ファイツ!!
2020.5 全面リニューアル済み
artist 斎藤裕美子さんの器
初心者向け
難易度:
充填材:錆漆(ペースト)
使用粉:真鍮粉(金色の金属粉)
こだわり度:丁寧・こだわり
今回のシリーズは「完成度の高さ」にこだわって、頑張ってきれいに仕上げます◎
※ 口周りが欠けたカップの「伝統的な本当の金継ぎ修理」のやり方を説明していきます。
このページでは金継ぎの工程のうち
〈繕い錆研ぎ~中塗りまで〉
のやり方を解説していきます。
【前回の作業を見る】↓
金継ぎ修理を始めるその前に…
本物の漆を使った修理方法ですので「かぶれる」可能性があります。
※ 万が一、漆が肌に付いた場合はすぐに「油(サラダ油など)」でよく洗って下さい。
油?? そうです。「油」をつけ、ゴシゴシ漆を洗い落としてください。その後、その油を石けんや中性洗剤で洗い流してください。
※ もし、かぶれてしまい、それがひどくなるようでしたら、医者に行って処方してもらってください。
【道具・材料と購入先を見る】↓
作業を始めるにあたって、まずは装備を…
金継ぎでは本漆を使うので「ディフェンシブ」に行きましょう。
ゴム手袋は必需品です◎ 漆をなめちゃいけません◎
※ 作業後、油分多めのクリームを手、腕など、肌が露出していたところ(夏場は脚・足にも)に塗っておくと、カブレにくかった…というコメントをいただきました。
(塗り忘れたときは、毎回、痒くなった…そうです)
気になる方はやってみてください◎
注意:
修理箇所に油分をつけてしまうと、その箇所だけ漆が乾かなくなります。(手脂でも乾かなくなります)
ご注意ください!
※ 修理箇所に油分が付いてしまった場合は、エタノールで入念に拭きあげるか、台所用中性洗剤で洗えば大丈夫です◎
【繕い錆研ぎ】
作業の目的
前回、ピンポイントで付けた「繕い錆」を研いで精度の高い平滑面を作っていきます。
ササさッと研ぐだけなので簡単です◎
〈使う道具/材料〉
道具:
③ ウエス→スポンジの方が使いやすい
④ 要らなくなったハサミ
⑤ 小さな水入れ
〇 水桶(もあった方がベター)
材料:
① 水差し
② 耐水ペーパー
→実は駿河炭が断然おススメ
※ その他、本漆金継ぎで使うおススメの道具・材料の一覧(購入先も)を↓こちらのページにまとめました。
▸ 本漆金継ぎで使う道具・材料ページ
※「要らなくなったハサミ」は耐水ペーパーを切るのに使います。
ペーパーを切るとハサミが「ばか」になって他のものが切れなくなります。
要らなくなったものか、100均などで買った安いものを使ってください◎
今回は「捨て塗り(漆塗り1回目)」の研ぎなので、#400~600程度の耐水ペーパーで研いでいきます。
ちなみに使う耐水ペーパーの選択ですが下記の表を参考にしてください。
使うペーパーの
チョイス!
▪▪▪
錆研ぎ | ・(きれいに削れていない場合) #240~#320 ・(きれいに削れた場合) #320∼#400 |
捨て塗り研ぎ (漆塗り1回目) |
#400~600程度 |
繕い錆研ぎ | #400~600程度 |
下塗り研ぎ (漆塗り2回目) |
#600~800程度 |
中塗り研ぎ (漆塗り3回目) |
#800~1000程度 |
の耐水ペーパーで研ぐのがよろしいかと思います。
● 耐水ペーパーの仕立て方
ちょっと面倒ですが、研ぎ面をよりきれいな形に仕上げるためと、修理箇所以外を傷付けないために、ペーパーにひと手間加えます。
耐水ペーパー
の仕立て方
▪▪▪
耐水ペーパーを小さく切って使います。
切れ味の落ちたハサミで、耐水ペーパーを1×1㎝くらいに小さく切ります。
それを「三つ折り」にします。
(↑ペーパーを三層構造の「硬い」板にして使います)
ペーパーは少量の水をつけながら研ぎ作業をおこないます。
理由は2つです。
1.研ぐ面積を極力少なくするため
2.平面保持強度を高めるため
【1の理由】
「耐水ペーパー」って研磨力がとても強いので、器の釉薬(表面)を傷つけてしまうのです。
研いだ後、修理箇所周辺の釉薬が薄っすらと曇っているのは、あれは「細かい傷」が付いたからなのです。
なので、「なるべく」ですが、周りの釉薬が傷つかないようにペーパーを小さくして使いたいわけです◎
【2の理由】
「三つ折り」するというのは、ペーパーの「平面保持強度」を高くするためです。
なるべく「研ぐ方の道具」の平面を維持したいわけです。
ペーパー1枚で研いでいると「へなへな」してしまいます。紙なので柔らかいですよね。
それを使って研いでいると↓この「Aコース」のような仕上がりになります。
↑ペーパー1枚で研いでいると「Aコース」になるわけです。
紙一枚だと「研ぐ方の道具」が柔らかいので、「研がれる方のもの=錆漆(←硬いもの)」の形に沿ってしまい、その形通りに研いでしまいます。
錆漆の「山の角の部分(エッジ)」は軽くさらうことはできるのですが、「綺麗な曲面に形作る」ことは難しくなります。
一方、「Bコース」のペーパー3枚重ね(三つ折り)だと、「研ぐ方の道具」の「硬さ」が3倍になるわけです。
「研がれる方のもの=錆漆」の形に引っ張られず、研ぎによって錆漆の形を作っていくことが可能になります。
※ ペーパー1枚に比べて…という話です。
平面維持強度をもっと上げて、「きれいにな形を作る」作業がしたかったら
「漆研ぎ用の“駿河炭”」が断然おススメです。
● 駿河炭の仕立て方
「研ぎ道具」としては、実は「駿河炭」が最強のアイテムです◎
何といっても、耐水ペーパーと違って器に傷が入らない!
できれば使ってみていただきたいです!
‣駿河炭が断然おススメな理由
駿河炭
の仕立て方
▪▪▪
炭は大きな塊で売っているので、自分で小さく切って使います。
① まずはカナノコ(金鋸)の刃で厚さ15~20㎜程度に輪切りにします。
② 次に薄い板状になった炭の塊りを、大き目のカッターナイフで「割っていきます」
③ さらにカッターで割って、大小さまざまな面積のものを用意します。
使う際は炭の「研ぎ面」を砥石(または耐水ペーパー)の上で研いで、平面にします。
少量の水を付けながら修理箇所を研いでいきます。
修理箇所を研いでいると炭の研ぎ面が崩れてきますので、ちょこちょこと砥石(またはペーパー)に当てて、研ぎ面を修正します。
詳しくはこちらのページをご覧ください↓
今回は「木賊とくさ」という植物を使って研いでいきましたが、皆さんは「耐水ペーパー」か「駿河炭」を使ってください◎
木賊を使う場合はこちらをご覧ください↓
● 木賊の仕立て/使い方
特徴
昔から「研ぎ」に使われている材料です。
金継ぎで使った場合、耐水ペーパーと違って、「器が傷付かない」そうです。
実際に僕が使った感覚ではあまり研磨力は高くないな~という感じでした。
(#400∼#600くらいに感じました)
ただ、研磨力に関しては木賊の個体差もありそうなので、研磨力の高いものもあるのではないか?と思います。
金継ぎで使われる以外に、木地のものを研ぐ時に、乾燥させたものをそのまま水を付けずに「空研ぎ」で使ったり、根付の制作でも仕上げの「水研ぎ」をする時に使われます。
※ 個人的には、金継ぎには「駿河炭」の方が遥かに適していると感じます。
木賊の仕立て方
簡単です◎
1:10~2:02まで再生
よく家先で、水を張った甕かめなどで育てているお宅がありますが、あの植物です。
意外と見かけますよね。
それを採って、自然乾燥させてあります。
使うときはしばらく水の中に浸けておきます。
そうすると、5分も待てば柔らかくなります。
(もっと水が多い方がいいです)
柔らかくなった木賊を折り曲げて使います。
折り曲げて二重にした方が、平面精度が出せますし、折り曲げ部分の先っちょを使って細かいところもピンポイントで研げます。
なかなか優れものです◎
▪実作業▪
前回、ピンポイントで付けた「繕い錆」を研いでいきます。
繕い錆ですが、結構「出っ張っている」ようでしたら、初めは「刃物」で軽く削っちゃってください。
本来、刃物を使わなくて済むくらいにきれいに繕い錆が付けられてたらベターです◎
今回も何となく「木賊」を使ってみました。
が、みなさんはペーパーか駿河炭を使ってください。
せっかく付けた追い錆を研ぎ過ぎないように気を付けます。
ちょこちょこウエスで研ぎ汁を拭き取りつつ、研ぎ具合を確かめます。
できればこの「繕い錆研ぎ」でとことん「形」を詰めていきたいところです。
ポケットルーペや虫眼鏡などでチェックして、ギリギリまで研いでみてください。
これでチェックするとかなりの精度まで詰めて研ぐことができます◎
ほんのちょっとの「出っ張り」も認識できるのです。
「超ミクロ」の世界に入り込む…のも工芸の醍醐味かと思います。
その世界に入ると存外、非常に魅力的な世界が広がっています(*_*)
ポケットルーペは「漆塗り」の際にも使いますので、僕にとってはマスト・アイテムです。
なかなかいい具合に研げました。
「凹み」と「ピンホール」もしっかりと錆漆が残埋め込まれています。
研ぎ終わりましたら、次は「漆の下塗り(漆塗り2回目)」です。
この後の《漆塗り⇆漆研ぎ》の目的
この後の作業ですが、、
《下塗り→下塗り研ぎ→中塗り→中塗り研ぎ…》
というように、「漆塗り⇆漆研ぎ」を繰り返します。
え~、、
そんなに何回も漆を塗らないと
いけないの??
そもそもその作業って
何のためにやるの?
目的は
① 平滑面の精度をさらに上げていく(ほんのわずかな凸凹を消していく)
② 錆地層を完全に漆層で覆う
③(個人の好みによって)修理箇所を「ふっくら」させる
…ということです。
●〈① 平滑面の精度をさらに上げていく〉について…
これまでの作業(「繕い錆→繕い錆研ぎ」)でかなり精度の高い平滑面ができたはずなのですが、それでも実はまだわずかに凸凹していることが多いのです。
大袈裟に言うと上図↑のような感じです。
意外と凸凹している。その凸凹を消していきたいわけです。
㊧:「下塗り(漆塗り2回目)」をほどこし…
㊨:「下塗り研ぎ」をしっかりとおこなう…
と、平滑面の精度が高くなります。
※ただし、漆層を研ぎ破って錆地が出てくる場合が多いです。
金継ぎ図書館的な理解だと、この「下塗り+下塗り研ぎ」作業というのは、漆を研ぎ破ってでも高精度な平滑な「形」を作っていく段階だと考えています。
次の「中塗り+中塗り研ぎ」でバチっと研ぎ破りなく研ぐための布石を置く作業と捉えています。
㊧:「中塗り(漆塗り3回目)」をほどこし…
㊨:「中塗り研ぎ」をおこなう…
と、しっかりと表面が漆層に覆われた精度の高い平滑面を作ることができます◎
●〈② 錆地層を完全に漆層で覆う〉について…
もし、平滑の精度は高いのだけど、錆地が露出した箇所がある場合、その錆地を漆層で覆わないまま、蒔絵の工程に進んだとすると…
蒔絵をする時の「地塗り」という作業は漆を「極薄」に塗るので、その際、錆地が露出した箇所に漆をわずかながら吸い込まれてしまいます。
そうすると漆が吸われた個所というのは周りと比べると漆層が薄くなっているので、蒔絵粉の付き方というのも「薄く」なってしまいます。
結果、仕上げの「粉磨き」をしている時に、粉が薄くしかついていない個所を研ぎ破ってしまう可能性があります。
(※ もしかしたら、蒔絵粉の付き方に「厚い/薄い」があると、薄っすらと凸凹ができるかもしれません。…けど、ほとんど影響がないと考えていいのかな??)
ですので、「錆地は完全に漆層で覆う」というのが基本になります。
※ 中塗り研ぎで錆地が薄っすらと出てきてしまったとしても、地塗り前に「擦り漆」を1,2回おこない、漆を吸わせておけば、地塗りの際の漆の吸い込みを止めることができます◎
●〈③ 修理箇所を「ふっくら」させる〉について…
人によって、修理箇所の「ふっくら具合」が強い方が好み…という方もいるかと思います。
好みの膨らみ具合になるまで「漆塗り⇆研ぎ」を何度でも繰り返して「盛り上げて」いってください。
納得がいったら、地塗り→蒔絵と作業を進めてください◎
それで結局、何回
漆塗りって
繰り返せばいいの?
端折れないのかな??
上記したように、「繕い錆」後の「漆塗り1回目(下塗り)」を研いだ時に、その下の「錆地」が出なかったら、そのまま「地塗り→蒔絵」と進んで大丈夫です◎
逆に、「中塗り研ぎ」が終わっても、まだ錆地がガッツリ露出してきているようでしたら、さらに「漆塗り⇆研ぎ」を繰り返した方が、最後の仕上がりはきれいになります。
とにかくきれいに仕上げたければ「錆地が露出していない状態」を作ることが最低条件なのです。
とはいえ、「そこまでの仕上がりのきれいさは求めてません」とか「もし、ほんのちょっと研ぎ破ったとしてもそのくらいは気になりません」という方はあまり根を詰めて作業しなくていいと思います。
特に「初心者」のうちは神経質に頑張り過ぎると疲れてしまったり、挫折してまったりするかもしれませんので、そこそこ慣れてきたら、「仕上がりのキレイさ」を追求していったらいいかと思います◎
【下塗り(漆塗り2回目)】
繕い錆の上に漆を塗っていきます。
作業の目的
目的は(上記での説明の繰り返しになりますが)…
① 平滑面の精度をさらに上げていく(ほんのわずかな凸凹を消していく)
② 錆地層を完全に漆層で覆う
③(個人の好みによって)修理箇所を「ふっくら」させる
…ということです。
〈使う道具/材料〉
道具:
② ティッシュぺーパー
④ 蒔絵筆またはインターロン筆
⑥ 練りベラ ‣作り方ページ ‣作り方の動画
⑦ 作業盤(ガラス板など)
‣作り方ページ ‣作り方の動画
○ ゲル板 ○ サランラップ
材料:
① アルコール(テレピン、灯油など)
⑤ 精製漆(今回は”呂色漆”…黒い色の漆)
⑧ サラダ油
※ その他、本漆金継ぎで使うおススメの道具・材料の一覧(購入先も)を↓こちらのページにまとめました。
▸ 本漆金継ぎで使う道具・材料ページ
「生漆」しか持っていないのですが、どうしたらいいですか?
はい、それではこちらへどうぞ ↓
↑ この茶色半透明の漆でも「漆塗り」はできるのですが、半透明だと「どこを塗ったのかわかりにくい」のです(涙)漆に色を付けたい方はこちらへ ↓
使用「前」の筆の洗い方
※ 蒔絵筆(高級な筆)の場合は「漆」で洗ってください。毛が痛みづらくなります。
‣ 蒔絵筆の洗い方の動画
まずは筆をテレピン(または灯油)で洗って筆の中の「油」を洗い出します。
▸ 詳しい作業前の筆の洗い方
どうして筆に「油」が付いてるの??…かといいますと、漆作業で使った筆は最後に油で洗っているからなのです。油で洗うと筆の中に残った微量な漆が乾きません。
漆と油とは相性が悪いのですが、それを利用して、保管するときには油で洗います。
逆に、使う時にはその油を除去します。
作業工程
① 畳んだティッシュに筆を包む
② ティッシュをギュッと摘まんで、筆の中の油を吸い取る
③ 作業板の上に数滴テレピンを垂らす
④ その上で筆を捻ったりしてテレピンをよく含ませる
⑤ 筆をティッシュで包む
⑥ ティッシュをぎゅっと押えて、「油+テレピン」を絞り出す
⑦ 「4→5→6」を2~3回繰り返す
① 折り畳んだティッシュに筆を包みます。
② ティッシュの上に筆を置きます。
④ これを3,4回繰り返して、しっかりと油を搾り取ります
⑤ 作業盤の上にテレピンを数滴、垂らします。
⑥ 筆にテレピンを含ませます。
筆は作業盤の上で捻ったりして、しっかりとテレピンと馴染むようにします。
⑦ ティッシュの上に筆を乗せます。
⑧ ティッシュの上からギュッと摘まんで、「油+テレピン」を絞り出します。
この後、「⑥→⑦→⑧」を2~3回、繰り返します。
この作業で筆のなかの油分をしっかりと除去します。
筆の中に油が残っていると漆が乾かないことがありますのでご注意ください。
「エタノール」などの揮発性の強いもので洗うと、テレピンよりも油分がしっかりと除去できますが、その分、筆への負担も大きくなり、傷みやすくなります。
ですので、金継ぎ図書館では筆が傷みにくいテレピン、灯油などをおススメしています。
ちなみに筆が一番、痛まないのは「漆」で洗うことです。
‣ 漆での筆の洗い方動画
特に高価な「蒔絵筆」を洗う際には漆で洗ってください。
筆に漆を付けて、いきなり塗り始めると、初めのうち、テレピンの影響で薄くなる可能性があります。
ですので、「塗り始める」前に一度、筆に漆を含ませて、筆と漆とを馴染ませてください。
漆の準備
筆の準備が済んだら、今度は漆の用意をします。
漆の中にゴミがたくさん入っている場合などは「濾し紙」で漆を濾してきれいにします。
必要な方はこちらをご覧ください↓
▪実作業▪
まずは「極細筆」を使って「輪郭」を括っていきます。
塗りの手順
▪▪▪
始めは「極細筆」↑を使用
㊧ 塗りの手順は「広い面」も「狭い面(線)」も同じです。
1.㊨ まずは「極細筆」で輪郭を塗っていきます。
キワキワまで塗り残しが無いように気を付ける。かつ、なるべくはみ出さない◎
ここからは「小筆」↑を使用
2.「小筆」輪郭の内側を塗り潰します。
とりあえず内側全体に漆を配ってしまいます。
3.㊧ 修理箇所の「短手方向」(例えば左→右)に小筆を細かく通す。
「隙間」が空かないように、「筆を通した跡」に少し被せるようにして次の筆を通す。
※ 下図を参照してください。
線が細過ぎて、「短手方向に」筆が通せない場合は無理せずスルーしてください。
(Ⓑの細い箇所)
4.㊨ 反対方向の短手側に筆を通す。
これら作業の際、「漆の塗り厚」がなるべく均一になるように意識して、筆を通してください。
ちょっと「漆の厚いところから、薄いところに移動させる」ような感覚です。
つまり、漆の表面を「撫でるように」筆を動かすのではなく、もうちょっと筆圧を上げる感じです。
「筆を通した跡」に少し筆を被せて通す…とは↑こうゆうことです◎
(伝わりますか??)
5.同様に「長手方向」にも筆を揃えて通します。
線が細過ぎて、「短手方向に」筆が通せなかった部分でも、「長手方向」になら通せることが多いので、できるだけ筆を通して、漆の厚みを均一にしておきます。
特に最後の「通し」では、「筆跡(筆を通した筋)」を消すような感覚で、撫でるような筆圧で通してください◎
そんなのわかっとるワイ!
と言われちゃいそうですが、一応、「縁取り」の手順を載せておきます↓
「キワ」塗りの手順
▪▪▪
「極細筆」でキワを塗るときの手順です。
「極細筆」↑を使用
※ 修理箇所の部分だけを「塗り残し&はみ出し無く」きれいに塗りたい場合の話です。
漆がはみ出しても気にしない方針でやっている人は読まなくて大丈夫です◎
↑最初からキワキワを攻めて一発で塗れたら、めちゃくちゃオッケーです◎
ですが、「一発」で「はみ出し&塗り残し」なしで塗るのは至難の技ですよね。
一発でキワを塗ろうとすると下図のように↓
所々、はみ出してしまう箇所が出てきやすくなります。
ですので、「はみ出さないで塗りたいな~」という人は、塗りの一発目からキワのぎりぎりを攻めすぎない方がいいと思います。
(特に技術がついてきていないうちは)
まずは上図↑のようにキワの「ぎりぎり内側を塗る」ような感覚を意識します。
キワの「境界線の内側」を強く意識します。
所々、キワに「塗り残し」があってもいいです。
「はみ出す」よりも「塗り残す」方がいいです◎
もちろん、きわきわまでピタッと塗れたら、それが一番いいです。
次にキワの塗り残しを、筆を何度か通して塗り潰していきます。
筆を何度も通しつつ、修理箇所の「内側から外側(「キワ」の境界線)に向かって」、徐々に漆で塗り潰していくようなイメージでキワ塗りの作業をおこないます。
輪郭が塗り終わったら、その「内側」を普通の小筆で塗っていきます。
漆は厚く塗ると「縮む」可能性があります。
ですので、基本的には「薄く」「均一」になるように塗っていきます。
「ちぢむ…ってなんですか??どういうことですか?」
はい、厚すぎると”ちぢみ”が生じます。しわしわになります。しかも中が乾きません。一か月くらい待てば乾きますが。
漆のちぢみ
▪▪▪
● 縮みが起こる条件
① 漆の塗り厚が厚過ぎる
② 乾きが早すぎる
・湿し風呂の中をあまりに高温湿度条件にした場合
・濡れタオルが近すぎる場合
こんな感じになります。シワシワになるわけです。
塗膜表面と塗膜の中の方との乾くスピードに「差」があり過ぎるとこうなるのだと思います。多分。
漆がはみ出した時
の掃除
▪▪▪
● 地塗り以外の漆塗りの場合(漆の捨て塗り/下塗り/中塗りの場合)
・アルコールをほんのり含ませた綿棒でピンポイント掃除
・アルコールを付けたウエス/ティッシュで全面拭き取ってやり直し
・朴の木ベラでピンポイント掃除
(ルーペで見ながら作業するとやりやすい)
漆を乾かす
作業が終わったら湿度の高い場所に置いて漆を硬化させます。
そう、漆は空気中の水分を取り込んで硬化するのです。不思議な樹液ですね◎
【漆が乾く最適条件】
え~!
「高」湿度!の場所??
はい、その通りです◎
漆が乾く上記の条件を作るために「箱」を用意します。
手っ取り早く手に入る「段ボール」を例にご説明します。
① まず下にビニール袋を敷いて、段ボールが濡れるのを防ぎます。
次に濡らして「固く絞った」キッチンペーパー(もしくはウエス)を中に置きます。
② 作業が終わった器を入れます。できればウエスから少し離した場所に置きます。
(上の画像よりも、もう少し離れた場所に置いた方がいいです)
③ 蓋を閉めて、湿度が逃げないようにします。
④ 鳩は入らないようにします◎
漆の乾きがよくないようでしたら、こまめに湿度を与えます。(5時間おきとか)
大体の場合は、初めに湿度を与えてあげればしっかりと乾きます。
※【箱】…段ボール、コンテナ、発泡スチロール…等々、何でも構いません。
要するに湿度が逃げない(逃げにくい)ように「閉じた空間」が作れればオッケーです。
※【布類】…水を含ませておくためのものですので、何でも構いません。
使っているうちにカビが生えたり、匂いがしてきたりするので、「キッチンペーパー」が使い勝手がいいようです。(匂ってきたら捨てられますから)
漆の乾きに1~2日間待ちます。
??何で「湿度の高い」場所に置くの??乾かないんじゃない?…と思われますよね。
実は漆が乾くメカニズムというのが、普通じゃないんです。
…ということなのです。
漆の世界では「硬化」することを「乾く」と呼んでいる…ってことです。
「ラッカーゼ」が元気に働いてくれると、漆が硬化するということでして、、、
【漆が乾く最適条件】
湿度:70~85%
温度:20~30℃
ということになります。
だたし、この条件は「最適条件」ということでして、この条件を上回っていても、下回っていても、乾きます。
しかし、この最適条件から
●「下回るにつれ」と「乾きづらく」なっていき、「大幅に下回る」と「ほぼ乾かなくなる」こともあります。
●「上回るにつれ」と「乾きづらく」なっていき、「大幅に上回る」と「ほぼ乾かなくなる」こともあります。
のでご注意ください。
「段ボールなんてダサくて嫌!」という方は↓のページを参考にバージョン・アップさせていってください。
使用「後」の筆の洗い方
漆を使った筆は作業後、「油」で洗います。
油で洗わなで、アルコールやテレピンで洗うと筆の中に僅かに残った漆が硬化するので、次第に筆がゴワゴワしてきて使い物にならなくなります。
作業工程
① 折り畳んだティッシュで漆の付いた筆を包む。
② ティッシュを摘まんでギュッと漆を絞り出す。(数回おこなって、しっかりと絞り出す)
③ 筆に油を含ませる。
④ 作業盤の上で捻ったりしながら油を馴染ませる。
⑤ 筆の根元からヘラで「油+漆」を「優しく」しごき出す。
(特に毛先はヘラが強く当たらないようにする。強く当てると毛先が劣化してカールしてきたり、まとまらなくなってきます)
⑥ ヘラで廃油を掬い、ティッシュに吸わせる。
⑦ 再び油を含ませる
⑧ 作業盤の上で、ヘラを使って絞り出す
⑨ 廃油の中に漆分が(ある程度)含まれなくなるまで…つまり「透明度」が高くなるまで繰り返す。
⑩ 最後に綺麗な油を筆に含ませ、軽くティッシュに吸い取らせます。
⑪ 洗い終わった筆は付属のキャップをして保管する
使う道具/材料
・サラダ油
・ゲル板
・ティッシュペーパー
・エッジが鋭くないヘラ(筆洗いベラ)
① 折り畳んだティッシュの上に漆の付いた筆を置きます。
② 両側から筆をティッシュで包んで、ぎゅっと摘まみ、漆を絞り出します。
③ これを数回おこなって、しっかりと絞り出します。
この時点でしっかりと漆を絞り出してしまった方が、この後の「油で洗う」時、筆が早く綺麗になります◎
③ 油の入った瓶に筆を入れて、油を含ませます。
④ ゲル板の上で優しく捻ったり、クネクネ(?)させたりして、筆に油を馴染ませます。
(こんな表現でいいんでしょうか?)
⑤ ゲル板の上で筆の根元からヘラで「油+漆」を「優しく」しごき出します。
※ 「優しく」しごかないと筆が痛みやすくなります。特に「毛先」が痛みやすいので、毛先は軽く触る程度にしてください。
※ 根元に漆が残りやすく、それが影響して、筆先が割れてくると思われますので、入念に掻き出します。
⑥ 筆の中の「油+漆」の廃油がしごき出せたら、ヘラで廃油を掬い、、、ティッシュに吸わせます。
こうして廃油をどかしておくと、作業盤の上が常にクリーンな状態で筆の洗い作業ができます◎
この後は「③→④→⑤→⑥」を繰り返します。
廃油の中に漆分が(ある程度)含まれなくなるまで…つまり「透明度」が高くなるまで繰り返します。
⑦ 最後に綺麗な油を筆に含ませ、軽くティッシュに吸い取らせます。
⑧ 付属のキャップを被せて終了です◎
※ キャップが無かったらサランラップを丁寧に巻いてください。キャップがない、もしくはキャップを作りたいという方はこちら↓を参考にしてください。
▸ 筆のキャップの作り方
使用後の筆の洗い方でもっと詳しく知りたい方は↓こちらのページをご覧ください。
▸ 使用後の詳しい筆の洗い方
【 お掃除、お掃除 】
全ての作業が終わったら作業板を掃除します。
テレピン(又はエタノール、灯油など)を垂らして、ウエスやティッシュできれいに拭き取ってください。
caution !
厳密に言うと、掃除をし終わった後の作業板の上には「ごくごく薄っすら」と漆の成分が残っています。
ですので、この作業が終わるまではしっかりとゴム手袋をして、ゴム手袋を外したあとは作業板を含めて漆の道具類を触らないようにした方がいいです。
【下塗り研ぎ】
作業の目的
目的は(上部での説明の繰り返しになりますが)…
① 平滑面の精度をさらに上げていく(ほんのわずかな凸凹を消していく)
…ということです。
漆を研ぎ破って、錆地が出てきてもいいから、とにかく「精度の高い平滑面」を作ることを意識しつつ、研いでいきます。
〈使う道具/材料〉
道具:
③ ウエス→スポンジの方が使いやすい
④ 要らなくなったハサミ
⑤ 小さな水入れ
〇 水桶(もあった方がベター)
材料:
① 水差し
② 耐水ペーパー
→実は駿河炭が断然おススメ
※ その他、本漆金継ぎで使うおススメの道具・材料の一覧(購入先も)を↓こちらのページにまとめました。
▸ 本漆金継ぎで使う道具・材料ページ
※「要らなくなったハサミ」は耐水ペーパーを切るのに使います。
ペーパーを切るとハサミが「ばか」になって他のものが切れなくなります。
要らなくなったものか、100均などで買った安いものを使ってください◎
今回は「下塗り(漆塗り2回目)」の研ぎなので、#600~800程度の耐水ペーパーで研いでいきます。
▪実作業▪
少量の水を付けながら研いでいきます。
この「下塗り研ぎ」の段階では「研ぎ破らないように注意しよう」とするのではなく、なるべく平滑面の精度を上げていくことを意識します。
つまり、漆を「研ぎ破って」もいいので、とにかく「きれいな形」に成形していくことを優先させてください◎
この後は「下塗り(漆塗り2回目)」と同様の手順で、「中塗り(漆塗り3回目)」を施してください。
本日の作業はここまでです◎
お疲れ様でした。
次の作業をご覧になりたい方はこちらのページへ↓
その他の作業ページを見る