ファイツ!!
げ、刻苧漆こくそうるし(パテ)が…乾いてない!ってことありますよね。はい、あります、あります。
…というか、そもそも「刻苧が乾いたかどうか」ってどう見極めればいいのですか?
なるほど、そうですね◎ その説明をちょっとさせてもらいます。
【 乾いた 】 |
「カリカリ」している。焼けた食パンみたいに。 棒で押す→ 凹まない、硬い |
【 乾かない 】 |
「ボヨボヨ」している。弾力を感じる。
棒で押す→ 凹む 引っ掻く→ 何も残らない |
※ 表面はしっかりと「カリカリ」しているのに内側は乾いていない…という場合もあります。その場合は「穴」をあけてください◎(この後に、やり方を説明しています)
押してみる→凹まない→乾いている◎
刺してみる→刺さらない!硬い→乾いている◎
引っ掻いてみる→引っ掻いた線が白くなる→乾いている ◎
刻苧漆こくそうるし(パテ)が乾かなかった原因としてはいくつか考えられます。
- 使った生漆が古くなっていて、乾く力が弱い。
- 刻苧漆に使われている漆の分量が多過ぎる。
- 刻苧漆を厚盛りし過ぎた。
- 刻苧漆に入れる木粉の量が少なすぎた
などが考えられます。
※ 漆分を少なくすれば刻苧の厚盛りをしても乾きやすいです。が、漆が少ない分、刻苧の強度は落ちます。
「十分な漆を加えて、厚盛りし過ぎないように気を付けて刻苧飼い作業をする」が基本となります。
が、そうとはいえ、たまには「乾かない時」がありますよね。1,2週間してもなんか「ブヨブヨ」している…。うっかり、何かをミスしてしまった…ようだ。と。
そんな時、みなさんはどうしていますか?
一度、刃物などで刻苧漆を除去してしまってやり直すのも手です。1,2ヶ月待っていれば乾くと思いますが、それよりやり直した方が絶対に早く作業が進めることができます。
そしてもう一つの方法が刻苧漆に「穴を空ける」です。
今回はそのやり方をご紹介します。
といってもいつもながら紹介するほどのことではありません。ただ「穴」をあけるだけですので、さらっと目を通して確認だけしていただけたらと思います。
いつも通り、器の欠けた部分を刻苧で埋めていきます。
いつも通り、作業が終わりました。いつも通りのつもりでした…。が。
1,2週間経っても刻苧がブヨブヨしている!のです。
※ 私は爪で押してチェックしていますが、皆さんは素手で触らない方がいいと思います。ゴム手袋をするか棒のようなもので軽く突っついてチェックしてください。
何かのミスで刻苧の乾きがすごく悪いです。(今回は漆分が多過ぎたのかもしれません。そんな時もあります。はい。)
このまま乾くまで1,2ヶ月待つのもありです。ですが作業効率が悪いので次の一手を打ちます。
アイスピックや千枚通し、錐のような「先の尖ったもの」を用意します。
その尖った先で刻苧漆をぶすぶす差していきます。
こうすると刻苧の中の方までしっかりと乾いてくれます。空気と触れて酸素が取り込めるからでしょうか?すみません、科学的なことをちゃんと理解していません。近いうちに漆の本を読み返します。
まんべんなく穴を空けて空気と触れるようにすると、おそらく3,4日で刻苧漆がしっかりと硬化してくれると思います。
この後はいつも通りの作業工程に戻っていきます。
まずは彫刻刀で刻苧を成形します。
次に錆漆で「穴」を埋めていきます。
錆漆は乾いていくうちに「痩せ」ますので、錆付けは2度行った方がより平滑な面が作れると思います。
錆漆が乾いた後は、通常通りの作業「研ぎ→漆の塗り→蒔絵」と進んでいってください。
以上です。「穴」を空けるだけで、刻苧漆の乾きが圧倒的によくなります。
漆がなかなか乾かない時、ぜひ試してみてください。