ファイツ!!
このページは金継ぎ図書館のコンテンツを使って「金継ぎ初心者・久恒さんのファースト・チャレンジ」をナビゲートしていく企画です。(がんばれ!ツネちゃん!) 早い話、「インターネット金継ぎ教室」をしちゃおう!ということです。
▸ インターネット金継ぎ教室のルールについての説明
久恒さんは「リアル」に本漆金継ぎ初心者です。(「簡漆金継ぎ」ワークショップにご参加くださったので、簡単な金継ぎは体験しています◎) ですので、久恒さんの金継ぎに関する素朴な疑問などが、皆さんのお役にたつのではと考えています。
今回は〈欠けた箇所に漆のペーストを充填する〉までの工程を説明します。
前回の作業を見る
久恒さんとは?
久恒さん?ってどなたですか?
大分県で家業である林業を営んでいる女性の方です◎
【 profile 】 久恒 まゆ 東京都生まれ、大分県育ち
2011年 武蔵野美術大学 木工専攻 卒業 在学中は「日本のものづくりの文化」「人の手によって生み出される木の魅力」「息の長いものづくり」などを研究 商業空間の内装設計を経て、現在は、家業の 六月八日/久恒山林株式会社(▸ http://rokugatsuyohkanomori.jp/ )で、森を育てるところから製品づくり販売まで一貫して行う、林業の6次化に取り組んでいる
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刻苧漆こくそうるし(パテ)失敗!
前回の作業は刻苧漆こくそうるし(パテ)で欠けた箇所を埋めました。今回は、まず、そのパテを刃物できれいに成形するところから始めます。
…と思ったら、刻苧漆こくそうるし(パテ)が乾かなかった…!(涙)
刻苧ベラでつついてみたところ…弾力を感じる!!(なにゆえ、弾力!?)
弾力を感じるということは…刻苧が乾いていないということなのです(涙) 刻苧が乾かなかった場合、どうしたらいいの??と言いますと…
「小さな穴」を数カ所あけるか、刻苧を取り除いて、やり直してください。
詳しくはこちらへ ↓
千枚通しなど、先っちょが尖ったものを使ってブスブス穴を空けます。
とにかく空けます。
(ツネ子さん画像)
結構、いっぱいの穴を空けました。
このまま2週間くらい湿し風呂に入れて刻苧漆を硬化させます。ですが、かなり乾きの悪い刻苧を作ってしまった場合、そのくらい待っても乾かない可能性があります。はい。
2週間以上経ちました。
表面は硬くなりました◎ けど、何となく嫌な予感…。
この↑刻苧表面の「テカり」。怪しい。
(ツネ子さん画像)
とりあえず彫刻刀で削ってみます。
…内側はなぜか柔らかい(涙)
内側は生乾きでした!失敗!!
恐らく今回、ツネ子さんが作った刻苧は「木粉」の込みが少なかったのが原因だと思います。
木粉が少ないほど、接着力が強く、硬い刻苧となるのですが、乾きが悪くなります。
いいんです。いいんです。この「失敗の道」はいずれ、誰もが通る道なんですから、初めから上手くいかなくったっていいんです。これを機にしっかりと「刻苧の感覚」を覚えてしまえばいいんです。
失敗すると確かに凹みますが、この積み重ねがやがては知識や技術に結び付いてきますよね◎
それに「失敗経験」を他の人とシェアできれば、他の人の役にも立って、むしろ「貴重な情報」になります。
「乾きが悪い刻苧」を作ってしまった場合でも、1~2ヶ月待てば、やがては硬化すると思います。ですが、今回はそんなに待っていたくないので、やり直します。
彫刻刀などの刃物を使って、生乾きの刻苧を削り取ります。刻苧がすごく柔らかい状態だったら刃物じゃなくても、硬い棒などでも剥がすことができます。
(ツネ子さん画像)
ガリガリ取ってしまいます。
悲しいですが、やり直します。
(ツネ子さん画像)
もう一度、刻苧を作ります。
今度はしっかりと木粉を入れて…
と思ったら、またちょっと木粉の量が少ないような気がする!!なんか怪しい、この刻苧のテカり…。
もうちょっと木粉を入れた方が良さそうな気がするのですが…
今回、久恒さんが修理している「欠け」は結構、大きい(深さがある)ので、それを一気に刻苧で埋める場合は、もう少し木粉の込みを多くした方がいいと思います。
一回の刻苧の「盛り厚」を薄くするなら、このくらいの木粉の込みでも大丈夫だと思います。
(ツネ子さん画像)
かなり綺麗に成形できました◎
ひとまず様子を見てみましょう。
しっかりと乾くかもしれませんしね◎
工程 03> 刻苧漆こくそうるし(パテ)を削る
道具 ①彫刻刀(平丸刀) ②彫刻刀(平刀) ③障子紙用丸刃カッター ④カッターナイフ(大)
▸ 道具と材料の値段/販売店
上記の道具のいずれか、もしくは複数が用意できると作業がやりやすくなります。
おススメは 【 ①と②の彫刻刀 】ですが、「研ぐ」ことができないと、使い捨てになってしまいますので、現実的な初心者用の刃物チョイスとしては 【 ③と④のカッター 】を用意してもらえたらと思います。
③ の障子用丸刃カッターはホームセンターの「障子貼りコーナー」にありました。刃先がRなので(丸味が付いている)、器の曲面部分、特に「器の内側」部分の削りにもある程度、対応できます。
乾いた刻苧漆こくそうるし(パテ)を刃物で削っていきます。
乾いたのか乾いてないのか、よくわからないんですが…という方は↓こんな感じでチェックしてください。
【 乾いた 】 |
「カリカリ」している。焼けた食パンみたいに。 ・ 棒で押す→ 凹まない、硬い |
【 乾かない 】 |
「ボヨボヨ」している ・ 棒で押す→ 凹む ・ 引っ掻く→ 何も残らない |
しっかりと乾いている場合、「カリカリ」っとして、爪や棒で引っ掻くと引っ掻いた場所が「白く」線が残ります。それから強く押しても「凹む感触」はありません。
※ 表面はしっかりと「カリカリ」しているのに内側は乾いていない…という場合もあります。
万が一、刻苧が乾いていない場合は刻苧に「小さな穴」を数カ所あけるか、刻苧を取り除いて、やり直してください。
詳しくはこちらへ ↓
(ツネ子さん画像)
↑実は…やっぱり今回も刻苧の乾きが悪かった…(涙)
ので、千枚通しで穴を空けました。そして待つこと1週間くらい。
前回、失敗したときよりは刻苧がカチコチになった気がします。
平丸の彫刻刀を使って刻苧を削ってみます。
刻苧の内側も乾いているよう、祈りを捧げます。アーメン。
(ツネ子さん画像)
乾いていました!よかった◎
彫刻刀の刃の半分くらいを器の素地に当てながら削り作業をします。こうすると「削り過ぎ」を防ぎやすくなります。
削り終わりました。綺麗です◎ さすが木工経験者。
横から見ても綺麗に削れています。
(穴が空いていますけど)やっと次の作業に進めます!
※毎回、刻苧が「どーしても乾かない!!」という方がいらっしゃいましたら、「木粉の量が少なすぎる」のが原因…という場合が多いです。
どうしても木粉を少な目に入れるのが「自分の感覚」になってしまっている可能性があるので、そういう方は「ちょっと入れ過ぎちゃったかしら」と思うくらい思い切って木粉を入れてみてください。きっと上手くいきますよ◎
工程 04> 錆漆さびうるし(ペースト)を充填する。1回目
道具 ③作業板 ▸作り方 ④付けベラ ▸作り方 ⑤練りベラ ▸作り方
材料 ①水 ②生漆 ⑥砥の粉
▸ 道具と材料の値段と売っているお店
刻苧漆こくそうるし(パテ)の乾き促進のために「穴」を空けてましたので、まずはその「穴」を埋める作業をします。
錆漆さびうるし(ペースト)を作ります。
体積比(目分量)… 砥の粉 10 : 8 生漆 ※ 水は適量
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※ 錆漆の「作り置き」はおススメしません。「使うときに作る」が原則です。作ってから2~3日くらは乾きますが、どんどん乾きが悪くなっていきます。
とはいえ、「明日も他の器を直すので」という方は、残った錆漆さびうるし(ペースト)を保存してください◎
▸ 余った錆漆・麦漆・漆の保存方法
【錆漆の作り方動画】
刻苧漆こくそうるし(パテ)が乾かなくて、穴を空けた方はこの作業をしてください。
刻苧漆が問題なくしっかりと乾いて順調に作業が進んだ方は「工程06」(このページの下の方)にお進みください。
↑この穴を錆漆さびうるし(ペースト)で埋めていきます。
こういった「穴」は錆漆1回では埋まりません。残念ながら。…というのも、錆漆というのは硬化していくにつれて、どうしても「痩せ」が出てきてしまうからです(凹んでしまいます)。
なので、2回(もしくは3回)、錆付けの作業をすることになります。ですが、この作業は全然大変ではないです◎よゆーです◎
それでは作業に取りかかります。
作業板の上にある錆漆さびうるし(ペースト)をヘラの先で少量取ります。
- 作業板の上で錆漆さびうるし(ペースト)を薄く均一に広げる。
- ヘラを少し寝かしつつ、横から滑り込ませる。
- 右側から左側へ通す。
- そうするとヘラの先っちょだけに錆漆がつきます。
一回目の錆付けは、錆漆を穴に押し込むようにヘラで擦り付けていきます。
上下左右、ヘラを通して、しっかりと穴に押し込んでいきます。
器の内側にも穴が空いているようでしたら、そちらも同様に錆を詰めていきます。
一回目の錆付けはとにかく「穴に詰める」だけに徹してください。「修理箇所をきれいに形を作ろう」としたくなると思いますが、それは錆付け二回目に行なってください。一度目は「穴を埋める」…です◎
(ツネ子さん画像)
(ツネ子さん画像)
穴に錆漆さびうるし(ペースト)を入れ込みます。
できました!この作業はすごく簡単です◎
※ 水を固く絞った布を中に入れて湿度を高くしてください。
錆漆さびうるし(ペースト)が乾くのに1~2日待ちます。
前回の「刻苧漆こくそうるし(パテ)」で失敗したので、今回の「錆漆さびうるし(ペースト)」の配合もちょっと心配です…。
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漆を計量スプーンでしっかりと計ったのなら問題なく乾くと思います◎ 錆漆は漆が足りない場合は、 単純に強度が少し落ちるだけなので、乾くという意味では大丈夫です◎ 漆が多すぎる場合は、乾かなかったり、「縮み」が起きます。←こうなると、ちょっと面倒です。 なので、それよりかは「漆が少し足りない」方が、いいです(笑) |
工程 05> 錆漆をほんの軽く研ぐ
道具 ②紙ヤスリ(耐水ペーパー) ③ウエス(布切れ) ④ハサミ(いらなくなったもの) ⑤豆皿(水受け)
材料 ①水
▸ 道具と材料の値段/販売店
※ ハサミは紙ヤスリを切るのに使います。紙ヤスリを切るとハサミが「ばか」になります。他のものが切れなくなりますので、要らなくなったものか、100均で安いものを買ってきてください◎
#400~#600程度で軽く研いで、表面の「ガサガサ」を滑らかにします。
- ペーパーを1㎝×1㎝くらいに切る
- 三つ折り(二つ折りでもオッケー)にする
- 水をちょっとつける
少量の水を付けながら研いでいきます。
次の「錆付け二回目」がスムーズに付けられるように、「バリ」を取り除いておきます。
工程 06> 錆漆を充填する。2回目
今回のように、刻苧漆でカケを埋めた後に薄く錆漆を乗せる場 合は、1~2日後に2回目の錆漆をのせるので、作り置きの錆漆で も良いでしょうか?
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1~2日後に使うならオッケーです◎ ですが、日に日に「劣化」して乾きが悪くなっていきます。作った時が一番乾きが良くて、次の日、その次の日…と、どんどん乾きづらくなっていきます。なので、次の日以降に使う場合は、錆付け作業が終わった後、湿した風呂に入れて、しっかりと「湿度」を与えてあげた方がいいです。(乾くきっかけを与える感じです) |
器の口周りを利用して、錆漆さびうるし(ペースト)をヘラから「切ります」。
器のエッジに擦りつけるようにヘラをスライドさせて錆を置いていきます。
置いた錆をヘラの面で潰すような感じで広げていきます。刻苧漆こくそうるし(パテ)でできた隙間や小さな穴を埋めます。
反対方向にもヘラを通します。
ヘラを複数方向に通すことで、「錆を動かし」ます。動かすことによって、刻苧と錆の間にできているかもしれない隙間(空間)を潰します。密着度も上がります。
※ 錆はペースト状のものなので、素地との間に意外と空間ができているのです。ご用心、ご用心。
内側も同様に錆を付けます。
(ツネ子さん画像)
刻苧の上全体に薄っすらと錆を付けていきます。
できました。
作業が綺麗ですね~◎
2回目の錆漆の「厚み」はどのくらいと意識したらよいでしょうか?
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錆漆の厚みは原則的に「一回の盛り厚は1㎜程度まで」としてください。それ以上の深さに充填する場合は数回に分けて充填してください。 詳しくは錆漆の作り方ページを参照してください◎ おそらく刻苧漆こくそうるし(パテ)を付けた時に、ほぼ「ツラ位置」になっているかと思うので、錆付け作業は表面に「お化粧する」…という程度の厚みになるかと思います。 |
風呂の湿し具合は1日1回「壁をまんべんなく濡らす」という感じですか。季節にもよると思うのですが…。もし、三日間、風呂に入れて置く場合は三日とも湿すのでしょうか?
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錆漆の場合は、本来はそんなに気にしなくても大丈夫です◎ |
季節によっての生漆の保管方法などありますか?
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夏場の暑い時期、気温30度を大きく超えてくると漆が劣化しやすくなります。冷暗所に置くか、冷蔵庫に入れてください。(「冷凍庫」に入れた場合、アウトです!漆が死んじゃいますので気を付けてください。ね◎) |
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