※ 4パーツに割れた白い小壺の金継ぎ修理の方法を説明していきます。本物の漆を使った修理方法ですので「かぶれる」可能性があります。ご注意ください。
※今回は金継ぎ工程のごくごく概要のみを解説していきます。
金継ぎとは
欠けたり、割れたりした器を漆で直す日本の伝統技法です。漆で接着し、漆で欠けや穴を埋め、漆を塗って、最後に金粉や銀粉を蒔いてお化粧をします。
器 information
- 器の作家: 野村綾香さん
- 器の特徴: 磁器。マットな白い肌、内側は透明ガラス質の釉薬がかかっている
- 破損状況: 〈本体部分〉本体+割れたピースが2つ 〈蓋部分〉本体+割れたピースが1つ
- 器の大きさ: 最大幅 75㎜ × 高さ 100㎜
1. エッジの面取り → 2. 麦漆で接着
まずは金継ぎの素地調整の工程です。
リュータ―のダイヤモンドビットで割れた断面のエッジを軽く面取りします。
次に接着工程に進みます。
麦漆を薄く付けます
麦漆を付けたばかりの時は色が薄茶色です
割れた小さいピースの方も接着面にはすべて麦漆を塗布します
湿したムロ(湿度65%~)で40分放置
麦漆の色が濃くなって、焦げ茶色になり、表面の艶も少し引けます
蓋の方も麦漆を付けます。
蓋が薄いのであまり強度はでないかと思います。(野村先生、薄いッス)
接着
ぐりぐり押し込みつつ接着です。
あちらのピースを押し込むとこちらのピースが出っ張り、こちらのピースを押し込むとあちらのピースが出っ張ります。なので、ほどほどのところで観念します。(いや、精一杯やりましたよー)
綺麗にはめ込めたと思っても、必ずどこか少しズレが生じています。
麦漆が間に挟まっているので仕方がないですよね。
乾くまでのポジション取り
ムロの中でこのような状態になるようにして2週間くらい置いておきます。
3. 錆付け
錆漆付け1回目
マスキング
今回の器は”マット”でしかも”白い”ので、錆漆が付かないようにマスキングをしました。
これはかなり手間がかかりました。
3つのパーツ同士が接着している箇所などはマスキングをするのが難しかったので、今回は3回に分けてマスキングと錆漆の塗布を行うことにしました。
マスキング作業はかなり手間を取られるので、要領よくする方法を探っていきます。
みつかったらお知らせします。(見つかって欲しいー)
蓋の方も錆漆作業を2回に分けることにしました。この方がマスキングが楽そうなので。
錆漆付け2回目
1回目の錆漆を刃物で削って再びマスキングです。
1回目とは違う箇所をマスキングしていきます。
蓋の方も1回目の錆漆を彫刻刀で削り、マスキング→錆漆塗布です。
もちろん蓋の裏側も
地道な作業は続きます。
錆漆付け3回目
三度、マスキング→錆漆の塗布
壺の内側はピカピカのガラス質釉薬がかかっていたのでマスキングなしです。
ガラス質釉薬がかかっていなかったとしても、さすがに内側はマスキングなしで作業したと思います。
いつのものことですが、予定通りにはいかずあちこちにへこみやピンスポットができました。
ので結局5回くらい錆付けを行いました。いや、ムズカシイー。
4. 錆研ぎ → 5. 漆塗り
今回はまるっと端折っています。
錆を研いだ後に漆を塗り重ねていきます。金継ぎの漆塗りの工程です。
確か4回くらい塗り重ねていった気がします。研いで→塗っての繰り返しです。
蓋も漆を塗り重ねていきます。
〈白地に赤〉は弁当箱のご飯と梅干――って感じがします。何となく。
6. 金継ぎ修理完成
いきなり金継ぎ完成です。そういう時もあります。
今回は錫粉を蒔きました。
その他の割れた器の修理を見る ▸ 割れの修理