ファイツ!
※ 多くのご要望に応えまして「刻苧箆の作り方 ~3rd edition」、作り直しました。
というか、「マイドマイド分かりにくいのね、金継ぎ図書館さんは」というご指摘に後押しされまして、全面的に改訂を施しました。
2016-12-15 動画を作成しました。
使う道具・材料
- 平竹串
- カッターナイフ(大)、ロウソク、ペンチ、ライター(火)
刻苧べらとは
以下の作業時に使います。
- 刻苧漆やエポキシパテを充填する
- 養生の時にマスキングテープの位置を微調整する
- 「膿んだ」錆漆、刻苧を取り除く
刻苧箆を作りましょう。ぜひ。
みなさん、何を使って作業をやられているのですか?はて、便利な代用品ってあるかしら…?
このヘラを作れば細かい作業は断然、作業しやすくなります。作業に適したヘラを自作しましょう。何本か作っているとどんどん手際がよくなって、早く、きれいにつくれるようになります。
箆の曲がり具合は何種類か持っていると便利です。90度近くまで反った箆も時々必要になることがあります。作っているとだんだん愉しくなってきます。特に「曲げ」工程が◎
「道具作り」って実は工藝の醍醐味の一つです。ついつい道具作りに嵌まっちゃう人も多いです。そのくらい実は楽しいことですので、ぜひチャレンジしてみてください。
刻苧へら作りで使う道具と材料
刻苧ヘラ作りで使う道具と材料
- 道具: ①カッター(大) ③書くもの ④紙やすり(#400もしくは砥石#800) ⑤ライター、ロウソク、ロウソク立て ⑥定規 ⑧削る時の木の作業台 ●ペンチ(ヤットコなど)…箆先を曲げるとき使う ●バケツなどに入れた水
- 材料: ⑨平竹ぐし(長さ18㎝ × 20本入りで¥120-くらい)
※ ⑨ 平竹串サイズ…長さ180㎜×厚み3㎜×幅6㎜ のものを使いました。長さは18㎝か21㎝のものがいいと思います。15㎝だと少し短くてやりづらそうです。幅は6㎜がベストだと考えています。
※ 「竹の割り箸」でも作ることができました!
↑ この割り箸でもオッケーです。
こんな感じで問題なく作れました。
けど、竹の「表皮側」を見極めたり、「折れないように曲げる」という点で
「平竹串」の方が作りやすいと思います。
(↑竹の表皮が残っているので折れにくいです)
でも、「竹の割り箸」は入手が楽ですよね◎
〈刻苧へら作り STEP 01〉 竹串をカッターで削って薄くする
まずは竹串を削って薄くしていきます。
削るのは竹の内側です(竹皮と反対側)。ご注意ください。
竹串の先っちょから30~35㎜くらいの位置から削ります。目印に線でも引いておいてください。
削り部分を少し長目に取っておきます。ロウソクの火で熱する時に長い方が都合がいいのです。最後に箆先を削って成形しますので、これよりはちょっと短くなります。
※ 図は分かりやすいように四角く製材した形で示します。
まずは竹串の右半分を削ります。
カッターの刃がグイッと食い込むようにします。竹は「削る」というよりは「割る」という感じですので、刃を一気に食い込ませた方が削りやすいです。
右半分が削れました。
次に左半分です。
こちらも同様にカッターの刃を食い込ませて「割って」いくような感覚で削ります。
カッターの刃は進行方向に対して斜めにした方が削りやすいです。
左半分も削り終わりました。
正面から見たらホームベースのような形になっていると思います。
再び、竹串の右半分を削ります。
それだったら最初から、ガッツリ右側を削ればいいんじゃない?と思われますよね。
オッケーです。やれる人はやっちゃってください。ただ、一気にやろうとするとカッターの刃への抵抗が大きくなって削りづらいのと、形をきれいに整えるのに手間がかかりそうなので、2回に分けて(もしくは3、4回に分けて)、右→左→右→左と交互に削っていきます。
右側半分の2回目が削れました。
同様に、再び左半分を削ります。
左側が削れました。
この後、好ましい薄さになるまで左右交互に削りを繰り返します。
ちなみにヘラの中央(Kb Line)を少し肉厚にしてください。山の尾根になるようにします。
Kb Line とは Kokuso-bera Line です。勝手に名付けました。無視して大丈夫です。
でもこの部分はちゃんと厚みをつけてください。この部分で箆先に「腰」を持たせています。ここが薄くなるとヘナヘナした刻苧ベラになってしまいますのでご注意ください。
好ましい薄さとは…人それぞれだと思いますが、目安としてはヘラの先っちょの厚みが1.2㎜くらい。中ほどが2.0㎜くらいというのはいかがでしょうか?
このへんは実際に使ってみて、そのしなり具合を確かめつつ自分の好みの薄さを探っていってください。ほんのちょっと「弾力」がつくような薄さがいいと思います。
箆を横から見ると↑こんな感じです。
(2016-03-04 補足 )
蝋燭の火で曲げるときにペンチ(またはヤットコ)を使うなら、ヘラ先が短くも大丈夫なので、この段階でヘラ先の形を成形してしまう方が楽だと現在は判断しています。
ヘラ先を砲弾型に削り、砥石#800で水研ぎして(もしくはペーパーの#400、#600くらい)、ヘラ先をほぼ完成させてしまいます。
ペンチなどを持っていない場合はこの段階でヘラ先を短くしてしまうと、火で炙るとき指がすごく熱いです。
〈刻苧へら作り STEP 02〉 ロウソクで箆先を曲げる
※ 水の中の中に暫く浸けておくと(20分くらいでしょうか)、火で焙った時に焦げにくいです。
箆先を熱して曲げます。これ、楽しいです。でも熱いですので気を付けてください。
ロウソクの火に当てるのは竹の内側です。ご注意ください。
おお~、画像が仏教っぽいですね。
ヘラを火に近づけすぎると焦げますので気を付けてください。
一点だけに火を当てているとやはり焦げてきますので、狙ったポイントとその周辺をゆらゆらとしながら熱します。
右手の指(ペンチ、ヤットコなどを使ったら熱くなくてよかったです)で「軽く」下に押してください。これでゆっくりと曲げていきます。力を入れて一気に曲げようとすると折れます。折れるとかなり悲しいですのできをつけてください。
何度も火から離して曲がり具合をチェックします。一気に曲げない方がよいと思います。ちょっとずつ、ちょっとずつ。
へら先の厚みが薄い方が曲がりやすいです。ですが薄すぎると腰がなくなります。このへんの匙加減が難しいところです。
どうしても右手の指が熱くなりやすいので、あらかじめ箆先の削る長さを長目にとってあります。
画像ではヘラが焦げていますが、表面が少し焦げ色がついているだけですのでお気になさらず。
※ ロウソクの火の上で曲げた後、いきなり曲げていた力を抜いてしまうと、曲げ具合が少し元に戻ってしまいます。火から外した後20~30秒はそのままをキープするか、水の中に入れて冷やしてから力を抜いてください。
と思っていたら
ペンチでヘラ先を挟んで曲げたら「熱さ」問題、解決しました。
ただ、曲げる力の加減が把握しづらいのと、熱くないからと言って火に近づけ過ぎると焦げますのでご注意ください。
↑画像の刻苧ヘラは90度近く曲げました。時々、どうしもてこのくらいのものが必要になる時があります。滅多にありませんが。
〈刻苧へら作り STEP 03〉 箆先を仕上げる
箆先を削って使いやすい形に仕上げます。
ヘラの先っちょがとんがっています。これだとそんなに使いやすくないと思います。好みによりますが。
私は「砲弾型」をおススメしています。
へら先の側面を削っていきます。しなって削りづらいようでしたら、作業台の上で安定させながら削ります。
ちょくちょく形のチェックをしながら削っていきます。
なかなかよき砲弾となりました。
先っちょにまだ厚みがあります。しかもちょっとカッコ悪い。これを軽く削ります。
カッターだと削りづらいのですが、ここは頑張ってください。慎重にちょっとずつ削ります。
削りに納得がいったら(もしくは飽きたら)、最後にペーパーをかけます。
#400くらいの紙ヤスリに当てて、ラインを整えます。きれいなラインになるようにします。
削りでイマイチきれいなラインにならなかった人は、ここで頑張ってごまかしてください。
※ 私はこの作業を#800の砥石を使ってやっています。水研ぎします。
錆・刻苧削りに彫刻刀を使う方は砥石も購入することになると思いますが、ヘラの整形、メンテナンス(錆などがこびりついた時に研いで除去する)にも使えます。
できました!
「へい!金継ぎ図書館。玄人っぽく見えるポイントはないんかい?」「こう、なんかいかにも達人に見えるようなさ」
そうですねー。意味もなく150度くらい曲げたヘラを持っている人がいたら僕はビビります。「この人はいったい何者だ!?どうやって曲げたの?何に使うの?」と思います。どうでしょう?
刻苧箆を持っているだけでも「こやつ、素人ではないな!」と思われます。
ぜひ、作ってください。面白いです。
(2016-03-04 補足)
ごく最近のやり方は
- カッターでの削りの段階でヘラ先を砲弾型に削る(なるべく完成に近い形、薄さにしてしまう)
- 砥石#800で水研ぎして形を整える。
- 水に浸けておく(20~40分)
- 水を拭いて、火で炙りながらヤットコでヘラ先を曲げる
- 完成
という手順でやっています。ヤットコを使うようになったので手順が少し入れ替わりました。
ヤットコを使うこの手順の方が早く、キレイにいっている感じがします。
調子にのって刻苧箆ギャラリー
接着剤、錆漆、エポキシペースト付けなどで使うヘラの作り方はこちらです。
▸ 付け箆の簡単な作り方