ファイツ!!
※ バラバラに割れてしまった器の金継ぎ(金繕い)修理のやり方を説明していきます。本物の漆を使った修理方法ですので「かぶれる」可能性があります。ご注意ください。
※ 万が一、漆が肌に付いた場合はすぐに「油(サラダ油など)」でよく洗って下さい。
油?? そうです。「油」をつけ、ゴシゴシ漆を洗い落としてください。その後、その油を石けんや中性洗剤で洗い流してください。
今回は金継ぎ修理工程の内の〈錆漆さびうるし(ペースト)付け~削り・研ぎ〉までのやり方を解説していきます。
前回のページを見る
<金継ぎの工程 06> 錆漆さびうるし(ペースト)の充填
金継ぎの錆付けで使う道具と材料(▸ 錆漆付けで使う道具・材料の入手先・値段)
- 道具: ①プラスチック箆、②付け箆(▸ 付け箆の作り方)、
- 材料: ④生漆、⑤砥の粉、⑥水、③作業板(クリアファイル)
錆漆さびうるし(ペースト)を作ります。 ▸ 詳しい錆漆の作り方
錆漆の作り方動画
※ 錆漆の「作り置き」はおススメしません。「使うときに作る」が原則です。
作ってから2~3日くらは乾きますが、どんどん乾きが悪くなっていきます。
とはいえ、「明日も他の器を直すので」という方は、残った錆漆さびうるし(ペースト)を保存してください◎
▸ 余った錆漆・麦漆・漆の保存方法
※ やたらと画像が多くなってしましました!
けど、載せさせてください。せっかくなので。
ちょっとサイズを小さくしますので。
前回、刻苧漆こくそうるし(パテ)を彫刻刀で
削るところまでの作業を終えました。
今回はその刻苧漆の上に錆漆さびうるし(ペースト)を
付けていきます。
器の外側よりも先に内側の作業をすることを
おススメします。
なぜ??
その方が、作業をし終わった箇所を「うっかり」触ってしまう
確率が少なくなる(ような気がする)からです◎
s
箆ヘラの先っちょに錆漆を「ちょっと」付けます。
って、その「ちょっと」ができないんですけどー
ですよね。
ということで、<箆テク>をご紹介します。
- 作業板の上で錆漆さびうるし(ペースト)を薄く均一に広げる。
- ヘラを少し寝かしつつ、横から滑り込ませる。
- 右側から左側へ通す。
- そうするとヘラの先っちょだけに錆漆がつきます。
慣れてくるとテンポよく作業ができて、それだけで気持ちがよくなります。
<同一動作の反復>というのは集中していくととても心地いいものです。
ヘラを横に滑らせつつ、錆漆をつけて行きます。
何回かに分けて、錆漆を配っていきます。
続いて、配った錆漆を接着ラインと「直行」するように
ヘラを通していきます。
まずは左→右へと細かく通していきます。
今度は逆に右→左へとヘラを細かく通します。
左右に通し終わったら、今度は
接着ラインに沿ってヘラを通します。
できたら、この反対方向にもヘラを通したいところですが、
ムリですので、諦めます◎
作業に余裕があるようでしたら、
接着ラインの両脇にはみ出した余分な錆漆を
掃除します。
ヘラを通して、錆を掬い取ってしまいます。
この時、接着ラインのギリギリまで攻め過ぎると
せっかく修理箇所に付けた錆漆まで
取ってしまうかもしれませんので、ご注意ください。
↑画像が多いので、小さくまとめました。
器の内側の「底」の部分はすこぶる作業がやりづらいですが、
地道にやっていきます。
器の内側の作業が終わったら、今度は外側の作業に移ります。
外側の作業をしている時に「うっかり」内側に付けた
錆漆を触らないように要注意です!
けど、結構うっかり触ってしまいます~(泣)
そう、バラバラに壊れた器は作業が大変なんです。
作業板の上の錆漆さびうるし(ペースト)もどんどん「固く」なってきますしね。
作業板の上の錆漆がどんどん固くなっていくのは
どうすればいいんですか?
どうすればいいんでしょうね?困っちゃいますね。
えーっとですね、ヘラでちょくちょく練り合わせてください◎
けど、どうしたってだんだん固くはなってきてしまいますので、
なるべく早く作業を終わらせたい…
けど、そんなうまくはいきませんよね。
やっているうちにだんだん慣れてきて、
錆付け作業も早くなってきます。
ヘラを横に動かしながら、
錆を少しずつ、擦り付け、置いていく。
できない?ですよね。
でも意識ながら何度も何度もチャレンジしていけば
できるようになります◎
↑こんな感じに錆を配ります。
続いて、接着ラインに直行するように
ヘラを小刻みに通します。
今度は反対方向に。
こうやっていろいろな方向から錆漆さびうるし(ペースト)を
「動かす」ことによって、修理箇所の
僅かな隙間にもしっかりと錆を詰め込んでいきます。
一方向しかヘラを通さなかった場合、意外と錆漆と
修理箇所との間に所々、わずかな隙間が空いていることがあるのです。
左右にヘラを通した後は
ラインに沿ってヘラを通します。
これでフィニッシュです◎
掃除していきます。
ヘラを通して、はみ出した錆漆を
こそげ取っていきたいところなのですが、
この器の表面は「ガサガザ」と凹凸があるのです(涙)
なので、ヘラをぴったりと付けて錆を掬い取ることができません。
今回は、「綿棒」を使いました。
綿棒にエタノールとかテレピンを少量、含ませ、
それで汚れを拭き取っていきます。
綿棒は汚れたらどんどん交換していきます。
この時、修理箇所に付けた錆漆まで除去してしまわないように
十分ご注意ください。ね。
錆漆の乾きに1~2日ほど見ておいてください。
錆漆の場合は特に湿した場所に置く必要はありません。
が、もし使っている漆自体が古いものだったり、
作ってから日にちが経った錆漆を使った場合は乾きが悪いので、
湿した場所(湿度65%~)に置いてください。
<金継ぎの工程 07> 錆漆さびうるし(ペースト)の削り・研ぎ
錆漆さびうるし(ペースト)削りで使う道具(次のいずれか、もしくは複数) ▸ 金継ぎで使うおすすめの刃物のご説明
- 道具: ① メス(先丸型) ② オルファのアートナイフプロ(先丸型) ③ カッターナイフ(大) ④ 彫刻刀(平丸) ⑤ (下の画像)障子紙用丸刃カッター
おススメは<④平丸の彫刻刀>です。
かなり作業が楽にきれいに、さらには楽しくできます。(言い過ぎかしら)
▸ 金継ぎで使う彫刻刀のカスタマイズ方法
次善策としては<⑤障子紙用丸刃カッター>です。
近所のホームセンターでは「障子の貼り替えコーナー」にありました(カッターナイフ・コーナーにはありませんでした。ご注意!)。ホームセンターにあるってことは、きっとハンズにもあるのではないでしょうか。(未確認です)
錆漆さびうるし(ペースト)を彫刻刀で削っていきます。
やっぱり「平丸」の彫刻刀が使いやすいのです…◎
ちなみに彫刻刀で削ると、「器の方に傷がつくんじゃないですか?」
と思われますよね。
ダイジョブです◎
基本的には彫刻刀の「硬さ」よりも器の釉薬の方が硬いので、
むしろ彫刻刀の方がガビガビ削れていってしまいます。
なので、刃物はちょくちょく研ぎ直さないといけません(涙)
今回は錆漆を彫刻刀で「成形」していく…
というよりかは、
はみ出した錆や少し盛り過ぎた錆を
軽く削っていく程度です。
カンタン、カンタン。
表面の錆も削っていきます。
彫刻刀をペタリと器にくっつけて、
錆漆を削っていきます。
「彫刻刀は怖いのよね~」という方は無理せず、そこそこでやめておいて、
次のペーパー研ぎで頑張りましょう◎
彫刻刀で削ってきれいなラインが出たら、続いて耐水ペーパーで水研ぎします。
錆漆の研ぎで使う道具と材料
- 道具: ③ 豆皿(水入れ用) ④ ウエス ⑤ はさみ(ペーパー切り専用にしたもの)
- 材料: ① 耐水ペーパー(今回は#600) ② 水
※ 彫刻刀ではあまり削れていない(まだきれいなラインがでていない)方は、まずは耐水ペーパーの#240くらいを使って研いでください。それで「形」を作ります。形ができましたら、仕上げに#600~#800程度で軽く研いで、表面の肌を整えてください。
耐水ペーパーをハサミで小さく切って、それを三つ折りします。
ペーパーに水を少量つけながら研ぎ作業をおこなってください。
水を少々つけて、研いできます。
なるべく修理箇所のみを研ぐようにします。
で、ペーパーを侮らないようにしてください。
こいつ、硬いのです。釉薬よりも硬いので、釉薬が傷つきます。
ペーパーって、ようするに「紙」でしょ?よゆう、よゆう…
と、余裕かましてガンガン適当に研いでいると釉薬が研がれて、
白っぽくなっちゃいますので、ご注意くださいね◎
私はこのくらい細長く、小さくして使います。
修理箇所の周囲をなるべく研ぎ過ぎないようにです。
水を付けながら、ちょこちょこ往復させて
研いでいきます。
内側も研ぎます。
今回↑の部分があまり綺麗な「面」が出ていなかったので、
「砥石」を使いました。
「ペーパー」と「砥石」とはどう違うの?
ペーパーを使うと、研いでいる面の元々の形に近い状態で研げます。
とういうことは元々の面が少し凹凸があったら、
その形を比較的そのまま拾ってしまう。
補正するのが難しいのです。
一方、砥石の場合は研いでいる面を砥石の方の研ぎ面に近い形に
修正することができます。
研いでいる面の「成形」が可能だということです。
ただし、「適切」に砥石を動かしていないと、せっかく盛った錆漆を
完全に「掘って」しまう場合もありますので、取り扱い注意です。
あとは砥石の方が釉薬への傷の入り方が激しくなりますので、
ご注意ご注意。
研いでいる「面」を意識しながら作業をします。
ちょくちょく、研ぎ汁を拭き取って、面のチェックをしてくださいね。
次の作業工程を見る
▸ 蒔絵・完成まで