ファイツ!!
う~ん、なんかさ、「金継ぎ」ってさ、やっぱさ、「金」で直さなきゃダメなの??
これ、あまり聞いちゃいけないことなんですかー??
はい、そのご質問、実はよく訊ねられます。
そうですよね、「金」じゃなきゃいけないんですかね?どうなんでしょうね?金継ぎ教室の先生によっては「ダメ」みたいですね。そんなことを先生に聞くだけで「御咎め」を受けるようです(涙)
でも、漆にもいろいろな色があるなら使ってみたいですよね。
そこで、ご自身でも「色漆」が作れるように、そのやり方をご紹介します。
なっ!?「色の着いた漆」って自分で作れるんですか??うそっ!
いえす、作れます◎ちょっと手間がかかりますが、簡単です。
面倒だな~って思う方は、あらかじめ出来上がったものが漆屋さんや東急ハンズで売っています。
お店に行くといろいろな種類の漆が売っているのですが、大別すると…
▪生漆
▪透き漆
の2種類に分けられます。(やや乱暴な分け方ですけど)
◉ 生漆…こげ茶色 (樹から採れた樹液のまま) | |
◉ 透き漆…半透明の茶色 (精製したもの) ※ 木地呂、素黒目などとも呼ばれます |
→この「透き漆」に「色の粉」を混ぜると ・ 黒い漆(呂色) |
ちなみに「生漆」を精製すると「透き漆」になります。
※「透き漆」はお店、地方、産地によって呼び名が違います。「木地呂漆」「素黒目漆」などとも呼ばれます
生漆
↓
生漆を精製すると「透き漆」になる
↓
透き漆に色の粉を混ぜると「色漆」(赤い漆や黒い漆)になる
* お店で売られている「黒い漆」は実は鉄粉を入れて、化学反応で黒くなっています。けど、ややこしいので「一緒」と。
つまり
色漆 = 透き漆(精製漆) + 顔料(色の粉)
ということです。
そういうことでして、まずは生漆を精製して「透き漆」を作ってください。(もしくは「透き漆」を購入してください)
弁柄漆作りに使う道具・材料
道具 ②練り箆 ③先丸箆 ④計量スプーン1/4 ⑥作業板
材料 ①透き漆 ▸透き漆の作り方 ⑤顔料(今回は赤弁柄)
その他に必要な道具は…時間を計るタイムウォッチ
弁柄…箕輪漆行で 50g/¥237- で売っています。
※ 弁柄は他の色の粉よりも安いです◎
レーキ顔料… 箕輪漆行で 50g/¥1,300-
漆と顔料の量を計量スプーンで測るのですが、その際、計量スプーンから掻き出すのに便利なのが「先の丸い箆」です。
「付け箆」として使っている竹製の箆の先っちょを↑画像のように丸くし、厚みも(かなり)薄くしてしなりやすくすることで、計量スプーンから掻き出しやすくなります。
素黒目漆に弁柄(赤)を混ぜて色漆を作る
今回は弁柄(赤)の顔料を使います。
※ ちなみに「顔料を混ぜずに”素黒目漆”で漆塗りをしてはいけないんですか?」とご質問があると思います。
オッケーです。大丈夫です。
ですが、以下のデメリットがあります。
- 素黒目漆は半透明なので、塗り作業をしていて、どこまで塗ったのか分かりづらい。特に「キワ」の部分は「塗れてる?塗れていない??あー、もうわかんない!」ってなります。
- 蒔絵をしたときに、蒔いた金属粉が漆の中に沈みやすくなる。つまり、多くの蒔絵紛を消費することになります。
漆に対しての弁柄の分量ですが、何回かテストした感じだと
透き漆 10 : 8~10 弁柄 (体積比)
くらいがいいのかな…と今のところ考えています。顔料の比率が多いと粘りが出て塗りづらくなります。
ご自分で使ってみて、その結果を踏まえて改善していってください。私もちょっとずつ変えていくと思います。
このページの下の方で作業手順を説明しています。
レーキ顔料(黄色、緑、青など)の場合は
※ 弁柄ではない
透き漆 1 : 0.8~1.2 レーキ顔料 (体積比)
がおススメです◎
顔料比が 1.5 まで入れると色の発色は良くなるのですが、「ドロドロ」した感じになります。塗りづらそう。
まずはスプーン1杯目。摺り切り一杯です。
作業板の上に出します。
さらにおおよそ1/4杯を加えます。
先丸の箆でスプーン内に残った顔料を綺麗に掻き出します。
それでは弁柄漆に素黒目漆を練り合わせていきます。
顔料の方に少量の漆を加えます。漆の方に顔料を加えないように気を付けてください。
この 〈漆・少量練り〉 の段階がすごく重要です。この段階でしっかりと顔料と漆を合わせていきます。
少量の漆だけでまずはしっかりと練り込んでいきます。
2016-07-15 追記
ふと気が付いたのですが、↑画像の「往復矢印」だけじゃ、どうやってヘラを動かしているのかわかりませんよね。あの矢印だけじゃそのまま往復運動していることになっちゃいますね。いや、違いますよ。ヘラを表・裏と返したりしながら動かします。けど、わかりませんよね。
近々、「ヘラの使い方」ページを作ります。多分。きっと。しばしお待ちください。
練って、練って…
途中の段階ではこんな感じの粘りが出ています。
さらに練っていくと顔料に漆が浸み渡っていって、少し滑らかになりました。
この 〈漆少量練り〉 を5分程度行います。
漆を少量ずつ加えていきます。
少量の漆を加えつつ、しっかりと練り込んでいきます。
この作業も5分くらいかけてじっくりゆっくりと進めていってください。
とろみがつきました。
弁柄漆の完成です。
この「漆の精製」につきましては、まだまだ改善の余地があるというか改良していかなければいけないと思っています。
ですので、みなさんもこのコンテンツを一つの参考程度と考えて、ご自分でも研究していってください。「自分で研究してみる」ってきっと面白いと思います。
レーキ顔料の色漆の作り方(黄色バージョン)
レーキ顔料も作業は全く同じなので、わざわざ説明する必要はないのですが、それでもやっぱりあると喜んでくれる方がいるので◎
①小分けで売っているもの ②箱売り ③これは「水銀朱」です(レーキ顔料とは違います)
レーキ顔料(緑色とか黄色、青色など)は
透き漆 1 : 0.8~1.2 レーキ顔料 (体積比)
がおススメです◎
顔料比が 1.5 まで入れると色の発色は良くなるのですが、「ドロドロ」した感じになります。塗りづらそう。
今回は↑この黄色のレーキ顔料を使います。
手順は弁柄と一緒です◎
漆に練り込む顔料を用意する
顔料の入った小袋に計量スプーンを突っ込んで粉を取り出します。
粉の量は 「スプーンちょい山盛り」…ってところでしょうか。
なんとなく「フェルメール」っぽいですね~
作業板の上に顔料を出します。
先っちょがR(丸まった)になったヘラを使って、スプーン内に残った顔料を掻き出します。
ヘラに着いた顔料は作業板に擦り付けます。
最後に他のヘラで掻きとります。
少量の漆で顔料をしっかりと練る
まずは少量の漆で顔料を固練りします。
ちょっとだけ漆をとって、それでしっかりと顔料を練り込んでください。
ちょっと作業がやりづらいですが。
ヘラを擦りつけるようにぐるぐる回したり…
練ったものをまとめて、また伸ばしたり…
時々、ヘラにこびりついた固練り顔料をもう一本のヘラでこそげ取ってください。
ってことは練りベラも2本あるといいですね。
この作業を5分くらい続けて、しっかりと漆と顔料を練り込んでください。
固練りした顔料に漆を足していく
固練りしたものに少しずつ漆を足していきます。
漆を少量足して→練って→足して→練って…です。
ぐるぐる回したりして…
オッケー◎
修了です。「黄漆」できました!
練り終わったらサランラップにくるんで保存してください。
ちなみに色漆は塗った直後は色の発色がいいです。
↑塗った直後
ですが、乾いていくうちに発色が悪くなります(ちょっと”茶色”がかります)。というのも、漆の樹液自体が半透明の「茶色」だからです。その影響が出るので、どうしてもワントーン暗くなります。
発色を良くする方法としましては
- ゆっくり漆を乾かす
- 顔料の含有比率を高くする
- 漆屋さんで日本産の透明度の高い漆(比較的ということですが)を指定して買う