レッツ うるし塗り!
自作したスプーンに漆を塗っていきます。
漆塗りの工程の「あらすじ」を作ろう…と思ってページを作成していたら、「もうちょっとここらへんは詳しいほうがいいよな~」とちょこちょこ手を入れてしまい、終いには「あらすじ以上、けど痒い所には手が届いていない」という中途半端なコンテンツになってしまいました。
また近いうちに詳しい「初めての漆塗りの手順」を作成したいと思いますので、「このページじゃイマイチわからん」という方は、少しお待ちください。
漆塗り・蒔絵までの手順
① 木地 (彫ったまま)
② 擦り漆 (漆で木地固め)
③ 錆漆付け
④ 錆研ぎ
⑤ 漆の塗り
⑥ 漆研ぎ
⑦ 蒔絵
工程をよく見てみますと…金継ぎと一緒じゃない?!おっ、さすが。ご名答です。
そうです。漆の作業工程ってだいたいみんな一緒なんです。なので「金継ぎ」を憶えた人は一通りの漆の工程を憶えてしまったということになります。いつの間にかですね。
※ スプーンの漆塗り工程には入っていないのですが、お椀を塗るときなどは「布着せ」と呼ばれる薄い麻布を木地に貼って補強する作業があります。
木地固めの後、麻布を麦漆や糊漆で木地に貼ります。その後は錆漆→漆の塗りと進んでいきます。
〈スプーンの漆塗り方法 01〉 木地を研ぐ→漆で固める
① 木地 → ② 擦り漆
① は実はクルミ油を塗っています(なぬ!)。 なのでこれでオイルフィニッシュとして使っても問題はありません。
② の方もこれで使ってもオッケーです。拭き漆仕上げがお望みの方は3回くらい拭き重ねると「艶」が出ます。もっとつやつやさせたい場合は、10回くらい拭き重ねる人もいます。
木地をペーパーで研いで「平滑な面」を作ります。
その際に「当てゴム」「当て木」を使うときれいな平面が作りやすくなります。
木地の研ぎで使う道具・材料 :
① 消しゴム ② 黒くて固いゴム ③ 空研ぎペーパー#320くらい ④ 平面の出ている四角い木
①、②の大きさは1~2センチ四方くらいが使いやすいと思います。
①、②はどちらかがあればいいです。
①は市販の消しゴムです。柔らかいので木地の「凹凸」を比較的よく拾ってしまいます。けど、入手が簡単なのでこれでひとまずやってみてもいいと思います。
②はホームセンターやハンズなどで売っている「ゴム板」を切って成形しました。¥200~¥300程度で入手できるかと思います。使ったのは板厚10㎜のものです。
カッターで小さく切り、それから大雑把に曲面も作ってからペーパーで丸みをつけました。
固目のゴム質なので、研いだ時にも「形」を作りやすくなります。
④当て木は平面の出ているものを使います。大きさは 2×2センチ程度でいいと思います。
「木」なんて見当たりませんわ!と言う方はプラスチックでも何でも、固めのもので平面が出ているものでしたら構いません。
③のゴム板を使ってもオッケーです。むしろこのくらいの固さがちょうどいいかもしれませんね。
↑の当てゴムの大きさは 〈25×16×10 ㎜〉 です。
ペーパーを適当な大きさにハサミで切って、それを当てゴムに巻いて使います。
木地を研ぐときのペーパーは「空研ぎ」用のモノが目詰まりをおこしにくいのでお勧めです。
「耐水」ペーパーを持っているし、わざわざ「空研ぎ」を買うのもちょっと面倒…という方は「耐水」でも用は足ります。
これでスプーンのヘッド〈内側〉を研いでください。
当て木の方も適当な大きさに切ったペーパーを巻き付けて使います。
これでスプーンのヘッド〈外側〉を研いでください。
続いて「木地固め」または「拭き漆」です。(呼び方が違うだけで一緒の作業です)
拭き漆をするのってこんな感じです。
木地固めに必要な道具と材料 :
① 生漆 ② 小筆(平)…100均でオッケーです ③ 箆 ④ テレピン ⑤ ウエス ⑥ ゴム手袋
生漆に3割くらいテレピンを混ぜて希釈します。
生漆 10 : 3 テレピン
筆を使う前にテレピンで洗います。 ▸ 詳しい筆の洗い方
毎回、作業が終わったときに筆を”油”で洗っているので、使うときにはまず筆の中の油を取り除きます。
- 作業板の上に数滴テレピンを垂らす。
- その上で筆を捻ったりしてテレピンをよく含ませる。
- ティッシュペーパーの上でヘラで筆を優しくしごく。
筆で塗っていきます。
浸み込ませていく感じです。
スプーンの半分を塗ったらウエスで漆を拭き取ります。
同様にスプーンの柄の方も漆を塗り、ウエスで拭き取ります。
これを湿した場所(湿度65%くらい)に置いて漆を乾かします。
拭き漆はこんな感じです。簡単です。
もっと漆の色を濃くしたい、艶を出したい…という場合はこの拭き漆の工程を繰り返してください。納得いくまで。
作業が終わりましたら油で筆を洗います。
平筆はサランラップで包んで保管します。
〈スプーンの漆塗り方法 02〉 錆漆付け→錆研ぎ
③ 錆漆付け → ④ 錆研ぎ
③ 錆漆は平筆や小さい刷毛で付けます。100均の平筆でもいけます。ナイロン筆が使いやすいと思います。
「筆で錆漆を付けられるの?」と思うかもしれませんが、やってみると案外、綺麗にいきます。トライしてみてください。
④ 耐水ペーパーの#320、#400くらいで研ぎます。
金継ぎの錆付けで使う道具と材料(▸ 錆漆付けで使う道具・材料の入手先・値段)
- 道具: ① プラスチック箆 ② 付け箆(▸ 付け箆の作り方)、
- 材料: ④ 生漆 ⑤ 砥の粉 ⑥ 水 ③ 作業板(クリアファイル)
筆を使う前にテレピンで洗ってください。洗い方は上記の「漆で固める」のところでの説明を参考にしてください。
錆漆を作ります。 ▸ 詳しい錆漆の作り方
筆先で錆漆を取ります。
スプーンに錆漆を付けていきます。
この時、普通はスプーンの彫った形を崩さないように錆漆をなるべく「薄く付けよう」としてしまいがちですが、意識の持ち方としてはその逆に近い感じでやってください。
彫った形をガイドにして(あくまで基準です)、錆漆でもう一度「形を作る」という感覚でやってください。
上下、左右、斜めに手早く筆を通して、錆漆の形を作っていきます。
最後にヘッドの先端に向かって筆を通して錆漆の表面を均します。
スプーンヘッドの外側も同様に作業を行います。
まずは全体に錆漆を適量、置いていきます。
上下、左右、斜めに筆を通して「形」を作っていきます。
彫りで作った「面」を意識しつつ、もう一度錆漆でさらにきれいなラインを作っていきます。
最後にヘッドの先端に向けて筆を通します。
錆漆で「形」を作る…というのは、ちょっと妙な感覚ですよ。
もし、わずかに凹んでいる部分があったらその形をビビットに拾わずに、空中に弧を描くように筆を運びます。
スキージャンプ・ラージヒルの「空中」を飛んでいる感じです。
葛西でも原田でも沙羅ちゃんでもいいですが、きれいな放物線を描きます。(理想としては)
この筆が「空中」を飛んでいるときの「基準」ってどこに置けばいいんでしょう?
木地に接していないんだから頼るものがないですよね。
その時、頼れるのは自分の「身体感覚」です。
スピードに乗った身体がジャンプ台から飛び出した後は、それが描くべき放物線に身体感覚を合わせるだけです。
それを筆でやります。理想的には。
スプーンを乾かすときは、大きなクリップなどに挟んで立てると便利です。
こんな具合です。
筆を使った後は「油」で洗ってください。洗い方は上記の「漆で固める」のところでの説明を参考にしてください。
凸凹を拾わない、きれいな面の繋がりを出したかったら、錆付け作業は2回おこなった方がいいか思います。
その際は、一度目の錆漆を軽く研いでから2回目の錆付けを行います。
サラサラと軽く研ぎます。
研ぎ終わったら、二回目の錆付けを行ってください。
錆漆の乾きに1~2日待ってから、研ぎに入ります。
耐水ペーパーの#320~#400程度で、水を付けながら研いでいきます。
研ぐときも「面」を意識して、研ぎで形を作るような感覚で研いでください。
そうです。研ぎも「なり」に研いでいくのではなくて
「研ぎで形を作る」のです。
包丁や彫刻刀などを研いでいく感覚でしょうか。
基本的には小さな凹凸を消すように形を作っていきます。
何で小さな凹凸を消そうとするのか。
木でも果物でも虫でも何でも、基本的には生きているものは「張り」があると思います。
人も生命力のある人はお肌が張っていたりしますよね。
ぴちぴちしていて細胞が元気な感じです。
生命の内側から外側へと「何か」が溢れている感じです。
逆に小さな凸凹がある状態は「張り」が無くなっている印象を受けてしまいます。
よぼよぼしていて、生命力が衰え、死んでいく感じす。
器でもスプーンでも本当に「いい」ものというのはある種の生命力のようなものを感じます。
骨董市などで時々、思わず引き込まれてしまうような「合鹿椀(ごうろくわん)」に出会いますが、
そういったものは無理のない自然な生命力のようなものを湛えているような気がします。
敢えて「ちょと凸凹している感じを残したい」という場合は、当てゴム・当て木を使わずにペーパーだけで研ぎます。
三つ折りしたペーパーで研ぎます。(折らなくてもいいですし、二つ折りでも構いません)
ペーパーのみで研ぐと、比較的、錆漆の凹凸を拾ってくれます。
あえて歪んでいる感じを残すのもいいですよね。
全てがピシッピシっと整い過ぎていると窮屈に感じてしまいますので、ちょっと「抜け」もあるとホッとします。
研いでいる最中はウエスやスポンジでちょくちょく研ぎ汁を拭き取り、形のチェックを行います。
形のつながりが悪いところ、出っ張っているところなどを中心に研いでいきます。
ちなみに鳩屋では基本的に研ぎは砥石で行っています。
① スポンジ ② 丸みを付けた小さな砥石 ③ 砥石を成形したり目詰まりを取るための砥石 ④ 研ぎに使う水を入れる茶碗
大きな砥石を切って(!?)、小さな砥石を作ります。
砥石を切るってどういうこと?えーとですね、機械を使っています。ダイヤモンドの刃を付けた小さいバンドソーで切っています。
手作業でいく場合は「金鋸」で地道に切る…というところでしょうか。刃がすぐにダメになるので、何枚も替え刃を使います。時間もかかります。辛いッス。
小さく切った砥石を大き目の砥石に当てて、丸みをつけていきます。地道に。
スプーンの曲面に合うように丸みをつけます。
丸みは「ピタリ」と合わせる必要はありません。「だいたい」で大丈夫です。
砥石を使うと自分で「ピタっとした面を作る」ことができます。
「当てゴム」ですとどうしても柔らかいので錆漆の凹凸を拾ってしまいます。
砥石ですとそれがかなり軽減されます。平滑な面が作りやすくなります。
研ぐときはもちろん「研ぎで形を作る」意識をもっておこないます。
スプーンヘッドの裏面には四角い砥石を使います。
形の繋がり、面の変わり目などを意識しながら研いでいきます。
どのように形が繋がっていて、どこで面が変わっているのか…は
1本1本と対峙した時に、個別に見えてくるものだと思います。その1本固有の自然なラインがきっとあると思います。
気持ちのいいラインが出ていなときもあります。
しまったなぁーと思うのですが、もう後戻りはできません。
ベースの木地の形がイマイチだったのだと思います。
どうにもならない時は諦めます。
それでもここまでつくったのだからと、しっかりと仕上げて知り合いにプレゼントします。
「ちょい、イマイチなんですが」と言って、使ってもらいます。
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