ↓

▸ 錆漆が乾いていない(ような気がする)時の対処方法

 

前置きが長くなってしまいました!それでは(やっと)作業の方に入ります。

刻苧の時と一緒です。

 

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削り過ぎないように気を付けながら、少しずつ削っていきます。

 

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360度すべての角度から修理箇所のラインをチェックしつつ作業を進めていきます。これ、めんどくさがると「悲しい」ラインになりますよ~。

少し削ってはライン・チェックです◎

 

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平丸彫刻刀の端っこ(エッジの方)を使ったりすると、作業がし易い箇所もあります。

 

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 口周りのラインを整えていきます。このピッチャーではこの「注ぎ口」のラインが一番、重要です。

 

なるべく彫刻刀の削りでラインを出してしまいます。

「彫刻刀は苦手だな~」という方は無理せず、そこそこでやめておいて、次のペーパー研ぎで頑張りましょう◎

 

彫刻刀で削ってきれいなラインが出たら、続いて耐水ペーパーで水研ぎします。

 

錆を研ぐ


道具  ②紙ヤスリ(耐水ペーパー) ③ウエス(布切れ) ④ハサミ(いらなくなったもの) ⑤豆皿(水受け)
 材料  ①水
▸ 道具と材料の値段/販売店


 

※ ハサミは紙ヤスリを切るのに使います。紙ヤスリを切るとハサミが「ばか」になります。他のものが切れなくなりますので、要らなくなったものか、100均で安いものを買ってきてください◎

※ 彫刻刀であまり削れていない(きれいなラインが出てない)場合は、まずは耐水ペーパーの#240くらい(←粗目)を使って研いでください。それで「形」を作ります。

形ができましたら、仕上げに#600~#800程度で軽く研いで、
表面の肌を整えてください。

 

  1. ペーパーを1㎝×1㎝くらいに切る
  2. 三つ折り(二つ折りでもオッケー)にする
  3. 水をちょっとつける

 

なんでこんなに「小っちゃくして」使うの??しかも「三つ折り」って。
鳩屋さんってかなり神経質な人なの?
(1㎝を三つ折りってことは約3㎜でしょ。やりすぎじゃない?)

理由は2つです。

  1. 研ぐ面積を極力少なくするため
  2. 平面保持強度を高めるため

えーっとですね、「紙ヤスリ」って研磨力が強いんです。
器の釉薬を傷つけてしまうのです。
研いだ後、周りの釉薬が薄っすらと曇っているのは、
あれは「細かい傷」が付いたからなのです。

なので、「なるべく」ですが、周りの釉薬が傷つかないように
ペーパーを小さくして使うわけです◎

それから「三つ折り」っていうのは、
ペーパーの「平面保持強度」を高くするためです。
ペーパー1枚で研いでいると「へなへな」なわけです。紙なので柔らかいですよね。

 

普通にペーパー1枚で研いでいると「Aコース」になるわけです。
紙一枚だと「研ぐ方のもの」が柔らかいので、
錆漆(←硬いもの)の形を拾ってしまう。
「カクカク」していた錆漆の「山の部分(エッジ)」は
軽くさらうことはできるのですが、
研ぎによって錆漆を「形作る」ことは難しくなります。

一方、「Bコース」のペーパー3枚重ねだと、
「研ぐ方のもの」の「硬さ」が3倍になるわけです。
元々の錆漆の形に引っ張られずに
錆漆の形を研ぎによって作っていくことが可能になります。
(※ ペーパー1枚に比べて…という話です。
平面維持強度をもっと上げて、きちんとした「形と作る」作業がしたかったら
「小さな砥石」を使うのがいいと思います)

 

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水をちょっと付けて、研いでいきます。

 

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なるべく修理箇所のみを研ぐようにします。まわりの生地は研がないようにしたい…けど、無理ですよね。少しは研いでしまいます。

 

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注ぎ口周りも綺麗に研いできます。

 

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研ぎ終わりました。…ら、ちょっとした凹みや「ピンホール」が見つかりました。

 

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残念ながら凹んでいます(涙)

 

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↑形が…これじゃまだよろしくありません。ちょっと綺麗じゃないですよね。

 

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 うーん、もうちょい!

 

ということで、修正が必要な箇所が何点か見つかりました。その場合は…もう一回「錆漆」です!!

えー、マジ!?ちょーめんどう!って思いましたね。分かります。そのお気持ち。私がその当事者ですし。

いやいや、でもそんなに2回目は面倒じゃないんですよ。凹みやピンホールを埋めればいいだけですし、形の修正も必要な箇所だけに錆漆を盛ればいいので、そんなに大変じゃありません◎

 

 

 

07> 錆漆付け2回目→削り・研ぎ


説明がしつこくなるので(すでにしつこいですが)、2回目の「錆漆付け」は端折りました。

さぁ、削っていきます!

 

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この注ぎ口は結構、錆漆を盛りました。修正が必要でしたので。

 

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この注ぎ口は手強かったです。

 

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器を逆さまにしたりして、いろいろな角度からラインをチェックします。

 

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ちょっとずつ削っていきます。

 

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ちょっとした凹みとピンホールにも錆漆を盛ったので、そこも削っていきます。

 

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 【次の作業ページを見る】

壊れた器の金継ぎ修理のやり方 ▸ Page 03/漆の塗り~蒔絵まで

 

 

 

 

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