ファイツ!
「合成うるし(新うるしなど)」は便利で扱いやすいですが、用途には注意が必要です。
合成うるしを使った「簡易金継ぎ」をやっている金継ぎ師さんはあまりこのことを語りたがらないので、金継ぎ図書館では詳しく解説していきます。
「新うるし」って何?
「新うるし」…?
それって「漆」ってことでいいの??
科学技術の進歩のお陰で開発された「特別な漆」ってこと?
ノー!
NOです。全然NO!!
「新うるし」は「本物の漆」じゃありません。
漆っぽく見えるように作った偽物の合成塗料です!
合成うるし(新うるしなど)とは
▪▪▪
植物性の樹液を主原料とし、「漆っぽく見える」ように調合された「釣り具塗装のため」の合成塗料です。本物の天然の漆ではありません。くどいようですが「偽物」です。
ちなみにですが、、
「新うるし」というのは、いくつかのメーカーが出している「合成うるし」の中の一つの商品名です。
他にもいろいろなメーカーがそれぞれ名前(「高級うるし」「特性うるし」…などなど)を付けて販売しています。
本物の「漆」じゃないのに、「うるし」って表記していいの?
紛らわしいね~
え~!漆じゃないの!?
新うるしでワークショップをやっている人のほどんどが「これは現代に開発された、カブレにくく、扱いやすい初心者向けのウルシです」とだけ言ってる場合が多いよ。
これって、何も知らない参加者さんが「へ~“漆”の新しいやつなのね」と勘違いするように印象操作をしている感じがする!!
なんだか一般の僕たちを騙している感じがするな~
まぁ、まぁ、熊さん、そう怒らないで。
数は少ないけど、誠意を持ってきちんとアナウンスしながら「新うるし」のワークショップをやっている人もいるんだから◎
僕たちがガンバって、一般の人たちに正確な情報を届けていこうよ。
おっ!熊さん、怒ってますね~。
そうですね~。確かに熊さんが怒り出すのも頷けます。
もしもですが、、
「これは現代に開発された“ハイパー真珠”のネックレスです!従来の真珠よりも光沢が5倍、強度も5倍なので、非常識なほどの輝きが永遠に持続します!!しかも従来の真珠のお値段の1/100だよ!」
…と言われて買ったものが「強化プラスチックのフェイク真珠」だったら、誰だって怒りますよね。
というか、これは明らかに「詐欺」ですよね。
この「ハイパー真珠のネックレス」を作っているメーカーに対しても不快感を抱くし、そのネックレスが「偽物」と知っていながら、いかにも「本物の真珠っぽい印象」を抱かせ、巧妙に売りつけてきた販売業者にも怒りの感情が湧きますよね~。
とはいえ、商標に「うるし」という言葉を使っても違法じゃないようなので、鳩さんが言うように、僕たちが地道にアナウンスしていくしかないですよね◎
新うるしって安全なの??
ひとまず「新うるし」の安全性について書かせていただきます。
※ 他の合成うるしについても基本的には同じだと思います。各メーカーの商品説明について知りたい方はこちらをご覧ください↓
‣ 各メーカーの商品説明と安全性について
新うるしメーカー側の説明
ふぐ印の
【新うるし】
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メーカー側(桜井釣漁具株式会社)の説明
・本品は毒性の強い物質ではありませんが念の為、食器等口に含む恐れの有る物に塗装しないでください。
・長時間匂いを吸うと健康を害する恐れが有ります。使用中及び塗装乾燥中は窓を開けて置く等室内換気に留意してください。
「毒性の強い物質ではない」という表現を読むと、それはつまり「弱いけど毒性のある物質」…ってことなんでしょうかね?
直接会社に電話で問い合わせしたところ…
…と説明されました。
↑これをどう受け止めるか?ですよね。
合成うるしに対する金継ぎ図書館のスタンス
上記のメーカー側の説明を考慮したうえで、金継ぎ図書館では以下の使い方をおススメしています。
合成うるしで壊れた器を直してもOK!
ただし、「合成うるし」を使って直した(簡易金継ぎ)器は直接、修理箇所に口を付けない使い方を強くおススメします。
例えば
・食器として使わない(大切な思い出の品として飾っておく・小物入れとして使う)
・食器として使う場合は「乾きもの」を入れる程度の使い方に限定する(菓子器として使うとか)
金継ぎ図書館ではこのような使い方を前提にして、「簡易金継ぎのやり方」を解説しています。
合成うるしはこのような安全上のデメリットがありますが、逆にメリットもたくさんあります。
次にそのメリットなどを見ていきましょう。
合成うるしのメリット/デメリット…本漆と比較
昔から「本物の漆」というものがあるのに、何でわざわざ「合成うるし」が開発されたの?
合成うるしのメリットとデメリットって何??
当然、合成うるしにもメリットがあります◎
デメリットも含めてきちんと把握したうえで、「合成うるし」を使おうか?それとも「本漆」にしようか?をご自身で判断してもらえたらと思います。
僕自身、合成うるしを使ってみて、「これはこれで使い勝手がよい場合がある」と感じています。
合成うるしのメリット/デメリット
【メリット】
- 普通の「絵の具」のようなものなので、扱いが簡単◎
- カブレにくい(ほぼ、カブレる人はいないと思います。が、今のところ一人だけいました。けど軽いカブレでした)
- 塗膜表面の初期硬化が早い
- 手に入りやすい(ハンズ、ホームセンター、釣具屋で入手可能)
【デメリット】
- 作業中に粘りが強くなってきて、ちょっと作業がやりづらい。硬化が早すぎる…ということです。
↑「溶剤」を混ぜることである程度改善できます◎ - 本物の漆ほどには塗膜が強くない(感じがする)。
…なぜなら、合成うるしで直された器で「剥げ」ているものをよく見かけるのです。
…といったところが僕が実際に合成うるしを使ってみて感じたところです。
ふむふむ。
結構、メリットがありますね~◎
合成うるしという素材は入手と扱いが簡単なので、「ひとまず器の修理(金継ぎ)ってどんな感じか体験してみたい」という方にはおススメできます。
合成うるしを使った「簡易金継ぎ」なら2~3時間くらいで器が直せますので「金継ぎ体験」としてはうってつけです◎
そして、その「簡易金継ぎ体験」が楽しかったら、今度は「本漆金継ぎ」にステップアップしていくのがいいと思います。
本漆金継ぎで直した器だったら食器として何の問題もなく使えますので◎
「新うるし」って実際、どうやって使うのか?にご興味のある方はこちらをご覧ください↓
《現代風》金継ぎのワークショップの問題点
最近、「現代風金継ぎ」と銘打って、ワークショップをおこなっている主催者さんが結構、います。
「現代風金継ぎ」に明確な定義はないのですが(最近、流行っているネーミングなので)、基本的には「合成うるし」を使った簡易金継ぎのワークショップの場合が大半です。
私自身は、こういったワークショップ自体は、一般の人が手軽に「金継ぎ(もどき)」に触れられるとてもいい機会だと思っています。
だけど、問題がある場合が多いとも感じています。
それは、ワークショップ開催に当たっての告知の文言が以下のようなものが多いということです↓
「現代風金継ぎ」は「カブレにくい」ウルシを使い、短時間(3時間程度)で壊れた器を修理できるとてもお手軽な現代の金継ぎ方法です◎
「現代風」という言葉を使うことで、いかにも「これって、あの昔からある金継ぎの現代版ってことだよね?(=直した器は安全に使える)」と印象操作し、かつ、「合成うるしの安全性」に対しての明言を巧みに避ける。
「意図的」にユーザー側(お客さんや生徒さん側)に気付かれないようにしている(誤認するように誘導している)場合が多い気がします。
これってちょっと悪質ですよね。
大人ってズルい~!
そもそもメーカー側が「直接口を付ける用途の器には使うな」と言っているのだからそれはやっぱりしっかりとアナウンスすべきですよね。
「本漆」を使った場合にはハードルが高くなってしまう金継ぎを、「合成うるし」を使うことで、とてもお手軽で参加しやすいワークショップにすることができるという点はとても優れています。
多くの人が楽しめるイベントにすることができる。
であればこそ、合成うるしに関しての安全性を「きちんと(正直に)アナウンス」して、参加者の人にも正確に認知してもい、自己判断してもらったうえでのワークショップ開催…とした方が主催者側も後ろめたさが無くなって、気持ちよくできると思います。
もし皆さんが「現代風金継ぎ」のワークショップに参加する場合は、ぜひ、安全性に関して誠実にアナウンスしている主催者さんを選んでください◎
合成うるしの値段
【おおよその価格】(メーカー、店舗によって値段は異なります)
・10g入りチューブ=価格 ¥300~(金色/銀色の価格 ¥500~)
・25g入りチューブ=価格 ¥620~
〇 Amazonだと10g入り¥400-ほど(2020-04-03現在)
※ Amazonで探した場合、「新うるし」や「高級うるし」が普通にお店で買うよりかなり割高になっているので、お店で買うのと変わらない値段で買える「特性うるし」のリンクを貼っておきます。
・金色 ▸Amazonで見る ・銀色 ▸Amazonで見る
・黒色 ▸Amazonで見る ・赤色 ▸Amazonで見る
・透明 ▸Amazonで見る
〇 合成うるしを購入する場合は、ひとまず「金色」と「銀色」を1本ずつ(もしくはどちらか1本を)買っておけばいいと思います。
※ その他の簡易金継ぎで使うおススメの道具・材料一覧を↓こちらのページにまとめました。
ちなみに本物の漆は…生漆50g=価格 ¥1140-、黒漆50g=価格 ¥1620-
(価格は漆屋さんによります)…ということで、漆も新うるしも値段的にはあまり変わりません。
各メーカーの商品説明と安全性
ナルホド、ナルホド、、
合成うるしというのは「安全」とは言えないということなんですね
そうなると「どの程度、安全でないのか…?」「どうゆう理由で安全でないのか?」を知りたいですよね。
その疑問が完全に払拭されるほどの回答にはなっていませんが、各メーカーの商品説明を詳しく見ていきましょう◎
ブランド名 |
メーカーの説明 |
ふぐ印の |
植物性のうるし系塗料です。 ※ 安全性について会社に電話で問い合わせたところ… ”鉛”が含まれています。ただ、金継ぎで使用する「量」が微々たるものなので、気にするレベルではないと思います
…と説明されました。
微妙な返答ですね~。 |
うらしま印の |
「うるし」はウルシノキから採取された樹液、うるしの特性により、肌に直接ふれるとまれにかぶれるおそれがあります。ご使用時には必ず手袋などをご利用ください。 |
【特製うるし】 |
主原料は、熱帯植物中の漆科植物から採取した特殊うるしです。 ・本品は食品衛生法の基準に適合しておりませんので、食器など直接口にふれる物への塗装にはご使用いただけません。 |
正直な感想としましては、どのメーカーも「歯切れの悪い言い方をするな~」というところです。
「主原料は”植物性のもの”です」…ってことは主原料以外のものは何が入っているの??と気になりますが、成分表示はされていません。
そもそも釣り具用の塗料として販売されているものですし、「口をつける食器には使うな」と注意書きがされています。
それを食器修理の金継ぎに使って、何か問題が起こったとしてもメーカー側には何の責任もない…ってことですよね。
そのことはきちんと認識して、万が一のリスクは承知してから使った方がいいと思います。