ファイツ!!
山登りの際に全行程のルートチェックをしてから歩き出すように、金継ぎもスタートする前に「ルートチェック=ダイジェスト動画のチェック」をすると、「今、自分が作業している場所」の全体との関係性が理解しやすくなります。
※ 前回【2日目/接着まで】の作業を見る↓
今日の全体動画
~ 今日の講義~
動画部分 ~7:07まで
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動画を見ていただけると、本日の作業の何となくの「感じ」が掴めると思います。
本物の漆を使った修理方法ですので「かぶれる」可能性があります。
※ 万が一、漆が肌に付いた場合はすぐに「油(サラダ油など)」でよく洗って下さい。
油?? そうです。「油」をつけ、ゴシゴシ漆を洗い落としてください。その後、その油を石けんや中性洗剤で洗い流してください。
※ もし、かぶれてしまい、それがひどくなるようでしたら、医者に行って処方してもらってください。
私、金継ぎ初めてなんですけど、どんな道具とか材料を買えばいいんですか?どこで買えるんですか??という方へ
↓ こちらのページを参考にしてください◎
▸ 本漆金継ぎで必要な道具と材料/そのお値段と買えるお店のご紹介
作業を始める前に…
金継ぎでは「本物の漆」を使うので、直接、漆に触れると「カブレる」可能性が高くなります。「ディフェンシブ」に行きましょう。ゴム手袋は必需品です◎
漆の接着剤を削る
前回、割れたパーツを接着しました。それから3~4週間してしっかりと接着剤が固まったら「削り作業」に移ります。
この作業工程では
- はみ出した接着剤
- 盛り過ぎた接着剤
を削っていきます。
使う道具
道具
③ 障子用のカッター(刃先がカーブしたもの) ④ カッターナイフ(大)
初心者には③の「障子用カッター」がおススメです。
「障子用カッター」は同じような形状の刃先がカーブした「デザイン・カッター」よりも使い勝手がいいです。
刃に「厚み」があるので、削る時、安定して削りやすいです。それからカーブの具合も障子用の方が「急なカーブ」でして、そちらの方が使い勝手がいいです◎
④の直刃カッターもある程度使えますが、「器の内側」など凹んでいる形状のところは削るのがかなり困難になります。
とはいえ、一番入手しやすい刃物なので、ひとまずこのカッターを使うのはアリですよね◎
①の「平丸刀」という形状の彫刻刀が金継ぎ作業では一番使い勝手がいいです。
けど、専門店じゃないとなかなか手に入らなかったり、値段も¥1,600‐~くらいからだったりで、ハードルが高いです。
それに彫刻刀は自分で刃を研がないといけないので、そこも高いハードルになりますよね。
接着剤削りの動画
~ 麦漆作り~
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動画を見ていただけると、この作業の何となくの「感じ」が掴めると思います。
接着剤削りの解説
それでははみ出した麦漆(漆の接着剤)を削っていきましょう!
今回、使っているのは「障子用カッター」です。
この刃物のカーブした形状だと凹んでいる箇所も削って行けます◎
器の外側も削っていきます。
高台の裏側もお忘れなく。
削り終わりました◎
はみ出した麦漆(漆の接着剤)を入念に削りますが、とはいえ、ほんのちょっと削り残りがあったとしても後の作業にほとんど影響しませんので、あまり神経質にならなくて大丈夫です。
刃物の扱いが不得意で、「どうも麦漆(漆の接着剤)がいっぱい残っちゃっている気がする…」と気になるようでしたら、一応、耐水ペーパーの#320くらいを軽く当てておいてもいいと思います。(少量の水を付けながら研ぎます)
漆のペーストを作る
小さい穴や浅い凹みを埋めるための「ペースト」を漆で作ります。
このペーストのことを業界用語では「錆漆(さびうるし)」といいます。
使う道具・材料
道具
③ 作業板 ▸作り方 ⑤ 練りベラ ▸作り方 〇 軽量スプーン(1/4)
材料
① 水 ② 生漆 ⑥ 砥の粉
〈作業盤の掃除用として〉
〇 テレピン 〇 ティッシュ(もしくはウエス)
※ 使う計量スプーンは「1/4」か「1/10」サイズがお薦めです。
よほど大量の麦漆が必要でない限り1/4サイズで十分です。1/10サイズはほんの少し作りたいときに使います。
※ 「作った」錆漆さびうるしについての注意点ですが、”正味期限”は1~2日くらいと考えてください。
作った時が一番「乾き」がよく、時間が経つほど、どんどん乾きが悪くなってきますので、基本的に「使うときに作る」が原則です。
保存があまり効かないので、「作り置き」は避けてください◎
錆漆(漆のペースト)作りの動画
~ ▪錆漆作り【30秒動画】▪~
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~ ▪詳しい錆漆作り動画▪~
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もっと詳しく「麦漆の作り方」をご覧になりたい方は
‣ 初心者向け”麦漆”の作り方
錆漆(漆のペースト)作りの解説
砥の粉:生漆 = 10:7~8
※ 目分量の体積比
①まずは計量スプーンで砥の粉を取り出し、軽くヘラで押えます。
そしてヘラで擦り切ります。
②作業盤の上に出して、ヘラで細かく潰します。
③砥の粉の横に少量の水を出します。
④ヘラを使って、砥の粉と水を練り合わせます。砥の粉に満遍なく水が行き渡るようにします。
加える水の量は「砥の粉がまとまるくらい」です。
⑤砥の粉に対して「7~8割」の生漆を用意します。この比率がすごく重要です。
⑥少量ずつ(1/3くらい)の生漆を砥の粉に足して、しっかりとヘラで練り合わせます。
⑦さらに生漆を砥の粉に加えていきます。
⑧全部の生漆を練り合わせたら完成です◎
詳しく「錆漆の作り方」をご覧になりたい方は
ペーストを充填する
接着した箇所の凹みにペーストを充填して、周りと同じ高さにしていきます。
それから、接着箇所の周りに、ところどころ「小さく欠け」たところがあります。
そこも錆漆(漆のペースト)で埋めていきます。
ペースト付け動画
~ ▪錆漆(漆のペースト)を付ける▪~
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ヘラ先にペーストを取るやり方
接着箇所に錆漆を付けていくわけですが、その前にヘラの使い方のレクチャーです。
この一連の動作がスムーズにいくようになると、錆付け作業も楽しくなってきます◎
~ ▪ヘラ先に錆漆を取る【10秒動画】▪~
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ヘラの角度的には少し「寝かせ気味」にスライドさせると、ヘラの先っちょに錆漆がつきやすくなります。
↑こんなくらいの角度でスライドさせると…
↑ヘラの先っちょに錆漆が付きます◎
① ヘラで錆漆を薄く広げる。
② 広げた錆漆の右側にヘラをセットする。
③ 錆漆を掬うようにヘラを右から左へとスッと通す。
④ ヘラの先っちょに錆漆が少量乗っかる◎
作業盤の上で錆漆を広げるときに毎回、同じ厚み、広さにできるようになると、ヘラの先っちょですくう錆漆の分量も毎回、一定になってきます。
これは「慣れ」の問題だと思いますので、修練あるのみですね。
〈接着箇所〉をペーストで埋めていくやり方
接着箇所は↑このようになっており、その隙間を錆漆で埋めていきたいわけです。
そう、錆漆を「付ける」というよりかは「埋める」といった方がいいかもしれません。
それで、普通に何気なく錆漆を「付けて」いくと…
↑このように「ほんのわずかな隙間」が生じてしまったりします。
この隙間はほとんど見えないくらい小さい場合も多いのですが、最終的に金粉や銀粉を磨いた時に目立ってきます。
この「空洞化」を完全に防ぐのは難しいのですが、↓の動画のように「上下左右」にヘラを通すことで、錆漆を「動かす」と、空洞化を最小限に抑えることができると考えています。
~ ▪参考:接着箇所への錆付け【30秒動画】▪~
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いちいちこんなふうにヘラを通すのは最初のうちは面倒なのですが、慣れてしまえば何とも無くなります。
自動的に手が動くようになります◎
ペースト付け解説
それでは実践です。
↑この接着した個所の隙間にぐるっと錆漆を付けていきます。
錆漆は「もたもた」作業をしていると、だんだんと固く締まってきて、ぽろぽろしてきちゃいます。
錆付け作業は「ゆっくりと作業ができない」「スピードが要求される」というところが初心者さんにとって、難易度が高いところです。
ビギナーの方が初めから手際よくできるわけもありませんので、それほどきれいに錆漆が付けられなくても気にせずにいきましょう◎
それでは先程の30秒動画と同じ手順で錆漆(漆のペースト)を付けていきます。
① まずは接着箇所のライン上に、錆漆をなるべく均等に薄く配ります。
接着箇所に直行するように「左→右」へとヘラを小刻みに通します。
この時、隙間が空かないように(1/3くらい、ヘラが重なるくらいで)ヘラを通していきます。
今度は「右→左」へとヘラを通します。
接着箇所に沿って「上→下」へと通します。
今度は逆に「下→上」へとヘラを通します。
「余裕があれば」周りにこびりついてしまった錆漆をヘラで掃除します。
錆漆は硬化が早いので、無理して掃除しないようにしてください。
この場所を掃除している間に錆漆がだんだん硬くなってきて、他の接着箇所に錆漆が付けられなくなっちゃいます。
特に初心者さんには時間的になかなか難しいかと思いますので、無理せず◎
僕もこのくらいの単純な2ピースの割れくらいだったら、掃除しちゃいますが、「バラバラに割れた」器の修理の時は、掃除はせず、どんどん先に進みます。
注意!
ちなみに今回、修理している器の表面は「ツルツル・ピカピカ」しているので、錆漆が表面に着いちゃっても、乾いた後でも比較的簡単に掃除することができます。
だから汚れ防止のための「マスキング」をしていません。面倒だし。
修理している器が「ザラザラ・マット」の場合は基本的にマスキングしてから(かなり面倒ですが)、錆付け作業を行った方がいいです。
そういった肌の器に錆漆が付くと、掃除がすごく大変ですし、最悪、掃除しても残ってしまいます。
ですので、面倒でもマスキングすることをおススメします。
〈小さな欠け〉へのペースト付け
口縁部分の「小さく欠けている」箇所をペーストで埋めていきます。
~ ▪参考:〈小さな欠け〉の錆付け【15秒動画】▪~
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point!
・付けた錆漆をヘラで左右に動かし、隙間をなくして器の素地に密着させる。
・「ほんの少し」多目に盛りましょう。乾いてから刃物で削ります。ただし、盛り過ぎると後で削るのが大変になります。
~ ▪〈小さな欠け〉の錆付け▪~
まずは錆漆を欠けた箇所に配ります。
① 錆漆を先っちょに乗せたヘラを、エッジに引っ掛けるようにして擦り、充填する箇所に錆漆を置いていきます。
② ヘラは垂直に「下」に移動するのではなく、斜め下にスライドさせていきます。
③ ヘラは斜め下にスライドさせつつ、ほんの少し回転させて、器との角度を少し鋭角にすると錆漆が配りやすいと思います。
次に…
錆漆が足りなければ、随時、足してください。
最後に表面を整えます。
同様にして、高台部分にも錆漆(漆のペースト)を付けていきます。
が、高台付近はなかなかうまく付けられません~。
お互い頑張りましょう◎
凸カーブに付けるのもちょっと難しいです。
高台の内側もしっかりと錆漆を付けていってください。
ぐるっと一周です。
麦漆(漆の接着剤)が十分、つら位置まで充填されていたとしても、そこにも錆漆を付けていきます。
というのも一見、麦漆できれいに隙間が埋められているように見えても、実は「ほんのちょっとの隙間」や「小さいピンホール」などが生じていることが多々あります。
ですので、ここは面倒臭がらず、頑張って一周やってください。
〈少し大きな欠け〉へのペースト付け
ちなみに「欠けが箇所がもう少し大きかった」場合は↓の動画のように2~3回に分けて作業をしてください。(錆付け→乾かす→錆付け→乾かす…を繰り返します)
~ ▪参考:大きな欠けの錆付け【30秒動画】▪~
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このくらい大きな欠けは「刻苧漆(漆のパテ)」で充填作業をした方が効率が良かったと思います。失敗しました~。
刻苧漆(漆のパテ)で充填するような「大きな欠け」の修理法は別のページで解説します。
これは「参考までに」ということなのですが…
刻苧を使うか、錆漆を使うかジャッジする際の目安です。
基本的には「広さ」ではなく「深さ」が判断基準になります。
傷の深さ | 使う充填材 |
【深い(2㎜以上)】 |
刻苧漆こくそうるし(パテ) ※ 1回の盛り厚は3㎜程度まで |
【中くらい(1~2㎜)】 |
刻苧でも錆でも、どちらでもお好みで◎ ※ 錆漆を使う場合は1回の盛り厚は1㎜程度まで。 |
【浅い(1㎜未満)】 |
錆漆さびうるし(ペースト) ※ 1回の盛り厚は1㎜程度まで |
この「目安」というのは単純に「効率」を基準にした時の目安です。
「このくらいを目安に刻苧を使うか錆漆を使うかを決めたら作業効率がいいのではないでしょうか?」
…ということです。
1㎜未満の浅い傷に刻苧漆を使ってもいいし、ものすごく深い傷を錆漆を数十回盛りあげて、直してもオッケーです。(漆を数百回塗り重ねて埋めてもオケ)
何の問題もありません◎
ただし、刻苧漆(漆のパテ)を盛った後には「最後は必ず錆漆を付けて肌を整え」ます。
錆漆を乾かす
錆付け作業がぐるりと一周、終わりました。
このまま乾かします。
と思ったのですが、修理箇所が高台も含めてぐるりと一周に渡っているので、このまま置くことができません。
ということで、修理箇所が浮くように(他のものに接触しないように)」します。
何でもいいのですが、どのご家庭にでもよくあるもので「汚れても(捨てても)」大丈夫なものとして「割り箸」などを使うのがいいかと思います。
割り箸を下に敷いて、その上に器を置きます。
↑こんな感じに修理箇所が浮くようにします。
割り箸を2本使ってもいいと思います。
割り箸じゃなくても適当なものがあればそれを使ってください◎
修理箇所が触れないように気を付けてください。
このまま放置します。
錆漆はそれ自体に「水」が含まれているので(錆漆を作る時に「水」と混ぜましたよね◎)基本的に「湿度の高い場所」に置く必要はありません。
(置いてもいいです)
悪条件でない限り、通常は1日で乾きますが、用心するなら2日くらい様子をみた方がいいかなと思います。
錆漆が完全に乾いていなくて「生乾き」の時に次の作業(削り・研ぎ)をすると、「かぶれ」の危険性が高まります。
ご注意ください◎