自分でできる!初めての漆の塗り方・蒔絵の方法を完全ガイド 02

木工の自作

   レッツ うるし塗り!

 

スプーンの漆塗り工程、「塗り」編です。

済みません、アップが遅くなりました。
ここも説明した方がいいよな~と考えていたら、画像がすこぶる多くなってしまい、ページが長くなり過ぎたので「漆塗り」と「蒔絵」を別ページにしてしまいました。済みません。我慢して付き合ってください。

 

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SPOONa

スプーン木地の研ぎ~錆漆の研ぎまで

 

〈スプーンの漆塗り方法 03〉 漆の塗り→漆研ぎ


スプーンに漆を塗り、その漆を研ぐ

⑤ 漆の塗り → ⑥ 漆研ぎ

 

スプーンに漆を塗り、その漆を研ぐ

⑤ 漆の塗りです。塗りでフィニッシュとしてももちろん大丈夫です。
塗りは三度くらい重ねた方が漆特有の「ふっくら」とした感じが出ます。
塗り一回 : 引き締まったというより、ちょっと痩せすぎて中の骨格が目立っちゃうような感じでしょうか。
塗り二回 : 引き締まったボディ。凛々しい印象。
塗り三回 : すこしふっくらとした、柔和な感じ。

⑥ 漆は塗る度ごとにしっかりと研ぎます。研ぐことで平滑な面を作っていきます。それと同時に次に塗る漆の食いつきをよくします。

研ぐときにはスプーンの「形」を意識して研ぎます。すでにあるスプーンのラインに頼って何気なく研ぐのではなく、「もう一度、研ぎで形を作る」ような意識で研ぎます。
とくに「木工図書室」で解説したスプーンの作り方はスプーンの「面」を強く意識した彫りをしているので、漆の研ぎでも「もう一度、面を作る」「面を繋げ直す」つもりで研ぐと、かなり魅力的なラインが作れると思います。

 

「漆の研ぎ」については前回のページをご参考にしてください。▸
耐水ペーパーの#600~#800くらいで研ぐのがいいと思います。

 

 

 

金継ぎの漆の上塗り作業で使う道具と材料
漆の塗りで使う道具と材料

道具: ②ティッシュペーパー ③付け箆(▸付け箆の作り方) ⑧平筆 ⑦作業板(クリアファイルなど)
材料: ①サラダ油 ⑤精製漆(今回使ったのは呂色漆) ⑥テレピン

↑画像の「小筆」の代わりに「平筆」を使ってください。

 

漆を塗る用の筆
平筆は幅9~12㎜くらいのものがスプーン塗りでは使いやすい大きさかと思います。
100均のナイロン筆です。ちょっと「腰」が弱いので、もしかしたら少し毛先をカッターなどで短く切った方がいいかもしれません。
もう少し検証してみてから、また情報を掲載します。

 

まずは使う前に筆をテレピンで洗って油を洗い出します。 ▸ 詳しい筆の洗い方

毎回、作業が終わったときに筆を”油”で洗っているので、使うときにはまず筆の中の油を取り除きます。

  1. 作業板の上に数滴テレピンを垂らす。
  2. その上で筆を捻ったりしてテレピンをよく含ませる。
  3. ティッシュペーパーの上でヘラで筆を優しくしごく。

 

 

筆の準備が済んだら、今度は漆の用意をします。

  1. 漆のチューブの蓋を開ける。
  2. 作業板の上に少量の漆を出す。
  3. 筆に漆を馴染ませる。
  4. 作業板の上に何本か線を引き、漆の量を調節しつつ、含み具合をチェックする。

漆の中にゴミがたくさん入っている場合などは濾し紙で漆を濾してきれいにします。必要な方はこちらをご覧ください。
 ▸ 基本的な漆の扱い方・濾し方

 

▸ 器物に漆を塗るときの注意点

実際の塗りに入る前に、注意した方がいいポイントをご説明します。

 

木のスプーンに漆を塗っていく手順

漆を塗っていきます。
その時、筆が器物の「エッジの外側」にかかる場合があります。

例えば、スプーンの裏面を塗っているときに、スプーンの表面とのエッジに筆がかかっている…とか。

 

木のスプーンに漆を塗っていく手順

大げさに図示するとなると↑画像のような場合です。

スプーンの裏面を塗っているのだけど、どうしたってその隣り合う面(スプーンの表面)とのエッジに筆がかかりますよね。
エッジだって、しっかりと漆を塗っていかなければなりませんし。

 

木のスプーンに漆を塗っていく手順

エッジに筆がかかると、どうしてもエッジで漆が「こそげとられ」ます。

スプーンの裏面を塗っていたはずなのに、表面にまで漆が垂れている。しかも結構、垂れている…という状態になります。

 

木のスプーンに漆を塗っていく手順

↑画像は大げさにやったのですが、こんな状態になります。

上手になってくるとこの「垂れ」が少なくなってくると思いますが、でもやっぱり少しは隣の面に垂れているものだと思います。

私は下手なので漆が未だに結構、垂れます。

それを放置すると、部分的に漆が「厚塗り」状態になっているわけですから、乾くにしたがって「縮み」という「しわしわ」状態が生じてしまいます。

もし、漆が厚くなりすぎた場合…

こんな感じになります。シワシワになるわけです。塗膜表面と塗膜の中の方との乾くスピードに「差」があり過ぎるとこうなるのだと思います。多分。

げっ!ホント!? やだー。縮んじゃったらどうすればいいの?

えっとですね、そのまま見て見ぬ振りして1ヶ月くらい放置。(縮んだ箇所の乾きは時間がかかります)
しっかりと中まで硬化した後、研いで塗り直す。です。

もしくは、縮んだ箇所を竹べらや彫刻刀でこそげ取って、テレピンを含ませたウエスできれいに拭き取る。その後、研いで塗り直す。です。はい。

どちらにしろ、すごく面倒です。呪いです。呪われないように気を付けてくださいね。

 

ちなみに、この「シワシワ現象」は湿度が高すぎて、「急激に乾かした場合」にも起こります。漆風呂の湿度を高くし過ぎたり、塗れた布を漆塗りした箇所のすぐ脇に置いたりしないようにしてください。(↑濡れた布のすぐ脇は、そこだけ局所的に”超・高湿度”エリアになります◎)
ご注意、ご注意◎

 

 

スプーン以外の器物、例えば四角い箱のエッジやお椀の口周りのエッジなんかも、同様に筆の漆がこそげ取られて、こうした「垂れ」が生じやすいです。

 

木のスプーンに漆を塗っていく手順

例えば…スプーンの表面を塗る。その後、スプーンの裏面を塗る。
表面も裏面も漆を厚塗りすることなく、気を付けて塗りました。
大丈夫なはずです。抜かりはありません。

と思っていたら、実は裏面を塗った際にエッジで漆がこそげ取られていて、表面に漆が少し垂れている…ということが起きています。

これを放置するわけにはいかないので、対処します。
と言っても簡単です。

 

木のスプーンに漆を塗っていく手順

最後にもう一度、表面のキワに筆を通します。
筆を通す前に作業板の上で筆の中の漆をある程度切っておいてください。

 

木のスプーンに漆を塗っていく手順

通す筆で、垂れた漆を吸い取るような感じです。
なので通す前に筆の中の漆は切っておきます。

 

説明、大丈夫だったでしょうか?伝わりましたか?
相変わらず金継ぎ図書館の説明は分かりにくい?…なるほど。

また近いうちに、漆塗りの工程のもう少し詳しいページを作りたいと思っていますので、今回はご勘弁ください。次回、もう少し分かりやすく改善できると思います。(希望としては)

 

 

それでは実際にスプーンに漆を塗っていきます。

 

木のスプーンに漆を塗っていく手順

まずはスプーンの表面から塗っていきます。どちらから塗っても構わないと思います。お好きな方からどうぞ。

 

木のスプーンに漆を塗っていく手順

筆に適量の漆を取ります。(と言っても、分かるわけないですよね。このあたりの感覚は数をこなしながら掴んでいくしかないと思います。けど、初めての方は基本的には「少な目」に漆を塗っていくことをおススメします。)

塗り方も人それぞれ。職人さん、それぞれだと思います。
結果、綺麗に塗れていればオッケーです。

 

私の作業手順としては

  1. 器物に漆を置く
  2. 全体に漆を延ばしていく
  3. 縦、横に筆を通して漆の厚みを均一にする
  4. 最後に長手方向にソフトに筆を通して、塗りの表面をきれいにする

といったイメージです。

 

木のスプーンに漆を塗っていく手順

スプーンの中央ラインあたりに漆を置くようにして筆を通します。

 

木のスプーンに漆を塗っていく手順

その後、置いた漆を手前側に延ばすように塗っていきます。

 

木のスプーンに漆を塗っていく手順

半分塗れました。

 

木のスプーンに漆を塗っていく手順

再び適量の漆を筆に取って、スプーンの中央ラインに置くように筆を通します。

 

木のスプーンに漆を塗っていく手順

今度は奥側に向かって漆を延ばしていきます。

 

木のスプーンに漆を塗っていく手順

スプーン表面に漆が配れたら、今度は漆の厚みを全体的に均一にしていきます。

まずは奥から手前に向かって筆を通していきます。

 

木のスプーンに漆を塗っていく手順

次は逆に、手前から奥側に向かって筆を通します。

 

木のスプーンに漆を塗っていく手順

最後にスプーンのヘッド首元から先っちょに向かって筆を通します。

 

次にスプーンの側面を塗ります。

木のスプーンに漆を塗っていく手順

適量の漆(今回はほんの少し)を筆に取って、それをスプーン側面に置いていきます。

 

木のスプーンに漆を塗っていく手順

次に短手方向に筆を小刻みに通します。

 

木のスプーンに漆を塗っていく手順

最後に長手方向に筆を通します。
側面、完了です。

 

次にスプーン裏面です。

木のスプーンに漆を塗っていく手順

適量の漆を筆に取ります。

 

木のスプーンに漆を塗っていく手順

スプーンの中央ラインに漆を置くように筆を通します。

 

木のスプーンに漆を塗っていく手順

中央に置いた漆を手前に広げていきます。

 

木のスプーンに漆を塗っていく手順

再び適量の漆を筆に取り、それをスプーンの中央ラインに置いていきます。

 

木のスプーンに漆を塗っていく手順

今度は奥側に向かって漆を広げていきます。

 

木のスプーンに漆を塗っていく手順

全体に漆が配れたので、今度は「縦・横」に筆を通して漆の厚みを均一にしていきます。

まずは縦方向(ヘッドの首元から先っちょに向かって)に筆を通します。
次に逆方向(先っちょから首元)へも筆を通します。

 

木のスプーンに漆を塗っていく手順

今度は横方向です。奥から手前へ。

 

木のスプーンに漆を塗っていく手順

次に逆方向(手前から奥)へ筆を通します。

なるべく全体の漆の厚みが均一になるように意識しながら筆を運びます。

 

木のスプーンに漆を塗っていく手順

最後に縦方向に筆先を使って表面をなでるように通します。

横方向の筆跡を軽く消すような感じです。

 

スプーン全体に漆を塗り終わったら、再びスプーン表面をチェックします。

木のスプーンに漆を塗っていく手順

ほんの少しキワの部分に漆が垂れています。
これを放っておくと「縮み」という悲劇が訪れます。

ですので処置します。

 

木のスプーンに漆を塗っていく手順

作業板の上で漆を切った筆を使います。
ヘラを使って軽く漆を切ってもいいですし、作業板の上で何度がラインを引けばそれなりに漆が切れていきます。

スプーンのキワを筆でなぞります。溜まった漆を筆で吸い取る感じです。
反時計回りで半分までなぞります。

 

木のスプーンに漆を塗っていく手順

次に時計回りに残り半分をなぞります。

最後、一応、裏面もチェックします。
もし、裏面のキワに漆が垂れているようでしたら、筆を通して吸い取ってください。

 

木のスプーンに漆を塗っていく手順

 「漆の塗り」が完了です。

 

木のスプーンに漆を塗っていく手順

 

塗りの1回目はどうしてもゴミが入ります。錆研ぎ状態のスプーンに付いていた細かいゴミが取り除けません。

漆の塗り仕上げをお望みの場合は、漆を何度か塗り重ね、最後の上塗りは「ごみの入っていない」漆で行います。

漆の濾し方 ▸ 基本的な漆の扱い方・濾し方

 

塗り仕上げの場合は器物(スプーンなど)の取り扱いも注意が必要です。

上塗り前の研ぎが終わったら、水洗いしてタオルで水分をしっかりと拭き取ります。タオルは「マイクロファイバー」ものを使うとタオルについているゴミが付きづらいです。
さらに漆を塗る直前に「タッククロス」というゴミ取り用の布(ベタベタしています)でひと拭きしてごみを取り除きます。(タッククロスは漆屋さんで売っています。値段は確か300~400円程度だったかと思います。)

あとは、なるべく素手で触らないようにします。手脂が付くとそこだけ漆が乾かなくなったり、乾きが遅くなって他と色味が変わってしまいます。
ゴム手袋をしていれば問題ありません。

漆を乾かす間もゴミが付着しないように気を付けます。箱の中などに入れて、ごみが入ってこないようにします。

箱の中は湿度65%~、温度25度~といった条件の場所置いて漆を硬化させます(なるべく…です。厳密にやらなくても大丈夫です◎)。そう、漆は空気中の水分を取り込んで硬化するのです。不思議な樹液ですね◎

湿度が高い場所…って、お風呂場にでも置けばいいんですか??

風呂場…でもいいのですが、風呂場って湿度が100%近くにまでなるので、漆を乾かすにはちょっと「どぎつい」環境だと思います。(漆は急激に硬化すると「やけ」「縮み」といった厄介な現象が起こりやすくなります)

もうちょっとソフトな環境を用意してあげましょう◎そう、実は漆は”やさしさ”で乾くのです。よ◎

 

 【 簡易的な漆乾燥用の風呂 】

湿度が保てる空間を用意します。※ 水を固く絞った布を中に入れて湿度を高くしてください。

↑ こんな感じでいかがでしょうか?

え!段ボール…。こんなんでもいいんですか??

はい、大丈夫です◎「段ボールなんてダサくて嫌!」という方は↓のページを参考にバージョン・アップさせていってください。

 

▸ 段ボール漆風呂の作り方

 

 

作業が終わりましたら油で筆を洗います。 ▸ もうちょい詳しい平筆の洗い方

 

平筆はサランラップで包んで保管します。 ▸ もうちょっと詳しい平筆の保存の仕方

 

 

 

 

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