レッツ・キンツギスタ!
2020.4 全面リニューアル済み
artist 岡田直人さんの器
中級者向け
難易度:
使用粉:金の丸粉2号
仕上げ:丁寧・こだわり
今回のシリーズは「完成度の高さ」にこだわって、頑張ってきれいに仕上げます◎
※ 口元が欠けたカップの「伝統的な本当の金継ぎ修理」のやり方を説明していきます。
このページでは金継ぎ工程の内の
〈捨て塗り研ぎ~粉入れ(蒔絵)〉
までの方法を解説していきます。
【前回の作業工程を見る】↓
金継ぎ修理を始めるその前に…
本物の漆を使った修理方法ですので「かぶれる」可能性があります。
※ 万が一、漆が肌に付いた場合はすぐに「油(サラダ油など)」でよく洗って下さい。
油?? そうです。「油」をつけ、ゴシゴシ漆を洗い落としてください。その後、その油を石けんや中性洗剤で洗い流してください。
※ もし、かぶれてしまい、それがひどくなるようでしたら、医者に行って処方してもらってください。
【道具・材料と購入先を見る】↓
作業を始めるにあたって、まずは装備を…
金継ぎでは本漆を使うので「ディフェンシブ」に行きましょう。
ゴム手袋は必需品です◎ 漆をなめちゃいけません◎
※ 作業後、油分多めのクリームを手、腕など、肌が露出していたところ(夏場は脚・足にも)に塗っておくと、カブレにくかった…というコメントをいただきました。
(塗り忘れたときは、毎回、痒くなった…そうです)
気になる方はやってみてください◎
注意:
修理箇所に油分をつけてしまうと、その箇所だけ漆が乾かなくなります。(手脂でも乾かなくなります)
ご注意ください!
※ 修理箇所に油分が付いてしまった場合は、エタノールで入念に拭きあげるか、台所用中性洗剤で洗えば大丈夫です◎
【捨て塗り研ぎ】
〈使う道具/材料〉
道具:
③ ウエス→スポンジの方が使いやすい
④ 要らなくなったハサミ
⑤ 小さな水入れ
〇 水桶(もあった方がベター)
材料:
① 水差し
② 耐水ペーパー
→実は駿河炭が断然おススメ
※ その他、本漆金継ぎで使うおススメの道具・材料の一覧(購入先も)を↓こちらのページにまとめました。
▸ 本漆金継ぎで使う道具・材料ページ
※「要らなくなったハサミ」は耐水ペーパーを切るのに使います。
ペーパーを切るとハサミが「ばか」になって他のものが切れなくなります。
要らなくなったものか、100均などで買った安いものを使ってください◎
今回は「捨て塗り(漆塗り1回目)」の研ぎなので、#400~600程度の耐水ペーパーで研いでいきます。
ちなみに使う耐水ペーパーの選択ですが下記の表を参考にしてください。
使うペーパーの
チョイス!
▪▪▪
錆研ぎ | ・(きれいに削れていない場合) #240~#320 ・(きれいに削れた場合) #320∼#400 |
捨て塗り研ぎ (漆塗り1回目) |
#400~600程度 |
繕い錆研ぎ | #400~600程度 |
下塗り研ぎ (漆塗り2回目) |
#600~800程度 |
中塗り研ぎ (漆塗り3回目) |
#800~1000程度 |
の耐水ペーパーで研ぐのがよろしいかと思います。
↑漆研ぎ用の「駿河炭」
「研ぎ道具」としては、実は↑この「駿河炭」が最強のアイテムです◎
漆屋さんでしか売っていませんが、できれば使ってみていただきたいです!
‣駿河炭が断然おススメな理由
とはいえ、初心者さんにとっては「炭」は少しハードルが高いので、「耐水ペーパー」と使った説明をしていきます。
● 耐水ペーパーの使い方
ちょっと面倒ですが、研ぎ面をよりきれいな形に仕上げるためと、修理箇所以外を傷付けないために、ペーパーにひと手間加えます。
耐水ペーパー
の使い方
▪▪▪
耐水ペーパーを小さく切って使います。
切れ味の落ちたハサミで、耐水ペーパーを1×1㎝くらいに小さく切ります。
それを「三つ折り」にします。
(↑ペーパーを三層構造の「硬い」板にして使います)
ペーパーは少量の水をつけながら研ぎ作業をおこないます。
理由は2つです。
1.研ぐ面積を極力少なくするため
2.平面保持強度を高めるため
【1の理由】
「耐水ペーパー」って研磨力がとても強いので、器の釉薬(表面)を傷つけてしまうのです。
研いだ後、修理箇所周辺の釉薬が薄っすらと曇っているのは、あれは「細かい傷」が付いたからなのです。
なので、「なるべく」ですが、周りの釉薬が傷つかないようにペーパーを小さくして使いたいわけです◎
【2の理由】
「三つ折り」するというのは、ペーパーの「平面保持強度」を高くするためです。
なるべく「研ぐ方の道具」の平面を維持したいわけです。
ペーパー1枚で研いでいると「へなへな」してしまいます。紙なので柔らかいですよね。
それを使って研いでいると↓この「Aコース」のような仕上がりになります。
↑ペーパー1枚で研いでいると「Aコース」になるわけです。
紙一枚だと「研ぐ方の道具」が柔らかいので、「研がれる方のもの=錆漆(←硬いもの)」の形に沿ってしまい、その形通りに研いでしまいます。
錆漆の「山の角の部分(エッジ)」は軽くさらうことはできるのですが、「綺麗な曲面に形作る」ことは難しくなります。
一方、「Bコース」のペーパー3枚重ね(三つ折り)だと、「研ぐ方の道具」の「硬さ」が3倍になるわけです。
「研がれる方のもの=錆漆」の形に引っ張られず、研ぎによって錆漆の形を作っていくことが可能になります。
※ ペーパー1枚に比べて…という話です。
平面維持強度をもっと上げて、「きれいにな形を作る」作業がしたかったら
「漆研ぎ用の“駿河炭”」が断然おススメです。
▪実作業▪
塗った漆をペーパーで研ぐことでさらに平滑な面、きれいなラインを作り出します。
で…その前に。
今回の依頼品は「注ぎ口」の修理ですので、その「水切れ」のテストを行いました。
「漆塗り」の前(錆漆を研ぎ終わった段階)でも、「水切れ」のテストを行い、さらに漆を塗って乾いた段階でもテストを行いました。
→キリッと水が切れました◎(チョチョギレました)
もし、水切れが悪かったら…錆漆を付けたり、削ったりして注ぎ口の成形をやり直さなければいけません。
今回は一回で上手くいきました◎
まだまだ作業は続きます。
一見きれいな「面」になっているように見えても、実はデコボコしているんです。
水を少し付けながら研いでいきます。
なるべく「修理部分」の上を研ぐようにします。
ペーパーの方が器の釉薬よりも「硬度」が高いので、釉薬が傷ついてしまいます。
ですので、理想的には修理部分のみを研ぐようにします。
けど、実際には少しその周りも研いでしまいますが。
漆を研いだ部分をよく見ると「白く光っている」部分↑がちらちら見えています。
これは周りと比べて「凹んでいる箇所」でして、まだ「研ぎ」が当たっていないのです。
ですので、塗ったままの「光沢のある表面」が残っていて、それが光を反射しています。
この「研いでいくと見えてくる、チラチラと見える光沢」についての少し詳しい説明↓
「何で研ぎが当たらない箇所が出てくるんだろう?おかしいな~??」と気になる方はご覧ください◎
錆漆をどんなに頑張って仕上げたとしても、実は、「ほんのわずかなへこみ」や「ピンホール」が残っています。
しかもこの時点ではなかなかそれが見えづらいのです。
その錆漆の上に「捨て塗り(漆塗り1回目)」を施します。
漆が乾くと、その表面はきらきらと光っています。
そして、その「光沢面」を研いでいきますと…
「へこみ」や「ピンホール」部分は、周りの面よりも奥まっているので、ペーパー(または研ぎ炭)が当たりません。
そうすると、この「研がれていない部分」というのは「光沢面」が残ったままなので「きらきらと光ったり」、「色が濃く」見えたりします。
※ 「色が濃く見える」とは…
・「黒漆」を塗った面なら、研がれた面が「グレー」、研がれていない面が「濃い黒」に見える
・「赤漆」を塗った面なら、研がれた面が「白っちゃけた赤」、研がれていない面が「濃い赤」に見える
…ということです。
これは「研がれた面」というのはミクロで見ると、肌がちょっとギザギザした感じになって、光を乱反射するので、「白っちゃけて」見えるんじゃないかな?と思います。
(違うかもしれませんが~)
ちょっと面倒な話しになりますが、「そもそも“捨て塗り”とか“捨て塗り研ぎ”って何よ?」「何のためにやってるの?」と、根本的なことについて気になる方は下記のページ↓をご覧ください。
「捨て塗り&捨て塗り研ぎ」とは…
錆漆の段階では視認できなかった「わずかなへこみ」や「ピンホール」を可視化するためにおこなう作業
…と、金継ぎ図書館では考えています。
※ 錆研ぎの段階で、自分では「おっしゃ!!完全フラットな面を作ったで!」…と思っても、実は微妙なへこみとか、ピンホールがあるものなのです(T_T)
ですので、捨て塗り研ぎは漆の「研ぎ破り」、全然オッケーです◎
この作業の目的は「漆を残すこと」ではなく「平滑面を作っていくこと」なので、気にせず研ぎ破ってください。
捨て塗り研ぎで
「凹み/ピンホール」を可視化
そこに錆漆(繕い錆)を施し
研ぐことによって→「高い精度の平滑面」を作ることができます。
そういえば、「捨て塗り研ぎ」って
どのくらいまで研いでいいの?
あんまり研ぎ過ぎちゃうと、
せっかく漆を塗ったのに
漆がなくなっちゃって意味ないでしょ?
しかも錆漆がどんどん出てきちゃうし~
確かに「きれいな平滑面」になるまで
しっかりと研いだ方がいいんだろうけど…。
でもそうすると、「へこみ」や「ピンホール」の
「底」まで研ぎ減らした方がいいってこと??
それとも「そこそこ」で止めた方がいいのかな?
どこまで研いだらいいんだろ?
そうですね。迷うところですよね。
どの金継ぎ本にもこれらに関しての記述がありませんしね。
金継ぎ図書館なりの「基準」と「考え方」を書きましたので、ご興味ある方はご覧になってください↓
捨て塗りを研いでいって、↑このように凹みやピンホールが見えてきたとして、この後、どのくらいまで研いでいいのか??
●【底まで研いだ場合】
凹み/ピンホールの「底」まで研いでしまうと…
修理箇所周辺の器の高さと比べて、一段下がってしまう場合があります。
これは誰が見たって「研ぎ過ぎ」ですよね。
こうなるともう一度、錆漆を充填しなくちゃいけなくなります。
じゃあ、どのくらいで止めておいた方がいいのか?
●【器の面位置まで研いだ場合】
理想的には、、修理箇所周辺の「器の面と同じ高さ(①)」もしくは「それよりもほんのちょっと高いくらい(②)」です。
この時、凹み/ピンホールは残っててオッケーです。
最終的な仕上がりのイメージが「フラット気味」の場合は①を選択し、「ふっくら気味」の場合は②を選択すればよろしいかと思います。
よろしい具合に研げました◎
そして案の定、「凹み」がありました(T_T)
↑画像の器の素地との接線部分(黒いラインで見えているところ)が少し凹んでいます。
「ほんの薄っすらとした凹み」なので、漆を1~2回塗り重ねれば埋まりそうです。
「凹みが深い」場合は、残念ですがその箇所だけ「錆漆」を施します。
このピンホール/凹みを何を使って埋めるか…?
「繕い錆」で埋めるか?それとも「塗り重ね」か?…迷いますよね。そのジャッジについて↓
判断基準となるのは「凹み/ピンホールの深さ」です。
「捨て塗り&捨て塗り研ぎ」をすることで、へこみ/ピンホールの場所が特定できると同時に、その傷の深さも「見える化」されます。
その傷の深さによって処置を変えます。
● 漆塗り1回または2回で埋まりそうな場合
→漆の塗り重ねで埋める
ピンホール/凹みにピンポイントで塗る(全面を塗ってもオッケー)
※塗りが厚くなりやすいので「厚くならない」ように気を付ける。
漆が乾いたら研いで平滑面を作る。
→その後は、「下塗り(漆塗り2回目)」作業へと進む
● 漆塗り2回分よりも深そうな場合
→錆漆を付けて埋める(繕い錆)
ピンホール/凹みにピンポイントで付ける。
※ 基本的には「薄付け」(で大丈夫◎)
錆漆が乾いたら研いで平滑面を作る。
「下塗り(漆塗り2回目)」作業へと進む
僕の場合、毎回、捨て塗り研ぎ後、数か所(2,3~7,8箇所)の凹み/ピンホールが見つかります。
そのうちの「浅い凹み」の数か所は「漆のみ」で埋め、残りの「もっと深い」場所は「繕い錆」で埋めます。
↑この画像では「黒く見えている点」が 少し凹んでいる箇所です。
気になっていた修理部分周りの錆漆の「汚れ」を激落ち君で磨いて取り除きます。
激落ちしています◎
漆塗り⇆研ぎを繰り返す
※ 上記の「漆の下塗り」…の説明と同じになりますので、そちらを参照してください。
この後、2~3回、「漆塗り⇆研ぎ」を繰り返します。
気合いだー!
けっこう面倒かもしれませんが、塗り→研ぎ→塗り→研ぎ…と繰り返すことですごくきれいな面が作れます。
と同時に修理箇所が漆特有の「ふっくら」とした柔らかな表情になっていきます◎
漆を塗り重ねた「最後の研ぎ」は耐水ペーパーの#800∼1000を使って研いでください。
肌のキメを細かく仕上げます。
【地塗り(漆の上塗り)】
いよいよ「蒔絵作業」に入ります。
「蒔絵粉」というのはただの「粉」なので、それ単体では定着してくれません。
修理箇所に定着させるための「接着剤」が必要となります。
蒔絵粉の接着剤として使う素材は「漆(そのもの)」です。
〈使う道具/材料〉
道具:
② ティッシュぺーパー
④ 蒔絵筆またはインターロン筆
⑥ 練りベラ ‣作り方ページ ‣作り方の動画
⑦ 作業盤(ガラス板など)
‣作り方ページ ‣作り方の動画
○ ゲル板 ○ サランラップ
材料:
① アルコール(テレピン、灯油など)
⑤ 精製漆(今回は”弁柄漆”…赤茶色の漆)
⑧ サラダ油
※ その他、本漆金継ぎで使うおススメの道具・材料の一覧(購入先も)を↓こちらのページにまとめました。
▸ 本漆金継ぎで使う道具・材料ページ
● 使用する筆
「蒔絵筆」がベストなのですが、1本¥4,000∼¥7,000-してしまいます。
初心者さんにこの値段はちょっとハードルが高いですよね。
安価な筆でおススメなのは「インターロン」というナイロン製の筆です。
・超極細筆
・小筆
ひとまずこの2本があればほとんどのケースがカバーできます◎
それでは「塗り」に入りますが、その前に…
まずは使う前に筆をテレピンで洗って油を洗い出します。これをお忘れなく◎
▸ 使用「前」の筆の洗い方
地塗りに使う漆の選択
今回は蒔絵粉に「金粉」を使いたいので、「地塗り」の漆には「弁柄漆」を使います。
● 地塗りに使う漆の選択
・「●金粉」(または真鍮粉)を蒔く場合⇆地塗りは「●弁柄漆(赤茶色)」を使う
・「●銀粉」(または錫粉)を蒔く場合⇆地塗りは「●黒弁柄(黒色)」(または●白漆)を使う
これがベーシックな選択です。
● 根本的な考え方
地塗りに使った「漆の色味」が蒔いた「粉の色味」にも影響します。
例えば、地塗りに「赤色」を使えば、蒔いた粉にほんのり赤味が差します。
▪【金粉(真鍮粉)の場合】
粉自体の色味としては「●黄色=暖色」なので、同系色の「暖色系」の漆を使うと、金色の彩度が高くなって映えるわけです。
もちろん、地塗りに「●黒色」を使ってもいいです。その場合は、仕上げた金色がワントーン暗くなった感じに仕上がります。
▪【銀粉(または錫粉)の場合】
粉自体の色味としては「●白っぽい色=無彩色」なので、その地塗りに使う漆の色としても無彩色系の「●黒または●白」を使うと、銀色がシックで落ち着いた感じに仕上がるわけです。
こちらの方も、もちろん他の色を使っても構いません。
赤色の漆を地塗りに使えば、仕上がった銀色に赤味が差します。
▪実作業▪
「地塗り」に入りますが、まずは塗る際のポイントです。
▪▪▪
● 地塗りの厚み
「超・極薄」に塗っていきます。とにかく薄くです。
かすれちゃいけませんが、そのくらい薄くという感じです。
プレパラートに塗ると向こう側が透けるくらい薄くです。
● 地塗りの手順
①「極細筆」で輪郭部分を括っていきます。
②「小筆」で内側を塗り潰します。
③ 全体に漆が塗れたら、最後、上下左右に小筆を通して、なるべく塗り厚を均一に揃えます。
※ 塗りの手順/ポイントについてはこのページの上部での説明と同じです。
‣塗りの手順説明を見る
塗っていきます。
まずは「極細筆」を使って「輪郭」を括っていきます。
↑インターロンの極細筆(417 丸0号)
参考になりそうな「塗り」動画です↓
0:50~2:57まで再生
極力、筆の中の漆を切って、「超・極薄」に塗っていきます。
「きわきわ」まで塗っていきます。
ちょっとでも「塗り残し」があると結構、ダサく見えし、自分でもすごく気になってくるので、細心の注意を払います。
どう頑張っても「キワに塗り残しがある」…という方は「メガネ型ルーペ」がおススメです↓
僕の場合、年齢が40代になって、いつの間にか細部が見えなくなっていたので、現在「ハズキルーペ」を購入して使っています。
いつの間にかキワの部分の塗り残しが自分の目では判別できなくなっていたのです。
地塗りの段階で、自分では「完璧にきれいに塗れたつもり」が、実際に金粉を蒔いて仕上げてみると、キワの一部にほんのわずかな塗り残しがあったりするのです。
これは「自分の技術・努力が足りないから」であり、修練あるのみだ!と思ってしばらく頑張っていたのですが、ふと、「これってもしかして僕の目が見えていないのかも??」と思い、思い切っていくつかのルーペ類を試してみたのです。
結果、ハズキルーペでほぼほぼ解決しました◎
技術・努力ではなく、「拡大鏡」が必要だったということです。
ハズキルーペの1.85倍のレンズを使っているのですが、対象物が大きく見えて、断然、描きやすくなりました◎
キワの塗りの精度も格段に高くなりました。
効果絶大ですので「キワの塗り残しが見えない…」という方には100%おススメです。
(ハズキルーペの宣伝みたいですね~)
一周、ぐるっとキワを塗り終えたら、僕の場合、「ポケットルーペ」で最終確認します。
これでチェックすると100%近く、塗り残しを発見することができます◎
ポケットルーペは結構、頻繁に使いますので、僕にとってはマスト・アイテムです。
1枚あたり倍率4倍のレンズで2枚ついています。レンズが大きめのもの(径36㎜)を使っています。
金継ぎでは径の大きいレンズの方が使いやすいと思います。
地塗りの漆が
はみ出した時
の掃除
▪▪▪
● 地塗りのはみ出し
▪【塗っている最中の場合】
・アルコールを付けたウエス/ティッシュで全面拭き取ってやり直し
・朴の木ベラでピンポイント掃除
(ルーペで見ながら作業するとやりやすい)
※ かなりしっかりと拭き取らないと、蒔絵粉が張り付いてしまい、粉が無駄になる。
(拭き取ってもごくわずか漆が「拭き漆状態」で残っているので、蒔絵粉が付いてしまいやすい)
※ テレピン/灯油などの揮発性が遅い溶剤で拭き取ると、漆が薄っすらと残りやすいので、蒔いた粉もくっつきやすい。なのでアルコールを使う。
↑
この「くっついた粉」は乾いてからの掃除はやりやすい。
拭き漆状態のほんのりとした漆で引っ付いているだけなので、磨き粉で軽く取れる
▪【乾いた後(粉固め前)の場合】
・竹木砥or針砥で乾いた蒔絵粉を削る
(ルーペで見ながら作業するとやりやすい)
「竹木砥たけきど」はただ、竹の「皮側」を削って「尖らせる」だけで出来ます。
簡単に作れます。
竹木砥の作り方の解説ページ/動画は近いうちに用意したいと思います。
輪郭が塗り終わったら、その「内側」を普通の小筆で塗っていきます。
↑インターロンの小筆( 1026 丸2号)
まずは全体にどんどん漆を塗っていきます。
全体に漆を塗り終わったら、最後に「筆を通し」ます。
参考になりそうな動画です↓
2:57~3:21まで再生
上下左右に筆を通し、なるべく漆を均一な厚みにします。
全部塗り終わりました!
塗り終わったばかりの状態は「筆跡が立って」いて、塗り面が少しガタガタしている場合があります。
空風呂(湿していない場所)に10∼20分程度放置して、筆跡が沈むのを待ちます。
「直ちに蒔いた方が良い」理由ですが↓こちらのページで詳しく解説しています。
【 お掃除、お掃除 】
全ての作業が終わったら作業板を掃除します。
テレピン(又はエタノール、灯油など)を垂らして、ウエスやティッシュできれいに拭き取ってください。
caution !
厳密に言うと、掃除をし終わった後の作業板の上には「ごくごく薄っすら」と漆の成分が残っています。
ですので、この作業が終わるまではしっかりとゴム手袋をして、ゴム手袋を外したあとは作業板を含めて漆の道具類を触らないようにした方がいいです。
【粉入れ(蒔絵粉を蒔く)】
〈使う道具/材料〉
道具:
② ティッシュぺーパー
③ 絹の真綿 ⑤ 粉鎮
⑥ あしらい毛房
⑦ 筆洗いベラ
材料:
① アルコール(テレピン、灯油など)
④ 蒔絵粉(今回は金粉の丸粉2号)
※ その他、本漆金継ぎで使うおススメの道具・材料の一覧(購入先も)を↓こちらのページにまとめました。
▸ 本漆金継ぎで使う道具・材料ページ
今回は「真綿まわた(シルク)」を使って金粉を蒔きます。
● 真綿の仕立て方の解説ページがありますので、初めての方はご覧ください↓
金粉、銀粉で蒔絵をやりたい方はこちらのページをご覧ください↓
こちらの方が、かなり詳しく解説しています。
○ そもそも「丸粉」とか「消し粉」とかって何??という方はこちらをご覧ください。
→▸ 蒔絵粉の種類とその特徴
■「消し粉」について→▸【消し粉】の蒔き方
■「平極粉」について→▸【平極粉】の蒔き方
■ 「 丸粉 」について→▸【丸粉】の蒔き方
▪実作業▪
※ 今回は「真綿」を使いますが、「あしらい毛房(毛先の柔らかい筆)」を使ってもオッケーです◎
5:09~10:04まで再生
この動画で使っている金粉は【丸粉3号】です。
今回は「金」を使います。金の丸紛2号です
風、ダメです。
金粉が飛んじゃいますので、無風の場所で作業をおこなってください◎
真綿に「しっかり」と金粉を取ります。
ここはビビらずに「多目」に付けてください。
付ける金粉が少ないと、真綿の繊維が表面に出てしまい、そのせいで漆を引っ掻いてしまいます。
↑この写真はダメな例です。もっともっと多く金粉を取ってください。
これじゃ少な過ぎます。
真綿で粉を蒔く時の参考動画です↓
8:36~から再生 ※この動画では「消し粉」という細かい粉を使っていますが、真綿の使い方は「丸粉2号」も同じです◎
真綿蒔きのポイント
▪▪▪
① 左:地塗りした脇に、多めに蒔絵粉を付けた真綿を器に叩きつけて、器の上に粉を落とす。
② 器に乗っている粉を、真綿をクルクルさせながら移動させ、漆の上に乗せていく。
● 図説
① 左:漆を塗った脇に、蒔絵粉が沢山ついた真綿を器に叩きつける。
② 右:器の上に蒔絵粉の山ができる。
③ 器の上にできた「蒔絵粉の山」を、真綿を使って漆の上に移動させていく。
「地塗りした漆」と「真綿」の間には常に「蒔絵粉の山」が存在している状態をキープする。
こうすることで、漆に触れるのはあくまで「蒔絵粉の山」であり、真綿は直接、漆に触れない。
④ 真綿を何往復かさせて、漆の中にしっかりと粉を蒔き詰める。
※ 粉の蒔き詰め作業をしている間に、だんだんと真綿と漆との間にある「蒔絵粉の量」が少なくなってきます。そうなると、真綿の繊維が直接、漆に付いてしまいます。
(→真綿に漆が付くと、せっかく綺麗に蒔けた面に「引っ掻いた」ような筋が入りやすくなります)
ですので、蒔絵粉が少なくなってきたら補充して、真綿が漆に触れないようにします。
実際に真綿を動かすときは「クルクル」と回転させながら、漆の上に粉を蒔き詰めていきます。
まずは地塗りした脇に、金粉を付けた真綿を叩きつけて、器の上に粉を落とします。
そして、その落とした粉を真綿で移動させるようにして、塗った漆の上に蒔き詰めていきます。
はい、「金粉」がしっかりと蒔けました◎
注ぎ口の外側も金粉をつけていきます。
ピッチャーの外側にも粉を蒔いていきます。
金粉が落ちても回収できるように、なるべく金粉の包み紙の上で作業します。
※「包み紙」だと小さいので、クッキングシートなどのツルツルした紙を広げた上で作業した方がいいです◎
ピッチャーの外側も同様に作業していきます。
「金粉」を器の上に落としてから、漆の上にそれを移動させていきます。
※ 全然、写真が撮れなかったので、上記の「動画」を参考にしてください。
蒔き終わってから、2~3分経ったら、粉を蒔いたところをチェックします。
もし、金粉が沈んで、薄っすらと漆が表面に浸みて(濡れ色になって)いる部分があったら、再度、真綿に金粉を付け、濡れ色のところに蒔き詰めてください。
金粉が「濡れ色」になっていた箇所というのは、地塗りの漆が「厚かった」所です。
厚みが均一じゃないと、こういうことが起こります。
これでようやく蒔絵の「粉入れ作業」が終了です。
漆を乾かす
作業が終わったら湿度の高い場所に置いて漆を硬化させます。
そう、漆は空気中の水分を取り込んで硬化するのです。不思議な樹液ですね◎
【漆が乾く最適条件】
え~!
「高」湿度!の場所??
はい、その通りです◎
漆が乾く上記の条件を作るために「箱」を用意します。
手っ取り早く手に入る「段ボール」を例にご説明します。
① まず下にビニール袋を敷いて、段ボールが濡れるのを防ぎます。
次に濡らして「固く絞った」キッチンペーパー(もしくはウエス)を中に置きます。
② 作業が終わった器を入れます。できればウエスから少し離した場所に置きます。
(上の画像よりも、もう少し離れた場所に置いた方がいいです)
③ 蓋を閉めて、湿度が逃げないようにします。
④ 鳩は入らないようにします◎
漆の乾きがよくないようでしたら、こまめに湿度を与えます。(5時間おきとか)大体の場合は、初めに湿度を与えてあげればしっかりと乾きます。
※【箱】…段ボール、コンテナ、発泡スチロール…等々、何でも構いません。
要するに湿度が逃げない(逃げにくい)ように「閉じた空間」が作れればオッケーです。
※【布類】…水を含ませておくためのものですので、何でも構いません。
使っているうちにカビが生えたり、匂いがしてきたりするので、「キッチンペーパー」が使い勝手がいいようです。(匂ってきたら捨てられますから)
漆の乾きに丸3日は乾かしてください。
お気づきかもしれませんが、そうです。「金」なのに「黄土色」です…。黄金色に光っておりません。
でも大丈夫◎ この後の作業で最後はピカッと光ります。
その作業は次回のページで~
【次の作業ページを見る↓】