ファイツ!!
※ バラバラに割れてしまった器の金継ぎ(金繕い)修理のやり方を説明していきます。本物の漆を使った修理方法ですので「かぶれる」可能性があります。ご注意ください。
※ 万が一、漆が肌に付いた場合はすぐに「油(サラダ油など)」でよく洗って下さい。
油?? そうです。「油」をつけ、ゴシゴシ漆を洗い落としてください。その後、その油を石けんや中性洗剤で洗い流してください。
今回は金継ぎ工程の内の〈素地調整~接着〉までの方法を解説していきます。
皆さんは木っ端微塵に壊れてしまった器を持ってらっしゃいますか?
持ってませんよね。多分。
そこまで壊れてしまったら泣く泣く捨てちゃいましたよね。
復活の可能性があるなんて微塵も思わなかった皆さん、
でも…直るんです◎
かなり手間がかかりますが、それでも地道に作業を続ければ直ります。
もし、この先の人生で大切な器がバラバラに壊れてしまうことがあったら、
今度は器を捨てず、ぜひぜひ、ご自分で直してみてください。
器 Information
インフォメーションは…なし!
済みません、情報を全く書き残さないまま、依頼主に返却してしまいました(涙)
おおよそ(イメージ)
- 器の大きさ: 直径150㎜ × 高さ120㎜
- 釉薬: ピカピカしているけどガサガサしている(←なんだそりゃ?)
- 損傷状態: 欠けの破片 12片くらい(!)
<金継ぎの工程 01> 破片のナンバリング
衝撃的画像です!そうぞ
バラバラバラバラ…
そうです。木っ端みじんになってしまった器です。
破片を繋ぎとめているテープが痛々しいですね。
ところどころ破片が無くなっている箇所があります。
何でわざわざテープでくっつけて、元の器の形にしているの??
かと言いますと、以下の確認のためです。
- それぞれの破片の位置
- 破片が欠損している箇所
破片の数が多い時はこのチェックがすごく重要です。
破片が多いと、
「このピースはどこに嵌まるの…?全然、分からなくなっちゃった!」
という悲劇がリアルに起こります。ホント、困りますよ(涙)
その対策のための作業をこれからしていきますので、
面倒ですが、しっかりとおこなってください。
破片が無いとこ、発見!
こちらも破片がありません。
↑破片が無くなっていて、けっこうな隙間が空いています。
- 破片が無い
- 隙間ができている
ということを把握しておかないと、
「あれ、ここに嵌めるピースが見当たらないよ~」
って、永遠に探し続けることになってしまいます。
見つからないのは、そもそも破片が無いからですよね。
スマホで欠損箇所の写真を撮っておいて、
それを見ながら接着作業をするのもいいかもしれません。
ひとまず、テープを貼ったまま展開してみます。
※ テープを取って適当にバラバラにしちゃダメですよ。
破片同士の位置関係をキープしてください。
破片同士をくっつけていた白いテープを剥がします。
それから、右回りでも左回りでもいいので、それぞれの破片にナンバーをふっていきます。
接着する時に邪魔にならないように小さめのテープ(↑画像の黄色いテープ)に
番号を書いて、順番にそれぞれの破片に貼っていきます。
地道な作業ですが、破片が多い時はこの作業をすることをおススメします。
異常な程の記憶力をお持ちの方(JRの時刻表を覚えちゃうような人)は必要ありません◎
<金継ぎの工程 02> 素地調整
簡漆金継ぎの素地調整で使う道具: ②③ リューターのダイヤモンドビット (ホームセンター等で入手可能/価格 \200~)、① ダイヤモンドのやすり
今回は割れたピースの数が多いので、接着したときに
「ズレ」がでてきやすくなります。これはしょうがない。
もともとの器には存在しなかった「接着剤」という異物を
その隙間にどんどん挟んでしまうので、ズレるのはしょうがないのです。はい。
ズレが大きくなりそう…ということで、
予め、破片のエッジを少し研いで(削って)おいて、
ズレがでた時にもあまり違和感がないようにしておきたいと思います。
そうです、ひとかけら、ひとかけら
地道に作業をします。
エッジをずりずり…
特にこの器の口周りの「カドッコ」を削っておきます。
ここのズレはあまりよろしく見えないので、(私にとっては)
予防としてしっかりと削っておきます。
<金継ぎの工程 03> 破片の麦漆接着
金継ぎの麦漆接着で使う道具と材料
- 道具: ② 付け箆 ( ▸ 付け箆を作り方 )
- 材料: ③ 生漆 ⑤ 小麦粉 ⑥ 水
漆を使って接着剤を作ります。 ▸ 麦漆の詳しい作り方
麦漆の作り方
麦漆の扱い方です。
- ヘラで麦漆を均一に薄く伸ばす。
- 伸ばした麦漆の右側にヘラをスタンバイする(ヘラは少し寝かせる)。
- ヘラを左側にスライドさせる。
- ヘラの先っちょに麦漆が少しつく。
接着の手順
麦漆の乾き具合をチェックするためにいらない紙やハガキなどに麦漆を薄く付けておきます。
作業始めと、終わりに付けておくといいかと思います。
いざ、麦漆塗り!
少しずつ付けていきましょう◎
割れた断面の中央ラインに麦漆を置くように
ヘラを横スライドしていきます。(慣れるまで、ちと難しい)
ヘラを反対側に通しながら
麦漆を広げていきます。
塗り残しの無いようにします。
ポイントは
- 薄く
- 均一の厚み
です。
全ての破片の全ての断面に麦漆を塗っていきます。
麦漆が塗り終わったら、番号順に並べて置きます。
こうしておかないと接着作業の時に困りますよ~
ちなみに麦漆塗り作業の「スタート」と「終わり」の時に
紙に麦漆を少量つけておきます。
これは麦漆の乾き具合をチェックするためです。
このくらいの破片の数になると麦漆塗り作業に1時間以上かかります。
ですので、「塗り始め」と「塗り終わり」とでは乾き方に差が出てきてしまいます。
ですので、「始め」と「終わり」の両方の麦漆をとっておきます。
麦漆が乾き始めるのを待ちます。
麦漆の表面が乾いてきて、少しマットになってきます。
40~90分といったところでしょうか。(かなり時間の幅がありますね。これじゃ、参考にならないかな)
「乾き始めていない」状態で接着しても大丈夫なのですが、「乾き始め」のちょうどよいタイミングでくっつけると、接着作業がやりやすいですし、その後の麦漆の乾きも明らかに早いです。
ですが、ちょっと不安なのね、という方は少し早めに接着作業を行ってください。
麦漆で接着したら2~3週間、硬化待ちしてください。
長いな~。
麦漆の表面が乾き始めるまで1時間でも2時間でも待ちます。
麦漆が乾く速度は、温度・湿度によって大きく異なりますので
ご注意ください。
乾き始めてきたら接着作業に入ります。
(完全に乾いちゃったらどうしよう…!って心配な方は、
さっさと作業に取りかかってもオッケーです◎)
表面が乾いていてもその中はほとんど「半生」状態ですので、
焦らずゆっくりと作業をしてください。
鳩ぽっぽは無視です。ムシ。
破片同士をしっかりとグリグリ押し付けつつ
隙間が無いように密着させます。
そうしたらマスキングテープで仮止めしておきます。
この「仮止め」は破片をくっつけるその度ごとにおこなってください。
マスキングテープはあらかじめ短く切って用意しておきます。
その方がスムーズに接着作業ができます◎
器が安定するポジションを見つけながら作業をしてください。
↑今回の器の形状と、壊れ具合では、
お茶碗の口を下にして作業をすると安定しました◎
番号順に破片同士をくっつけつつ…
テープで仮止めしていきます。
で、最初に麦漆を塗った箇所と、最後に麦漆を塗った箇所とでは
乾き具合に「差」がありますよね。
なので、欲を言えばその破片に塗った麦漆が乾きかけるまで
待つのがいいと思います。
けど、まぁ、そこまで厳密にやらなくても大丈夫ですので、
ゆっくりと接着作業を進めていってください。
全部のピースをくっつけたら…
全体の歪み具合をチェックします。
上下左右、いろいろな角度から見て、歪みを確認します。
ただ…ここまでバラバラになった器ですと、
どうしても接着時にズレや歪みが出やすくなります。
ですので、「完全に歪みを無くしてやる!」って頑張るよりも(←多分、無理なので)、
歪みを誤魔化す、目立たないようにする、
歪んだ感じがむしろチャームポイントになるようになるようにコントロールする…
といった方向性で考えた方がいいと思います◎
最後に「全体」にマスキングテープを巻いて、
大きく固定します。
ぐるっと、こんな感じです。
もしくは、こんな感じで。
ピンとテープを張って。
麦漆が乾く間に重力で器が広がっていってしまうのを防ぎます。
逆さにして、このまま約3~4週間放置。
しっかりと乾きますように…◎
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