レッツ・マスキング!
2020.05 全面リニューアル
【マスキングとは】
「マスキング」
って何よ?
マスクの王様??
「マスキング」とは「養生ようじょう」のことでして、作業する箇所以外が汚れたり、傷付いたりしないように、あらかじめ予防することです。
「汚れ防止」
ってことね◎
金継ぎの場合、修理箇所に刻苧漆こくそうるし(漆のパテ)や錆漆さびうるし(漆のペースト)を充填する際、「器の表面」によってはそれらが汚れとしてこびりついてしまうことがあります。
ですので、状況に応じてその都度、汚れ防止のための「マスキング」を行います。
【マスキングをした方がいい場合とは?】
錆漆を付けるときは
毎回、マスキングしなくちゃいけないの??
いえいえ、そんなことはありません◎
「マスキング作業」って、実は結構、手間がかかります。
ですので、「汚れやすい器」にのみ、マスキングをしましょう◎
オケオケ◎
それじゃ、
「汚れやすい器」って
どういった器なの??
■ マスキングした方がいい場合
・修理する器の表面(釉薬)が「ザラザラ、マットな質」のもの
・焼き締めの器
・器の表面に「小さな凹凸」がある器(写真:左)
・器の表面に「小さなクレーターやピンホール」がある器(写真:右)
・器の表面を見ても、「ツルツルしているような、でもマットなような…」と判断がつかない場合はケースバイケース
→どうしても「汚しちゃまずい」場合はマスキングを行います。私は特に「白い」器は用心してマスキングを行っています。
・高台の裏など釉薬がかかっていない部分↑があれば、そこだけピンポイントでマスキングを行います。
※ 高台の裏は釉薬が掛かっていない場合が多いので、注意してください!
マチガイない!!
直感が冴えわたる!
・以上の条件に当てはまらない場合でも、「これは汚れるに違いない!!」と第六感が働いた時◎
■ マスキングしなくていい場合
上記の条件以外の器
- 修理する器の表面(釉薬)が「ツルツル、ぴかぴかのガラス質」のものでしたら、汚れがついても簡単に落とせます。ですので基本的にはマスキングは行いません。
- 小さな凸凹、クレーター/ピンホールがない器
【マスキング「テープ」と「液」】
マスキングで使う素材としては
・マスキング「テープ」
・マスキング「液」
の2種類があります。
「テープ」と「液」のメリット/デメリット
■ マスキング「テープ」
メリット
- 取り出して、直ぐに作業ができる
- 「乾いたり」しないので、ゆっくりと自分のペースで作業ができる
- どこでも売っている(入手が楽ちん)
- 値段が安い
デメリット
- 複雑な形状に貼ろうとするとかなり面倒
■ マスキング「液」
メリット
- 複雑な形状にも塗りやすい
(テープよりも断然、早くて楽ちん!)
デメリット
- 何となく準備するのと、片付けるのが面倒な気がしてしまう
※ つまり、何となく取り出すのが億劫(私だけ?) - 固化が早いので作業がやりづらいし、焦る(←これって結構、嫌ですよね~)
- 液が入った容器の開け閉めが微妙に面倒
- 匂いが嫌(アンモニア臭?)
- 値段がちょっと高い?
「テープ」と「液」の使い分け
使い分け方(金継ぎ図書館的な)
▪「テープ」を使用するのは…
- 単純な形状にマスキングをする場合
- 多少、複雑な形状でも、マスキングをする範囲が狭い場合
▪「液」を使用するのは…
- 複雑な形状にマスキングをする場合
※ ちょっとでも複雑な場合はマスキング液の方が断然、おススメです◎
鳩を信じなさい!
【マスキングのやり方】
マスキング「テープ」を使うやり方
● 使う道具/材料
① 棒(ヘラなど)
③ マスキングテープ(15~20㎜幅前後)
② テープを細く切り込みを入れる時に使用
● マスキングテープの使い方
動画を見れば一目瞭然です◎ まずはこちらをご覧になってください↓
0:40~3:00まで再生
㊧:マスキングテープが太い場合は、カッターでぐるっと一周「切れ込み」を入れると、「細いテープ」として使えます◎
↑金継ぎ師の宮下智吉さんに教えてもらいました
㊨:あらかじめ十分な量のテープを千切っておきます。
※ この器↓は表面がガラス質なので、マスキングしなくていい器です。マスキングのデモンストレーション用としてやってみただけです。
㊧:千切ったテープを修理箇所に沿って、貼っていきます。
その際、ヘラなどの棒を使うと作業がしやすくなります。
㊨:テープが修理箇所に「掛かって」しまったら、テープを棒で引っ張って微調整してください。
意外と融通が利きます◎
テープの貼り方ですが、「修理箇所から1~2㎜前後の隙間を開けた方がいい」と思います。
その理由はと言いますと…
ただし、修理箇所とマスキングテープとの間に「隙間」があるということは…
そこの部分は錆漆などが付いてしまうことになるので、「汚れる」ことになります。
マスキングテープの上から錆漆を付けていきます。
㊧:錆漆が乾いたら、マスキングテープを剥がします。
すすすすーっと剥がれてくれます。
㊨:きれいに剥がれました。
修理箇所の周りは錆漆で汚れていません◎
この後、刃物で錆漆を削っていきます。
マスキング「液」を使うやり方
● 使う道具/材料
①④ マスキング液
② 水筆+水+中性洗剤
or
③ 付けベラ
●マスキング液
※ 100均でも売っています。「④(2ml入り)」はダイソーで売っていました。(2019現在)
↑私はこれを使っていますが、ちょっと容量が多い感じがします。
初心者さんには「20ml」もあれば十分かと思われます。
…ということで容量的には↓このあたりの商品が適当かと思います◎
●水筆
※ 100均でも売っています。(セリア、ワッツなど)
● マスキング液の使い方
㊧:容量はすごく少ない(2ml)ですが、100均(ダイソー)で買えます。
「お試し」によろしいかと。
㊨:容量たっぷり(55ml)。画材屋さんで買えます。
(こんなにたっぷりの容量は要らない気もします)
▪水筆で塗布するやり方
動画を見れば一目瞭然です◎ まずはこちらをご覧になってください↓
3:00~7:08まで再生
水筆ペン…筆の「持ち手」の部分に「水」が入れられる道具です。
マスキング液を使うと、毛が痛みやすいので、水筆は安価な100均のものを使います。
㊧:水を入れます。
㊨:台所用の中性洗剤を数滴入れます。
洗剤を入れると筆の毛が長持ちするようです。(ネット情報)
㊧:筆先で少量のマスキング液を掬います。
マスキング液はどんどん固化していくので、容器の蓋は閉めます。
㊨:修理箇所に触れないように、その周りに塗っていきます。
薄く延ばしながら塗っていきます。
マスキング液がどんどん固化していくので、手早く塗っていきます。
マスキング液が足りなくなったら、その都度、液の入った瓶から少量出して使います。
マスキング液は乾くと「透明」になります。
「質感」としてはゴムっぽい感じです。
擦ると簡単に剥がれてしまいますので、気を付けてください。
マスキング液の上から錆漆を付けていきます。
㊧:錆漆が乾いたら、マスキング液を剥がします。
指で軽く擦っただけでも剥がれていきますし、指で摘まんで剥がすこともできます。
簡単に剥がれます。
㊨:きれいに剥がれました。
修理箇所の周りは錆漆で汚れていません◎
この後、刃物で錆漆を削っていきます。
▪小ベラで塗布するやり方
動画を見れば一目瞭然です◎ まずはこちらをご覧になってください↓
7:08~から再生
ヘラを使ってもマスキング液を塗っていくことができます。
が、ちょっと塗りづらいです。
特に「複雑に入り組んだ箇所」は塗りづらいです。
「水筆」で塗る方が楽だと思います。
なるべく薄付けにします。
手早く塗っていきます。
【ケース別・マスキングテープの貼り方】
Case01 「欠けた個所」にマスキングをする
欠けた箇所をぐるっと一周、囲むようにマスキングテープを貼っていきます。
とりあえず貼ってしまってから、棒、ヘラなどでテープを動かして微調整します。
テープとテープの間に隙間のないようにテープ同士の端っこを少し重ねます。
Case02 「破片の接着箇所」にマスキングをする
ラインに沿って、千切ったマスキングテープを貼っていきます。
(この器はツルツルしているので本当はマスキングをしなくても大丈夫です。参考のためにやりました)
2枚目を貼ります。
端っこが1枚目と少し重ねるようにして貼ってください。隙間がないようにします。
細い棒(刻苧箆、爪楊枝など)でテープを動かして微調整します。
修理箇所に沿ってラインの上部分のマスキング終了です。
※ 割れた破片の接着箇所にマスキングをする場合、↑このようにテープでやろうとすると、結構、手間がかかります。特に内側(T_T)
このような場合は「マスキング液」でやった方が楽だと思います。
Case03 「直線的なライン」にマスキングをする
↑こういった単純なラインだと、テープで作業するのも楽ちんです。
マスキングテープ同士の間に隙間ができないように少し重ねて貼っていきます。
器の内側も同様の作業をします。
Case 04 「高台の裏」にマスキングをする
高台の裏だけ釉薬がかかっていないことが多いです。
そこだけピンポイントでマスキングを行います。
↑ここだけマスキングすればいいので、簡単です◎
マスキング講義はここまでです。
どうもお疲れ様でした。
それではまた◎
※ 最近は豆皿などの容器にマスキング液を少量出して、そこでほんの少し水を加え(1~2割程度)、薄めたものを塗っています。
原液のままだとちょっと粘りが強く、厚くなりやすいので、薄めると塗りやすくなります。
しかも乾きも少しゆっくりとなるので、作業しやすくなります。
ただし、水を加えすぎると「シャブシャブ」になって塗りづらくなります。