ファイツ!!
※ バラバラに割れてしまった器の金継ぎ(金繕い)修理のやり方を説明していきます。本物の漆を使った修理方法ですので「かぶれる」可能性があります。ご注意ください。
※ 万が一、漆が肌に付いた場合はすぐに「油(サラダ油など)」でよく洗って下さい。
油?? そうです。「油」をつけ、ゴシゴシ漆を洗い落としてください。その後、その油を石けんや中性洗剤で洗い流してください。
今回は金継ぎ工程の内の〈漆の塗り~蒔絵・完成〉までのやり方を解説していきます。
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▸ Page 03 /錆漆さびうるし(ペースト)の削り・研ぎ
<金継ぎの工程 08> 漆の塗り
【 漆塗りで使う道具と材料 】 ▸ 道具と材料の値段と売っているお店
- 道具: ② ティッシュぺーパー ③ 面相筆 ④ 蒔絵筆(赤軸根朱替わり) ⑥ 練り竹ベラ ▸作り方 ⑦ 作業板 ▸作り方
- 材料: ① エタノール(テレピン、灯油など) ⑤ 精製漆(今回は”赤口漆”) ⑧ サラダ油
前回、研いだ錆漆の上を漆で塗ります。
まずは筆をテレピンで洗って筆の中の油を洗い出します。
▸ 詳しい筆の洗い方
使うときにはまず筆の中の油を取り除きます。
(↑作業終了時に筆を”油”で洗っているので、筆に油が含まれています)
- 作業板の上に数滴テレピンを垂らす。
- その上で筆を捻ったりしてテレピンをよく含ませる。
- ティッシュペーパーの上でヘラで筆を優しくしごく。
筆の準備が済んだら、今度は漆の用意をします。
- 漆のチューブの蓋を開ける。
- 作業板の上に少量の漆を出す。
- 筆に漆を馴染ませる。
- 作業板の上に何本か線を引き、漆の量を調節しつつ、
含み具合をチェックする。
漆の中にゴミがたくさん入っている場合などは濾し紙で漆を濾してきれいにします。必要な方はこちらをご覧ください。
▸ 基本的な漆の扱い方・濾し方
器は内側(表側)から先に塗って、
それが終わってから外側(裏側)を塗るほうが
いいような気がしています。
その方が、うっかり塗ったところを触ってしまう確率が
少なくなると思うのです◎
ようやく漆の塗りに入れました◎
ばらばらになった器はとにかく作業に時間がかかります。
器の口周りって、作業がやりづらいですよね。
こんな時は、例えば…
自分の左手(茶碗を持っている手)の指を
利用して、そこに右手の小指を置きながら
作業をすると、少し描きやすくなります◎
今回は、漆を塗る箇所が多いので、
塗った漆を触ってしまう「うっかり率」がかなり高くなります。
漆を塗り進めるほど、茶碗を持っていい場所が少なくなってくる(涙)
なので、一つの提案なのですが
↑ 例えば、口周りの箇所だけは漆を塗らずにとっておきます。
他の部分が塗れたら、最後に口周りだけを塗ります。
こうすれば、作業後半まで口周りを手で持っても大丈夫です。
どでしょう??
器の内側を塗り終わったら、
今度は器の外側に漆を塗っていきます。
修理した部分
(錆漆さびうるし(ペースト)、麦漆むぎうるし(接着剤)、刻苧漆こくそうるし(パテ)漆)
の上を全て塗っていきます。
塗り残しがないように、完全に漆で覆ってください。
塗り残しがあると、使っているうちにそこから水分が入ってきて
「剥離」しやすくなります。
そう、バラバラの修理は大変なのです。
地道にやっていきましょう◎
コツコツ塗っていけば
いつかは塗り終わります。
あまりにも塗る箇所が多くて、「あたし、挫けちゃうわ」という場合は
1日目→器の内側
2日目→器の外側
などと、何回かに分けて塗っていってください。
器がデカすぎて「重い!」というときにも無理せず、
何回かに分けて作業してください。
(器が重いと左手が死にます…)
これを湿した場所(湿度65%~程度)に2日くらい置いて、
漆が硬化するのを待ってください。
作業が終わりましたら油で筆を洗います。 ▸ 詳しい筆の洗い方
- 筆に油を含ませ、作業板の上で捻ったり、回転させたりする(←意味わかりますか?)
- ティッシュの上でヘラを使って優しくしごく
- 筆の中の漆がほどんどでなくなるまで繰り返し新しい油を付けて洗う
筆は付属のキャップを嵌めて保存します。キャップが無かったらサランラップを丁寧に巻いてください。
キャップがない、もしくはキャップを作りたいという方向けに ▸ 筆のキャップの作り方 ページを作りましたので、ご覧ください。
<金継ぎの工程 09> 漆の研ぎ
漆の研ぎで使う道具と材料
- 道具: ③ 豆皿(水入れ用) ④ ウエス ⑤ はさみ(ペーパー切り専用にしたもの)
- 材料: ① 耐水ペーパー(今回は#800) ② 水
研ぎ作業がしやすいように、まずはペーパーを小さく切ります。
- ペーパー研ぎで使う道具たち
- ペーパーを1㎝×1㎝くらいの大きさにハサミで切る
- 三つに折る
- 少量の水を付ける
塗った漆をペーパーで研ぐことでさらに平滑な面、
きれいなラインを作り出します。
漆を研いでいきます。
紙ヤスリの方が器の釉薬より「硬度」が高いので、
ヤスリをかけると釉薬が傷つきます。
なので、なるべく「必要最低限」で済ませるようにします。
耐水ペーパーを折り畳んで小さくしているのも
修理箇所以外をなるべく研がないようにするためです。
内側が研ぎ終わったら、
器の外側も研いでいきます。
下地(錆漆さびうるし(ペースト)が下から出てきても、
この時点ではオッケーです◎
どのくらい下地が見えてもオッケーなのかは
判断の難しいところです。
あまりにも(80%とか)下地が出てくるようだと
そもそも「デコボコし過ぎ!」ってことですので、
錆漆さびうるし(ペースト)をやり直した方がいいです。
ペーパーはつまんで研いでもいいですし、
指先や爪先で押さえて研いでもいいです◎
研ぎ終わりました。
これだけ修理箇所が多いと
研ぐのも一苦労です。
<金継ぎの工程 10> さらに漆の塗り2回→研ぎ
漆を研いだ上に更に漆を塗り重ねます。
けど、塗るだけなので解説は端折りました。
「漆を塗り重ねるんだったら、研がなくてもいいんじゃない?
研ぐと漆が擦り減っちゃうわけだし」
そですね。
研ぐことにによって、上に塗り重ねる漆の食いつきをよくします。
それと研ぐことで「きれいな平滑面」を作ります。
研がないと意外とデコボコしているものなのです。
「研いだもの」と「研がなかったもの」とを隣同士に置いて比べると
結構、その差がわかると思います。
↑漆の塗り3回目終了です。
漆を数回塗り重ねることで
漆特有の「表面張力」の「ふっくら」とした感じが出ます◎
漆はこれが心地いいのかもしれませんね。
そして研ぎます。
せっせと研ぎます。
器の外側もせっせと。
そう、漆藝はひたすら「研ぐ」工藝なのです(涙)
<金継ぎの工程 11> 漆の上塗り
- 道具: ② ティッシュペーパー ③ 付け箆 (▸ 付け箆の作り方) ④ 小筆 ⑦ 作業板(クリアファイルなど)
- 材料: ① サラダ油 ⑤ 精製漆(今回使ったのは弁柄漆…赤茶色) ⑥ テレピン
#800~#1000くらいの耐水ペーパーで
研いだ上に漆を塗っていきます。
まずは使う前に筆をテレピンで洗って油を洗い出します。
▸ 詳しい筆の洗い方
ラスト塗りです。
気合入ります!はい。
上塗りは特に気を付けて
塗り残しが無いようにチェックします。
漆は薄く、均一に塗っていきます。
「作業中に手で触ってしまいそうな部」である「口周り」は
今回も一番最後に塗ることにします。
この一回前の漆塗りに「黒色」を使っておけば、
最後の上塗りに「赤色」を使っても「色味の差」が
はっきりしているので、塗り残ししづらくなります。
この最後の上塗りは全面一気に仕上げたいところですが、
もし、「時間的・体力的」に厳しい」、「集中力が続かない」
…というようでしたら、
「器の内側」と「器の外側」を別々に
蒔絵をしてもいいと思います◎
無理せずに行きましょう。
作業が終わりましたら油で筆を洗います。 ▸ 詳しい筆の洗い方
このあと、本来であれば漆が乾き「始める」タイミングを待ちます。
1時間でも、2時間でも漆の具合を見ながら待ちます。
乾き始めるタイミングとは…塗った漆に「はぁー」と息を吐きかけた時に一瞬、塗膜が「虹色」に変化するタイミングです。(何のこっちゃ??わかりませんよね)
けど、「意味、わからん(鳩屋の説明、ヘタ)」「そんな余裕はないぜ(忙しいのだ)」「乾きかけが判断できないわよ」という方も多いかと思います。
ひとまず便宜的に20~30分ほど、湿した場所(湿度65%~)に置いて、漆が乾く「きっかけ」を与えたら蒔絵作業に移っちゃいましょう◎
<金継ぎの工程 12> 蒔絵
- 道具: ① あしらい毛棒(柔らかい毛質の筆) ② 真綿 ③ 重石
- 材料: ④ 蒔絵紛(今回は真鍮粉を使用)
今回は「真鍮粉」を使いますので、
金粉ほどには全く気を使う必要がありません。
楽ちんです◎
あしらい毛棒(柔らかい毛の筆)で
真鍮粉を下から掬い取り、
それを上塗りしたところに乗せます。
それをさっさっと掃いて他の塗った部分に真鍮粉を
乗せていきます。
ソフトタッチで掃いていきます。
ガシガシ筆を擦りつけると
筆に漆が付いたり、付けた粉が取れちゃいます。
優しくです◎
内側オッケー。
続いて器の外側も真鍮粉を蒔いていきます。
筆で蒔絵紛を掬い取って…
漆の部分に乗せて、掃いていきます。
常に「たっぷり」と蒔絵紛が乗っている状態にしながら
筆で掃いてください。
蒔絵紛が少なくなってきたら、補充してください。
蒔き終わったら、再度、全体をチェックします。
特に今回のように作業する部分が多いと、
だんだん集中力が切れてきて、
うっかり蒔絵紛を乗せ忘れていた!ってことが起こります。
これ結構な悲劇ですので、十分ご注意ください。
<金継ぎの完成>