【割れの金継ぎ修理】 松模様の白い湯呑 Page 05 / 漆の研ぎ

本漆金継ぎ

size19ファイツ!!

 

※ 口周りが割れてしまった湯飲み茶わんの金継ぎ(金繕い)修理のやり方を説明していきます。本物の漆を使った修理方法ですのでかぶれる」可能性があります。ご注意ください。

※ 万が一、漆が肌に付いた場合はすぐに「油(サラダ油など)」でよく洗って下さい
 油?? そうです。「油」をつけ、ゴシゴシ漆を洗い落としてください。その後、その油を石けんや中性洗剤で洗い流してください。

今回は金継ぎの作業工程〈漆の研ぎ〉までのやり方を解説していきます。

 

 ん?前回はどんな作業をしたんだっけ??と忘れてしまった方はこちらをチェックしてください↓

【前回の作業を見る】

▸ Page 04 / 漆を塗る

 

 

 

【 作業を始める前の「心得」  】

漆をナメちゃいけません◎「漆なんてへっちゃらよ。素手で作業しちゃおうっと」なんて無用な冒険心、もしくは慢心があなたに猛烈な痒みをもたらすかもしれません。
しっかりとガードを固めてから作業に入りましょう◎

 必ず「ディフェンシブ」に。ゴム手袋は必需品です◎

 

 

 

 

 

08 漆の研ぎ

 

道具

②紙ヤスリ(耐水ペーパーの#600~#800程度)
③ウエス(布切れ)
④ハサミ(いらなくなったもの)
⑤豆皿(水受け)

材料

①水
▸ 道具と材料の値段/販売店


※ ハサミは紙ヤスリを切るのに使います。紙ヤスリを切るとハサミが「ばか」になります。他のものが切れなくなりますので、要らなくなったものか、100均で安いものを買ってきてください◎

 

 

【耐水ペーパーの使い方】

  1. ペーパーを1㎝×1㎝くらいに切る
  2. 三つ折り(二つ折りでもオッケー)にする
  3. 小皿に少量の水を出し、それをほんのちょっとつける

 

こうやって小さく折りたたんで使うと、器の修理以外の部分をあまり研がなくて済みます。
それから折りたたんだ分、ペーパーが厚くなって「固く」なりますので平滑な面に研ぐことができます。

 

 

小さな水受けがあると便利です◎
そこに水を出します。

 

はい、ども。久しぶりです。鳩さん◎
邪魔しないでくださいね~。

ほんのちょっと水を付けながらペーパーで研いでいきます。

この段階(漆の下塗り研ぎ)で使うのは#600~#800程度の粗さが適当かと思います。
まだ「綺麗な平滑な面」ができていないので、「そこそこ研磨力の高い番手」のペーパーがよろしいかなと。

#200~300だとジョリジョリ研ぎすぎてしまうし、#1000以上だと細かすぎて研ぐのに時間がかかります。

 

↑のようにペーパーをつまんだりして、動かしやすいように使ってください。

厳密にいうと、ペーパーで研ぐと、器の表面を傷付けてしまいます。ですので”なるべく”修理部分以外は研がないようにしていきます。

といっても、どうしても周りも研いでしまうので、「必要最小限」になるように気を付けます。

 

ある程度、研いだらウエスで研ぎ汁を拭き取り、「研ぎ具合」をチェックします。

 

水で濡れたままだとどのくらい研げているのかが分かりませんので、しっかりと拭き取ります。

※ ウエス等で拭き取った後、最後に指や手の平で拭うとほんのちょっと残った「湿り気」が取れて見やすくなります。

 

乾くと「どこが研げていて、どこが研げていないのか」がわかります。

赤い矢印A」の部分が研げています。研げている(ペーパーが当たっている)と、「ちょっと白っちゃけて」きます。
水色矢印B」の部分は研げていません。色が濃くて、ピカピカしています。

塗った漆が全部「白っぽく」なるまで、つまり全部にペーパーが当たるまで研いでいきます。

 

器の内側も同様に研いでいきます。
内側の研ぎには「木賊とくさ」という植物を使って研いでいきました。もちろんペーパーで大丈夫です。

木賊で研ぐと器の素地を痛めないそうです。(厳密にいうとちょっとずつ傷が入っていくのだと思いますが)

木賊は独特な研ぎ心地です。研磨力があるようなないような(笑)
同じ木賊でもモノによって「意外と研げるな」というものと、「あれ?あまり研げてない」っていうときがあります。

木賊もいろいろな品種がありそうなので、もしかしたら研ぎに適した木賊があるのかもしれません。

 

※ かめ先生のところで蒔絵を習い始めてから、かめ先生が金継ぎの研ぎでも「炭」を使っているということを伺って、僕も試してみたところ、すこぶるいい感じがしています。

 

砥石やペーパーですと器の素地を傷付けてしまうのですが、この「炭」というのはほとんど器にダメージを与えません
研ぎ心地もすごくいいです。かなりおススメです◎

ちなみに使っているこの炭は漆屋さんで売っている「駿河炭するがずみ」とか「朴炭ほおずみ」です。
漆屋さんでしか売っていなかったり(東急ハンズでは売ってなかったと思います)、漆屋さんでも小ロットで売っていないので入手が面倒なのですが、ぜひ使っていただきたい道具です。

バーベキュー用の炭ってダメなですか??

う……。。いや~、どうなんでしょう?ダメそうな気がしますが、試したことがありませんので、何とも言えないところです。

 

 

器の内側も時々、研ぎ汁をウエスで拭き取って研ぎ具合をチェックしながら作業します。

 

 

研ぎ終わりました◎

 

はい、オッケーです。

 

画像では見づらいのですがおおよその部分にペーパーが当たって、白っちゃけています。

 

この「漆の研ぎ1回目」の段階で漆を研ぎ破って、下の層の「錆漆」が出てきちゃっても大丈夫です。
「研ぎ破らないように気を付ける」のではなく、この段階では「平滑な面を出す」ことを意識します。まだ「形を作っている」段階ということです。

 

どんなに錆漆を綺麗につけて、どれほど平滑な面に研いだとしても、実際のところ「ほんのちょっと出っ張っていたり」「わずかながら凹んでいたり」、それから「ピンホール(ほんの小さな穴)」が空いていたりします。

大げさに図示すると↑のような図になります。

錆漆の段階で「とことん平滑な面」に仕上げたつもりでも、ほんのちょっと歪んでいる場合が多いのです。錆研ぎの段階では気付けないレベルです。

そこに「漆塗り1回目」を施します。

そして漆を研いでいくと…

 

・出っ張りA…研ぎ破って下地の錆漆が出てくる
・ピンホール…漆が穴に吸い込まれて、くっきりとピンホールの姿が現れてくる
・出っ張りB…”わずかな”出っ張りであれば、漆の厚みで吸収できる
・凹み…なかなかペーパーが当たらなかった部分は、「うっすらと凹んだ部分」ということです。

 

 

この「凹み」部分をペーパーが当たるまで(平滑な面になるまで)研ごうとすると、「出っ張りB」まで研ぎ破ってきます。

 

さらにピンホールを消そうと、ピンホールの「底」まで研ごうとすると完全に漆は研ぎ破って、全面、錆漆になってしまいます。

 

 

「漆塗り一回目」はどちらかというと「平滑度チェック」の意味合いが強くなります。(漆芸の世界ではこれを「捨て塗り」と言ったりします)

漆を一回塗って、それを研ぐことで「どの部分がわずかにへこんでいるのか?」「ピンホールの有無」などを確認します。
錆研ぎの段階では発見できなかった「微妙な」凹凸を見つけることができるようになるわけです。

 

で、「微妙な凹凸」や「ピンホール」が見つかった場合、どうすのか?といいますと、もう一度錆付けをします◎

え!?「振り出しに戻る」ってこと??ガーン!!

 

いやいや、そこまでしなくて大丈夫です。
凹んでいる個所やピンホールに錆漆を「部分的」補填すればいいので、案外手間はかかりません◎

 

補填した錆漆を研いで、

 

上から漆を塗れば結構いい感じの平滑面ができます◎

 

 

私の場合、実際のところ

錆付け1回目→錆研ぎ→錆付け2回目→錆研ぎ→漆塗り1回目(捨て塗り)→漆研ぎ→(部分的に)錆付け3回目(追い錆)→錆研ぎ

この8工程で「平滑な面」を出しています。(お~、面倒ですね~)

理想的には
「錆付け1回目→錆研ぎ」
だけで「完全平滑面」を出したいところですが、そうも上手くいってないのが現状です。腕があがれば一発でいけるのかもしれませんね~◎

 

ちなみに「漆の塗り重ねで凹みや穴を埋めちゃダメなんですか?」と思いますよね。

凹みに関しては本当に「ほんのちょっとの凹み」でしたら漆でも埋まります◎
でもちょっとでも深くなると、漆の塗り重ねでは手間と時間がかかります。ですので、錆漆を一回やってしまった方が結構、早かったりします。
(もちろん、どんなに深い凹みでも漆を何度も塗り重ねていけば当然埋まります)

「ピンホール」に関しては錆漆でやってしまった方が断然早いと思います。

どのくらいの深さまでなら漆で埋められるか?どこからは錆漆をやった方がいいか?…は感覚で掴んでいってください。
大体の場合は「錆漆」に戻った方が早いことが多いです◎

 

ご注意!

初心者の方にとって「錆付け→錆研ぎ」は結構ハードな作業だと思います。
「綺麗な平面」が出せなかったとしても別に使用上の問題があるわけではありせん。ですのでここは頑張りすぎず、最初のうちはそこそこで「スルー」するのも手だと思います。
平滑面出し作業にうんざりして金継ぎを嫌になるよりも、慣れてきて「もうちょっと綺麗に仕上げたい!」という欲が出てきてからでもいいと思います◎

それにいくつも器を修理していくと、いつの間にか慣れてきて、部分的な錆付けでしたらそれほど手間がかからなくなってきます。

 

 

 

 

 

 

09 漆研ぎ2回目

 

途中の写真を撮り忘れたので、一気に「漆研ぎ2回目」となりました。

先述したようにここにくるまで「錆漆の充填→研ぎ」作業をしました。さらに漆を2回ほど塗り重ねました。

この器は最後に「金粉」を蒔く予定なので、この段階で「黒色の漆」が塗ってあります。

 

 

この段階では結構、平滑な面が出ているので、「研ぐ」といっても「形を作る」というよりも「平滑面の精度」を上げていくことが目的です。

ですので、ペーパーの番手は#1000くらいを使用しています。
(もはや粗いペーパーでじょりじょり研いで形を作っていく必要はありません)

 

はい。綺麗な平滑面が出ています◎

 

ペーパーにほんの少し水を付けて研いでいきます。

 

もうほとんど凹みなどは無いはずですので、サラサラと当てていけば大丈夫です。

 

あとは「ふし」があったら、そこは平滑になるように研いでおきます。
「ふし」とは塗った漆に「ゴミ」が入ってぷっくりとしている個所です。

 

こんな感じでオッケーでしょうか。

 

 

 

 

これで研ぎはお終いです。

次回はいよいよ金粉を蒔く「蒔絵」の作業に入ります。