【初心者Web金継ぎ教室】割れたお茶碗の修理方法①-1前編~素地固めまで

本漆金継ぎ

  ファイツ!!

パックリと割れてしまった飯碗の金継ぎ(金繕い)修理のやり方を説明していきます。
このページでは金継ぎ工程の内の〈素地固め〉までのやり方を解説します。

 

本日の「道のり」はというと…

かなり楽ちんな道のりとなりますので、リラックスしていきましょう◎

 

 

 

 

 

 

今回のシリーズで金継ぎ情報を「お届けしたい人たち」

 

それはどんな人たちかというと、、
「いや、そんな本気で職人さんみたいにガチガチに綺麗な仕上げを目指しているわけじゃないんです」
「普通に実用として使えて、そこそこ綺麗になっていれば大満足なので、そのやり方を教えてください」
…という人向けです。

 

 

動画でも本日の作業内容が確認できます。
まずはこちらをご覧いただければ今日の作業の全体感が掴めると思います◎

 

 

器の素地を固めるまで~

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▫▫▫〈動画もくじ〉▫▫▫▫
0:30~ ① 筆の準備
1:00~ ② 素地固め
 ー1:05~ 生漆の塗布
 ー1:11~ 拭き取り
2:18~ ③ ティッシュオフ
3:08~ ④ 湿し風呂に入れる
▫▫▫▫▫▫

 

初心者向けに「割れた器の直し方」の”ダイジェスト”動画を作りました。(5分程度)

※ 今回はこのダイジェスト動画内の【0:06~0:52】までの部分をやっていきます。

 

YouTubeにも「”動く”金継ぎ図書館」をご用意しております。
よろしかったら覗いてみてください。どんどんコンテンツを増やしていきます◎
→ ‣ ”動く”金継ぎ図書館

 

 

 

 
【ご注意!】


本物の漆
を使った修理方法ですのでかぶれる」可能性があります。

※ 万が一、漆が肌に付いた場合はすぐに「油(サラダ油など)」でよく洗って下さい
 油?? そうです。「油」をつけ、ゴシゴシ漆を洗い落としてください。その後、その油を石けんや中性洗剤で洗い流してください。

※ もし、かぶれてしまい、それがひどくなるようでしたら、医者に行って処方してもらってください。

 

 

 

 私、金継ぎ初めてなんですけど、どんな道具とか材料を買えばいいんですか?どこで買えるんですか??という方へ

↓ こちらのページを参考にしてください◎

▸ 本漆金継ぎで必要な道具と材料/そのお値段と買えるお店のご紹介

 

 

 

作業を始める前に…

 金継ぎでは「本物の漆」を使うので、直接、漆に触れると「カブレる」可能性が高くなります。「ディフェンシブ」に行きましょう。ゴム手袋は必需品です◎

 

 

 

 

 

 

① 直す器 information

 

 information 

  • 器の特徴: ぎゅっとした焼き締め、マット
  • 器のサイズ: 直径 70㎜、高さ 50㎜
  • 破損状態: 割れ(本体+破片2パーツ) / 
    割れの長さ合計 ㎜ / 欠けの大きさ ㎜

 

今回はこの黒いお茶碗を直します。

固く引き締まった感じの肌をしています。

「黒色」の器には「金」も「銀」も映えるので、仕上がりが格好よくなります◎

 

念のために「ひび」「欠け」もないか、チェックします。

特に器が割れたときには「ひび」も入りやすいです。パッと見、見えていなくても実はどこかにひびが入っていたりします。
修理工程が進んだ時にひびが見つかると、その箇所だけは「修理の最初から…」ということになります。かなりゲンナリしますので、この修理前の段階で見つけてしまいましょう◎

 

 

見事にパックリと割れていますが、割れた断面が「ギザギザ」していないので、修理がしやすそうです◎

 

 

 

 

 

② 素地固め

初心者作業時間/約30分

この作業は何のためにやるかというと、次の工程で行う「接着作業」の接着力がより大きくなるようにです。

 …が、この「固め」作業に関しては職人さんによって意見の分かれるところでもあります。「やっちゃダメ」という方もいます。

 金継ぎ図書館の見解としては「どっちでもいいんじゃないでしょうか?」です。一応、「セオリー」として固めのやり方を載せておきます◎

 

 

②-1. 素地固めで使う道具・材料

 

  道具
③小筆(豚毛のものがベター) ⑤練りべら(大き目のヘラ) ▸作り方 ⑥作業盤(ガラス板) ▸作り方
  材料
①テレピン ②ティッシュ ④生漆 ⑦サラダ油

▸道具・材料の値段/販売店


 ※ この作業で使う「小筆」は安価な筆にしてください。陶器の断面に擦り付けるので、毛先が痛みやすいのです。蒔絵筆だとモッタイナイです。

 

 

 

②-2. 豚毛筆の「使用前」の筆洗い

 

 まずは筆をテレピン(または灯油)で洗って筆の中の油を洗い出します。
 ▸ 詳しい作業前の筆の洗い方

何で筆に油が付いてるの??…かといいますと、漆作業で使った筆は最後に油で洗っているからなのです。油で洗うと筆の中に残った微量な漆が乾きません。漆と油とは相性が悪いのですが、それを利用しています◎

 

使用前の豚毛筆洗い~

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 道具・材料 
・筆 ・テレピン(または灯油など) ・ティッシュ ・作業盤

 作業工程 
① 畳んだティッシュに筆を包む
② ティッシュをギュッと摘まんで、筆の中の油を吸い取る
③ 作業板の上に数滴テレピンを垂らす
④ その上で筆を捻ったりしてテレピンをよく含ませる
⑤ 筆をティッシュで包む
⑥ ティッシュをぎゅっと押えて、「油+テレピン」を絞り出す
⑦ 「4→5→6」を2~3回繰り返す

 

”豚毛筆”

 

① 折り畳んだティッシュに筆を包みます。

 

 

② ティッシュの上からギュッと摘まんで、筆の中の油を吸い取ります。

 

 

③ これで、「ざっくりと」油が吸い取られました◎

 

 

④ 作業盤の上にテレピンを数滴、垂らします。

 

 

⑤ 筆にテレピンを含ませます。
筆は作業盤の上で捻ったりして、しっかりとテレピンと馴染むようにします。

 

 

⑥ 再び、ティッシュの上に筆を乗せます。

 

 

⑦ ティッシュの上からギュッと摘まんで、「油+テレピン」を絞り出します。

この後、「⑤→⑥→⑦」を2~3回、繰り返します。

この作業で筆のなかの油分をしっかりと除去します。
筆の中に油が残っていると漆が乾かないことがありますのでご注意ください。

 

「エタノール」などの揮発性の強いもので洗うと、テレピンよりも油分がしっかりと除去できますが、その分、筆への負担も大きくなり、傷みやすくなります。
ですので、金継ぎ図書館では筆が傷みにくいテレピン、灯油などをおススメしています。

 

 

 

 

②-3. 生漆を希釈する

 

次に、割れた断面に漆を塗るのですが、浸み込みやすくするために生漆をテレピンを混ぜて希釈します。
作業板の上でヘラを使ってよく混ぜ合わせます。

 

 動画 生漆の希釈】

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 道具・材料 

・生漆 ・テレピン ・ヘラ ・作業盤

 作業工程 
① 作業板の上に生漆を適量、出す。
② 作業板の上にテレピンを数的、出す。
③ ヘラでよく混ぜる

 

 

 【 生漆の希釈 】

【体積比/目分量】
  生漆 10:2~3 テレピン ※おおよそ

※ テレピンの代わりにアルコール、灯油でもオッケーです◎

 

「混ぜ混ぜ」作業はそんなに「念入り」にやる必要はありません。
ちゃちゃっと1分くらいでオッケーです◎

 

 

 

 

②-4. 素地を固める

 

割れた断面に希釈した漆を塗っていきます。
この作業はカンタンです◎

 

 動画 生漆の塗布】

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 道具・材料 

・筆 ・爪盤

 作業工程 
① 割れた断面に希釈した生漆を塗っていく。…だけ。

【注意!】
割れた破片の全ての断面に塗ってください。

 

 

 

割れた断面に希釈した生漆を塗っていきます。

塗り厚は「薄く」です。

 

 

筆に漆を適量、含ませます。ジャブジャブに含ませないように◎
あまり漆が多すぎると割れた断面以外にもはみ出しやすくなります。

 

 

この後、どうせティッシュで拭き取りますので、漆は薄く塗ってください。

 

 

器によっては漆をはみ出して塗ると目立ってしまうものもあります(焼き締めの明るい色の器など)。そういう場合は慎重にぬってください。
その場合は筆に含ませる漆も「少な目」の方がはみ出しづらくなります。

 

 

ひたすら塗ってきます。この作業はカンタンですね◎

【ご注意!】
割れた器の破片、全ての断面に塗ってください。
小さいパーツもお忘れなく。

 

 

こんな具合でいかがでしょうか??

 

 

 

 

 

②-5. ティシュオフ

 

せっかく塗った漆ですが、拭き取らせていただきます。はい。

え~、ひどーい!騙したな!!

いえいえ、そんなことはありません。拭き取ってもほんのり漆が残ります。先ほどの作業はこの「ほんのり漆を塗布する」作業だったのです。
漆を拭き取らず、「残し過ぎた」場合、器の割れた断面に漆の塗膜が厚くできてしまい、接着したときにズレが生じやすくなります。

拭いてくださいね~◎

 

 

 動画 ティッシュオフ】

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 道具・材料 

・ティッシュ

 作業工程 
① 折りたたんだティッシュで、漆を塗った断面を押えます。
 →表面に残った漆を吸わせます。
② ティッシュが汚れてきたら、折り直して綺麗な面を使います。
③ ほとんどティッシュに付かなくなるまで繰り返します。

これも「厳密」にやる必要はありません。「おおよそ」拭き取れればオッケーです。
でも「せっかく塗ったのに、拭き取るのが勿体ない…」ということで、漆を拭き残し過ぎちゃダメですよ◎

 

 

折りたたんだティッシュを用意します。
ティッシュは何でも構いません。クリネックスが破れづらいです。が、高いので、何でもいいです◎

 

 

ポンと押さえていきます。

1回目(1プッシュ目)はそこそこギュッと押さえて、漆を吸い取ります。

 

 

漆を吸い取りました。
勿体ないですね~。でもしょうがない。

 

 

続けてポンポンポンと押さえていきます。

ティッシュが漆で汚れてきたら、ティッシュを畳み直して、綺麗な面を出します。
そして、さらに漆を拭き取っていきます。

 

 

水色のラインより上が漆を拭き取った箇所で、ラインより下がまだの場所です。

このくらい拭き取れていればいいです◎

 

 

さらにポンポンと漆を拭き取っていきます。

押し当てたティッシュに「ほとんど漆が付かなくなる」くらいです。
厳密に考える必要はありません◎ ざっくりでいいです。

 

できました◎
こんな感じに拭き取ります。

 

 

 

 

 

②-6. 湿し風呂に入れる

 

待ち時間/半日~1日

生漆を拭き取ったあと、器を「湿度の高い場所」に置いて漆を乾します。(今回は半日~1日)

??何で「湿度の高い」場所に置くの??乾かないんじゃない?…と思われますよね。

実は漆が乾くメカニズムというのが、普通じゃないんです。

 

漆が乾くとは…

 

…ということなのです。
漆の世界では「硬化」することを「乾く」と呼んでいる…ってことです。

「ラッカーゼ」が元気に働いてくれると、漆が硬化するということでして、、、

 

【漆が乾く最適条件】

 

ということになります。

だたし、この条件は「最適条件」ということでして、この条件を上回っていても、下回っていても、乾くスピードが遅くなりますが、乾いてくれます
しかし、「大幅に」この条件から外れると、「かなり乾きづらい」、もしくは「ほぼ乾かない」こともありますのでご注意ください。

 

 

 

 道具・材料 
・箱 ・下に敷くビニール ・布類 ・ 水

 作業工程 
① 箱の中にビニールを敷く。
② ビニールの上に水を絞ったキッチンペーパーを置く。
③ 器を入れる。
④ 箱の蓋を閉じる。

 

・【箱】…段ボール、コンテナ、発泡スチロール…等々、何でも構いません。
要するに湿度が逃げない(逃げにくい)ように「閉じた空間」が作れればオッケーです。

・【布類】…水を含ませておくためのものですので、何でも構いません。使っているうちにカビが生えたり、匂いがしてきたりするので、「キッチンペーパー」が使い勝手がいいようです。(匂ってきたら捨てられますから)

「木の箱」を使えば、霧吹きや、濡らした雑巾で直接、箱の内側を湿らせることができます◎

 

 

手っ取り早く入手できる「段ボール箱」を使ってみましょう。

まず下にビニール袋を敷いて、段ボールが濡れるのを防ぎます。

次に濡らして、しっかり目に絞ったタオル(キッチンペーパー等)を中に置きます。

 

 

箱の中に漆を塗った器を入れます。

 

 

蓋を閉めて、湿度が逃げないようにします。
(鳩は入らないようにします)

 

 

漆の乾きがよくないようでしたら、こまめに湿度を与えます。(5時間おきとか)
大体の場合は、初めに湿度を与えてあげればしっかりと乾きます。

 

 

漆の硬化条件は高温多湿

 

 

 

 

 

②-7. 「使用後」の豚毛筆洗い

 

 動画 使用後の”豚毛筆”洗い】

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詳しい「使用後の筆洗い方」専用動画はYouTube

 道具・材料 
・筆 ・サラダ油 ・ティッシュ ・ ヘラ ・作業盤 ・テレピン

 作業工程 
① 折り畳んだティッシュで漆の付いた筆を包む。
② ティッシュを摘まんでギュッと漆を絞り出す。(数回おこなって、しっかりと絞り出す)
③ 筆に油を含ませる。
④ 作業盤の上で捻ったりしながら油を馴染ませる。
⑤ 筆の根元からヘラで「油+漆」をしごき出す。
⑥ ヘラで廃油を掬い、ティッシュに吸わせる。
⑦ 再び油を含ませる
⑧ 作業盤の上で、ヘラを使って絞り出す
⑨ 廃油の中に漆分が(ある程度)含まれなくなるまで…つまり「透明度」が高くなるまで繰り返す。
⑩ 筆をサランラップで包んで保管する。
⑪ 作業盤に数滴テレピンを垂らし、拭きあげる。(油分を除去する)

 

この洗い方は100均等で買った豚毛筆などの安価な筆の洗い方です。つまり「雑」に洗っています。
蒔絵筆やインターロン筆など、ちょっとでも高い筆はこの洗い方をしないでください。毛が痛みます。

 

 

 

① 折り畳んだティッシュに漆の付いた筆を包み込みます。

 

 

② 外側からティッシュをぎゅっと摘まんで漆を絞り出す。
これを数回おこなって、しっかりと絞り出します。

この時点でしっかりと漆を絞り出してしまった方が、この後の「油で洗う」時、筆が早く綺麗になります◎

 

 

③ 油の入った瓶に筆を入れて、油を含ませます。

 

 

④ 作業盤の上で捻ったりしながら筆に油を馴染ませます。

 

 

筆の根元からヘラで「油+漆」をしごき出します。

今回は安価な「豚毛筆」を使っているので、わりかしガシガシやっちゃっていいです◎

 

 

⑥ 筆の中の「油+漆」の廃油がしごき出せたら、ヘラで廃油を掬い、、、

 

 

ティッシュに吸わせます。

こうして廃油をどかしておくと、作業盤の上が常にクリーンな状態で筆の洗い作業ができます◎

 

この後は「③→④→⑤→⑥」を繰り返します。
廃油の中に漆分が(ある程度)含まれなくなるまで…つまり「透明度」が高くなるまで繰り返します。

今回は安価な「豚毛筆」を使っているので、適当なところで止めておきます。
高価な筆を洗う場合はしっかりと念入りに洗ってください。じゃないと、筆が劣化しますので◎

 

 


⑦ 廃油がある程度きれいになったら、最後にきれいな油を筆に含ませます。

 

 

 

⑧ 最後はヘラでしごきません。ティッシュに筆をポンポンと置いて、余分な油を吸わせます。
筆の中にきれいな油が「適度に」残っている状態にするわけです。

 

これで筆洗い作業は完了です◎

 

この後、筆を仕舞います。

⑨ サランラップを取り出し、その上に筆を置きます。
この時、筆先に「余白」(赤の矢印分くらい)を残しておいてください。

 

 

⑩ ラップに筆を巻いていきます。ローリングです。

 

 

⑪ 途中でローリングを止め、先ほど残しておいた「余白分」のラップを畳み込みます。

 

 

 

⑫ 最後までラップを巻いて、完成です◎

 

 

 

 

 

 【 次の作業を見る 】

▸ page①後編~接着まで

 

 

 

「独学でやってみよう!」と思った人向けに、作業工程ごとに詳しい解説動画も作りました。
こちらを参考にぜひチャレンジしてみてください◎

 

割れた器の直し動画(YouTubeに跳びます)


‣ 「割れた器直し」の詳しい解説動画

▫▫▫〈作業工程別〉(YouTubeに跳びます)▫▫▫▫▫▫

①~割れたパーツを接着する
②~接着箇所の隙間をペーストで埋める
③~もう一度、欠けた箇所をペーストで埋める
④~漆を塗る(1回目)
⑤~銀粉を蒔く
⑥~磨いて完成

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