「価値」の所在地はどこにある??

 


2017-02-05

自分で壊れた器を直す人が増えています。
「金継ぎのある生活」って何なのか?

それは普通は「金継ぎした”器”のある生活」になると思います。
日常の食卓に金継ぎした器が並ぶ。これはなかなか魅力的な食卓風景ですよね。
そしてもう一つ。
「金継ぎできる”技術”を持つ生活」とも言えますよね。
これが多分、面白い。
自分で器を直すことができる。
それは一つの「ライフスタイル」なのだと思います。

モノを買う、消費するというのが、近代社会でずっと続いてきたライフスタイルでした。
それが普通だと思ってきたし、壊れたら買い直すのが当たりまえだと思ってきた。
それとは全く違うライフスタイル。
「自分で直し、自ら生み出す」という人生の在り方。
それは一つの「価値観」の提示なんだと思います。

企業が量産したものをそのまま消費させられていた時代。
そして、現在は企業が提案したものを買い手の価値観で選択し、自主編集している時代。
そのいずれも、価値の創造は企業などの生産者の側にありました。

器は壊れた瞬間に企業や作り手が与えた価値を失います。
その壊れた器を蘇らせ、新たな価値を賦与するのは、これまで消費者であったはずの私たちです。
いや、その時、私たちはもう自分たちを「消費者」とは呼べなくなるのかもしれません。
何に価値を見出し、どのような価値を与えるか。
器を直す時、その創造の権利は私たちの手にあるのです。