※ 今回ご紹介するお皿の修理方法は〈 合成樹脂 + 本漆 〉で行うやり方です。
「簡単な漆金継ぎ」略して『簡漆(かんしつ)金継ぎ』です。勝手に名付けました。
修理工程の「接着」「穴埋め」「段差埋め」などは合成樹脂で行い、最後の「塗り」は本物の漆で行います。合成樹脂を使うことで作業期間の短縮化と、手順の簡略化を図ります。一方、修理表面の塗りには本物の漆を使うことで食器として使える安全性を確保します。
塗りだけにしか本物の漆を使いませんので「かぶれ」のリスクも減らすことができます。
合成樹脂で直す「簡易金継ぎ」と、本漆のみで直す「本漆金継ぎ」の中間的な修理方法です。
実働作業日数…1日(多少、荒っぽい仕上げでもよければ)~4日(丁寧に仕上げた場合 ※漆の乾き待ちなどの時間も入れると、完成まで8日くらい)
器 information
- 器のデザイナー: 柳宗理
- 器の特徴: 磁器、ツルツルピカピカの釉薬。生地は締まってすごく硬い
- 器のサイズ: 直径155㎜、高さ22㎜
- 破損状態: 割れ5ピース+本体(ひびの長さ:内側の合計約265㎜、外側の合計約265㎜)
私物です。使っていませんが。
なぜ割れたのか?それは金槌が当たったからです。 なぜソーサーに金槌があたるのか?野暮な質問はなしということで…
はい、直します。
しばらくは、この「簡漆金継ぎ」なるもののコンテンツを増やしていきたいと思います。
しっかり砕けています。たまにはこのくらい砕けているお皿の修理作例も欲しいですよね。しっかりご説明していきます。
今回、修理する「柳宗理ソーサー」はごく一般的な量産型の硬い磁器製です。
この手の器は表面がガラスのようにツルツルしているので接着剤やペーストがはみ出しても、刃物で簡単に除去できます。それだけ接着材の「食いつき」が悪いということにもなります。漆も食いつきも若干、弱くなります。ツライところです。
step 01 素地調整/簡漆金継ぎの方法
(今回の所要時間: 20分)
簡漆金継ぎの素地調整で使う道具: リューターのダイヤモンドビット (ホームセンター等で入手可能/価格 \200~)
新うるしの食いつきをよくするために修復箇所にやすりをかけて傷をつけます。
割れた断面のエッジをダイヤモンドのビットで研いでいきます。
角をほんのちょっと落とします。
本体も、小さな破片も、すべてのエッジを研ぎます。
↑画像の赤いラインのところを研ぎます。
私はマシーンを使います。
器の裏側も行います。エッジというエッジ、全てを削ります。
特に↑画像、お皿の縁部分をしっかりと研ぎます。
器の破片同士を接着した時にどうしてもズレが出て、この部分に段差が生じやすいのです。ですのであらかじめこの角を削って、「あそび」を作っておきます。
step 02 エポキシ接着/簡漆金継ぎの方法
(今回の所要時間: 20分)
簡漆金継ぎのエポキシ接着で使う道具と材料
- 道具: 付け箆(▸ 付け箆の作り方)
- 材料: エポキシ接着剤(今回は30分硬化型)
陶器接着用のエポキシ接着剤を使います。今回は30分で硬化するタイプを使いました。
もっと複雑な割れで手間がかかりそうな場合は60分硬化型にした方がいいと思います。作業中に接着剤がどんどん固まってくると本当に焦ります。
A剤、B剤とあります。この2剤を等量、作業板の上に出して練り合わせます。
画像で見やすいように接着剤に弁柄を混ぜます。みなさんは入れる必要はありません。
接着剤を手早く練り合わせます。
それでは接着剤を割れたピースの断面に塗っていきます。
が、その前に…
割れたピースが多い場合は、嵌める場所がわかるようにあらかじめ並べておきます。向きも合わせておきます。
ピースが少ない場合は嵌める箇所がすぐにわかるので特に並べる必要はないと思いますが、多くなると接着時に混乱します。接着剤が固まってきて焦っている上に、どこに嵌めたらいいのかわからなくなると本当にパニックになります。
ということでこの順番通りに接着剤を塗って、また同じ場所に置いておきます。
とりあえず①のピースから塗ります。
ヘラで少量の接着剤を作業板から取ります。
接着剤は薄く広げます。
接着剤が厚くなると、それだけ接着の隙間に異物が入り込むことになりますので、ズレも大きくなります。
塗り終わりました。「薄く」を心掛けてください。
エポキシ接着剤を付け終わったら、元の位置に戻します。向きもお間違いのないように気を付けます。次に右隣りのパーツに接着剤を塗っていきます。
全部のパーツに接着剤が塗り終わりました。順にきれいに並んでいます。
お皿の本体の断面にも接着剤を塗っていきます。薄くです。
全てのパーツ、本体の断面に塗り終わったら、接着剤が乾き始めるまでしばし待ちます。
ポストカードやいらない紙に余った接着剤を付けておいて、それを触って乾き具合を確かめます。
ただ、乾いてしまったら元も子もないので、心配な時は早めに接着作業に取り掛かってください。割れたパーツがすごく多い場合は「乾き始めるまで待つ」なんて悠長なことは言っていられないと思います。その場合はすぐに接着作業を行ってください。
接着を開始します。あらかじめ割れたピースがどこに嵌まるのかわかるように置いてあるはずなので迷うことはないと思います。
うっかり!↑画像では赤丸部分にピースが入らなくなってしまいました。
やり直します。先に↑のピースを嵌めます。
もう一度左のピースを嵌めます。これでオッケーです。
全部のピースを嵌めてから、ピース同士のズレの微調整を行います。
でもどうしたってズレは出るものだと思います。(あたしが下手だから?)
接着剤がしっかりと乾くまで、重力を計算して(というほどではありませんが)接着部分に圧力がかかるようにお皿を固定しておきます。
今回はお皿を挟み撃ちにして、立てて固定しました。
この後、接着剤がしっかりと乾くまで待ちます。
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