チャレンジ!
一日金継ぎ教室の風景を解説していきます。1日教室では「簡漆金継ぎ」のやり方を採用しています。本物の漆も使った修理方法ですので「かぶれる」可能性があります。ご注意ください。
このページですが、最初、ただ金継ぎ教室の作業風景だけを載せようと考えていたのですが、それだと皆さんが見てもあまり意味はないかな??と思ったので、いつもながらではありますが、やや詳しめに解説していこうと思います。
「私もそのうち金継ぎ教室をやってみたい!」と思っている方にとっても参考になればと思います。工程手順やペース配分、待ち時間の使い方など、ワークショップ主催者にとって役に立つようになるべく詳しく載せていきたいと思います。
前回のレクチャー説明を見る
金継ぎ図書館の一日金継ぎ教室とは
「金継ぎを一日でこなしちゃおう!」という、やや強引な教室です。(3~4時間)
本漆だけを使った伝統的な金継ぎ技法で行うと全6~10回くらいのレクチャーが必要になるところを、合成の接着剤やパテも併用することで、ググっと(やや強引に)圧縮して1回で終わらせてしまいます。
「それって、つまり”新うるし”とかいう”なんちゃってうるし”を使うやり方??」
いえ、違います。仕上げにはしっかりと”本漆”を使います。(※ 合成うるし、新うるしなどは使いません)
本漆を使いますのでカブレる可能性が無いとは言えません。ご注意ください。
「カブレ」はご本人と漆との相性次第です。心配な方は病院で「パッチテスト」を行い、ご確認いただけたらと思います。
※ 短時間( 3~4時間)で完成させるワークショップですので、金継ぎ図書館内で解説している「簡漆金継ぎ」の作業工程を少し端折ってさらにコンパクトにしています。
例えば、同じ作業を2,3回、繰り返せば(漆の塗りを3回繰り返したり、ちょっとした凹みを再びパテで埋めたりすれば)もっときれいな仕上がりになりますが、このワークショップではその作業を1度しか行いません。
一日金継ぎ教室で使う材料・道具類 など
〈 貸し出し用道具類 〉
作業板、ヘラ3種類、筆2種類、ダイヤモンドヤスリ、彫刻刀2種類、蒔絵紛(真鍮)、筆箆置き、粉包み紙の押さえ(重石)
〈 共有道具・材料類 〉
接着剤、パテ、アルコール、サランラップ、ティッシュ、漆、サラダ油、油入れ容器、水入れ容器、ゴム手袋、耐水ペーパー、仮止めテープ(器を持ち帰るときに使う)、ゴミ入れ、割りばし…などがあります。
一日金継ぎ教室受講者への呼びかけ
一日金継ぎ教室はなんといっても「短時間」となりますので、その時間内に直せる範囲の「壊れ具合」の器を持ってきて貰います。(←これすごく重要です!)
たまに「これ、無理でしょ!」って壊れ具合のものを持ってくる人もいるので、かなり強めにアナウンスしておくか、もしくは事前に「当日、直す器」の写真を送ってもらい、許可が下りたものだけを持ってきてもらう…とした方がいいかもしれません。
(意外と困った人がいるんです…(涙))
以下が受講者を募集する時のアナウンスです。
1日金継ぎ教室の仕上げで使う金属粉は「真鍮(金色の金属)」です。
※ 「金粉」ではありませんのでご注意ください。
↓こんな感じに仕上がります。
【直せる器の目安】
- 「欠けの場合」 1㎝×2cm程度まで
- 「ひびの場合」 10㎝程度まで
- 「割れの場合」 本体+割れた破片=2、3片程度まで
- ガラスは不可
・ 複雑な壊れ方をした器を持ってくると、その方だけ修理に時間がかかり、レクチャー全体の進行が大幅に遅れます。ご遠慮ください。特に「割れた器」の場合、簡単にできそうなものを持ってきてください。
※ レクチャーで「困った人」がたまにいらっしゃいます(涙)。ぜひぜひレクチャー自体がスムーズに進むよう、ご協力ください。お願い致します。
【受講者に持参していただく物】
- 壊れた器 2~3個
- ※3直した器を入れて持ち帰る箱(器が入る大きさのアクリル・ボックス、段ボール箱など)
- エプロンなどの作業着(漆が洋服についた場合、きれいに拭き取ることができませんのでご注意ください。
❖ 「使い捨てゴム手袋」はこちらでご用意致します。
・ ※3…ワークショップで直した器をそのまま持って帰っていただきます。
その際に必要な「器を入れる箱」をご持参ください。↓このような箱です。
<一日金継ぎ教室の工程 05> ペーパーで研ぐ
研ぎで使う道具と材料
- 道具: ③ 豆皿(水入れ用) ④ ウエス ⑤ はさみ(ペーパー切り専用にしたもの)
- 材料: ① 耐水ペーパー(今回は#240) ② 水
主催者側の方で、あらかじめ耐水ペーパーを1×1㎝くらいに小さく切ったものを大量に用意しておき、それを使ってもらいます。
耐水ペーパーは↓このように使います。
- ペーパー研ぎで使う道具
- パーパーを1㎝×1㎝くらいにハサミで切る
- 三つ折りする
- 小皿に出した水をほんの少しつける
なるべく前回の作業(彫刻刀の削り)できれいなラインを出しておきたいところですが、「彫刻刀は苦手だな~」という方は無理せず、そこそこでやめておいてもらい、このペーパー研ぎで頑張ってもらいます◎
ほんのちょっと、水を付けて研ぎます。
なんで「水」を付けるんですか??
水を付けるとペーパーの「目詰まり」が起きづらくなるので作業効率が向上します。(「目詰まり」が起きると、全然、研げなくなります)
それから、作業をしていると、ペーパーと研がれているモノとの間に「研いだ粉」が生じます。
そのまま作業をしていると「粉」の上をサラサラ研いでいることになり、ペーパーが「モノ」と接っしていないことになります。
水を付けながら作業をすることによって、水がこの「研いだ粉」を「泥水」として脇へどかしてくれます。
→「研がれるモノ」とペーパーが常に接している状態をキープでき、作業効率がアップします◎
ペーパーの方が陶器の釉薬より「固い」ので、ペーパーで研ぐと器が傷つきます。
ですので、「なるべく修理箇所のみ」を研ぐようにします。
まわりの生地は研がないようにしたい…けど、ちょっとそれは無理ですよね。どうしても少しは研いでしまいます。
なので「そこそこ」というか「折り合い」をつけながら作業をしてください。
そう、あんまり厳密になり過ぎてもね~
欠けたところに埋めたパテが器のラインとスムーズに合うまで研ぎます。
「ちょっと出っ張っている」方がお好みでしたら、それはそれで全然オッケーです◎
指の腹を「すーーっ」と通して、どのくらい出っ張っているのか?
確認しながら作業をしてください。
割れた器の方も、その接着ラインをサラサラと軽く研いでいきます。
こちらも「なるべく」ですが、ライン上のみを研ぐようにしていきます。
指を通した時、「違和感」が無くなるまで研ぎます。
あまりゴリゴリ研ぎ過ぎないように。
ちょっとは「気合」を入れて。
<一日金継ぎ教室の工程 06> 漆を塗る
- 道具: ② ティッシュペーパー ③ 付け箆 (▸ 付け箆の作り方) ④ 小筆 ⑦ 作業板(クリアファイルなど) ・ ゴム手袋
- 材料: ① サラダ油 ⑤ 精製漆(今回使ったのは弁柄漆) ⑥ アルコール
※ 本漆を使う作業では必ず「ゴム手袋」をしてください。
まずは使う前に筆をテレピンで洗って油を洗い出します。
▸ 詳しい筆の洗い方
筆に”油”が含まれているので(!?)、毎回、使うときにはまず筆の中の油を取り除きます。(←作業が終わったときに筆を”油”で洗っているからです)
- 作業板の上に数滴テレピンを垂らす。
- その上で筆を捻ったりしてテレピンをよく含ませる。
- ティッシュペーパーの上でヘラで筆を優しくしごく。
筆の準備が済んだら、今度は漆の用意をします。
- 漆のチューブの蓋を開ける。(この写真で使っているのは”呂色(黒色の漆)”です)
- 作業板の上に少量の漆を出す。
- 筆に漆を馴染ませる。
- 作業板の上に何本か線を引き、漆の量を調節しつつ、含み具合をチェックする。
筆と漆の準備が済んだらいよいよ塗りに入ります。
作業中に、漆を塗った箇所をうっかり持ってしまうことがよくあります(涙)ご注意ください。
もし触ってしまったら、ティッシュにエタノールを含ませ、それで手袋に着いた漆を拭き取ります。
器についてしまった「余計」な漆も拭き取ります。
触ってしまった影響で、塗った箇所が汚くなってしまったら、一度、エタノールで拭き取ってしまっていいと思います。その後、再度、塗り直します。
基本的には器の内側を先に塗って→その後、器の外側を塗った方が塗りやすいと思います。
けど、どちらでも大丈夫です◎
パテ修理した面を完全に覆うように漆を塗っていきます。
漆は修理箇所から「なるべく」はみ出さない方がいいと思います。
(とはいえ「パテを覆う」にはほんのちょっとはみ出すことになると思いますが)
釉薬の上に塗られた漆はどうしても少し剥がれやすいので。
漆は均一に薄く塗ります。これが原則です。
作業板の上で筆に含まれる漆の量を調節してください。部分的に漆が厚くついてしまったら、筆でそれを広げるか、作業板の上で筆をヘラでしごいて(筆の中の漆を掻き出し、漆の「含み」を少なくした状態で)、器に塗った漆を撫でるように吸い取ります。
マグカップとか「見込み」の深いものは作業がやりづらいです。
もちろん、「太い線」でもオッケーです。太い方が似合いう器もあると思います。「細い」だけが価値があるわけじゃない!はず◎
パテを埋めた部分と接着剤の部分は完全に塗り潰します。
口元部分も塗ります。ここも塗りづらい。内側も漆を塗ります。
最後に全体をチェックして、塗り残しがないかよく調べます。
(↑近いうちに画像を載せます)
器の口周りも、高台の部分も漆を塗った場合、机の上に直で置けないので、「割りばし」を二本渡して、その上に置きます。
塗り終わったら油で筆を洗います。 ▸ 詳しい筆の洗い方
洗い終わったら筆にキャップをつけて保管します。
キャップがなかったらサランラップで優しく包んでください。
<一日金継ぎ教室の工程 07> 真鍮粉を蒔く
- 道具: ① あしらい毛棒(柔らかい毛質の筆) ③ 重石
- 材料: ④ 蒔絵紛(今回は真鍮粉を使用)
いよいよ最後の作業です。
「蒔絵」です。
難しそう…ですね。
いえいえ、そんなことはありません。今回は「簡単な蒔絵」ですので、大丈夫◎
筆でバサッと真鍮粉を乗せてそのあと漆の上に真鍮粉を掃いていくだけです◎
カンタン、カンタン◎
蒔絵紛を包んでいる包み紙を広げて、重石で押さえます。
あしらい毛棒の穂先を真鍮粉の下に滑り込ませて、掬い取るようにします。
それを先ほど上塗りした漆の上に「バサッ」と乗せます。真鍮粉は多目に乗せます。
軽いソフトタッチでさっさっさっと掃いていきます。
真鍮粉が常に「たっぷり」と乗っかっている状態にしながら筆で掃いていきます。
真鍮粉が少なくなると筆で「漆」を引っ掻いちゃいますので。
なるべく包み紙の上で作業をして、落ちた蒔絵紛がそのまま回収できるようにします。
割れたラインの上も同様に蒔絵作業をしてきます。多目の真鍮粉を掬い取って…
接着したラインに乗せて、優しく筆で掃いて真鍮粉を広げていきます。
筆でゴシゴシ引っ掻かないようにソフトタッチです。
この時点で、修理箇所周りの余計な真鍮粉はある程度きれいに掃いてしまいます。あまり「ドッサリ」乗っていない状態にします。
どっさりと真鍮粉が乗ったままだと、修理箇所の周りに残っている真鍮粉まで一緒に固まってしまいます。
(ラインが太くなったり、少しはみ出したりしてしまいます)
「毛細管現象」ってことかな…?
器の内側の余分な真鍮粉も掃いて出します。
太くても、細くても、ぴしっとしていても、よれよれしていても
いいのです◎
出来ました!
これでレクチャーはお終いです。
えっ!? お終い??
そです。お終いです。
あとは、このまま器をそーっと家に持って帰って、家で漆を乾かしてもらいます。
真鍮粉は修理箇所の周りに付いたままですが、このままにしておきます。
この真鍮粉を強引に拭き取ろうとすると修理部分の真鍮粉まで取れてしまう恐れがあるので、このままで。
オッケーオッケー。上出来です◎
長時間どうもお疲れ様でした。
<一日金継ぎ教室の工程 08> 持って帰る箱に詰める
さぁ、最後の作業です!
この「箱詰め作業」ですが、ここで「テキトー」にやると、
今までの努力が水の泡となりますので、しっかりとやりきってください。
一日金継ぎ教室では、直した器をそのまま持って帰っていただくので、その際に必要な「器を入れる箱」を各自、持ってきてもらっています。
↓ 持ち帰り方の例です。
仮止めテープはこちらでご用意しております。
※ ご自分の修理した器が余裕をもって「置ける」大きさの箱をご用意ください。
※ 漆はまだ乾いていません!ので、漆が他の器や箱の壁につかないようにします。
※ あくまでも「仮の固定」ですので、注意しながら持って帰ってください。
ちょっと持ち運びが大変そうですよね…(涙)
ご面倒とは思いますが、よろしくお願い致します。
※ 家に帰ってから固く絞った濡れタオル、塗れ雑巾などを箱の中に入れて湿度を高くしてください(湿度70%くらい)。1週間以上期間を置いてから、柔らかめの食器用スポンジで水洗いして金属粉を洗い流し、使い始めてください。
・ 直した器の取り扱い方はこちらでご確認ください。
▸ 金継ぎ修理をした器の取り扱い方
なぜに講義内容?
初の「金継ぎ教室・主催者側」向けのコンテンツです。
なにゆえ同業者に向けて情報を発信するの??…と言いますと、
「同業者」の中に必ず志を同じくする「同志」がいるはずだからです。
(まぁ、嫌な感じの人も当然、いると思いますが(苦笑))
その人たちの助けになることをし続けていれば
いつかその人たちからも「返礼」や「挨拶」が返ってくるはず。
そうなれば「感じのよい人たちが集まった”金継ぎチーム”」のようなものを
立ち上げることができます。
金継ぎ図書館の野望の一つは
「国境なき金継ぎ団」を立ち上げること!(←アホか、コイツは)
世界のどこかで器が壊れて悲しんでいる人がいる限り、
国境なき金継ぎ団はその活動を止めることは無いのです◎
お互い「手持ちのもの」をどんどん分け与えることに喜びを感じる
人たちが集まったチームはどこよりも強く、楽しいはず◎