※ ステム(手で持つ部分)が割れたワイングラスの金継ぎ修理のやり方を説明していきます。本物の漆を使った修理方法ですので「かぶれる」可能性があります。ご注意ください。
今回は金継ぎの工程のうち、〈漆の下塗り~蒔絵・完成まで〉のやり方を解説していきます。
Step 01 漆の下塗り
- 道具: ② ティッシュペーパー ③ 付け箆 (▸ 付け箆の作り方) ④ 小筆 ⑦ 作業板(クリアファイルなど)
- 材料: ① サラダ油 ⑤ 精製漆(今回は呂色漆) ⑥ テレピン
まずは使う前に筆をテレピンで洗って油を洗い出します。 ▸ 詳しい筆の洗い方
毎回、作業が終わったときに筆を”油”で洗います。 ですので使うときにはまず筆の中の油を取り除きます。
- 作業板の上に数滴テレピンを垂らす。
- その上で筆を捻ったりしてテレピンをよく含ませる。
- ティッシュペーパーの上でヘラで筆を優しくしごく。
筆の準備が済んだら、今度は漆の用意をします。
- 漆のチューブの蓋を開ける。
- 作業板の上に少量の漆を出す。
- 筆に漆を馴染ませる。
- 作業板の上に何本か線を引き、漆の量を調節しつつ、含み具合をチェックする。
漆の中にゴミがたくさん入っている場合などは濾し紙で漆を濾してきれいにします。必要な方はこちらをご覧ください。
▸ 基本的な漆の扱い方・濾し方
筆と漆の準備が済んだらいよいよ塗りに入ります。
漆の塗り厚が厚くなりすぎないように気を付けながら塗ります。
錆漆の上を完全に覆うように漆を塗ってください。
錆漆が顔を出していると、そこから水分が入り込みますので修理強度が極端に落ちます。
ので、ご注意ください。
塗り終わったら湿した場所(65%~)に2日くらい置いて漆を乾かしてください。
作業が終わりましたら油で筆を洗います。 ▸ 詳しい筆の洗い方
筆は付属のキャップを嵌めて保存します。キャップが無かったらサランラップを丁寧に巻いてください。
キャップがない、もしくはキャップを作りたいという方向けに ▸ 筆のキャップの作り方 ページを作りましたので、ご覧ください。
Step 02 下塗り研ぎ
エポキシペースト研ぎで使う道具と材料
- 道具: ③ 豆皿(水入れ用) ④ ウエス ⑤ はさみ(ペーパー切り専用にしたもの)
- 材料: ① 耐水ペーパー(今回は#800~1000) ② 水
耐水ペーパーをハサミで小さく切って、それを三つ折りします。
ペーパーに水を少量つけながら研ぎ作業をおこなってください。
ガラス部分は研ぎすぎないように気を付けながら漆を塗った部分を研ぎます。
とはいえ、ガラス部分も研いでしまうのですが。
なるべく平滑な面が出るまで研ぎます。
多少、漆を研ぎ破って下から錆漆が出てきても構いません。
一般的には「平滑面」が出ている方が、仕上がりが綺麗になります。
Step 03 漆の上塗り
- 道具: ② ティッシュペーパー ③ 付け箆 (▸ 付け箆の作り方) ④ 小筆 ⑦ 作業板(クリアファイルなど)
- 材料: ① サラダ油 ⑤ 精製漆(今回は弁柄漆) ⑥ テレピン
準備や手順は漆の下塗りと同じです。必要な方はそちらをご参照ください ▸
テレピンで洗ってから筆を使います。
漆の上塗りは「薄く・均一」になるように意識しつつ塗っていきます。
作業板の上で筆に含まれている漆の量をしっかりと調整してから塗っていってください。
塗り残しがないように気を付けてください。
わずかな塗り残しでも仕上がったあと結構、気になっちゃうのです。
塗り終わったら湿した場所(65%~)に40分くらい置いておきます。
漆に乾くきっかけを与えます。
その間に油で筆を洗って片付けます。
Step 04 蒔絵
- 道具: ① あしらい毛棒(柔らかい毛質の筆) ③ 重石
- 材料: ④ 蒔絵紛(今回は真鍮粉を使用)
乾きかけの漆の上に蒔絵を施していきます。
包み紙の中の蒔絵紛を筆で掬い取ります。
上塗りした漆の上に蒔絵紛を置き、それをあしらい毛棒(柔らかい穂先の筆)で
優しく掃いていきます。
ソフトタッチで掃いていきます。
最後に蒔き残しがないかをチェックし、大丈夫なようでしたら湿した場所(65%~)に置きます。
3~4日置いて、しっかりと漆を硬化させます。
ワイングラスの金継ぎ完成
漆のみを使った(合成樹脂の接着剤は不使用)金継ぎ修理の完成です。
どうでしょうか?
耐久性の方が少し気になるところですが、おそらく大丈夫じゃないかと思います。
万が一、何かあったらまたこちらの方に追記します。
この画像で見えている透けた薄茶色が「透き漆(木地呂漆)」の色です。
合成接着剤とは違い、漆は天然の樹脂のためどうしてもこのくらいの「色」はでてしまうのですがいかがでしょうか?
(やっぱり完全に無色透明がいいな~という方には合成樹脂をおススメします。)
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