欠けた斎藤裕美子さんブルーカップの金継ぎのやり方 3/4 漆塗り後の錆漆やり直しまで

金継ぎの漆塗り工程の終了

※ 口元が欠けたカップの金継ぎ修理の方法を説明していきます。本物の漆を使った修理方法ですので「かぶれる」可能性があります。ご注意ください。

今回は金継ぎの工程のうち、〈漆の下塗り~塗り後にやり直しの錆漆付けまで〉のやり方を解説していきます。

 

STEP 01 漆の下塗り


金継ぎの漆下塗りで使う道具と材料(▸ 漆の塗りで使う道具・材料の入手先・値段

  • 道具: 小筆、付け箆(▸ 付け箆の作り方) 
  • 材料: 漆(今回は呂色漆)、テレピン、サラダ油、ティッシュペーパー

 

まずは使う前に筆をテレピンで洗って油を洗い出します。
 ▸ 詳しい筆の洗い方

 

それでは金継ぎの漆下塗り作業に取り掛かります。

錆漆を削ってからペーパーで研ぐ

#400くらいの耐水ペーパーで研いだ錆漆に漆を塗っていきます。

金継ぎの下塗りこうていでは漆を薄目に塗っていく

漆が厚塗りにならないように注意します。
作業板の上で筆の中の漆の含み具合を調節してから、錆漆に塗っていきます。

錆漆の上に漆を塗っていく。はみ出さないようにキワまでしっかりと塗っていく

錆漆をついている面はすべて覆うように漆を塗ってください。塗り残しのないように気を付けます。
赤点線部分の器とのキワを特に注意してください。

金継ぎの下塗りでは漆は気持ち厚目に塗っていく

塗ります。塗ります。

器の外側の錆漆も漆を塗っていく

器の外側も漆の塗り残しがないように注意しながら塗っていきます。
これで金継ぎの漆下塗り作業が完了です。

塗り終わった器は湿した場所(湿度65%~くらい)に置いて、1~2日乾かします。

 

塗り終わったら油で筆を洗います。 ▸ 詳しい筆の洗い方

洗い終わったら筆にキャップをつけて保管します。
キャップがなかったらサランラップで優しく包んでください。

 

 

STEP 02 漆の下塗り研ぎ


金継ぎの漆下塗り研ぎで使う道具と材料(▸ 漆の塗りで使う道具・材料の入手先・値段

  • 道具: はさみ、豆皿
  • 材料: 耐水ペーパー(600番)、水

私は耐水ペーパーを1㎝×1㎝くらいの小ささにはさみで切り、それを三つ折りにして使っています。豆皿に出した水を少しだけつけて錆漆を研いでいきます。

今回はなぜか乾燥させた木賊を使います。思い付きです。木賊は植物です。

  • 道具: 豆皿
  • 材料: 木賊(とくさ)、水

 

塗った漆を研ぐ木賊を用意する

木賊です。昔からヤスリとして使われています。今でも刀剣の鞘師さんなんかは使っているようです。漆の世界で使っている人はいるのでしょうか?今のところ私の周りで一人も出合ったことがありません。

金継ぎの漆を研ぐときの木賊

節のところでくねくね折り曲げてから、ぽきんと千切ります。

漆を研ぐ前に水に浸して木賊を柔らかくしておく

水に浸けて柔らかくします。柔らかくしないと折り曲げて使うことができません。

金継ぎの下塗り作業で塗った漆を研いでいく

前回の金継ぎの下塗り作業で塗った漆がしっかりと乾いています。

器の外側も漆がしっかりと乾いている。

器の外側もしっかりと漆が乾いています。

木賊を使うときは折り曲げて使う

柔らかくなった木賊を折り曲げて使います。折り曲げて二重にした方が、平面精度が出せますし、折り曲げ部分の先っちょを使って細かいところもピンポイントで研げます。なかなか優れものです。

器の内側欠け部分の漆を研いでいく

器の内側の欠けから研いでいきます。

金継ぎの漆研ぎ作業では木賊やペーパーで研いでいく

水を少し付けて研ぎます。前後左右に動かします。

研ぎの途中でウエスで汚れを拭き取って漆の研ぎ具合を確かめる

時々、研いだ汚れをウエスで拭きとって研ぎ具合をチェックします。
↑の画像ではまだまだ研ぎが当たっていません。テカテカしている部分が研げていない箇所です。
なるべく平滑な面を作るように意識しながら研ぎます。

金継ぎの錆漆作業で処理しきれなかった凹みとピンホールがよくわかる

ひとまずこれくらいで漆の研ぎをやめることにしました。
どうも、錆漆の段階で「面」が凸凹していたりピンホールができていたようです。漆を塗って、それを研いでみたときにはっきりと症状がわかる場合も多いです。

こうなった場合、この後の行動としては2通りのアクションが考えられます。

  1. このままガンガン研いでいって平面を作る
  2. 漆を何回も塗り重ねる
  3. 錆漆付けにもどる

の2つです。どちらを選んだ方がいいかはケースバイケースです。

今回は凹みが少し深めで、しかもピンホールがあります。
「1.平面になるまで研ぐ」ではむしろ全体が凹んでしまいそうです。ピンホールもどこまで深いかわからないので、研ぎのチョイスはなしです。
「2.漆を塗り重ねる」は、この凹みを埋めるのに3,4回は塗り重ねないといけなそうなのと、ピンホールがうまく塗り潰せないような気がします。のでこれもなし。

ということで今回は「3.錆漆に戻る」です。

「えー!なんでえ―!も一回戻るの?やだー」と思うでしょう。わかります、その気持ち。私もやです。でも意外とこの方が早く事が進むのです。急がば回れなのです。

錆付けに戻るといっても凹んでいるところとピンホールだけ埋めればいいので簡単です。

 

 

step 03 錆漆を付ける(追い錆)


 金継ぎの錆付けで使う道具と材料(▸ 錆漆付けで使う道具・材料の入手先・値段

  • 道具: プラスチック箆、付け箆(▸ 付け箆の作り方)、綿棒、豆皿
  • 材料: 生漆、砥の粉、水、テレピン

錆漆を作ります。 ▸ 詳しい錆漆の作り方

もう一度金継ぎの錆漆付け作業に戻る

がっくりしていないで作業に取り掛かりましょう。大丈夫です。すぐに終わります。

まずは①のピンホールから埋めます。

ヘラの先端にのせた錆漆をほんのちょっと付ける

ヘラ先にちょっとだけ錆漆を取って、それで埋めます。

再び錆漆をヘラ先にのせて今度は凹んだ部分に錆漆をのせる

次に②の凹みを埋めます。こちらはヘラにもうちょい多くの錆を取っておきます。

金継ぎの錆漆付けのやり直しでは凹んでいる部分だけに錆漆を付ける

凹みに錆漆を付けます。

器の欠け部分にのせた錆漆をヘラを使って左右に広げる

付けた錆漆を左右にヘラを通して凹み全体を埋めます。

金継ぎの錆付け方法ではヘラ先で隙間を埋めていく

凹み部分の錆漆がちょっと盛り気味になってしまいましたが少ないよりかはいいです。乾いたら削ったり研いだりできますので。

錆漆が乾くのを1~2日待ちます。

この後は通常の金継ぎ工程に戻ります。次は漆の塗りです。

 

次の工程に進む ▸ ④ 蒔絵完成まで

他の修理工程を見る

 

 

<番外ヘン> 金継ぎについてちと気になったこと


「字通」の白川先生が提唱した「サイ」説。

私たちが「『右、吉』などの字に含まれている『口』という形を、人の『口』だと考えてきたが、それは間違いで神への祈りの文である祝詞を入れるの形の(さい)をあらわしたものである。

そして、中国の殷での占い(ウィキペディアより)

骨・甲羅などの裏側に小さな穴を穿ち、熱した金属棒(青銅製であったといわれている)を穴に差し込む。しばらくすると表側に卜形のひび割れ が生じる。事前に占うことを刻んでおき、割れ目の形で占い、判断を甲骨に刻みつけ、爾後占いの対象について実際に起きた結果が追記された。その際に使われ た文字が甲骨文である。

ひびや割れ目を異界や天からのメッセージとして読み取る。

この二つを考えると(特に白川先生のサイ説)、器のひびや割れ目に何かのメッセージを読みだそうとするのは人間の抗いがたい本性的な行いのような気がしてきます。古代中国でもそうだったのですから。

 

 

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