※ 3ピースに割れたティーカップの金継ぎ修理のやり方を説明していきます。本物の漆を使った修理方法ですので「かぶれる」可能性があります。ご注意ください。
今回は金継ぎの工程のうち、〈接着した隙間に錆漆を埋める~漆の下塗りまで〉のやり方を解説していきます。
step 04 錆漆付け
金継ぎの錆付けで使う道具と材料(▸ 錆漆付けで使う道具・材料の入手先・値段)
- 道具: プラスチック箆、付け箆(▸ 付け箆の作り方)、綿棒、豆皿
- 材料: 生漆、砥の粉、水、テレピン
錆漆を作ります。 ▸ 詳しい錆漆の作り方
今回は大きな欠けもなく、段差や隙間も小さいので錆漆で十分に埋められそうです。
大きな欠け、隙間、段差がある場合は刻苧漆で埋めてください。
▸ 刻苧漆の作り方 ▸ 刻苧漆の使い方
少量の錆漆を箆先に取ります。
接着ラインに対して直角に錆漆を付けていきます。まずはヘラを画面の上→下へと細かく通していきます。少しずつ右側にずらしていってください。
一回いっかいの錆付けの間に隙間ができないように、毎回、その前の錆漆を付けた部分と少しだけ(1/3くらい)ヘラを重ねて通します。
どんどん右側にずらしていきます。時間が経つと錆漆が乾いてきてしまうので、適当な長さだけ錆漆を付けていきます。
今度は、ヘラを下→上へと通します。先ほどとは反対です。
それが済んだら、今度は接着ラインに沿って左→右へとヘラを通します。
そして次は反対側に向かって(↑画像では上から下へ)ヘラを通します。
このように上から、下から、左から、右から…とヘラを通すことで接着した隙間にしっかりと錆漆が入り込みます。この作業をちゃちゃっとリズムよくできるようになると気持ちがいいのです。
最後に周りにはみ出した錆漆を軽くヘラ先で取り除いて掃除します。
この作業を全部の接着ラインに対して行います。
どうでしょう?隙間が埋まりました。
次にコーヒーカップの内側の錆漆付けです。
普通のヘラでカップの内側の錆付けをやろうとするとテンポよく行かなかったので、ヘラ先が曲がったものを作りました。
普通の付け箆の先をロウソクの火で熱して少し曲げました。刻苧箆ではありません。やはり箆先を薄くして、適度に弾力を持たせたものが使いやすいです。
先っちょが曲がっております。
その箆先に少量の錆漆を取ります。
今回は作業効率を考えて先に接着ラインに沿ってヘラを通します。
左→右へと錆漆を薄く付けます。
先ほどとは反対にヘラを通します。
この後、接着ラインに対して直角にヘラを通します。直角に通し終わったら、最後に錆漆の表面を整えるために接着ラインに沿ってヘラを通して終了です。
周りについてしまった錆漆を取り除きました。どうでしょう?
錆漆は1~2日、乾かします。
こういう手順はどこで習うのか?というと、漆職人さんの下で学びました。 いや、やっぱり基本は大切ですね。金継ぎにも応用できます。
step 05 錆漆の研ぎ
金継ぎの錆研ぎで使う道具と材料(▸ 漆の塗りで使う道具・材料の入手先・値段)
- 道具: はさみ、豆皿
- 材料: 耐水ペーパー(400番)、水
研ぎで使う耐水ペーパーを用意します。
私は耐水ペーパーを1㎝×1㎝くらいの小ささにはさみで切り、それを三つ折りにして使っています。豆皿に出した水を少しだけつけて錆漆を研いでいきます。
今回は木賊という植物を使いました。最近よく使っています。以外と調子がよいのです。木賊は水に浸してある程度、柔らかくしてから使います。
錆漆が平滑な面となるように意識して研ぎます。
周りについてしまった錆漆も研いでしまいます。
木賊は張りがあるので↑こういった細かい部分の研ぎにもすごく使えます。
研ぎ終わりました。
金継ぎの錆漆研ぎ作業完了です。
次は漆塗りです。
STEP 06 漆の下塗り
金継ぎの下塗りで使う道具と材料(▸ 漆の塗りで使う道具・材料の入手先・値段)
- 道具: 小筆、付け箆
- 材料: 漆(今回は弁柄漆)、テレピン、サラダ油、ティッシュペーパー
まずは使う前に筆をテレピンで洗って油を洗い出します。
▸ 詳しい筆の洗い方
まずはカップの内側から漆を塗っていきます。
先に外側を塗ってしまうと、内側を塗るときにカップを持ちづらい気がするのです。うっかり漆を触ってしまうんですよね。だから私は内側から塗っていきます。
錆漆の面は完全に漆を塗って覆います。
ティーカップの内側が塗り終わりました。
続いて外側です。
錆漆面以外の器表面にも漆を塗って構わないです。 ただこの器のようにガラスのようなつやつやした表面のものですと、かなり漆が剥がれやすいです。その場合は食いつきをよくするために器の表面を荒らします。リューターのダイヤモンドのビットでゴリゴリ研いで荒らしてください。そうすると漆の食いつきが少しよくなります。
漆が厚くなりすぎないように気を付けてください。
金継ぎの漆の下塗り工程完了です。
漆を塗った箇所が他のものに触れないように、下に板などを噛ませて空中に浮かしてください。
この状態で湿した場所(湿度65%~)に置きます。
2~3日硬化を待ってください。
塗り終わったら油で筆を洗います。 ▸ 詳しい筆の洗い方
洗い終わったら筆にキャップをつけて保管します。
キャップがなかったらサランラップで優しく包んでください。
次の工程に進む ▸ ③蒔絵完成まで
前回の工程に戻る ▸ ①麦漆の削り・研ぎまで