※ 今回ご紹介するお皿の修理方法は〈 合成樹脂 + 本漆 〉で行うやり方です。
「簡単な漆金継ぎ」略して『簡漆(かんしつ)金継ぎ』と名付けました。
修理工程の「接着」「穴埋め」「段差埋め」などは合成樹脂で行い、最後の「塗り」は本物の漆で行います。合成樹脂を使うことで作業期間の短縮化と、手順の簡略化を図ります。一方、修理表面の塗りには本物の漆を使用することで食器として使える安全性を確保します。
塗りだけにしか本物の漆を使いませんので「かぶれ」のリスクも減らすことができます。(とはいえかぶれのリスクはあります)
合成樹脂で直す「簡易金継ぎ」と、本漆のみで直す「本漆金継ぎ」の中間的な修理方法です。
Step 01 漆の研ぎ/簡漆金継ぎの方法
漆の研ぎで使う道具と材料
- 耐水ペーパー(#600)、水、ウエス、はさみ、豆皿
私は耐水ペーパーを1㎝×1㎝くらいの小ささにはさみで切り、それを三つ折りにして使っています。豆皿に出した水を少しだけつけて錆漆を研いでいきます。
なるべく漆の上だけを研ぎます。でも器のほうにもはみだしちゃいますが。
平滑な面を作るようにします。凸凹を研いでいきます。
↑画像、ピントが合っていませんが、赤丸の中の光っている箇所はまだペーパーが当たっていません。凹んでいるということです。
研ぎがあたっていない場所、凹んでいる箇所を中心に研いでいきます。
↑器の裏側です。
漆の黒色がなくなって、薄肌色の部分があります。鳩が羽指しているところです。
そこは漆の下の層のエポキシペーストが出っ張っていた箇所ということになります。なので上に塗った漆を研いでいたら、そこは研ぎ破って下のエポキシペースト層が出てきたということです。
平滑な面を作っているところなので下の層がでてきても構いません。
Step 02 漆の上塗り→蒔絵/簡漆金継ぎの方法
金継ぎの上塗りで使う道具と材料(▸ 漆の塗りで使う道具・材料の入手先・値段)
- 道具: 小筆、付け箆
- 材料: 漆(今回は呂色漆)、テレピン、サラダ油、ティッシュペーパー
まずは使う前に筆をテレピンで洗って油を洗い出します。
▸ 詳しい筆の洗い方
塗り残しがないように気を付けて塗ります。
今回使った私の手持ちの漆は「遅く乾く漆」でしたので、
湿し風呂に2時間半くらい入れておきました。
塗り終わったら油で筆を洗います。 ▸ 詳しい筆の洗い方
金継ぎの蒔絵作業で使う道具と材料(▸ 蒔絵で使う道具・材料の入手先・値段)
- 道具: 毛棒(または柔らかい小筆)
- 材料: 錫紛
錫粉を蒔きます。
筆で錫粉を掬い取ります。それを漆の上にのせます。
筆先で優しくフワフワと錫粉を掃いて、漆の上に広げます。
鳩くん、じゃまですねー。
今回の蒔絵は縁のみとしてみました。
せっかく「古代文字」のようになっているので、そのまま黒い墨のようにしておきました。
割れたコーヒーソーサーの簡漆金継ぎ完成
今回は変則的に器の「縁」のみに錫粉を蒔きました。どうでしょう?
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