ひびの入った木の器の本漆金継ぎ修理のやり方を説明していきます。本物の漆を使いますので、カブレる可能性があります。ご注意ください。
今回は、〈器全体の擦り漆2回目~蒔絵・完成〉までを解説していきます。
ながらくお待たせしてしまいました。すみませんでした。
およそ2か月ぶり…アップが遅すぎますね(涙)
〈木の器の金継ぎ工程 11〉 擦り漆の研ぎ
漆の研ぎで使う道具と材料
- 道具: ③ 豆皿(水入れ用) ④ ウエス ⑤ はさみ(ペーパー切り専用にしたもの)
- 材料: ① 耐水ペーパー(今回は#600~#800) ② 水
今回は当てゴムを使わずにペーパーを二つ折りにして研ぎました。
「平面精度を出したい」とき、「形を作りたい」ときは、当て木、当てゴムを使い、
今ある形「なり」に研ぎたいとき(表面を研ぎたいだけの時)にはそれらは使いません。
「なり」に研いでいきます。
水を付けつつ研いでいきます。
ひとまず黒漆が塗ってある場所から研いできました。
もちろん、何処から研いでも構いません。
縦、横、斜め…と研いでいってください。
ちょくちょく研ぎ汁を拭き取って、ペーパーが当たっているかどうかをチェックします。
ペーパーが当たっていないところを見つけてそこを重点的に研いでいきます。
本体の木地部分も研いでいきます。
木地椀の内側も研ぎます。
研ぎ終わりました。
…って、せっかく「擦り漆」をしてきれいになったのに、また汚くなっちゃった!
ガーン!研がなければよかった…。
…と、思われるかもしれません。
でも、そんなこと無いんですよー。
この後、2回目の擦り漆をやると1回目より遥かに滑らかな光沢が得られるのです◎
白くピカッと光っている箇所はペーパーが当たっていないところです。
ということは凹んでいる…ということです。
もし、すごく平滑な面仕上げがお望みの方はこの凹みが無くなるまで錆漆を繰り返してください。
今回は少しテクスチャーが
〈木の器の金継ぎ工程 12〉 拭き漆2回目
素地固めで使う道具と材料(▸ 素地固めで使う道具・材料の入手先・値段)
- 道具: ⑥ 小筆 ⑤ 付け箆
- 材料: ⑦ 生漆 ① テレピン ② サラダ油 ② ティッシュペーパー ③作業板(クリアファイル、ガラス板など)
⑥の小筆の代わりに100均の平筆を使います。
平筆は幅9~12㎜くらいのものが今回は使いやすい大きさかと思います。
100均のナイロン筆です。ちょっと「腰」が弱いので、もしかしたら少し毛先をカッターなどで短く切った方がいいかもしれません。
もう少し検証してみてから、また情報を掲載します。
まずは使う前に筆をテレピンで洗って油を洗い出します。 ▸ 詳しい筆の洗い方
毎回、作業が終わったときに筆を”油”で洗っているので、使うときにはまず筆の中の油を取り除きます。
- 作業板の上に数滴テレピンを垂らす。
- その上で筆を捻ったりしてテレピンをよく含ませる。
- ティッシュペーパーの上でヘラで筆を優しくしごく。
生漆にテレピンを3割程度混ぜてください。
作業板の上でしっかりと箆で混ぜます。
ま、あれです。バシャバシャやっちゃってください。
何で高台の部分はピカピカしてるの??
えーっとですね、高台部分だけは以前に拭き漆を数回重ねていたので、
今回は作業をしていないのです。
はい、塗り終わりました。
1回目の拭き漆より、ピカピカしていますよね◎
ウエスで拭き取っていきます。
少し漆を”拭き残す”(漆の層を薄っすらと作る)のでもオッケーです。
が、拭き残す漆の量が多いほど”均一な”漆の厚みにはしづらくなっていきます。
そうすると”斑”になりがちなので気を付けてください。
でけました。
漆をしっかりと乾かします。
湿度(65%~)のある場所に置いて2日間くらいお待ちください。
作業が終わりましたら油で筆を洗います。 ▸ もうちょい詳しい平筆の洗い方
平筆はサランラップで包んで保管します。 ▸ もうちょっと詳しい平筆の保存の仕方
で、拭き漆が乾いたこの時点で「おっしまい!完成!!」としても大丈夫です。
このままでまったく問題なく使えます◎
補修カ所は黒い漆を研いだままの研ぎっぱなしです。
もちろん補修カ所に漆を塗ってもオッケーです。
黒い漆を塗ったままフィニッシュでもいいのですが、
何となく”海苔”がペタッとくっついているように見えてくるので、蒔絵をします。
〈木の器の金継ぎ工程 13〉 漆の塗り→蒔絵
- 道具: ② ティッシュペーパー ③ 付け箆 (▸ 付け箆の作り方) ④ 小筆 ⑦ 作業板(クリアファイルなど)
- 材料: ① サラダ油 ⑤ 精製漆(今回使ったのは呂色漆) ⑥ テレピン
※ ④の小筆の代わりに「平筆」を使います。
まずは使う前に筆をテレピンで洗って油を洗い出します。 ▸ 詳しい筆の洗い方
基本的には漆は”薄目”に塗っていきます。
厚目に塗りたかったら、塗っても大丈夫です。(厚過ぎると”縮み”ますが)
厚く塗ると、錫粉を蒔いたときに錫粉が”沈み”ます。
まずは漆を全体に配っていきます。
次に横に筆を揃えて通していきます。
漆の厚みを均一にします。
縦方向にも筆を揃えて通していきます。
器の内側も同様の作業を行います。
作業が終わりましたら油で筆を洗います。 ▸ もうちょい詳しい平筆の洗い方
漆塗りが終わったら、湿した場所(湿度65%~)に置いて
乾きの兆候がでるのを待ちます。
どのくらい待てばいいかと申しますと…漆の性質、湿度、気候などによりけりだと思います。が、60分程度でしょうか?15分と書いてある本もありますねぇ…。
- 道具: ① あしらい毛棒(柔らかい毛質の筆) ③ 重石
- 材料: ④ 蒔絵紛(今回は錫粉を使用)
錫粉を蒔いていきます。
ま、あれです。バサバサやっちゃってください。
柔らかい筆を使って錫粉を漆の上に乗せます。
錫粉ですのでガシガシいっちゃいましょう◎
金粉だとこうはいきませんね。
筆先でソフトに蒔絵紛を掃いていってください。
ソフトタッチです◎
器の外側も同様に作業を行います。
筆で錫粉を掬って…
バサバサバサバサ…!!!
いや、↑こんな高速で動かす必要はありませんよ。
シャッタースピードが遅かっただけです◎
はい、でけました。
なんか↑斑になっていますね。
漆が均一に塗ってなかったり、蒔絵紛が均一に蒔いていなかったりするとこうなります。私はこれを意図的にやります。言い訳じゃないです。
蒔き終わったら湿度のある場所(65%~)に3日くらい置いておきます。
しっかりと漆が硬化するのを待ちます。
〈木の器の金継ぎ工程 14〉 蒔絵の研ぎ
漆の研ぎで使う道具と材料
- 道具: ③ 豆皿(水入れ用) ④ ウエス ⑤ はさみ(ペーパー切り専用にしたもの)
- 材料: ① 耐水ペーパー(今回は#600~#800) ② 水
はい、研ぎます。研ぐのです。
え~、せっかく錫粉を蒔いたのに研いじゃうの??
はい、研ぎます。
研がなくてもいいです。
でも私は研ぎます。今回は。
不均一なテクスチャーですね。
こういうのを意図的にやってみると面白いですよ。
二つ折りにしたペーパーで研ぎます。
水をちょっとつけて、ちょっとずつ研いでいきます。
様子をみながら「ちょっとずつ」研いでください。
研ぎ過ぎるとすぐに錫紛の下の層の「黒い漆」が顔を出します。
このときの「研ぎ加減」が味噌です。
器の内側も研いでいきます。
様子を見ながら…ちょっとずつ。
研ぎ加減はお好みです。どこでストップするか。
今回はこんな感じでストップしました。
薄っすらと「十字」が見えているのが分かるでしょうか??
こっちは器の内側です。
いい具合になったところで作業をストップします。
やり過ぎると、どんどん漆の「黒」が見えてくるので要注意です。
研ぎ過ぎて、ドツボに嵌まると悲しくなります。
〈木の器の金継ぎ完成!〉
完成です!
こんな具合でいかがでしょうか?
ライス・イン!!
そう、これは「飯椀」として使っている私物です。
私の持論では最強の飯ワンは「碗」ではなく、「椀」です。
しかも無塗装の「白木」の飯椀が最強です。
白木の飯椀だと木地がお米の湿度を適度に吸収してくれます。
これが漆が塗ってあるものだと吸湿性がないので、「水滴」がついてしまいます。
なので本当はこの飯椀も漆を塗りたくはなかったのですが、ひびが入ってしまったのでしょうがなく拭き漆をしました。
まぁ、これでも「よし」としましょう。
みなさん、ぜひ白木の飯椀を手にいれてみてください。
なかなか売っていませんが。(ウレタン塗装してあるのはダメですよ◎)
轆轤を挽く作家さん、このページを見てたら、ぜひ白木の飯椀を作ってくださいー。