えっ、意外と本漆の金継ぎって簡単そう。…でも、あの器、簡易金継ぎで直しちゃったな。
という方。いらっしゃいませんか?
あの気に入っていた器。当時は本漆はハードルが高いと思ってエポキシ接着剤でくっつけて、新うるしで直してしまった。
けど、本漆金継ぎって自分でもできそうな気がしてきた。
このサイトでも初心者の方には「簡易金継ぎ」かもしくは「簡漆金継ぎ」をお薦めしています。が、できればその先に「本漆金継ぎ」へとたどり着いていただきたいという願望があります。(そのために密かにあれやこれやと”誘導”するような罠を仕掛けているつもりです。バレバレかしら?ほほほほ)
初心者に合成樹脂を使わせといて「今更、何言っとんじゃ!」って怒らないでくださいね。迂回的な手段も辞さないのが金継ぎ図書館です。原理原則を捨て、飽くまで融通無碍に手段を選んでいきます。
とは言え、合成樹脂を使って直させてしまった手前、その「落とし前」つけさせていただきます。
基本的に”煮る”です。
器を鍋に入れて煮ます。物にもよると思いますが、今回は40~60分くらい煮ました。
Case 01 割れた器の接着剤、新うるしの剥がし方
接着剤・新うるし剥がしで使う道具
- 道具: 鍋、タオル、彫刻刀などの刃物、耐水ペーパー(必要なら)
鍋で煮ます。
沸騰してくると器が鍋の中で踊って傷つく可能性があるので、器をタオルなどにくるんで煮ます。鍋や他の器と当たって傷がはいらないようにです。
40分くらいぐつぐつと煮ました。
熱湯の中から菜箸で取ります。器を触るときは熱いので軍手など着用してください。
接着箇所を持って少しぐりぐりと力を入れてみてください。力は軽くです。
それでミシッと取れると思います。それで取れない場合はまだ煮込みが足りていないということだと思います。
今回も↑画像の部分は簡単に取れたのですが、他の部分が取れませんでした。
ここで無理して力を入れないようにしてください。陶器の破片が割れます。かなり悲しい思いをしますので、ご注意ください。
↑この部分が外れませんでした。
このあと再度20分くらい煮込んだのですが、それでも無理でした。かなりしっかりと接着されていたのか…もしれませんね。
ちょっと考えて、やっぱ熱湯がしみ込んだ方がいいよねという結論に至りました。
それで、接着部分を大雑把に刃物で削ることにしました。
お湯を浸み込ませるのが目的ですから本当に大雑把でいいと思います。
さらに煮込むこと20分。
今度は簡単にポロリと取れました。
取れるときは本当に簡単に取れます。力を入れなきゃいけない場合は煮込みが足りていないと思うので、無理せず煮込みに戻ってください。
器に付着している新うるしやパテ、接着剤を刃物で除去します。
比較的、楽に取り除けます。
接着面の接着剤も除去します。ポロポロと取れてくれるところと、結構、頑固に喰いついているいるところとがありました。
接着剤が取れました。
うっすらと残った汚れはペーパーで水研ぎして取り除きます。
ペーパーは#400くらいでいいと思います。
オッケー。完了です。
これで「本漆金継ぎ」ができます。
ちなみに器を「煮込む」と水分が器の内部まで浸透するようなので(ここらへんは近いうちに陶芸家の知り合いにアドバイスをいただきたいと思います)、何日間かしっかりと乾かしてから本漆金継ぎの作業に取り掛かってください。
特に「土もの」は水分をガンガン吸いそうなので、しっかり乾かさないとですね。
「磁器もの」はほとんど吸わないと思います。たぶん。
Case 02 割れた器の接着剤、新うるしの剥がし方
しつこく、再度、割れの器です。
鍋に入れてグツグツと煮込みます。タオルなどを器に巻いて、器が鍋や他の器と当たって傷つかないようにします。
30~40分煮込んで、鍋の中から菜箸で器を掬い取ります。
器は熱いですので軍手を着用してください。
欠けた箇所を指で押さえて軽く捻ってみます。それで少しもリアクションがないようでしたら諦めます。無理強いは禁物です。
大雑把に新うるしを削り、接着箇所に刃物で切れ込みを入れます。
エポキシペーストをいっぱい入れた箇所は少し深めに切れ込みを入れました。
さらに煮込むこと20分。簡単に取れました。力を入れなくてもすぐに取れます。
こびりついている接着剤を刃物で削り取ります。
これも比較的楽に取れると思います。
取れました。
接着断面の細かい隙間に入り込んだ接着剤が取れませんでした。
これはさすがに見逃してもらいましょう。これを取ろうと思ったら…なかなか厄介です。
もしかしたらいい薬品などがあるかもしれませんね。
アルコールを染み込ませた脱脂綿を当てて、その上からサランラップを被せてアルコールの気化を防ぐ「湿布」の方法も試してみる価値がありそうです。ですが、今回はやりませんでした。
この「湿布」方法は文化財の修復の現場などで行う方法の一つです。
Case 03 欠けた器の接着剤、新うるしの剥がし方
続いて「欠け」の修理をした器です。
欠けた箇所がパテで埋められています。これがスムーズに剥がせるか?
こちらも鍋に入れて煮込みます。
鍋や他の器と当たって傷がはいらないよう、器の保護のためにタオルに巻いて煮込みます。
40分くらい煮込んでから菜箸で鍋から器を出します。
器は熱いので軍手を着用します。
彫刻刀を使って剥がしてみます。
簡単にサクサク刃が入ります。これは明らかに煮込む前の感覚と違います。
簡単に接着面から剥がれました。
結構、きれいに剥がれました。
少しこびりついていた汚れは耐水ペーパーの#400くらいで研ぎました。
以上です。
「ひび」の煮込みは…まだやっていません。近いうちに実験してこのページにアップします。
それから、「焼成温度の低い」ボソボソした質感の器の範例がありません。
接着剤が土の隙間に入り込んで除去しづらそうですね。そのうちチャンスがあれば実験してみます。
この「煮込んで剥がす」方法ってのは、合成樹脂が熱に弱いのか、それとも合成樹脂と器の熱っした時の「膨張率」の差を利用してそのギャップから剥離を誘発しているのか、その両方を利用しているのか…ちょっと分かりませんが、そのうちわかったら追記しておきます。