ファイツ!!
2020.5 全面リニューアル済み
artist 斎藤裕美子さんの器
初心者向け
難易度:
充填材:錆漆(ペースト)
使用粉:真鍮粉(金色の金属粉)
こだわり度:丁寧・こだわり
今回のシリーズは「完成度の高さ」にこだわって、頑張ってきれいに仕上げます◎
※ 口元が欠けたカップの「伝統的な本当の金継ぎ修理」のやり方を説明していきます。
このページでは金継ぎ作業の〈欠けた部分の素地をやすりで削る~欠けを錆漆で埋める(1回目)まで〉のやり方を解説していきます。
【道具・材料と購入先を見る】↓
【金継ぎ修理を始めるその前に…】
動画で事前予習
● 今回の修理の参考になりそうなダイジェスト動画です↓
これを見れば「欠けた器のおおよその金継ぎ修理の流れ」が分かると思います。
カブレ対策
本物の漆を使った修理方法ですので「かぶれる」可能性があります。
※ 万が一、漆が肌に付いた場合はすぐに「油(サラダ油など)」でよく洗って下さい。
油?? そうです。「油」をつけ、ゴシゴシ漆を洗い落としてください。その後、その油を石けんや中性洗剤で洗い流してください。
※ もし、かぶれてしまい、それがひどくなるようでしたら、医者に行って処方してもらってください。
作業を始めるにあたって、まずは装備を…
金継ぎでは本漆を使うので「ディフェンシブ」に行きましょう。
ゴム手袋は必需品です◎ 漆をなめちゃいけません◎
※ 作業後、油分多めのクリームを手、腕など、肌が露出していたところ(夏場は脚・足にも)に塗っておくと、カブレにくかった…というコメントをいただきました。
(塗り忘れたときは、毎回、痒くなった…そうです)
気になる方はやってみてください◎
注意:
修理箇所に油分をつけてしまうと、その箇所だけ漆が乾かなくなります。(手脂でも乾かなくなります)
ご注意ください!
※ 修理箇所に油分が付いてしまった場合は、エタノールで入念に拭きあげるか、台所用中性洗剤で洗えば大丈夫です◎
【金継ぎとは】
金継ぎ(金繕い)とは欠けたり、割れたりした器を本物の漆で直す日本の伝統技法です。
漆で接着し、漆で欠けや穴を埋め、漆を塗って、最後に金粉や銀粉を蒔いて装飾をします。
「金継ぎ」と呼びますが、実は「金」で接着や穴埋めをするわけじゃありません。
ベースは全て漆を使っての作業になります◎
続きの長いお話↓
この「壊れた痕を目立たせる」修理方法は日本独自のものだと思います。
普通は傷って隠したくなるものだと思いますが、なぜ、敢えて金を蒔いて強調したのでしょうね?
修復した箇所に金を蒔いて仕上げる「金継ぎ」は室町時代の茶の湯から始まったようですが、壊れた器を漆で修理すること自体は縄文時代から行われてきました。
祭器の中にわざわざ漆で継いで直したものが多数、見つかっています。
僕たちの感覚からいえば、祭り(神とのやり取りの場?)で使われる器が「修理品」でいいの??と思いますよね。
「壊れた器を使うなんて、神様に失礼じゃない?作り直せばいいのに…」と思ってしまいます。
ただ、この「感覚」というのは「現代に生きる」私たち固有の(ある意味)「偏見」であり、何かを見落としていたり、何かを感じる力を失っているからこそ抱いてしまう感覚なのかもしれません。
勝手な想像を巡らせていいのならば、きっと、「作り直す」ではなく、「継ぎ直す」でなければならなかった理由が何かあるはずだと思うのです。
「壊れたもの、解体したもの(=〈死者の世界/異世界〉に移行したもの)」が「再び繋がり合う、継ぎ合わされる(=〈生者の世界/この世界〉に戻ってくる)」というプロセスをくぐり抜けたものだけが獲得し得る「力」のようなものを古代の人はリアルな身体実感として理解していた。
だからこそ継ぎ直したものも祭事に使っていた…のではないかと推測します。
千宗屋さんの本に、茶の湯の究極的な目的は”直心の交わり”だと書かれています。
直心の交わりを成立させるためには、その場に居合わせた各人それぞれが「自我のフレーム」を手放す、もしくは一度解体する必要があります。
主も客も道具も空間も一度そのアイデンティティがすべてが解体される。そしてばらばらになった破片同士をひとつに継ぎ直すことによってその場に「共身体」のようなものが立ち上がる。
その時、「わたし」も「あなた」もなくなった”直心の交わり”がなされる。
室町の茶人たちは「漆継ぎ」した器の中に、
「解体→再構築」のプロセスを通過したときに立ち上がる不可思議な「力」を具現化したもの
…として再発見した(つまり漆継ぎという技法の中にもともとあったのだと思います)。
その「力」をもっとビビットに表現する手段が「金継ぎ」だったのではないか、と思います。
さらになぜ「金」にしたのか…と書き出すとさらに長くなるのでまた今度にします。
とにかく金継ぎをやってみてください。
器の直しが完成したのに、きっと、「なんかヘン」「なんか不思議」という感覚を覚えます。
手元の傷をしげしげと眺めつつ、その不可思議な体験をぜひ。
【器の情報】
【information】
- 作家: 斎藤裕美子さん
- 特徴: マットだけど締まった感じの釉薬
- サイズ: 直径85㎜×高さ85㎜
- 破損状態: 欠け、口元の縁部分、10㎜×8㎜
- 仕上げ方法: 真鍮粉仕上げ(金色)
いきなり作業を始める前に、まずは
- 傷の確認(細かいところまで)
- 修理計画を立てる(完成のイメージも作りつつ)
作業をします。
傷の確認
・小さな欠けの有無
・ひびの有無
修理する器の傷の具合を入念にチェックします。(周辺部も要チェック)
自分で気が付いている以外の傷が意外と入っていたりします。「ちいさな欠け」や「薄っすらと入ったひび」は特に見落としがちです。
いろいろな角度から器に光を当てて、チェック、チェックです◎
(↑”ひび”は当てる光の角度をいろいろと変えて見ていると”見える”ことが多いです)
修理計画を立てる
完成のイメージも作りつつ
・傷の大きさ/深さによる修理工程の確認
・器表面の質感(ツルツルかマットかザラザラか)
傷の具合を見て、例えば欠けが大きかったら「刻苧漆こくそうるし(パテ)で埋めてから→表面を錆漆さびうるし(ペースト)でコーティング」となりますし、欠けが小さかったらいきなり錆漆でオッケーです。
また、器の釉薬の具合を見て、「ツルツルのガラス質」ならば「マスキングで汚れ防止」をする必要は基本的にはありません(絶対に汚したくない人はもちろんやってください◎)。
「ガサガサのマットな表面」だったら、マスキングをした方がいいと思います。
…などなど、作業に入る前にある程度の「計画」や「完成イメージ」を作っておきます。
けど、それほど厳密にやる必要はないと思います。
経験を積んでいくうちにこのあたりの計画は立てやすくなってきますし、完成イメージに関しては作業を進めていくうちに「変更」「修正」を加えていく方が実はいいと思います◎
▪実作業▪
それでは今回の依頼品を見ていきます。
依頼された傷以外にも損傷がないかチェックします。
いろいろな角度から見ます。
よくあるのが「ごく小さい欠け」と「うっすらと入ったひび」です。
↑これを見逃さないようによく調べてください。
今回は「ひび」「極小の欠け」はありませんでした◎
欠けた箇所の形がとんがっています。
このラインをそのまま拾うかどうか考えないとです。
● ピカピカしたガラス質の釉薬ではなくマットな釉薬なので、金継ぎの錆漆作業の際にマスキングをするかどうか迷います。
今回は「釉薬が締まっている」感じなので錆漆がはみ出してもきれいに取れそうだと判断しました。
→ということでマスキングはおこなわない方向で考えています。
● 欠け部分が深くない(刻苧漆を盛って直すほどではない)
→なので錆漆さびうるし(ペースト)を2回くらい充填して欠けを埋めようと思います。
●〈器自体の持っている雰囲気〉…
形としては丸みを帯びた柔らかな感じ。
釉薬は少しもったりとした重厚な質感で、色がとにかく魅力的です。
地中海あたりの海のイメージがしました。夜の海景です。
●〈依頼主の雰囲気〉…
依頼主はこの器の作家・斎藤裕美子さんです。
個展のために作った器が欠けてしまいました。
3年半ほどずっとこのペルシャブルーの釉薬に惹きつけられて様々な器を作ってきました。
アジアの東の果てから遥か彼方、アジア最西端ペルシャの地に想いを馳せた器です。
こういう感覚というのは日本人なら多くの人が共感できるのではないかと思います。
遠い異国の地をノスタルジックに思い浮かべる時、それはヨーロッパや南米、アフリカ大陸ではなく、日本人である「私」の身体感覚が最大限遠くまで引き延ばせるぎりぎりの距離、それが「アジア大陸」最西端の地、ペルシャなんだと思います。
実感として感じられるような気がする遥か彼方にある場所を人は求めて止まない。
そういうものかもしれませんね◎
…などなどを考慮して(かなり恣意的になっているかもしれませんが)、金継ぎの仕上がりのライン・形・テクスチャーをイメージします。
→今回は傷のラインを「精度高く」拾う(つまり「ガタガタ」したアウトラインを拾う)よりかはシンプルなラインに整理した方がよさそうだなと思いました。
この段階で明確に完成図が見えないことがほとんどです。
「何となくの方向性」がとりあえず立てられればいいと思います。
実際に修理していく中で「もうちょい、こうした方がいいな」と思い浮かぶことの方が多いです。
【素地の調整】
〈使う道具〉
道具 :
① リューターのダイヤモンドビット
▸作り方ページ
② 半丸のダイヤモンドやすり
※ 本漆金継ぎで使うおススメの道具・材料の一覧(購入先も)を↓こちらのページにまとめました。
ダイヤモンドビットのカスタマイズのやり方は↓こちらのページをご覧ください。
▪実作業▪
まずは修理する部分の器の素地にやすりをかけます。
使っているのは棒の先端にダイヤモンドの粒子のついたヤスリです。
本当はリューターという機械にセットして使うものです。
けど、このままでも意外と使い勝手がよろしいのです。
欠けた箇所のとんがっているエッジを軽く削っていきます。
赤点線の部分を中心にヤスリがけしていきます。
【ザラザラ・マットな器を直している場合】
● 筆の扱いに慣れていなくて、修理箇所以外に「はみ出しちゃいそうな気がする…」という方は、汚れ防止のための「マスキング」をしておいてください。
マスキングのやり方は「この次の工程」で説明しています。
【素地固め】
欠けた箇所を「漆の充填材」で埋める前に、その充填剤が器に食いつきやすくなるように下処理をしておきます。
修理箇所に「生漆」を薄く塗る作業をします。
〈使う道具/材料〉
道具:
③ 豚毛の平小筆
⑤ 練りベラ ‣作り方ページ ‣作り方の動画
⑥ 作業板(ガラス板など)
‣作り方ページ ‣作り方の動画
○ ゲル板 ○ サランラップ
材料:
① テレピン ② ティッシュ
④ 生漆 ⑦ サラダ油
※ 本漆金継ぎで使うおススメの道具・材料の一覧(購入先も)を↓こちらのページにまとめました。
※ この作業で使う「小筆」は100均などで購入できる安価な筆にしてください(「豚毛」などの「硬い毛」がおススメです)。
陶器の断面に擦り付けるので、毛先が痛みやすいのです。高価な筆だとモッタイナイです。
使用「前」の筆洗い
まずは筆をテレピン(または灯油)で洗って筆の中の「油」を洗い出します。
▸ 詳しい作業前の筆の洗い方
どうして筆に「油」が付いてるの??…かといいますと、漆作業で使った筆は最後に油で洗っているからなのです。油で洗うと筆の中に残った微量な漆が乾きません。
漆と油とは相性が悪いのですが、それを利用して、保管するときには油で洗います。
逆に、使う時にはその油を除去します。
作業工程
① 畳んだティッシュに筆を包む
② ティッシュをギュッと摘まんで、筆の中の油を吸い取る
※ 上の動画内では「①②のティッシュをギュッと摘まんで、筆の中の油を吸い取る」ステップを撮り忘れています!済みません~(T_T) そのうちまた撮影し直します!
③ 作業板の上に数滴テレピンを垂らす
④ その上で筆を捻ったりしてテレピンをよく含ませる
⑤ 筆をティッシュで包む
⑥ ティッシュをぎゅっと押えて、「油+テレピン」を絞り出す
⑦ 「4→5→6」を2~3回繰り返す
① 折り畳んだティッシュに筆を包みます。
② ティッシュの上からギュッと摘まんで、筆の中の油を吸い取ります。
③ 作業盤の上にテレピンを数滴、垂らします。
④ 筆にテレピンを含ませます。
筆は作業盤の上で捻ったりして、しっかりとテレピンと馴染むようにします。
⑤ 再び、ティッシュの上に筆を乗せます。
⑥ ティッシュの上からギュッと摘まんで、「油+テレピン」を絞り出します。
この後、「④→⑤→⑥」を2~3回、繰り返します。
この作業で筆のなかの油分をしっかりと除去します。
筆の中に油が残っていると漆が乾かないことがありますのでご注意ください。
●「エタノール」などの揮発性の強いもので洗うと、テレピンよりも油分がしっかりと除去できますが、その分、筆への負担も大きくなり、傷みやすくなります。
ですので、金継ぎ図書館では筆が傷みにくいテレピン、灯油などをおススメしています。
生漆を希釈する
割れた断面に漆を塗るのですが、器の断面に浸み込みやすくするために、生漆に少量のテレピンを混ぜて希釈します。
作業板の上でヘラを使ってよく混ぜ合わせます。
~生漆の希釈~
【体積比/目分量】
生漆 10:2~3 テレピン ※おおよそ
作業工程
① 作業板の上に生漆を適量、出す。
② 作業板の上にテレピンを数的、出す。
③ ヘラでよく混ぜる
「混ぜ混ぜ」作業はそんなに「念入り」にやる必要はありません。
ちゃちゃっと1分くらいでオッケーです◎
それを欠けた場所に浸み込ませていきます。
▪実作業▪
漆の塗布作業
違う器の修理ですが、参考になりますのでご覧ください↓
それでは作業に入ります。みなさん、「ゴム手袋」してくださいね◎
しないとカブレちゃうかもしれませんよ。
2:42~3:31まで再生
※ 写真を撮ってなかったので、他の器の修理写真を使って説明させてください。
希釈した生漆を薄く塗ります。
拭き取り作業
ティッシュで吸い込まなかった余計な漆を拭き取ります。
折り畳んだティッシュを押し当てます。
余分な漆がティッシュに吸い取られました◎
ティッシュオフを2,3回繰り返します。
ティッシュにほとんど漆が付かなくなるまで繰り返します。
漆を乾かす
作業が終わったら湿度の高い場所に置いて漆を硬化させます。
そう、漆は空気中の水分を取り込んで硬化するのです。不思議な樹液ですね◎
【漆が乾く最適条件】
え~!
「高」湿度!の場所??
はい、その通りです◎
漆が乾く上記の条件を作るために「箱」を用意します。
手っ取り早く手に入る「段ボール」を例にご説明します。
① まず下にビニール袋を敷いて、段ボールが濡れるのを防ぎます。
次に濡らして「固く絞った」キッチンペーパー(もしくはウエス)を中に置きます。
② 作業が終わった器を入れます。できればウエスから少し離した場所に置きます。
(上の画像よりも、もう少し離れた場所に置いた方がいいです)
③ 蓋を閉めて、湿度が逃げないようにします。
④ 鳩は入らないようにします◎
漆の乾きがよくないようでしたら、こまめに湿度を与えます。(5時間おきとか)
大体の場合は、初めに湿度を与えてあげればしっかりと乾きます。
※【箱】…段ボール、コンテナ、発泡スチロール…等々、何でも構いません。
要するに湿度が逃げない(逃げにくい)ように「閉じた空間」が作れればオッケーです。
※【布類】…水を含ませておくためのものですので、何でも構いません。
使っているうちにカビが生えたり、匂いがしてきたりするので、「キッチンペーパー」が使い勝手がいいようです。(匂ってきたら捨てられますから)
今回の「素地固め」では、漆を乾かす時間は「半日~1日ほど」です。
※ 2日以上~数カ月経ったとしてもほとんど悪影響はないんじゃないか?と思います◎
??何で「湿度の高い」場所に置くの??乾かないんじゃない?…と思われますよね。
実は漆が乾くメカニズムというのが、普通じゃないんです。
…ということなのです。
漆の世界では「硬化」することを「乾く」と呼んでいる…ってことです。
「ラッカーゼ」が元気に働いてくれると、漆が硬化するということでして、、、
【漆が乾く最適条件】
湿度:70~85%
温度:20~30℃
ということになります。
だたし、この条件は「最適条件」ということでして、この条件を上回っていても、下回っていても、乾きます。
しかし、この最適条件から
●「下回るにつれ」と「乾きづらく」なっていき、「大幅に下回る」と「ほぼ乾かなくなる」こともあります。
●「上回るにつれ」と「乾きづらく」なっていき、「大幅に上回る」と「ほぼ乾かなくなる」こともあります。
のでご注意ください。
「段ボールなんてダサくて嫌!」という方は↓のページを参考にバージョン・アップさせていってください。
使用「後」の豚毛筆洗い
漆を使った筆は作業後、「油」で洗います。
作業工程
① 折り畳んだティッシュで漆の付いた筆を包む。
② ティッシュを摘まんでギュッと漆を絞り出す。(数回おこなって、しっかりと絞り出す)
※ 上の動画では②の「ティッシュを摘まんでギュッと漆を絞り出す」作業を撮影し忘れました。そのうち撮り直します!済みません。
③ 筆に油を含ませる。
④ 作業盤の上で捻ったりしながら油を馴染ませる。
⑤ 筆の根元からヘラで「油+漆」をしごき出す。
⑥ ヘラで廃油を掬い、ティッシュに吸わせる。
⑦ 再び油を含ませる
⑧ 作業盤の上で、ヘラを使って絞り出す
⑨ 廃油の中に漆分が(ある程度)含まれなくなるまで…つまり「透明度」が高くなるまで繰り返す。
⑩ 筆をサランラップで包んで保管する。
⑪ 作業盤に数滴テレピンを垂らし、拭きあげる。(油分を除去する)
※ この洗い方は100均等で買った豚毛筆などの安価な筆の洗い方です。「雑」に洗っています。
蒔絵筆やインターロン筆など、ちょっとでも高い筆はこの洗い方をしないでください。毛が痛みます。
① 折り畳んだティッシュに漆の付いた筆を包み込みます。
② 外側からティッシュをぎゅっと摘まんで漆を絞り出す。
これを数回おこなって、しっかりと絞り出します。
この時点でしっかりと漆を絞り出してしまった方が、この後の「油で洗う」時、筆が早く綺麗になります◎
③ 油の入った瓶に筆を入れて、油を含ませます。
④ 作業盤の上で捻ったりしながら筆に油を馴染ませます。
⑤ 筆の根元からヘラで「油+漆」をしごき出します。今回は安価な「豚毛筆」を使っているので、わりかしガシガシやっちゃっていいです◎
⑥ 筆の中の「油+漆」の廃油がしごき出せたら、ヘラで廃油を掬い、、、ティッシュに吸わせます。
こうして廃油をどかしておくと、作業盤の上が常にクリーンな状態で筆の洗い作業ができます◎
この後は「③→④→⑤→⑥」を繰り返します。
廃油の中に漆分が(ある程度)含まれなくなるまで…つまり「透明度」が高くなるまで繰り返します。
今回は安価な「豚毛筆」を使っているので、適当なところで止めておきます。
高価な筆を洗う場合はしっかりと念入りに洗ってください。じゃないと、筆が劣化しますので◎
これで筆洗い作業は完了です◎
この後、筆を仕舞います。
⑨ サランラップを取り出し、その上に筆を置きます。
この時、筆先に「余白」(赤の矢印分くらい)を残しておいてください。
⑩ ラップに筆を巻いていきます。ローリングです。
⑪ 途中でローリングを止め、先ほど残しておいた「余白分」のラップを畳み込みます。
⑫ 最後までラップを巻いて、完成です◎
【 お掃除、お掃除 】
全ての作業が終わったら作業板を掃除します。
テレピン(又はエタノール、灯油など)を垂らして、ウエスやティッシュできれいに拭き取ってください。
caution !
厳密に言うと、掃除をし終わった後の作業板の上には「ごくごく薄っすら」と漆の成分が残っています。
ですので、この作業が終わるまではしっかりとゴム手袋をして、ゴム手袋を外したあとは作業板を含めて漆の道具類を触らないようにした方がいいです。
※ 今回、修理している器には「マスキング」する必要はありませんでしたが、場合によっては必要となりますので、記載しておきます。
【マスキング】
錆漆を充填する際、「器の表面」によってはそれらが汚れとしてこびりついてしまうことがあります。
作業する箇所の周りが汚れないようにあらかじめマスキング材で覆っておきます。
マスキングについてもっと詳しい解説を見たい方はこちらのページをご覧ください↓
マスキングした方がいい器とは?
● マスキングした方がいい器
・修理する器の表面(釉薬)が「ザラザラ、マットな質」のもの
・焼き締めの器
・器の表面に「小さな凹凸」がある器
・器の表面に「小さなクレーターやピンホール」がある器
・器の表面を見ても、「ツルツルしているような、でもマットなような…」と判断がつかない場合はケースバイケース
・高台の裏など釉薬がかかっていない部分↑があれば、そこだけピンポイントでマスキングを行います。
※ 高台の裏は釉薬が掛かっていない場合が多いので、注意してください!
● マスキングしなくてもいい器
・修理する器の表面(釉薬)が「ツルツル、ぴかぴかのガラス質」のものでしたら、汚れがついても簡単に落とせます。ですので基本的にはマスキングは行いません。
・小さな凸凹、クレーター/ピンホールがない器
〈使う材料〉
マスキングで使う素材としては
・マスキング「テープ」
・マスキング「液」
の2種類があります。
使い分け方(金継ぎ図書館的な)
▪「テープ」を使用するのは…
・単純な形状にマスキングをする場合
・多少、複雑な形状でも、マスキングをする範囲が狭い場合
▪「液」を使用するのは…
・複雑な形状にマスキングをする場合
● マスキング「テープ」の使い方
① 棒(ヘラなど)
③ マスキングテープ(15~20㎜幅前後)
▪ 動画を見れば一目瞭然です◎ まずはこちらをご覧になってください↓
0:40~3:00まで再生
千切ったテープを修理箇所に沿って、貼っていきます。
その際、ヘラなどの棒を使うと作業がしやすくなります。
㊨:テープが修理箇所に「掛かって」しまったら、テープを棒で引っ張って微調整してください。
意外と融通が利きます◎
テープの貼り方ですが、「修理箇所から1~2㎜前後の隙間を開けた方がいい」と思います。
▪もう少し詳しい解説を見たい方はこちらのページをご覧ください↓
● マスキング「液」の使い方
①④ マスキング液
② 水筆+水+中性洗剤
▪ 動画を見れば一目瞭然です◎ まずはこちらをご覧になってください↓
3:00~7:08まで再生
㊧:筆先で少量のマスキング液を掬います。
マスキング液はどんどん固化していくので、容器の蓋は閉めます。
㊨:修理箇所に触れないように、その周りに塗っていきます。
薄く延ばしながら塗っていきます。
マスキング液がどんどん固化していくので、手早く塗っていきます。
マスキング液が足りなくなったら、その都度、液の入った瓶から少量出して使います。
マスキング液は乾くと「透明」になります。
「質感」としてはゴムっぽい感じです。
擦ると簡単に剥がれてしまいますので、気を付けてください。
▪もう少し詳しい解説を見たい方はこちらのページをご覧ください↓
【錆漆を付ける(1回目)】
欠けた箇所を「錆漆(漆のペースト)」で埋めていきます。
…と、その前に、金継ぎでは欠損箇所を埋める素材として2種類の充填材がありますので、そのどちらを使ったらいいのか?の判断基準をご説明します。
刻苧or錆漆を使うかの判断基準
←刻苧漆(写真左)/(写真右)錆漆→
欠損箇所を直す素材として「刻苧漆」と「錆漆さびうるし(漆のペースト)」の2種類があります。
今回のようなケース以外の場合、錆漆を使うのか、それとも刻苧漆を使うのか…がよくわからない場合は、下記の表をジャッジする際の参考基準としてください。
基本的には「面積」ではなく、「深さ」を基準にしてください。
傷の深さ | 使う充填材 |
▪深さ2㎜以上 |
【刻苧漆こくそうるし(パテ)】を使用 |
▪深さ1~2㎜ | 錆漆でも刻苧漆でもどちらでもオッケー◎ ※ 錆漆を充填する場合は一回の盛り厚は1㎜程度まで。 それ以上の深さに充填する場合は数回に分けて充填する |
▪深さ0~1㎜未満 |
【錆漆さびうるし(ペースト)】を使用 |
●「深さ」を基準にするので、充填箇所が…
・面積が狭くても「深ければ」→刻苧漆
・面積が広くても「浅ければ」→錆漆
…というように考えてください。
● 「造形」を必要とされる場合には基本的には「刻苧漆」を使ってください。
↑こういった場合の「造形」には「粘土のように使える」刻苧漆の方が適しています。
これらを基準に考えた上で、今回は傷が浅いので錆漆を使うことにしました。
2回にわけて欠けた部分を埋めていきます。
〈使う道具/材料〉
道具:
③ 作業盤(ガラスなど)
‣仕立てページ ‣仕立て動画
④ 付けベラ ‣作り方ページ ‣作り方の動画
⑤ 練りベラ ‣作り方ページ ‣作り方の動画
〇 計量スプーン 1/4 (0.25㏄)
※ その他、本漆金継ぎで使うおススメの道具・材料の一覧(購入先も)を↓こちらのページにまとめました。
▸ 本漆金継ぎで使う道具・材料ページ
これらの材料を使って「ペースト状のもの=錆漆さびうるし」を作ります。
錆漆の作り方
作業手順
1.砥の粉を細かく潰す
2.水を少しずつ砥の粉に足しながら、よく練る
3.生漆を少しずつ「水練り砥の粉」に足しながら、よく練る
それでは「錆漆」を作っていきます。
錆漆は…
錆漆=砥の粉+生漆
で出来ています。
配合比は…
【目分量の体積比】
砥の粉 10:7~8 生漆
※ 【体積比】です。お間違いなく。
※ 錆漆の「作り置き」はおススメしません。「使うときに作る」が原則です。
作ってから2~3日くらは乾きますが、どんどん乾きが悪くなっていきます。
とはいえ、「明日も他の器を直すので」という方は、残った錆漆さびうるし(ペースト)を保存してください◎
▸余った錆漆・麦漆・漆の保存方法
1.砥の粉を擦切り1杯
2.生漆を7~8分目
3.作業盤の上で砥の粉を細かく潰す
4.脇に水を少量出す
5.潰した砥の粉に少量ずつ水を加えながら、ヘラでよく練る
6.砥の粉が「まとまる」くらいまで水を加えつつ、練る
7.生漆を少量ずつ加えながら、ヘラでよく練る
8.生漆を全部加えたら出来上がり◎
※ 生漆が多すぎるといつまで経っても乾かない錆漆になってしまいますので、配合比には気を付けてください。
さらに詳しい「錆漆の作り方」を見たい方はこちらをご覧ください↓
ヘラで錆を掬うテクニック
作業に入る前に<ヘラテク>をご紹介します↓
【錆スクイ・テク】
▪▪▪
- 作業板の上で錆漆を薄く均一に広げる。
- ヘラを少し寝かしつつ、横から滑り込ませる。
- 右側から左側へ通す。
- そうするとヘラの先っちょだけに錆漆がつきます。
慣れてくるとテンポよく作業ができて、それだけで気持ちがよくなります。
<同一動作の反復>というのは集中していくととても心地いいものです。
▪実作業▪
それでは器の欠けた凹みに錆漆を充填していきます。
● 小さく欠けた個所に錆を付ける時の参考になる動画です↓
(5:00~6:17まで再生)
● ちょっと「幅広」の欠けた個所に錆を付ける時の参考になる動画です↓
3:11∼6:16まで再生
錆漆はちょっとずつ付けていきます。
ヘラの先っちょに少量の錆漆を取ります。
ヘラ先にのせた錆漆をかけた部分外側のエッジで「切る」ようにして欠けた部分に置いていきます。
ヘラはエッジに沿わせます。
欠け部分に置かれた錆漆をヘラで押さえて広げていきます。
まずは手前にヘラを引いていきます。
次に奥側にヘラを通します。
写真だとヘラの動かし方が伝わりづらいかと思います。
ぜひ上部に貼ってある動画でヘラの動かし方をご確認ください◎
見よう見まねでやっているうちに、だんだんと上達していきます。
工藝ってそういうものです(‘;’)
錆漆が足りないのでもう少し足します。
欠けのエッジで錆漆を切りながらヘラを右下に引いていきます。
慣れないうちはゆっくりとでいいので、ヘラの動きに意識を留めながら作業を進めてください。
少し凹んでいますが、一回目の錆付けはこんなもので。
錆漆は厚盛り厳禁です。ご注意ください。
これで金継ぎの錆漆付け作業の一回目が終了です。
【 お掃除、お掃除 】
全ての作業が終わったら作業板を掃除します。
テレピン(又はエタノール、灯油など)を垂らして、ウエスやティッシュできれいに拭き取ってください。
caution !
厳密に言うと、掃除をし終わった後の作業板の上には「ごくごく薄っすら」と漆の成分が残っています。
ですので、この作業が終わるまではしっかりとゴム手袋をして、ゴム手袋を外したあとは作業板を含めて漆の道具類を触らないようにした方がいいです。
錆漆を乾かす
錆漆の乾きに1~2日間待ちます。
錆漆が乾くまで1~2日待機してください。
(調子のいい生漆を使うと4~5時間後に次の作業ができますが、一応大事を取って「待って」ください)
錆漆さびうるし(ペースト)はそれ自体に「水分」が入っているので、とくに湿度のある「漆風呂」に入れなくてもしっかりと硬化してくれます。
ですが、
・「古い生漆」
・「乾きの悪い生漆」
・「調合してから数日、取り置きしておいた錆」
…を使っていた場合は乾きが悪いかもしれません。その場合は初めから湿し風呂に入れて、湿度を与えてください。
始めに湿度を与えて、漆に「闘魂を注入」することが大切です◎
※ 水を固く絞った布を中に入れて湿度を高くしてください。
もうちょい詳しく見たい方は↓こちらのページをご覧ください。
本日の作業はここまでです◎
お疲れ様でした。
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