今回はかなりマニアックだけど、めちゃくちゃハイパフォーマンスな道具、「駿河炭」についてご紹介します。
金継ぎでの研ぐ道具としては耐水ペーパーより断然おススメです◎
駿河炭とは
「塗った漆」や「錆漆」を研ぐための道具です。
耐水ペーパーと同じ役割です。
炭って、あの「炭」だよね??
あれで漆が研げるの?
はい、そうなんです。「あれ」で研げるのです。
炭の「断面」(木口面)を使います。
金継ぎで使う炭は特別に作られた炭で、「アブラ桐」を焼いて作ったものです。
へ~ナルホド。
…ってことは、、
BBQで使う炭ってあるじゃない。
あれでも研げるんですか??
おー、ナルホド◎
そうそう、その質問もよく聞かれることだったので、試してみました。
それで結論としては、「やれないことはないけど、かなり研磨力が弱い」ということになりました。
詳しくはこのページの下部で説明させてもらっています。
‣BBQ用の炭って使えるの??
駿河炭のメリット/デメリット
「炭でも研げる」ってことは分かりました。
けど、それって耐水ペーパーじゃダメなの??
耐水ペーパーと何が違うの?
確かに、確かに。
金継ぎで通常、研ぎに使う道具といえば「耐水ペーパー」ですよね。
「耐水ペーパー」と「駿河炭」、何が違うのか?を比較してみました。
駿河炭のメリット
まずは耐水ペーパーと比べた時のメリットから…
駿河炭
のメリット
▪▪▪
1.器が傷つかない!!
2.滑らかな面に研ぐことができる
3.変形させて使用もできる
4.研いだ面が綺麗な肌になる
…などの点が挙げられます。
それぞれを少し詳しくご説明します。
❶ 器に傷が入らない
まずはこれがスゴイのです!
耐水ペーパーで研ぐと、実は、薄っすらとですが器に傷が入ります。見えにくいかもしれませんが、傷付きます。
ですので、ペーパーで研ぐ際は修理箇所以外を極力、研がないように気を付けなくてはいけません。
一方、炭で研いでも器に傷が入りません◎
ですので、何も気にせずにどんどん研ぐことができます。
また錆付け作業で、修理箇所周辺にこびりついてしまった錆漆も、躊躇なく炭で研ぎ切って綺麗にすることができます。
❷ 滑らかな面に研ぐことができる
耐水ペーパーはあくまで「紙」なので、研がれる対象の形(例えば、錆漆の凸凹)に合わせて、変形してしまいます。
一方、炭の方はというと、「硬く弾力が無く」「適度に水分を吸収する」ので、平面を維持しつつ研ぐことができます。
なんかムズカシイ…
※ 炭の平面を維持するために、炭をちょこちょこ砥石に当てて、炭の研ぎ面を平面に修正する必要があります。
結果、上の左図ように、耐水ペーパーで研いだ方の錆漆は「尖った山」は丸められているものの、全体的には薄っすらと凸凹した面になります。
一方、炭で研いだ方は、上の右図のようにきれいな曲面を作ることができます。
ということで、なるべく「凸凹の無いきれいな面」を作りたかったら、「炭」はマストだと言っていいと思います◎
❸ 変形させて使用もできる
例えば「凹んだ面」に充填した錆漆を研ぐ場合、炭の方の研ぎ面を「凸面」に加工して研ぐことができます。
逆もできます。
❹ 研いだ面が綺麗な肌になる
駿河炭で研いだ「肌」は番手でいうと#800~#1200程度と言われています。
(炭自体の個体差が大きいので、番手の荒さも幅が広くなります)
駿河炭で研いだだけでも結構、綺麗な肌になります◎
駿河炭のデメリット
駿河炭
のデメリット
▪▪▪
・今のところ、漆屋さんでしか取り扱っていない
・購入したそのままでは使えず、ちょっとした「仕立て」が必要
・値段が少し高い(50g/¥1980-)2020-04-26現在
・少量で購入できるお店が無い!
…などの点が挙げられます。↑
この「少量で購入ができない」というところが痛いところです。
ぜひ、金継ぎをやっている方には使って欲しい道具なのですが、購入しづらいのです。
炭の使用をおススメしたい人
金継ぎをやる人、全員におススメしたいところなのですが、入手先、値段、炭の仕立て…など、駿河炭を使うには意外とハードルが高い。
ですので、入門したての、「超」初心者はひとまず使わなくてもいいと思います。
まずは「耐水ペーパー」でいいかと思います。
● おススメしたい人
・器を傷付けたくない人
・ある程度、金継ぎの経験を積んできて道具類のグレードアップを考えている人
・「もっとキレイに仕上げたい!」という探求心を持っている方
…には100%おススメする道具です。
炭の使い方
● 炭の断面(研ぎ面)を砥石に当てて平滑面を維持しながら使用する。
これは炭の研ぎ面が崩れるたびに頻繁に行う。
2:26~2:42まで再生
● 少量の水を付け、「炭の年輪」に対して直行する方向に動かす。
(と、よく研げる)
・年輪と並行方向に動かしたって、研げます◎
ちょっと研磨力が落ちているのかと思いますが。
・基本的には炭の「断面」(木口面)を研ぎ面として使います。
断面ではなく、木の繊維が見える「側面」でもそこそこ研げます。
けど、わざわざ側面で研ぐ必要はそれほどありません(‘;’)
炭の仕立て方
面倒なのですが、炭は買ったままだと使えません!
バーベキューで使う炭と同じように「ゴロッ」とした塊りのままで売っています。
それを金継ぎ用に小さく仕立てる必要があります。
といっても、ノコギリやカッターで小さく切るだけなので全然、難しくありません。面倒なだけです。
駿河炭の仕立て方動画です↓
必要な道具
・《カナノコ》 ▸Amazonで見る
・《カッター大》 ▸Amazonで見る
●【作業手順】
① まずはカナノコ(金鋸)の刃で(刃だけを買って使うのでもオッケーです)、厚さ15~20㎜程度に輪切りにします。
削りカスで汚れますので、新聞紙などを広げた上で作業してください。
↑
こんな感じにカットします。
② 次に薄い板状になった炭の塊りを、大き目のカッターナイフで「割っていきます」
「年輪」が入っている方向と平行にカッターを入れます。
グッとカッターの刃を入れると、パリっと炭が割れます。
(炭が多少、砕けてしまうので、ロスが発生します。この「ロス」が嫌な人はこの作業も「カナノコ」でおこなってください。けど、ノコギリで挽くのもロスが出ます)
③ さらにカッターで割って、大小さまざまな面積のものを用意します。
小さくするものはさらに小さく割っていきます。
㊧ 【「線」研ぎ用】
面積が小さいものを用意します。(細く)
研ぎ面が5㎜×5㎜くらいの大きさからスタートして、7㎜×10㎜とか様々なサイズを用意します。
というか、かなり適当で大丈夫です。
あまりに小さすぎなければ、しっかりと役立ちます◎
㊨ 【「面」研ぎ用】
面積を大きめにします。
金継ぎで使用する「最大の大きさ」としては…研ぎ面が15㎜×15㎜くらいの大きさがあれば十分だと思います。
もちろん、もう少し大きめのものを用意しておいてもオッケーです。時々、役立ちます◎
炭の購入先と購入量
炭を使ってみたい!と思った方は↓こちらの漆屋さん(渡邉商店)での購入がおススメです。
いくつかの漆屋さんを比較してみた結果、一番、「小ロット」で販売しています。
50gから売っています。
● 【どのくらいの量が必要?】
炭の50gってどのくらいの量なの??って分かりませんよね。
~駿河炭/50g~
↑このくらいです。
このくらいの量があれば、素人の方なら数年かかっても使いきらない量です。
金継ぎ仲間がいるようでしたら、2,3人でシェアするのがいいと思います。
一般の人がたまに金継ぎをするくらいだったら、20gもあれば十分じゃないかな?と思います。
駿河炭の特徴
別名:静岡炭
材料:アブラギリ(油桐)
木口面の導管が太いので研ぎやすい(研磨力がある)
年輪の幅が等間隔に狭く、締まっているものが良質の炭になる(高級品)
↑つまり低温の土地に育ったもの
樹齢30年くらいが最適で、直径が16∼20㎝程度のものを使う。伐採後、樹皮を剥ぐ。
樹脂分を取り除くために2~3年、井桁積みにして自然乾燥させる。
乾燥が不十分だと炭にした時に「す」が入る。
炭の断面に「ひび」「こぶ」「節」が入っているものは取り除く。
その他の研ぎ炭
その他、金継ぎで使える炭をご紹介します。
● 朴炭
木の種類:朴
特徴:硬くて、番手としては粗い
駿河炭よりも「硬く」「粗い」ので、比較的、炭の形を保ったまま研ぐことができる。
「表面」を研ぐというよりも、「形を作る」という目的で使うのに適した材料です。
刃物であらかた削った後の錆漆を研ぐ際は駿河炭よりも適している。
(「捨て塗り研ぎ(漆塗り1回目」も駿河炭より適していると言えるかと思いますす)
おススメしたい人:
基本的には「駿河炭」で代用できるので、初心者には必要ないと思います。
中級者以上で、より高い完成度を求める人や、作業の効率化を図る人にはおススメできます◎
僕は個人的には使っています。
● バーベキュー用の炭
木の種類: 不明なことが多い
特徴:
・硬くて研磨力がかなり低い。(T_T)
・安い!どこでも売っているので、入手しやすい
「漆芸用の研ぎ炭(駿河炭や朴炭)」と比べると雲泥の差です。かなり研磨力がありません。
ただ、ホームセンターなどでも入手可能ですし、かなり安いので、「炭で研ぐってどんな感じ!?」を体験してみたい方にはおススメです◎
BBQ炭を「金継ぎ用の炭」に仕立てる動画です↓
BBQ炭で炭研ぎ体験をしてみて、「お!これってもしかしていいかも?」と感じたら、「駿河炭」へとグレードをアップしていただく…というのが僕が考えているシナリオです◎
ホント、「駿河炭での研ぎ」はおススメですよ!