憶えられない…
2020.6 全面リニューアル済み
【蒔絵粉ってなに?】
金継ぎでは「最後の仕上げ」で金粉などを蒔いて表面を装飾する「蒔絵」と呼ばれる作業を行います。
その際、使われる蒔絵専用の金属粉のことを「蒔絵粉」と言います。
蒔絵粉はその粉の形状によって「丸粉、平目粉、平極粉、消し粉、梨地粉…」などなどと種類が分けられていて、それぞれ「使い方」や「特徴」がちょっとずつ違います。
結構、覚えづらいです。
はっきり言って私は未だに時々、混乱してしまいます。はい。
【蒔絵粉の種類と比較】
粉の種類
蒔絵で使われる蒔絵粉の種類はだいたい以下の5種類です。
この中で、特に金継ぎでよく使われるのが…「消し粉」「平極粉(平粉、延粉)」「丸粉」の3種類です。
※「平極粉」と「平目粉」は違うものなのですが、ネーミングが似ているので、すごく混乱します!
3つの蒔絵粉の比較
工程 |
丸 粉 |
平極粉 | 消し粉 |
仕上った 色味・ 雰囲気 |
強い光沢感 (まさに金属的!) |
そこそこの 光沢感 |
白っぽく 光沢が弱い |
手間の かかり方 |
手間がかかる けど |
そこそこの 手間 |
簡単 |
粉の 耐久性 |
高い | そこそこ | 低い |
1gで 蒔ける 面積 |
狭い | そこそこ | 広い |
鳩屋的 おススメ度 |
金継ぎ図書館的におススメの粉は…
1位【丸粉】です!
手間はかかりますが、磨いた時にみるみる光沢が出てくる感じは魅惑的です。
磨く前までは「黄土色のマットな粉(ただの“土”って感じです)」だったものが神々しい光を放つ瞬間というのは蒔絵のひとつの醍醐味だと思います。
仕上りの色味/光沢の比較
↑丸粉3号
↑平極粉
↑消し粉
←丸粉3号/↑平極粉/消し粉→
丸 粉 | 平極粉 | 消し粉 |
金属っぽく はっきりとした色味 |
丸粉と消し粉の 中間的な印象 |
マットで 白っぽい印象 |
※ 丸粉の中にも「粗いもの~細かいもの」までありますが、仕上がりの色味としては、「粗いもの(大きいもの)」ほど「金属的な光沢」になり、「細かいもの」程その光沢は「鈍く(白っぽく)」なります。
厚みの違い
【蒔絵粉の種類によってこんなに厚みが違うのね】 ■■■
↑粉の厚み比較図を作ってみました。 ※ 1μm=0.001mm、1mm=1000μm
|
基本的には「粉が厚い=耐摩耗性が高い」ので、日常使いの器に蒔絵をする場合は「粉が厚い」方が「剥げにくい」ということになります。
【それぞれの粉の特徴&作業工程】
「丸粉/平極粉/消し粉」それぞれの粉の特徴と簡易的な使い方解説をしていきます。
【丸粉】
手間はかかるけど、仕上った時の充実感は断トツ!!
気合いが充実している人はぜひチャレンジしてください◎
■ 丸粉の特徴
【丸粉の特徴】
- 地金をヤスリでおろしたヤスリ粉を、球体に加工したもの
- 研ぎ出したり、磨いたりできる
- いろいろな大きさの粒があり、号数で分かれている。
1号(直径約6μ)~17号(300μ=0.3㎜) - 消し粉、平極粉に比べると厚み(体積)があるので、耐摩耗性が高い(すり減ってもすぐに無くならない)
※ 1μm=0.001mm、1mm=1000μm
※ 1号 =6μ / 2号= 8μ / 3号= 10μ / 4号= 12μ / 5号=15μ / 6号 0.018mm / 7号 0.02mm / 8号 0.025mm / 9号 0.03mm / 10号 0.035mm/ 11号 0.04mm / 12号 0.045mm / 13号 0.06mm / 14号 0.07mm / 15号 0.1mm
(※実際のサイズは±10%前後の誤差が出ます)
■ 丸粉の使い方
【作業工程の図解】
───【1日目】───
※ 真綿で蒔くこともできます。
- 1.漆を「極薄に」塗る
- 2.漆を塗った脇に、粉匙ですくった多目の丸粉を乗せる
- 3.丸粉をあしらい毛棒で押しながら移動させ、塗った漆の上を手早く何往復も通過させる
- 4.湿し風呂に入れて3日間待つ
───【2日目】───
- 丸粉の上から、漆を薄く塗る
- 余分な漆をティッシュで拭き切る
- 湿し風呂に入れて1週間待つ
───【3日目】───
- 油を薄く敷き、布に磨き粉を付けて磨く
↓
〈これで完成としてもよい(胴摺り仕上げ)〉 - 丸粉の上から、生漆を薄く塗る
- 余分な漆をティッシュで拭き切る
- 湿し風呂に入れて1日待つ
───【4日目】───
- 油を薄く敷き、指に磨き粉を付けてササっと磨く
- 完成(呂色磨き仕上げ)
※ 「丸粉」についての実践的な解説はこちら↓のページをご覧ください。
【参考動画】
※「金の3号丸粉」使用
※「銀の3号丸粉」使用
■ 丸粉の購入方法
■ 【浅野商店】で購入する場合
【金の丸粉】…【金の丸粉】
(画像:浅野商店 Webページ)
1~3号程度がおススメ
【銀の丸粉】…銀の丸粉
(画像:浅野商店 Webページ)
1~3号程度がおススメ
■ 【吉井商店】で購入する場合
‣Webサイト←発行してもらったパスワードなど(簡単にもらえます◎)をこのログイン・ページで記入し、こちらの商品ページ↓に入る。
(画像:吉井商店 Webページ)
■ 【金の丸粉】の場合…
「ご注文フォーム」のすぐ下にある「紫色のバナー」の「金粉」の欄→【丸粉】をクリック
(画像:吉井商店 Webページ)
初心者さんには「1~3号粉」あたりがおススメです◎
■ 【銀の丸粉】の場合…
「ご注文フォーム」のすぐ下にある「紫色のバナー」の「銀粉」の欄→【丸粉】をクリック
(画像:吉井商店 Webページ)
初心者さんには「1~3号粉」あたりがおススメです◎
■ 1~3号粉がお薦めなわけ
1~3号粉あたりだと「研磨粉」を付けて磨くだけできれいに仕上がるので、簡単です◎
5号粉、6号粉…と粉の粒子が大きくなっていくと、蒔いた肌が少し「凸凹」になってきます。
そうなると「磨き」の前に「炭研ぎ」をおこない、その「ツブツブした肌」を滑らかにする必要が出てきます。
手間もかかるし、難易度も少し高くなります。
ということで、初心者さんには「1~3号粉」あたりがおススメというわけです◎
【平極粉】(平粉、延粉)
消し粉よりかは少し手間がかかるけど、そんなに大変じゃない。
■ 平極粉の特徴
【平極粉の特徴】
- 地金をヤスリでおろしたヤスリ粉をさらに砕いたもの。消し粉よりも厚みのある平らな微粉
- 厚さ約0.6μ(0.0006㎜)、幅約5~6μ(0.005~0.006㎜)の微粉
- 平蒔絵に使う(つまり金継ぎで使える)
- 漆を擦り重ねてから表面を砥石粉、コンパウンド、胴摺り粉などで磨く。炭(や砥石、ペーパーなど)で研ぎ出しはしない
- 丸粉を使う蒔絵より簡単
※ 1μm=0.001mm、1mm=1000μm
■ 平極粉の使い方
【作業工程の簡易図解】
───【1日目】───
- 1.漆を「極薄に」塗る
- 2.漆を塗った脇に、平極粉を乗せる
- 3.平極粉を真綿で押しながら移動させ、塗った漆の上を手早く何度も通過させる
- 4.しっかりめに真綿を擦りつけ、立っている粉を寝かせる
- 5.湿し風呂に入れて3日間待つ
───【2日目】───
- 平極粉の上から、漆を薄く塗る
- 余分な漆をティッシュで拭き切る
- 湿し風呂に入れて1週間待つ
───【3日目】───
- 油を薄く敷き、ゴムまたは指に研磨剤を付けて磨く
↓
〈これで完成としてもよい〉 - 平極粉の上から、生漆を薄く塗る
- 余分な漆をティッシュで拭き切る
- 湿し風呂に入れて1日待つ
───【4日目】───
- 油を薄く敷き、指に磨き粉を付けてササっと磨く
- 完成
※ 「平極粉」についての実践的な解説はこちら↓のページをご覧ください。
【参考動画】
※「銀の平極粉」使用
■ 平極粉の購入方法
■ 【浅野商店】で購入する場合
【金の平極粉】…【金の平極粉】
(画像:浅野商店 Webページ)
- 〈純金平極粉 2号〉…平極粉より少々粗い。厚み0.6μ前後
↑こちらの厚い方がおススメです◎ - 〈純金平極粉〉…消し粉と同じ厚み0.2~0.3μ前後
【銀の平極粉】…銀の平極粉
(画像:浅野商店 Webページ)
■ 【吉井商店】で購入する場合
‣Webサイト←発行してもらったパスワードなど(簡単にもらえます◎)をこのログイン・ページで記入し、こちらの商品ページ↓に入る。
(画像:吉井商店 Webページ)
■ 【金の平極粉】の場合…
「ご注文フォーム」のすぐ下にある「紫色のバナー」の「金粉」の欄→【延粉】をクリック
(画像:吉井商店 Webページ)
↑〈都之光みやこのひかり/富士〉の二種類があり、「都之光」の方が粗い(厚みがある)とのことです。
(蒔絵師さんの「実感」より)
※ 吉井に正確な厚みを問い合わせたところ、「分かりません」といわれました(笑)
初心者さんには「都之光」の方がおススメです◎
■ 【銀の平極粉】の場合…
「ご注文フォーム」のすぐ下にある「紫色のバナー」の「銀粉」の欄→【延粉】をクリック
(画像:吉井商店 Webページ)
↑〈商品名:0117 銀延〉となります。
【消し粉】
一番お手軽◎
だけど、耐摩耗性も一番低い
■ 消し粉の特徴
【消し粉の特徴】
- 金箔を細かく擦り潰して、パウダー状にしたもの(蒔絵粉のなかで最も細かく、薄いもの)
- 光沢が弱く、マットな表情
他の粉と比べるとちょっと「白っちゃけた」感じ - 基本的には研がない、磨かないで、蒔きっ放しで使う
- 作業工程に手間が掛からず、少量で広い面積に散布できるので、安価な漆器の加飾に用いられる事が多い
- 粉に厚みがないので、他の粉と比べると摩耗して下地が出てきやすい
- 蒔絵の中では一番簡単◎
■ 消し粉の使い方
【作業工程の簡易図解】
───【1日目】───
- 1.漆を「極薄に」塗る
- 2.漆を塗った脇に、消し粉を乗せる
- 3.消し粉を真綿で押しながら移動させ、塗った漆の上を手早く何度も通過させる
- 4.しっかりめに真綿を擦りつけ、立っている粉を寝かせる
- 5.湿し風呂に入れて10日間待つ
↓
完成
乾いたらお終いです◎
※ 漆で粉を固めたり、磨いたりしません。蒔きっ放し。
※ 「消し粉」についての実践的な解説はこちら↓のページをご覧ください。
【参考動画】
※「金の消し粉」使用
■ 消し粉の購入方法
Amazonで「金消し粉」が売っていました↓
※ ちょっと割高です。
金粉屋!
もうちょっとWebサイト
見やすくしてくださいー!
これじゃ初心者さん、
分からんよー!!
そう、、金粉屋さんのWebページは迷宮なのです…(T_T)
頑張れ!金粉屋さん!!
■ 【浅野商店】で購入する場合
【金の消し粉】…【金消し粉】
(画像:浅野商店 Webページ)
- 〈五毛色〉…合金比率:金98.91%・銀0.49%・銅0.59%
金箔の中で最も金の含有量が多いもので、赤みが強い色合い - 〈三号色〉…合金比率:金95.79%・銀3.53%・銅0.67%
- 〈四号色〉…合金比率:金94.43%・銀4.90%・銅0.66%
【銀の消し粉】…銀消し粉
(画像:浅野商店 Webページ)
■ 【吉井商店】で購入する場合…さらに厄介です(T_T)
‣Webサイト←発行してもらったパスワードなど(簡単にもらえます◎)をこのログイン・ページで記入し、こちらの商品ページ↓に入る。
(画像:吉井商店 Webページ)
■ 【金の消し粉】の場合…
「ご注文フォーム」のすぐ下にある「紫色のバナー」の「金粉」の欄→【消し粉】をクリック
(画像:吉井商店 Webページ)
↑〈商品名:正一号消/ユージ消(正三号消)/純金消(正四号消) 〉のいずれかとなります。
※ 1号の方が赤味が強く、3号、4号といくに従って黄色味が強まる(はず)
■ 【銀の消し粉】の場合…
「ご注文フォーム」のすぐ下にある「紫色のバナー」の「銀粉」の欄→【消し粉】をクリック
(画像:吉井商店 Webページ)
↑〈商品名:0118 銀消〉となります。
※ 以下の蒔絵粉は金継ぎではあまり使われることがありません。
【平目粉】
●【平目粉の特徴】
- 小判型
- 梨地粉よりも厚く、艶がある
- 研ぎ出して使う
- 1号(細)~13号(粗)、直径約60μ~3㎜
※ 1μm=0.001mm、1mm=1000μm
【梨地粉】
●【梨地粉の特徴】
- 漆の中に沈めて使う
- 平目粉よりさらに薄い(厚さ2~3μ)、周囲がギザギザしている
- 1号(細)~13号(粗)、直径約60μ~0.7mm
※ 1μm=0.001mm、1mm=1000μm
【金粉屋さんのご紹介】
金粉の値段は基本的にちょこちょこ値上がりしています。
(漆も毎年着実に高くなっています(涙))
今後、「お友達・知り合いの器も直してあげたい」「趣味が高じて、ちょっとした小遣いビジネスになったらいいわね…ウフフ」と考えている方は早めに購入しておいた方がいいと思います◎
金粉屋さんのWEBショップ…
【浅野商店】(東京) ‣Webサイト
1gでも購入できます◎
東京の銀座にあるので上京した際に立ち寄れます。
お店は「事務所の一画を改装した感じ」なのでちょっと入りづらいかもしれませんが、入って全然、大丈夫です◎
※ 漆屋さんでも蒔絵粉を扱っていますが、「手数料」が乗って割高になります。
なので「金粉屋さん」で買った方が割安です◎
※ 金粉の価格
2018-03-13現在 金粉1g入りの価格は¥10,000くらいです。(高いっすね!)
2020-05-30現在 金粉2g=¥22,300-…コロナ騒動で金相場が高くなってます!!(T_T)
※ 金粉1gで何個くらいの器が修理できるのですか?…というと、かなりアバウトな答えになりますが「20個くらいは余裕」でイケます。
(小さめの欠け、ちょっとした割れ…を直した場合)
【Attention!】
粉の「色味」「固さ」がお店によってほんのちょっと違います。
〇 【金粉】
・浅野商店=赤味が強い/粉がほんの少し柔らかい
・吉井商店=浅野に比べると白っぽい黄色味/粉がほんの少し硬い
〇 【銀粉】
・浅野商店=粉がほんの少し柔らかい
・吉井商店=粉がほんの少し硬い
金の「色味」に関しては個人の好みでいいと思うのですが、「硬さ」についてはどちらの方がいいのでしょう??
「作業のしやすさ」としては吉井の「硬い」粉の方が作業がしやすいようです(かめ先生談)。
仕上がりの「綺麗さ」もやっぱり「硬い」方がいい気がする…と言っていました。
輪島の蒔絵師さんたちはたいてい吉井の粉を使っているようです。
「ちょっと前まで」の
銀粉の大きさ
▪▪▪
「昔(昭和くらいまで?)の銀粉の大きさ」についてですが…
・浅野商店=同じ号数だと粉が粗い
・吉井商店=金粉と同じ大きさ
ちょっとややこしいのですが、例えば…
「浅野の銀粉2号=浅野の金粉5号=吉井の金粉5号=吉井の銀粉5号」
…となります。
おおよそですが、浅野の銀粉だけが「3号分くらい大きい」そうです。
吉井の銀粉も昔は浅野と同じように金粉に対して同じ号数の場合、粗かったようです。
でも分かりやすいように「同じ号数=同じ大きさ」としたんですね。
これは日本が「銀本位制」だったのと関係しているのでしょうかね?
※ 現在は浅野で販売されている銀も「銀粉の大きさ=金粉の大きさ」になっているそうです◎
本日の講義はここまでです◎
お疲れ様でした。