5/7 【取っ手が割れた】急須の金継ぎ方法~繕い錆付けまで

※ このページでは、多くの写真を他の修理コンテンツから借りて解説しています。
ご了承ください。

 

 ファイツ!!

 

現在全面改訂中

 

急須の取っ手

初心者向け

難易度1.5
充填材
刻苧(パテ)+錆漆(ペースト)
使用粉真鍮粉(金色の粉)
こだわり度簡単・お手軽
今回のシリーズはあまり「完成度の高さ」にこだわらずに、「そこそこ」に仕上げます

 

 

 

〈取っ手の壊れた急須〉の「伝統的な本当の金継ぎ修理のやり方を説明していきます。

このページでは金継ぎ修理の工程のうち捨て塗り研ぎ~繕い錆を付けるまでのやり方を解説していきます。

 

 

 

 

金継ぎ修理を始めるその前に…

 

 
【ご注意!】


本物の漆
を使った修理方法ですのでかぶれる」可能性があります。

 

※ 万が一、漆が肌に付いた場合はすぐに「油(サラダ油など)」でよく洗って下さい

油?? そうです。「油」をつけ、ゴシゴシ漆を洗い落としてください。その後、その油を石けんや中性洗剤で洗い流してください。

※ もし、かぶれてしまい、それがひどくなるようでしたら、医者に行って処方してもらってください。

 

 

 

【道具・材料と購入先を見る】↓

▸本漆金継ぎで使う道具・材料ページ

 

 

 

作業を始めるにあたって、まずは装備を…

←:使い捨てゴム手袋 / アームカバー:→

金継ぎでは本漆を使うので「ディフェンシブ」に行きましょう。

ゴム手袋は必需品です◎ 漆をなめちゃいけません◎

 

作業後、油分多めのクリームを手、腕など、肌が露出していたところ(夏場は脚・足にも)に塗っておくと、カブレにくかった…というコメントをいただきました。

(塗り忘れたときは、毎回、痒くなった…そうです)

気になる方はやってみてください◎

 

注意:
修理箇所に油分をつけてしまうと、その箇所だけ漆が乾かなくなります
(手脂でも乾かなくなります)

ご注意ください!

※ 修理箇所に油分が付いてしまった場合は、エタノールで入念に拭きあげるか、台所用中性洗剤で洗えば大丈夫です◎

 

 

 

 

【捨て塗り研ぎ】

 

前回、塗った「捨て塗り」を研いでいきます。

 

「捨て塗り&研ぎ」の目的

 

「捨て塗り&捨て塗り研ぎ」とは…

錆漆の段階では視認できなかった「わずかなへこみ」や「ピンホール」を可視化するためにおこなう作業

…と、金継ぎ図書館では考えています。

 

 

「わずかな凹み」とか「ピンホール」というのは、「錆漆付け&研ぎ」の段階(↖左図)ではどうしても修正しきれないことが多いのです。

そこで、ひとまず「漆を塗って(捨て塗り)→研ぐ」ことで、それらの歪みが簡単に発見できるようになります(↗右図)。

 

この作業で歪みを見つけ出し、次の「繕い錆」でそれを埋めていきます。

 

 

もっと詳しく知りたい方はこちらのページをご覧ください↓

 

 

 

〈使う道具/材料〉

 道具:
ウエススポンジの方が使いやすい
④ 要らなくなったハサミ
小さな水入れ
水桶(もあった方がベター)

材料:
水差し
耐水ペーパー
→実は駿河炭が断然おススメ


※ その他、本漆金継ぎで使うおススメの道具・材料の一覧(購入先も)を↓こちらのページにまとめました。
▸ 本漆金継ぎで使う道具・材料ページ

 

 

※「要らなくなったハサミ」は耐水ペーパーを切るのに使います。

ペーパーを切るとハサミが「ばか」になって他のものが切れなくなります
要らなくなったものか、100均などで買った安いものを使ってください◎

 

今回は「捨て塗り(漆塗り1回目)」の研ぎなので、#400~600程度の耐水ペーパーで研いでいきます。

 

 

使う耐水ペーパーの選択ですは下記の表を参考にしてください↓

 

使うペーパーの
チョイス!
▪▪▪

 

研ぎ ・(きれいに削れていない場合)
#240~#320
・(きれいに削れた場合)
#320∼#400
捨て塗り研ぎ
(漆塗り1回目)
#400~600程度
繕い錆研ぎ #400~600程度
下塗り研ぎ
(漆塗り2回目)
#600~800程度
中塗り研ぎ
(漆塗り3回目)
#800~1000程度

の耐水ペーパーで研ぐのがよろしいかと思います。

 

 

 

 

■ 耐水ペーパーの仕立て方 

 

ちょっと面倒ですが、研ぎ面をよりきれいな形に仕上げるためと、修理箇所以外を傷付けないために、ペーパーにひと手間加えます。

 

 

耐水ペーパー
の仕立て方
▪▪▪

耐水ペーパーを小さく切って使います。

切れ味の落ちたハサミで、耐水ペーパーを1×1㎝くらいに小さく切ります

 

それを三つ折りにします。
(↑ペーパーを三層構造の「硬い」板にして使います)

ペーパーは少量の水をつけながら研ぎ作業をおこないます。

 

 

なんでこんなに「小っちゃくして」使うの??しかも「三つ折り」って、、どういうこと?かと言いますと…
 
理由は2つです。
1.研ぐ面積を極力少なくするため
2.平面保持強度を高めるため
 
【1の理由】
「耐水ペーパー」って研磨力がとても強いので、器の釉薬(表面)を傷つけてしまうのです。
研いだ後、修理箇所周辺の釉薬が薄っすらと曇っているのは、あれは「細かい傷」が付いたからなのです。
 
なので、「なるべく」ですが、周りの釉薬が傷つかないようにペーパーを小さくして使いたいわけです◎
 
【2の理由】
「三つ折り」するというのは、ペーパーの「平面保持強度」を高くするためです。
なるべく「研ぐ方の道具」の平面を維持したいわけです。
 
ペーパー1枚で研いでいると「へなへな」してしまいます。紙なので柔らかいですよね。
 
それを使って研いでいると↓この「Aコース」のような仕上がりになります。

↑ペーパー1枚で研いでいると「Aコース」になるわけです。
 
紙一枚だと「研ぐ方の道具」が柔らかいので、「研がれる方のもの=錆漆(←硬いもの)」の形に沿ってしまい、その形通りに研いでしまいます。
錆漆の「山の角の部分(エッジ)」は軽くさらうことはできるのですが、「綺麗な曲面に形作る」ことは難しくなります。

一方、「Bコース」のペーパー3枚重ね(三つ折り)だと、「研ぐ方の道具」の「硬さ」が3倍になるわけです。
「研がれる方のもの=錆漆」の形に引っ張られず、研ぎによって錆漆の形を作っていくことが可能になります。
 
※ ペーパー1枚に比べて…という話です。
平面維持強度をもっと上げて、「きれいにな形を作る」作業がしたかったら
「漆研ぎ用の“駿河炭”」が断然おススメです。

 

 

 

■ 駿河炭の仕立て方 

 

「研ぎ道具」としては、実は「駿河炭」が最強のアイテムです◎

何といっても、耐水ペーパーと違って器に傷が入らない
できれば使ってみていただきたいです!
‣駿河炭が断然おススメな理由

 

 

 

駿河炭
の仕立て方
▪▪▪

 

炭は大きな塊で売っているので、自分で小さく切って使います。

① まずはカナノコ(金鋸)の刃で厚さ15~20㎜程度輪切りにします。

② 次に薄い板状になった炭の塊りを、大き目のカッターナイフで「割っていきます」

 

③ さらにカッターで割って、大小さまざまな面積のものを用意します。

 

使う際は炭の「研ぎ面」を砥石(または耐水ペーパー)の上で研いで、平面にします。

少量の水を付けながら修理箇所を研いでいきます。

修理箇所を研いでいると炭の研ぎ面が崩れてきますので、ちょこちょこと砥石(またはペーパー)に当てて、研ぎ面を修正します。

 

 

詳しくはこちらのページをご覧ください↓

 

 

 

 

▪実作業▪

 

器は違いますが、参考になりそうな「捨て塗り研ぎ作業」の動画です↓


 
0:39~6:34まで再生

 


 
0:58~2:18まで再生
 

 

 

今回は「捨て塗り(漆塗り1回目)」の研ぎなので、#400~600程度の耐水ペーパーで研いでいきます。

 

少量の水を付けながら小刻みペーパーを動かして研いでいきます。

 

 

錆漆の段階ではそれほど平滑面の精度が出ていないので、捨て塗りを研ぎ進めていくと、所どころ「漆を研ぎ破って」下地の「錆漆」が出てくるかと思います。

 

 

金継ぎの研ぎ作業で研げている部分と研げていない部分のチェックをする

 

  • 漆が「マットな黒色」に見えている部分はすでに研ぎが当たってます
  • 漆がテカテカしている部分はまだ研ぎが当たっていません。(①部分)
  • 黄土色(もしくは茶色)になっている部分は漆を研ぎ破って下の錆漆層が出てきています(②部分)

 

まだまだ研ぎ足りないので、もう少し研ぎ進めていきます。

 

 

「もう少し研ぐ」…といっても「どこまで研いだらいいの??」かと言いますと…
(そもそも「何」を目指して研いでるの??ってことですよね)

自分が「理想としている(美しいと思っている)平滑面」になるまで研ぐ…ということです。

なので、本当はどんなところで研ぎ止めて、どんな形に仕上げたって、本人の自由です。

 

ただ、それだとあまりにも「当て」がなさ過ぎて、どうしたらいいのか迷っちゃいますよね。
ということで、一応のオーソドックスな基準を示しておきます↓

 

 

「どこまで研ぐか」

基準

▪▪▪

 

  • ① 修理箇所周辺の「器の面と同じ高さ
  • ② もしくは「それよりもほんのちょっと高いくらい

…まで研ぐのがベターです。

それ以上に深い凹み/ピンホールは残しておいてオッケーです。

 

 

Caution!


※ 「凹み/ピンホール」を完全に消そうとして、「凹みの底」まで研いでしまうと…

 

 

 場合によっては周りの器の高さよりも低くなってしまいます。

そうなったら、もう一度、全体に錆漆を付けなくちゃいけなくなりますのでご注意ください。

 
 
 
 
修理箇所が「きれいなライン」になるまで研ぎ進めていくと、だいたいの場合、こんな具合に↓なることが多いかと思います。
 

修理箇所全体の形はきれいなラインに研げたのですが、まだ、所どころチラチラと光っており、ペーパー(または炭)が当たっていない凹みが残っている状態です。

 

ですが、これ以上、研ぐと、きれいなラインが崩れてしまうので、研ぎはここまででストップします。

 

この時点で残った「凹み/ピンホール」というのは「研いで消すへこみ」ではなく、「埋めて消すへこみ」ということになります。

 

「埋めて消すべきへこみ」がこのように↑明解に可視化された状態になりました。

 

 
 
※ 捨て塗り全部にペーパー(または炭)が当たって、完全に「マット」な状態になっていたら、それが「ベスト」です◎
 
その場合、「埋める作業」は必要はありませんので、次の「漆塗り」もしくは「蒔絵」に進んでください。
 
 

 

 

さて、「埋めるべきへこみ」が可視化されたわけですが、次にその凹みを何で埋めていくか??ですよね。

 

 

【凹み/ピンホールが見つかった!】
▪▪▪

 

「捨て塗り研ぎ」をやった時点で「凹み/ピンホール」が見つかった場合、それを埋めるやり方としては2通りのやり方があります。

  • … 1,2回の漆の塗り重ねで埋まりそうであれば、そのまま次の「下塗り(漆塗り2回目)」作業に進む
  • 「①」の凹みよりも深い場合凹んでいる箇所だけ錆漆(繕い錆)で埋める

…となります。

 

 

 

↑この画像の①と②くらい深い穴は、「錆漆」を付けた方が間違いなく効率的です。
(②はあからさまですね~)

「③の浅い凹み」←このくらいの凹みでも場合によっては錆漆の方が効率的なケースがあります。

 

「凹み/ピンホール」が見つかった場合、そのほとんどが「錆漆」で埋めた方が早いことが多いです。

 

 

 

「初心者の方」「それほど仕上げのクオリティーにこだわらない方」「なるべく早く完成させたい方」は「地塗り」の工程に進んでもオッケーです◎

‣地塗りの工程へGo!

 

 

 

 

【繕い錆】

「捨て塗り研ぎ」で見つかった「凹み/ピンホール」を錆漆でピンポイントに埋めていきます。

 

〈使う道具/材料〉

 道具:
 作業盤(ガラスなど)
‣仕立てページ ‣仕立て動画
付けベラ ‣作り方ページ ‣作り方の動画  
練りベラ ‣作り方ページ ‣作り方の動画
 計量スプーン 1/4 (0.25㏄)

材料:
 ② 生漆 ⑥ 砥の粉


※ その他、本漆金継ぎで使うおススメの道具・材料の一覧(購入先も)を↓こちらのページにまとめました。
▸ 本漆金継ぎで使う道具・材料ページ

 

これらの材料を使って「ペースト状のもの=錆漆さびうるし」を作ります。

 

錆漆の作り方

 

 作業手順 
1.砥の粉を細かく潰す
2.水を少しずつ砥の粉に足しながら、よく練る
3.生漆を少しずつ「水練り砥の粉」に足しながら、よく練る
 

それでは「錆漆」を作っていきます。

 

錆漆は…
錆漆=砥の粉+生漆
で出来ています。

 

配合比は…

【目分量の体積比】

砥の粉 10 : 7~8 生漆

 

 

※ 【体積比】です。お間違いなく。

 

※ 錆漆の「作り置き」はおススメしません。「使うときに作る」が原則です。

作ってから2~3日くらは乾きますが、どんどん乾きが悪くなっていきます。

 

とはいえ、「明日も他の器を直すので」という方は、残った錆漆さびうるし(ペースト)を保存してください◎
▸余った錆漆・麦漆・漆の保存方法

 

 

 

 

1.砥の粉を擦切り1杯

2.生漆を7~8分目

 

3.作業盤の上で砥の粉を細かく潰す

4.脇に水を少量出す

 

5.潰した砥の粉に少量ずつ水を加えながら、ヘラでよく練る

6.砥の粉が「まとまる」くらいまで水を加えつつ、練る

 

7.生漆を少量ずつ加えながら、ヘラでよく練る

8.生漆を全部加えたら出来上がり◎

 

生漆が多すぎると

  • 乾くのにすごく時間が掛かる
  • 少しでも厚く盛ると「縮み」という現象(表面に皺がよる)が起こってやり直す羽目になる
    →ですので、配合比には気を付けてください。

 

さらに詳しい「錆漆の作り方」を見たい方はこちらをご覧ください↓

 

 

ヘラで錆を掬うテクニック

 

作業に入る前に<ヘラテク>をご紹介します↓


 
(4:45~4:59を再生)
 
 

 

【錆スクイ・テク】
▪ ▪ ▪

1.作業板の上で錆漆を薄く均一に広げる。

2.ヘラを少し寝かしつつ、横から滑り込ませる。

 

3.右側から左側へ通す。

4.そうするとヘラの先っちょだけに錆漆がつきます。
 

 

慣れてくるとテンポよく作業ができて、それだけで気持ちがよくなります。

<同一動作の反復>というのは集中していくととても心地いいものです。

 

 

 

▪実作業▪

 

器は違いますが、参考になりそうな「繕い錆作業」の動画です↓


 
7:10~から再生

 


 
3:00~4:00まで再生

 

 

付けベラ(小さいヘラ)を使います。

 

 

ピンポイントに錆漆で埋めます。

凹みやピンホールの「擦切りよりも“ちょい多目”くらい」に錆漆を盛ります。

 

 

修理箇所「全体」ではなく、凹み/ピンホールをピンポイントで埋めていきます。

錆漆を付けた後、ヘラを上下左右に通して、凹み/ピンホールにしっかりと詰め込むようにします。

 

錆漆を盛り過ぎると、乾いた後の研ぎ作業が面倒になるので、「ジャストよりもちょい厚め」を心掛けてください。

 

 

 

 

 

 

【 お掃除、お掃除 】
▪▪▪

インターネット上で初心者相手の金継ぎ教室

全ての作業が終わったら作業板を掃除します。

テレピン(又はエタノール、灯油など)を垂らして、ウエスやティッシュできれいに拭き取ってください。

 

  caution ! 

厳密に言うと、掃除をし終わった後の作業板の上には「ごくごく薄っすら」と漆の成分が残っています

ですので、この作業が終わるまではしっかりとゴム手袋をして、ゴム手袋を外したあとは作業板を含めて漆の道具類を触らないようにした方がいいです。

 

 

錆漆を乾かす

 

錆漆の乾きに1~2日間待ちます。

 

錆漆が乾くまで1~2日待機してください。

(調子のいい生漆を使うと4~5時間後に次の作業ができますが、一応大事を取って「待って」ください)

 錆漆さびうるし(ペースト)はそれ自体に「水分」が入っているので、とくに湿度のある「漆風呂」に入れなくてもしっかりと硬化してくれます

ですが…
・「古い生漆」
・「乾きの悪い生漆」
・「調合してから数日、取り置きしておいた錆」

…を使っていた場合は乾きが悪いかもしれません。
その場合は初めから湿し風呂に入れて、湿度を与えてください。

始めに湿度を与えて、漆に「闘魂を注入」することが大切です◎

※ 水を固く絞った布を中に入れて湿度を高くしてください。

 

もうちょい詳しく見たい方は↓こちらのページをご覧ください。

 

 

 

 

 

本日の作業はここまでです◎
お疲れ様でした。

 

 

次の作業をご覧になりたい方はこちらのページへ↓

 

 

 

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