※ 欠けて、ひびの入った(!)小さい白いカップの金継ぎ修理のやり方を説明していきます。本物の漆を使った修理方法ですので「かぶれる」可能性があります。ご注意ください。
今回は金継ぎ工程の内の〈素地調整~刻苧漆の充填〉までの方法を解説していきます。
「呼び継ぎ」とは
金継ぎ(金繕い)のバリエーションの一つで、2つ以上の器の破片を繋ぎ合わせてしまう、ヤンチャな修理方法です。
ひとまず「合成樹脂金継ぎ」でテストしてみました。
簡単でした◎
なっ!何よこれ~
はい、これが「呼び継ぎ」です。
「おいでおいで」と他の器の破片を呼んできます。
でも何か大変そう。難しそうね~。
と思われますよね。
いやいや、でもこれが「合成樹脂」を使うなら結構、簡単です◎
慣れれば数時間で出来てしまいます。
でも「合成樹脂」って、安全性がね~。
そうですよね。「合成樹脂」でできたって意味ないですよね。
飾っとくならいいけど。
で、金継ぎ図書館ではもちろん「合成樹脂」ではなく
「本漆金継ぎ」でのやり方を探っていきます◎
よりよい方法を見つけ、改善し、
より多くの方に活用していただけるよう差し出すのがこの図書館の役目です。
呼び継ぎする器 information
器 インフォメーション
- 器の作家: ? 量産品
- 器の特徴: 白ツルツルのガラス質釉薬。
- 器のサイズ: 直径52㎜、高さ54㎜
- 破損状態: 欠け2か所、ひび2か所
ひびが入っています。
こちらにもひびが入っています。
<呼び継ぎの工程 01> 素地調整
金継ぎの素地調整で使う道具: ②③ リューターのダイヤモンドビット (ホームセンター等で入手可能/価格 \200~)、① ダイヤモンドのやすり
まずはひびの入った部分を研いでいきます。
研いで「傷」をつけることで、漆の食いつきをよくします。
↑今回はビットの先に小さな「球体」が付いているものを使います。
【ひび研ぎ】の動画
研ぎ終わりました。
こんな感じです。
薄っすら。
ゴリゴリ深くまで研いでもあまり効果が無い…感じがしています。
(今のところの実験で)
ひびは内側も研ぎます。
お忘れなく◎
<呼び継ぎの工程 02> 破片の麦漆接着
金継ぎの麦漆接着で使う道具と材料
- 道具: ② 付け箆 ( ▸ 付け箆を作り方 )
- 材料: ③ 生漆 ⑤ 小麦粉 ⑥ 水
漆を使って接着剤を作ります。 ▸ 麦漆の詳しい作り方
麦漆の作り方
金継ぎ工程の麦漆を塗布する前にあらかじめどのパーツがどの部分に来るか確認しておきます。
麦漆の扱い方です。
① 作業板の上に麦漆を用意する
② ヘラで麦漆を均一に薄く伸ばす。
③ 伸ばした麦漆の右側にヘラをスタンバイする(ヘラは少し寝かせる)。
④ ヘラを左側にスライドさせる。
⑤ ヘラの先っちょに麦漆が少しつく。
接着の手順
麦漆の乾き具合をチェックするためにいらない紙やハガキなどに麦漆を薄く付けておきます。
作業始めと、終わりに付けておくといいかと思います。
麦漆が乾き始めるのを待ちます。
麦漆の表面が乾いてきて、少しマットになってきます。
40~90分といったところでしょうか。(かなり時間の幅がありますね。これじゃ、参考にならないかな)
「乾き始めていない」状態で接着しても大丈夫なのですが、「乾き始め」のちょうどよいタイミングでくっつけると、接着作業がやりやすいですし、その後の麦漆の乾きも明らかに早いです。
ですが、ちょっと不安なのね、という方は少し早めに接着作業を行ってください。
麦漆で接着したら2~3週間、硬化待ちしてください。
長いな~。
<呼び継ぎの工程 03> 他器のパーツ挿入と刻苧漆の充填
使う道具・材料(▸ 刻苧漆の充填で使う道具・材料の入手先・値段)
↑の材料を使って穴に埋めるパテ状のものを作ります。
▸ 刻苧漆の作り方
※ このページも刻苧漆の使い方を詳しく説明していますが、もうちょい(くどいくらいに)説明したページを作りました。ご興味のある方は覗いてみてください。
▸ 刻苧漆のつけ方・使い方
予め嵌め込む他の器のパーツを用意しておきます。
なるべく嵌める形、大きさに近い破片を探します。
…と言っても、そこが難しいのよね~って感じですよね。
↑ここに他の割れた破片を「呼び込んで」きます。
予め、挿入する断面すべてに麦漆を塗っておきます。薄く。
挿入するパーツの断面にも麦漆を塗っておきます。
嵌め込む空間の後ろから(内側から)マスキングテープなどを貼って、
「壁」を作っておきます。
表側から破片を挿入します。
「意図」に合う配置になるように破片をくっつけます。
↑の場合は、本体「口周り」のラインに合うようにすることと、
破片の左右に均等な隙間が空くようにしました。
内側から見るとこんな感じです。
本体と呼び継ぎ破片の間に「隙間」が空いています。
隙間は微調整して「感じよい」ところにしてください◎
で、この隙間に「刻苧漆」を詰めていきます。
刻苧漆の作り方
この、「隙間に刻苧漆を埋めて破片を固定するやり方」が「正しい」ということではありません。
まったく。はい。
私も「テスト」段階です◎
今後、よりよい方法を探してどんどん「カイゼン」していくと思います。
器の内側から指で押さえつつ、表側から隙間に刻苧漆を充填していきます。
刻苧が隙間にびっちり入り込むように、しっかりと詰めていきます。
鳩はじゃまですね~
向かって右側の隙間にも刻苧漆を詰めていきます。
十分、刻苧漆を詰めたら、
今度は表側からマスキングテープを貼ります。
隙間のないように、マスキングテープを貼り、完全に「壁」を作ります。
呼び継ぎ破片がなるべく動かないように、
内側のマスキングテープをそーっと剥がします。
剥がしたら、こんな感じでした。
どうでしょう?なんかイケそうな感じですよね◎
今度は器の内側から刻苧を詰めていきます。
器の外側からは破片が動かないように指で押さえます。
表側から隙間に埋めた刻苧を、器の内側からもしっかりと詰めていきます。
内側からもしっかりと「詰め込む」ことで、
破片との隙間で刻苧を「圧着」させることができます。(ような気がする…)
↑意味、分かりづらいですか??
はい、鳩は助かりました◎
どでしょう?
なんかイケそうな気がします◎
刻苧漆が乾くまで気長に待ちます。
2週間くらいでしょうか。