2017-01-31
藝大の入学式というのはいきなりリアルな現実をぶつけてくる儀式です。
初っ端の学長のお祝いの挨拶で「今日、入学した者の中でダイヤモンドの原石は1個か2個だけ。それが現実。だけど誰が“ダイヤ”かはわからないし、ダイヤであったとしても磨かなければ光らない。大学4年間を通して、お互い切磋琢磨してください!」というようなことを言われた気がします。
もちろん、大学に入学したばかりだから誰もが「フフフフ、俺こそがそのダイヤの原石に違いない」と心の中では思っていた(はず)。まさか最初から「あたしはただの川原の石ころだから細々と地道にやっていこう~◎」なんて人はいなかったと思います。
ただ、私が入った「工芸科」というのは恐らく他の科とは違って、いわゆる「普通」の感じの人が多かった。「オレオレ!」「あたし、見て!」という「自称アーティスト濃度」は低めだったと思います。だいたい「現代アートでブイブイいわしたる!」という人は工芸科には来ません。だって、粘土こねて轆轤回したり、鶴の恩返しのようにひたすら機織りをしている「科」ですからね。どちらかというと、真面目でこつこつ努力型の人が多かったと思います。
工芸科を選ぶということはそもそも入学前から、つまり高校生以前から工芸に惹かれていた…ということになります。「ファッションとか洋服が大好きだったから」とか「指輪とかジュエリーが作りたくて!」というのなら、まぁ高校生としては健全だと思います。だけど、「オレ、益子焼(←栃木の陶器の産地)が好きでさ。あのポッテリとした土の感じに惹かれるんだよな…」とか「暗闇の中、あの艶やかに光るうるしの表情にシビレちゃうんです~」という高校生がいたら、結構なオタクですよね。鉄道オタクとかアイドル・オタクの方がまだ健康的な気がする(そうでもないかしら?)。
そう考えると工芸科を選んで入学した人というのはある意味「変わっている」人が多いのかもしれません。かなり「地味な変わり方」ですけど。
私の場合は工芸に全く興味がありませんでした(ナヌ!)。なのに工芸科に入ってしまった。そう、合格発表の日、合格者を貼りだした掲示板の前で「やった!藝大に入れた!…けど、なんで俺は工芸科に入っちゃったんだ…??」という大きな疑問が浮かび、憂鬱な気分になったのを覚えています。(←これ本当です)
受験する前に、きちんと考えないとダメだったのかも。