※ 口元からひびの入った湯呑の金継ぎ修理のやり方を説明していきます。本物の漆を使った修理方法ですので「かぶれる」可能性があります。ご注意ください。
今回は金継ぎの工程のうち、〈蒔絵を漆で固める~磨き上げて完成〉までのやり方を解説していきます。
step 01 蒔絵紛固め
前回行った、蒔絵で蒔いた金粉を生漆を浸み込ませて固めます。
金継ぎの蒔絵固めで使う道具と材料(▸ 使う道具・材料の入手先・値段)
- 道具: 小筆、付け箆
- 材料: 生漆、テレピン、サラダ油、ティッシュペーパー
まずは使う前に筆をテレピンで洗って油を洗い出します。
▸ 詳しい筆の洗い方
生漆をテレピンで少し希釈して、浸み込みやすくします。
生漆 10 : 3 テレピン
くらいの割合で作業板の上で混ぜて、漆を緩めてください。
塗ります。塗るというよりは、漆を置いていくという感じです。
筆の方に十分に漆を含ませておきます。その漆を塗って、金粉の間に浸み込ませていきます。
なるべくはみ出さないように、かつキワまでしっかりと漆を含ませるようにします。
器の表側のひびに漆を塗布し終わりました。
器の内側の蒔絵も同様の作業を行います。
漆を十分に含ませていきます。
今度は欠けのほうです。
ズリズリ筆で摩擦を与えないように、十分に漆を筆に含ませてそれを塗っていきます。
キワまでしっかりと塗り込めます。
蒔絵紛への生漆の塗布作業が終了しました。
作業が終わったら油で筆を洗います。 ▸ 詳しい筆の洗い方
洗い終わったら筆にキャップをつけて保管します。
キャップがなかったらサランラップで優しく包んでください。
続いて先ほど塗った生漆をティッシュで拭き取ります。
金粉の間に浸透しなかった漆は拭き取ります。拭き取が甘いと漆が表面に残ってしまい、金粉を磨いても黒ずんでしまいます。ご注意ください。
ティッシュを4~5回、折り畳んで、生漆を塗布した部分にそれをそっと押し当てます。
ふわりと優しくティッシュを当てます。しかも上下左右にぶれないように気を付けてください。いつの間にか意外と力が入ってしまいます。はい。
ティッシュの方に生漆が吸い取られています。この作業をティッシュの面を替えつつ、ティッシュに生漆がつかなくなるまで続けてください。
ひび部分の生漆もティッシュで拭き取ります。
ソフトタッチ。ぶれないように気を付けて。
この吸い取り作業を繰り返します。
生漆の拭き取り作業が終わりました。わかりづらいですが、しっかりと生漆が浸み込んでいます。
器の内側のひびも拭き取り完了です。
拭き取作業が終わりましたので、湿した場所(湿度65%~)に入れて漆を乾かします。
4~5日乾かします。
step 02 蒔絵紛の磨き
金継ぎの蒔絵紛磨き作業で使う道具: 鯛の牙(またはメノウ棒、ガラス棒など)
固めた漆がしっかりと乾いています。
蒔絵紛を磨いていきます。
磨きます。磨くのに使っているものは鯛の「歯」です。「は?」?
ちょっとゴリゴリと金粉を潰すような感じです。今回使った金粉が球状のモノなので、それを潰すとフラットになって光をよく反射するということです。
ズリズリ丹念に磨いていきます。キワもしっかりと磨きます。鯛の牙だとピンポイントでも磨けて使い勝手がよいです。
器の口元のひびもしっかりと磨きます。
器の内側です。
いろいろな角度から光を当てて、磨き終わっていない場所がないようにチェックしてください。
ひびの磨きが終わりましたら、次に欠けの部分も磨き上げます。
ズリズリひたすら磨きます。磨いた部分は突然、輝きだすのでやっていて気持ちがいいですよ。
磨きます。
この作業はメノウ棒などで行っても同じです。
金継ぎの蒔絵紛磨き作業が完了です。
ひびの金継ぎ完成
前の工程に戻る ▸ ①~蒔絵まで
ところでしつこく、金継ぎについて
なぜ、金継ぎ修理はひびや割れ目を隠さなかったのか?
それはそのひびや割れ目に何かメッセージを読み取ったからだと言えないでしょうか?古代中国で占いにつかわれた甲羅に入ったひびを修理して隠すことはしなかった。あたりませですよね。そのひびや割れ目の入り方から何か異界や、偉大なものからのメッセいーじを読み取ろうとしていたんですから。それをわからないように直したら意味がない。甲骨文字の書かれた