〈漆塗り〉用の漆の作り方~〈生漆〉から自分で精製します!

金継ぎの道具・素材

 

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※ 「色漆の作り方」は別ページに移動しました。

▸ 色漆の作り方

 

金継ぎをやりたいと思っているのですが…
どの漆を買えばいいのですか?

生漆、呂色、朱漆、木地呂漆、素黒目漆、白漆…
いろいろ漆の名前があるけど何のことやらイマイチわかならない
。しかも金継ぎにはどれを買えば事足りるのかわかりませんよね。

いや、こちらとしてもどれを薦めていいのか正直、迷うところなのです。
ベーシックなところで言うと、「生漆」と「呂色漆」の2つがあるといいかな
と思います。
欲を言えば、もう一色「赤系の漆」も持っているとすごく便利です。

  • 生漆」…漆の木から採ったそのままの樹液。
    麦漆むぎうるし(接着剤)、刻苧漆こくそうるし(パテ)漆、錆漆さびうるし(ペースト)を作るときに必要です。
  • 「精製漆」…生漆を練ったり、水分を飛ばしたりして精製したもの。
    「漆塗り」に使います。
    呂色漆(黒漆)」「赤色の漆」、その他、様々な色があります。

 

いやいや、待てよ。そんなに漆を持っていて、一般の人が使い切れるのか?と問われると「いや、そんなにいりません。絶対」と思うわけです。

チューブ入りの漆が50gからしか売っていないのも痛いところなんです。
金継ぎなら、20gあれば十分だと私は思っています。
(日本産の漆でしたら「20g入り」が売っていると思います。高いですけど)

 

それで、金継ぎ図書館の解決案としましては、ここはひとつ大胆に「生漆だけ買えばいいじゃん」です。(おっ!暴論だ!)

いやいや、そんなことないと思います。生漆を買って自分で「精製」しちゃえばいいのです。

 

生漆 → 精製して「透き漆」になる → さらに色の粉を混ぜて「色漆」(赤い漆や黒い漆)になる
* 「黒い漆」は実は鉄粉を入れて、化学反応で黒くなっています。けど、ややこしいので。

漆屋さんで売っている精製漆のクオリティーを出そうとすると難しいと思いますが、「それなり」でしたら何とかできる気がします。
精製するのも意外と愉しいですよ。理科の実験みたいなものです。樹液が少しずつ変化していって、粘りも出てくる過程が自分で実体験できます。「おお、なるほど。漆ってこうやると〈塗り〉にも使えるようになるのね」ってリアルにわかるのは面白い経験です。

漆屋さんでは生漆の50gと顔料(色の粉)を買っていただく。
接着、穴埋めなどには生漆をそのまま使い、「塗り」の時には生漆を精製し、顔料を混ぜて使う。これでしたら50gあってもいいかなと思います。

 

 

 

 

 

漆の精製・色漆作りに使う道具・材料


生漆から素黒目漆を作るときに使う道具と材料

使う道具・材料

  • 道具: ② 練り箆 ③ 先丸箆 ④ 計量スプーン1/4 ⑥ 作業板
  • 材料: ① 生漆 (→生漆を買う際のおススメの漆屋さん)

その他に必要な道具は…時間を計るタイムウォッチ

弁柄…箕輪漆行で 50g/¥237- で売っています。
赤と黒の2色を持っていると便利だと思います。

作業板は「ガラス板」だと漆の色味や透け具合の変化がわかるのでおススメです。100均で「フォトフレーム」を買ってそのガラス面だけを使う…という手があります。

▸ フォトフレームを使った作業版の作り方

 

 

漆と顔料の量を計量スプーンで測るのですが、その際、計量スプーンから掻き出すのに便利なのが「先の丸い箆」です。

「付け箆」として使っている竹製の箆の先っちょを↑画像のように丸くし、厚みも(かなり)薄くしてしなりやすくすることで、計量スプーンから掻き出しやすくなります。

 

 

 

 

〈漆の精製〉 生漆を「くろめ」て素黒目漆を作る


精製された漆

漆の「精製」ですが、本来は「なやし」と「くろめ」という作業を行います。

〈 なやし 〉…攪拌作業。生漆を攪拌して粒子を細かく均一にする
→ 漆の塗膜に「光沢」が得られる。筆跡が残りづらくなる。

〈 くろめ 〉…除水作業。生漆を加熱(放射熱による)させながら攪拌することによって、生漆中に含まれる水分(20~30%)を2~5%まで除去する
※ 40℃を超えると酵素のラッカーゼの活性が低下する。なので40℃以下で作業を行う。
※ 放射熱による加熱…くろめ作業している上に熱源を設置したり、天日で行ったりする。

 

漆屋さんでは3時間くらい放射熱を与えながら攪拌機にかけているようです。

私は天日で40~60分、ヘラで撹拌します。

 

 

まずは計量スプーンで生漆の分量を計ります。

生漆から素黒目漆を作るやり方

チューブから計量スプーンの中に漆を出してください。

 

生漆から素黒目漆を作る方法

スプーン摺り切り一杯です。

 

生漆から素黒目漆を作る方法

作業板の上に出します。

 

生漆から素黒目漆を作る方法

先丸箆でスプーン内に残った漆を綺麗に掻き出してください。

 

生漆から素黒目漆を作る方法

漆の変化のチェックのため、プレパラートに漆を付けておきます。
ご興味のある方はやってみてください。プレパラートは東急ハンズで ¥200-/10枚 程度で購入できます。

まだ何も手を加えていない生漆なので乳白色です。

 

生漆から素黒目漆を作る方法

この漆を平たく伸ばして広げたり、混ぜたりしていきます。

 

生漆から素黒目漆を作る方法

15~30㎜程度のヘラ幅のモノを使って漆を広げます。
箆幅は小さすぎても大きすぎてもやりづらいです。

まずは横に広げ…

 

生漆から素黒目漆を作る方法

次に縦に広げ…

 

生漆から素黒目漆を作る方法

中央にまとめて…

 

これを繰り返します。永遠と(笑)

 

生漆から素黒目漆を作る方法

5分経ちました。

 

生漆から素黒目漆を作る方法

プレパラートに漆を塗って、チェックしてみます。

白濁がなくなり、少し黒っぽくなっています。

 

 

生漆から素黒目漆を作る方法

〈漆を広げて、まとめて〉の作業をさらに5分。合計10分です。

 

生漆から素黒目漆を作る方法

「くろめ5分」より幾分か透け具合がよくなった感じがします。

 

生漆から素黒目漆を作る方法

さらに漆を練ること5分。合計15分です。

 

生漆から素黒目漆を作る方法

「くろめ10分」とほとんど変わらなく見えますが、ほんのちょっと透明度が上がったように感じます。

 

 

 

 

精製した漆を「色の着いた漆」にしたい方は
↓のページをご覧ください。

▸ 色漆の作り方

 

 

 

漆の硬化後


 

20時間後です。

素黒目漆から金継ぎで使う色漆を作るやり方

まだ漆が溜まっている部分は乾いていません。
端っこや漆の薄い部分は乾いています。

 

これを見せたところで…何がわかるのか?
まぁ、ちょっと違う気がするよね。ということで了解していただけたらと思います。

 

くろめ5分より10分の方が少し透けている感じがするけど、10分と15分はあまり変わらない気がするなぁー。でもちょっと違うかな…?

はい、まぁそんなところで。

 

素黒目漆から金継ぎで使う色漆を作るやり方

 

 

(2016-07-15 追記)

ところで、「古くなった漆って使えるんですか?」というご質問をよくいただきます。

古くなった生漆は生漆としては使えません。はい。非常に残念です。
でも「精製」して、新しい生漆で作った精製漆と混ぜたら使えます。はい。非常に嬉しいです。

生漆は時間が経つとともに乾きが悪くなっていきます。漆の中の酵素の活力がなくなっていきます。(だいたい2年くらい経つとキビシイかなと思います。保存のコンディションや漆自体の「性格」にもよりますが。)

乾きが悪くなった漆はこの後に説明する「精製」を行い、新しい生漆で作った精製漆に3割くらい混ぜて使えば、かえって乾きのゆっくりな性格のおっとりとした「塗り漆」になると思います。
意外と使い勝手のよろしい漆になるかもしれませんよ。(私は古い漆を混ぜるのが好きです)

ですので古くなったからといって漆は捨てないでください。ね。

 

 

 

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