ファイツ!
2020.4 全面リニューアル済み
※ 本物の漆を使いますので「かぶれる」可能性があります。ご注意ください。
【錆漆さびうるし】とは
錆漆とは
▪▪▪
「生漆」と「細かい土(=砥の粉)」とを混ぜて作る「漆の”ペースト”」です。
使う材料
砥の粉、水、生漆
体積比(目分量)
砥の粉:生漆=10:7~8
主な用途
・小さな欠けを埋める
・細い隙間を埋める
・僅かな段差を埋める
・刻苧漆(漆のパテ)の上に被せ、「下地の肌」をきめ細かくする
※ 「接着剤」として使われることもありますが、私の実感としては「少し接着力が弱い」感があり、私は金継ぎではやりません。
※ 大きな欠け、穴、段差を埋める場合は刻苧漆で行います↓
その他の材料の作り方
【2019年度版~錆作り動画】
作業手順
1.砥の粉を細かく潰す
2.水を少しずつ砥の粉に足しながら、よく練る
3.生漆を少しずつ「水練り砥の粉」に足しながら、よく練る
錆漆と刻苧漆の使い分けの基準
錆漆を使うのか、それとも刻苧漆を使うのか…をジャッジする際の参考基準。
傷の深さ | 使う充填材 |
▪2㎜以上 |
刻苧漆こくそうるし(パテ)を使用 |
▪1~2㎜ | 錆漆でも刻苧漆でもどちらでもオッケー◎ ※ 錆漆を充填する場合は一回の盛り厚は1㎜程度まで。 それ以上の深さに充填する場合は数回に分けて充填する |
▪0~1㎜未満 |
錆漆さびうるし(ペースト)を使用 |
錆作りで使う道具・材料
道具:
③ 作業盤(ガラスなど)
‣仕立て方ページ ‣仕立て方の動画
④ 付けベラ ‣作り方ページ ‣作り方の動画
⑤ 練りベラ ‣作り方ページ ‣作り方の動画
〇 計量スプーン 1/4 (0.25㏄)
※ その他、本漆金継ぎで使うおススメの道具・材料の一覧(購入先も)を↓こちらのページにまとめました。
▸ 本漆金継ぎで使う道具・材料ページ
漆と砥の粉の分量比
錆漆を作る際の漆と砥の粉との配合比はとても重要です。
比率を間違うと、乾かない(乾きづらい)錆漆になったり、強度の低い錆漆になったりしてしまいます。
【目分量の体積比】
砥の粉 10:7~8 生漆
※ 【体積比】です。お間違いなく。
※ 錆漆は頻繁に作りますので、なるべく暗記してください。もしくは自作の「金継ぎノート」を用意し、メモしてください。いちいちこのページを探すよりもその方が効率がいいです◎
「目分量の体積比」ではなく、もっと正確に計る場合には…
【重量比】
砥の粉(3.0):水(0.3~0.4):生漆(1.5~1.8)
※ 【重量比】です。お間違いなく。
…です。
「目分量の体積比」よりも「重量比」で計った方が正確なのですが、いかんせん金継ぎで使う一回分の砥の粉の量というのはかなり「微量」なので、0.01単位で計れる機械がないと正確に計れない…というのが実情です。
無理して「普通の計りの機械(1g単位もしくは0.1g単位で計れる機械)」を使って計ろうとすると、漆も砥の粉も作業に必要な量よりもはるかに多くなってしまい、結果、余った分は捨てることになります。
ということで、現実的には「目分量の体積比」で計ることになります。
(もちろん、0.01gまで計れるスケールをお持ちの方は重量比で計ってください◎)
【実践!】錆漆を作る
それでは実際に錆漆を作っていきましょう◎
step01 漆と砥の粉の分量を「おおよそ正確に」計る
道具:
② 先丸ベラ(ヘラ先がカーブしたもの)
③ 計量スプーン 1/4 (0.25㏄)
材料:
○ 生漆
① サラサラに細かく潰した砥の粉
錆漆を作る際に重要なことは「漆と砥の粉との配合比を大きく間違えない」ということです。
「大きく」間違えなければいいので、慣れてくれば感覚的に目分量でいけるようになります。
(もっと慣れてくると「錆漆から滲み出る生漆の感じ」で判断できるようになります◎)
ですが、初心者さんには結構、難易度の高いタスクになります。
作る分量が少なければ少ないほど、「ちょっとした配合比の誤差」が大きな影響を与えてきます。
その「解決案」として、金継ぎ図書館では「極小の計量スプーン」を使うことをおススメさせていただきます。
「極小の計量スプーン1/4」を使うメリット
- 漆と砥の粉の配合比率を失敗しづらくなる
- 金継ぎに適した「少量分」だけ錆漆が作れる
などが挙げられます。
大きさは「1/4 (0.25㏄)」がお薦めです。
1/2(0.5㏄)や1/10(0.1㏄)の計量スプーンでももちろん構いません。
が、実際にそれぞれのスプーンで錆漆を作ってみたのですが、できる錆漆がちょっと多かったり、ちょっと少なかったりする気がしました。
金継ぎで使うのに適量の錆漆を作るには「 1/4 」がお薦めです。
それでは砥の粉と漆の計り方をご説明していきます。
あらかじめヘラなどで細かく潰した砥の粉をタッパーなどの容器に入れておきます。
手間ですが、これ大切なところなので手抜きなくやってください。
そのサラサラの砥の粉を計量スプーンでひと掬いします。
軽く山盛りになるように。
ヘラで軽く上から押さえます。
ヘラで切って、「摺り切り一杯」にします。
そうしたらその砥の粉を作業板の上に出して、計量スプーンを空っぽにしてください。
次に漆をチューブから計量スプーンに出します。
皆さんお使いなのはチューブですよね?お茶碗に漆を入れている方は小さなヘラで漆を掬って軽量スプーンに入れてください。
で、ここもミソなのですが、生漆の量はスプーンの 7~8割り です。(おい!金継ぎ図書館!やっぱり「目分量」になってるじゃん!! …はっ!お~なるほど。ほほほほ…)
正しい突っ込みが入りそうですが、軽量スプーンを使った方が誤差が出づらいと思うのです。
スプーンの「7~8割」と書いているのですが、本当は8割5分くらいがベストだと思うのです。
が、そうするとうっかり漆の分量が多くなり過ぎることがあるので、それを防ぐ意味でちょっと少なめに表記させてもらいました。
ちなみに麦漆を作る際の漆の量は摺り切り一杯(100%)です。
画像の上の錆漆は軽量スプーン9~10割の漆で作った時の錆漆です。
錆漆が少し厚くなったところは「縮んで」います。漆分がちょっと多いんですね。
画像下は8割くらいの漆で作った錆漆です。いいですね。
軽量スプーンから作業板の上に漆を移します。
(※注意!! 見やすいようにガラスの作業板の下にグレーの布を敷いてあります。勘違いして「布」を作業板にしちゃダメですよ。漆が浸み込むだけです)
計量スプーンは窪みが深いので、そこから綺麗に漆を掻き出すために「先丸の竹べら」を使います。
「先丸の竹べら」は通常の「付け箆」を作りまして、その先っちょを計量スプーンの丸みに合わせて削ります。丸みはアバウトで大丈夫です。
先丸竹べらは厚みが薄くなるようにすると、よくしなって計量スプーンから掻き出しやすくなります。
これで間違いのない分量比の砥の粉と漆が作業板の上に出たと思います。
今のことろこれが金継ぎ図書館のベストアンサーです。
道具を揃えたり、手順が増えてちょっと手間なのですが、今までうまくいかなかった方のお悩み解決の一役になれたらこれ幸いです。
何度か計量スプーンを使って錆漆を作っているうちに、だんだんと分量の感覚が掴めてくると思います。そうしたらスプーンを使わずとも目分量や作っている最中の錆漆の表情を見て判断ができてくるようになります。
step02 「砥の粉+水」を練る
まずは砥の粉と水を練り合わせます。
砥の粉を作業板の上に出します。
箆で砥の粉を細かく潰します。
細かくなるまで丁寧に潰します。
水を加えます。
直接、砥の粉に水を加えようとすると水を加え過ぎて失敗する場合が多々あるので、砥の粉の横に水を出します。
ヘラ先に水を少しだけ付けます。
その水を砥の粉に加えて、ヘラで練ります。
ちょっとずつ水を足しては練り、また水を足しては練りを2,3回に分けて繰り返します。
その方が失敗しません。
水が多すぎると厄介なので、少な目に加えていってください。
水練り砥の粉の目標は「チューブ入りの練りからし」くらいの状態です
はい、練りからし一丁できました◎
どでしょう?
※人によっては水を使わない(漆+砥の粉のみ)方もいますし、もっと水が少な目、多目の方もいます。
基本的には水が少ない方が錆の強度がでます。が、乾き(硬化)は遅くなります。
水が多すぎると”やけ”というものを起こしてしまい(急激に漆が反応してしまい)、弱く、脆くなります。
で、万が一、水を加えすぎてドロドロになってしまった!場合。
おう、ドロドロですね。大丈夫です。リカバリーできます。
折り畳んだティッシュ先生を優しく押し当てます。
水を吸い取ってもらいます。
パンパースです。今もあるのかしら?
水分が多いようでしたらティッシュの面を変えて何度か繰り返してください。
ティッシュで水分を吸ってもらったらこんな感じになりました。
リカバリー成功です。
step03 「水練り砥の粉+漆」を練る
次に生漆を練り合わせていきます。
漆を作業板の上に出します。とりあえず体積比
水練り砥の粉 1 : 0.8~1 生漆
くらいを目安に出しておきます。
体積比…と言われても目分量じゃ不安だよという方は計量スプーンを使ったやり方をおススメします。(その場合は砥の粉を作業板に出すところからやり直してください。分量の比率が重要ですので)
少量の漆(1/3くらい)を箆で取ります。
ヘラでしっかりと混ぜ合わせます。
大量の漆を一気に混ぜないでください。だまができやすかったり、混ざりにくくなったりします。料理と一緒です。
(金継ぎでは少量しか錆漆を作らないので、実はここまで神経質になる必要はないと思いますが、大量に作るときはこうしないと漆が混ざりにくくなりますのでご注意ください)
さらに1/3の漆を取ります。
よく練り合わせます。
残りの漆を箆でとります。
しっかりと練っていきます。
漆分が十分かどうかのチェックです。
ヘラで引っ張ったところの錆漆から、3秒くらい待って、じわっと表面から漆がうっすら滲んでくる…くらいがいいかと思います。
ジャスト飽和状態。
うっすら滲んでこないようでしたら、少し漆を足して、また混ぜます。
※ 計量スプーンであらかじめ漆の量を計った方は漆を足さないでください。
漆を足して混ぜます。
できました。こんな感じです。
わかりますか?わからないですよね。私も分かりません。なぬ?!
でも経験を積んでいくと、錆漆に含まれている漆の微妙な差が分かってくる気がします。
はじめはなかなか勘所が掴みにくいので、計量スプーン作戦がおススメです。
その他の材料の作り方
▪麦漆(接着剤)の作り方ページ↓
▪刻苧漆(パテ)の作り方ページ↓
「錆漆が乾かない」等のトラブルの原因と対処法
「このページに書いてある通りにちゃんと作ったつもりなのに…乾かないよ~(涙)」
ってことがありますよね。
わかります。
僕もかつて何度も乾かなかったときがありました。
乾かい」といっても、いくつかの原因が考えられます。
Pattern01
症状:
原因:
生漆が古くなってしまった(1年以上)
対処法:
買ってから1年以上経っているようでしたら、その生漆で作った錆漆は乾きづらくなっています。
古くなった生漆で作った錆漆を乾かすためには…
①作業自体を速やかに終わらせる(かなり迅速に。2~3分とか)。もしくは、錆付け作業をしていて時間が経ってしまったら、その都度、何度も作り直す。
(ヘラでこねくり回している時間が長くなると、全く乾かない錆漆になってしまいます)
②作業後、「空風呂」に入れるのではなく(もしくは放置するのではなく)、すぐに「しっかりと湿した風呂」に入れる。
結局、新しい生漆を買い直した方が、作業効率がよくなります◎
Pattern02
症状:
原因:
気温が低すぎる
湿度が低すぎる
対処法:
Pattern03
症状:
原因:
・さらに気温が低すぎるところにしばらく置いておいた(漆が凍るくらい)
・温度が高すぎるところにしばらく置いておいた(40度近い場所)
・直射日光が当たる場所に長期間置いておいた
対処法:
すでにあなたの漆は死んでいます(涙)
基本的にどうあがいても乾く見込みはないでしょう。
Pattern02
症状:
原因:
漆が多すぎる
対処法:
Pattern02
症状:
原因:
湿度が高過ぎた
対処法:
注意事項
- 漆が少ないと錆漆の強度が低くなります。”やけ”も起こりやすくなります。
- 漆が多いと錆漆の強度は高くなります。けど、多いほど乾き(硬化)が遅くなります。何日もかかってしまったりします。
- 漆が多すぎると”ちぢむ”ことがあります。ちぢんじゃダメです。ちぢみはまたご説明します。( ▸ 錆漆が縮んだ時の対処法 )
これで金継ぎで使う錆漆作りは終了です。
錆漆のつけ方・使い方テクニック
▸ 小さい欠けの錆漆のつけ方・使い方part 1
▸ 細い隙間の錆漆のつけ方・使い方TECHNIC
その他の材料の作り方
▸ 麦漆の作り方(接着剤)
▸ 刻苧漆の作り方(パテ状のもの)…大きい欠け、隙間用
錆漆が乾かない(ような気がする)ときの対象方法↓