※ 口元の割れた蕎麦猪口の簡単な金継ぎ修理のやり方を説明していきます。本物の漆を使った修理方法ですので「かぶれる」可能性があります。ご注意ください。
今回は金継ぎの工程のうち、〈隙間に埋めたペースト削り~蒔絵完成まで〉のやり方を解説していきます。
〈簡漆金継ぎ step 05〉 ペースト削り・研ぎ
簡漆金継ぎのペーストの削り・研ぎで使う道具と材料
- 道具と材料: 彫刻刀など(カッター、アートナイフでも可…でもやりづらいっす)、はさみ(ペーパーを切りますので、100均のものとかいらなくなったものをペーパーカット専用としてください)、豆皿、ウエス、
- 材料: 耐水ペーパー(#600)、水、
はみ出ているエポキシペーストを削っていきます。彫刻刀の刃裏を器に当てながら、それをガイドにして削っていきます。削りすぎないように気を付けてくけてください。
何度も刃を往復させて少しずつ削ります。一気に削ろうとするとエポキシペーストがガバッと剥がれるときがあります。エポキシ樹脂がゴムのようにモチモチしているのでどうも削りづらいです。このへんは「錆漆」の方が断然、作業しやすいし、きれいにいきます。
周りについたペーストの汚れもなるべく刃物で取ってしまいます。
ある程度きれいになったらあとは耐水ペーパーで研いでしまいますのでお気になさらずに。
内側のはみ出したエポキシペーストも削っていきます。
器の内側は彫刻刀の反対側(刃表)を基本的に使って削ります。
ある程度きれいになったら耐水ペーパーを用意してください。
私は耐水ペーパーを1㎝×1㎝くらいの小ささにはさみで切り、それを三つ折りにして使っています。豆皿に出した水を少しだけつけて研いでいきます。
今回は耐水ペーパーの#600を使いました。
細かく往復させて研いでいきます。周りについたペーストもこれで研いで除去してしまいます。
器の内側もペーパーを当てて研ぎます。
周りについていたペーストが綺麗にとれました。
が…エポキシペーストで埋めた部分に凹みがちらほらと見られます。
今回は”簡易性”重視の金継ぎ作業ということで、この「アラ」はスルーして次の工程に進みます。
器の内側も綺麗になりました。
※ 一度、最後まで完成させた後に、この工程まで戻ってどのくらいエポキシできれいな面を作れるのかを試してみました。
- 1回目…〈エポキシ多目+砥の粉〉のペーストを作って、この細かい凹みを埋めました。
↓
乾いた後、刃物で削ったら、補填したペーストがガバッととれてしまいまいました。
付着強度が低かったようです。失敗です。 - 2回目…一回目のペーストではどうやら接着力が足りなかったようなので、今度は〈エポキシ接着剤のみ〉で細かい凹みを埋めました。
↓
乾いた後、刃物で削ったら…同様にとれてしまいました。
失敗。
いや、なかなか難しいです。こうなると一番初めのペースト付けのときに「盛り気味」しておいて凹みがないようにするのが一番いいのかなと、今のところ考えています。もしくは他の接着剤を試すか。あとは凹みを埋める前に粗目のペーパー(180番くらい)で表面を荒らしておいて食いつきをよくするか…。刃物をしっかりキンキンに研げば解決するのでしょうが、それ以外での解決方法がないか探ってみます。
〈簡漆金継ぎ step 06〉 漆の上塗り
簡漆金継ぎの上塗りで使う道具と材料(▸ 漆の塗りで使う道具・材料の入手先・値段)
- 道具: 小筆(塗り用)、付け箆( ▸ 付け箆の作り方 )
- 材料: 漆(今回は弁柄漆)、テレピン、サラダ油、ティッシュペーパー
まずは使う前に筆をテレピンで洗って油を洗い出します。 ▸ 詳しい筆の洗い方
いよいよ漆の塗りに入ります。
作業板の上で筆の中の漆の量を調節してください。蒔絵前の漆は薄く塗っていきます。
基本的には修理している部分(エポキシペーストの上)を塗っていきます。陶器の上を塗っても構わないのですが、やはり漆の接着力は落ちます。けど、完全にペーストを覆わないといけなので多少ははみ出すことになります。
漆はなるべく薄く均一に塗っていきます。一度塗った後に何回か全体に筆を通して漆の厚みが均一になるように心がけます。
口元部分も塗ります。
最後に全体をチェックして、塗り残しがないかよく調べます。
塗り終わったら湿した場所(湿度65%~)に30分程度入れておきます(それぞれの漆の個性によって乾くスピードは大幅に変わります。私の今、使っている漆は3時間くらい待ちます)。漆の乾きかけの時に金属粉を蒔きますので、それまで待機です。
塗り終わったら油で筆を洗います。 ▸ 詳しい筆の洗い方
洗い終わったら筆にキャップをつけて保管します。
キャップがなかったらサランラップで優しく包んでください。
〈簡漆金継ぎ step 07〉 蒔絵
簡漆金継ぎの蒔絵で使う道具と材料(▸ 蒔絵で使う道具・材料の入手先・値段)
- 道具: 小筆(紛蒔き用)
- 材料: 蒔絵紛(今回は真鍮粉)、小石(重石用)
蒔絵です。柔らかい毛質の小筆を使います。
穂先で真鍮粉を掬い取ります。それをバサッと漆の上にのせます。
優しく筆で掃いて、漆の上に真鍮粉を広げていきます。
蒔絵紛の包み紙の上で作業すれば、落ちた真鍮粉がそのまま回収できます。
筆でごしごし擦らないように気を付けて、さっさっさっと軽く掃いていきます。
真鍮粉が足りなくなったら、包み紙の方から掬って補充してください。
口元にもしっかりと蒔絵紛を蒔いていきます。
蒔絵が完了しました。
この時点で「はっ!」と気が付くときがあります。「塗り残しがあった…(涙)」と。
そんな時はもう諦めます。しっかりと乾いた後にリカバリーしましょう。
その部分だけ蒔絵をするか、きれいに仕上げたいのならもう一度全体を研いでから蒔き直します。
器の外側です。
青っぽい色合いと金色ってマッチしますよね。漆をやっている人間にとっては〈黒+金〉は見慣れているからなのか、この〈青+金〉の方にすごく惹かれてしまいます。
で、凹みがありますが、今回は無視です。今回は「簡単に」やってみた時にどんな仕上がりになるかをデモンストレーションしていますので。
※ 完成後にいろいろと手を加えて綺麗にしました。ペーストをやり直したり、漆を何度も塗り重ねたり。
また後日、このページに書き加えておきます。
〈欠けた蕎麦猪口の簡漆金継ぎ完成〉
前の作業工程を見る ▸ ペースト付けまで