ファイツ!!
※ 口周りが割れてしまった湯飲み茶わんの金継ぎ(金繕い)修理のやり方を説明していきます。本物の漆を使った修理方法ですので「かぶれる」可能性があります。ご注意ください。
※ 万が一、漆が肌に付いた場合はすぐに「油(サラダ油など)」でよく洗って下さい。
油?? そうです。「油」をつけ、ゴシゴシ漆を洗い落としてください。その後、その油を石けんや中性洗剤で洗い流してください。
今回は金継ぎ工程の内の〈素地固め〉までのやり方を解説していきます。
私、金継ぎ初めてなんですけど、どんな道具とか材料を買えばいいんですか?どこで買えるんですか??という方へ
↓ こちらのページを参考にしてください◎
▸ 本漆金継ぎで必要な道具と材料/そのお値段と買えるお店のご紹介
作業を始める前に…
金継ぎでは「本物の漆」を使うので、直接、漆に触れると「カブレる」可能性が高くなります。「ディフェンシブ」に行きましょう。ゴム手袋は必需品です◎
直す器 information
information
- 器の入手先: 京都の PASS THE BATON (←祇園でしたっけ?)
- 器の特徴: ガラス質のツルツル釉薬
- 器のサイズ: 直径 70㎜、高さ 50㎜
- 破損状態: 割れ(本体+破片2パーツ) / ひび
割れの長さ合計 62㎜ / ひびの長さ 15㎜ - 仕上げ希望: 金仕上げ
この模様は「松」でいいんですよね?違うかしら?
なるほど。「PASS THE BATON」で手に入れたのですかー。社長の遠山さん、カッコイイですよね◎ 「ファッショナブルおじさん」でお茶目で、それでいて「男気」がある。
周りを「巻き込んでいく熱量」がありますよね(だけど、決して暑苦しくない)。ご存知ない方は、ぜひぜひ、YouTubeで「遠山正道」って検索して、動画を見てみてください。思わず、「おおー、この人についていきたい!」って思っちゃいます。
僕はすぐに本を買って、さらに表参道の「パスザバトン」に再訪してきました。あのコンセプト、それを「ビジネス」として着地させた情熱がスゴイです。聖地巡礼◎
遠山さんの、あの「ちょっとズラしたファッションセンス」も素敵なんですー。
この「割れパターン」、よくありますよね。
今回は「ひび」も入っています。
「欠け」のある所に「ひび」あり…これ、金継ぎの格言です。
器の内側にもひびが入っています。
この「ひび」を見落とさないように、入念にチェックしてください。初めは気が付かなかったんだけど、修理しているうちに…とか、修理し終わってから(!)とか、ふとした時に目に飛び込んできます。
「う~、何でこんなところにひびが入っているんだ…(涙)」ってならないように要チェックです◎
割れの破片はこの2パーツです。
破片が小さいと麦漆むぎうるし(接着剤)が塗りづらいのですが、
このくらいでしたら問題なくできます。
もし、破片が「すごく小さい」の場合は、「その破片を使わないで直す」でもオッケーです◎
器に使われている釉薬はガラス質のツルツルしたものです。
ですので、もし修理箇所以外に漆が付いてしまったとしても簡単に除去することができます。
01 素地調整
※ この部分のコンテンツを作るのを完全に忘れていました!写真がない!!他の修理ページから画像を借りてきていますが、許してください◎
道具 ①リューターのダイヤモンドビット ▸ 作り方 ②ダイヤモンドやすり
▸ 道具・材料の値段/販売店
ダイヤモンドビットは市販のものを購入したままだと使いづらいので、簡単なカスタマイズをすると使いやすくなります。
▸ ダイヤモンドビットのカスタマイズの方法
今回使うのは↑こちらです。これで「ひび」の箇所を細くなぞって「傷」をつけます。
何で傷つけるのよ??
はい、ガラス質の釉薬の上に直接、漆を塗ってもツルツルしているので剥がれやすいのです。なので傷をつけて漆の食いつきをよくします。
いきなり力を入れてやするのではなく、ゆっくりとなぞるように軽く2,3往復させてから少し力を入れて研ぎます。
ひびが見えづらい場合は目印として鉛筆や油性マジックで線を引いてください。その上をゆっくりとダイヤモンドビットでなぞっていきます。
細い線で修理を仕上げたい場合は、この「傷つけ作業」もなるべく「細い線」になるようにしてください。
もし、「ぶっとい線で仕上げたいわ!」という場合はそれ相応のぶっとい線になるように傷をつけてください◎
02 素地固め
この作業は何のためにやるかというと、次の工程で行う「接着作業」の
接着力がより大きくなるようにです。
…が、この「固め」作業に関しては職人さんによって意見の分かれるところでもあります。「やっちゃダメ」という方もいます。
金継ぎ図書館の見解としては「どっちでもいいんじゃないでしょうか?」です。一応、「セオリー」として固めのやり方を載せておきます◎
道具 ③小筆 ⑤練りべら(大き目のヘラ) ▸作り方 ⑥作業板(ガラス板) ▸作り方
材料 ①テレピン ②ティッシュ ④生漆 ⑦サラダ油
▸ 道具・材料の値段/販売店
※ この作業で使う「小筆」は安価な筆にしてください。陶器の断面に擦り付けるので、毛先が痛みやすいのです。蒔絵筆だとモッタイナイです。
まずは筆をテレピンで洗って筆の中の油を洗い出します。
▸ 詳しい作業前の筆の洗い方
【 作業前の筆の洗い方 】
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次に、浸み込みやすくするために生漆をテレピンを混ぜて希釈してください。作業板の上でヘラを使ってよく混ぜ合わせます。
【 生漆の希釈 】 【体積比/目分量】… 生漆 10:3 テレピン ※おおよそ ※ テレピンの代わりにアルコール、灯油でもオッケーです◎ |
それを欠けた場所に浸み込ませていきます。
それでは固め作業に入ります。実践 ◎
割れたすべての断面に漆を塗っていきます。
今回はツルツルしたガラス質の釉薬なので、漆がはみ出しても大丈夫です。乾いてから簡単に削り取ることができます。
もし、直す器が素焼きのものや焼き締めのものでしたら、なるべくはみ出さないように塗ってください。
ひびの箇所にも漆を浸み込ませます。と言っても、ほとんど浸み込みませんが。
断面すべてに塗り終わったら、表面に残った漆をティッシュで吸い取ります。
ティッシュを折り畳んでください。
それを漆を塗った部分に優しく押し当てます。
「念写」成功◎ 器の「霊」が写し取られます。(うそ)
漆を吸い取ります。
この作業を3~4回繰り返します。その際、毎回、ティッシュの吸い取る面を変えてください。漆のついていない、新しい折り面を広げてその面で押さえます。
割れた小さな破片の方も同様の作業をおこないます。
拭き取り作業が終わったら湿度の高い場所(65%~)に置いて漆を硬化させます。そう、漆は空気中の水分を取り込んで硬化するのです。不思議な樹液ですね◎
湿度が高い場所…って、お風呂場にでも置けばいいんですか??
風呂場…でもいいのですが、風呂場って湿度が100%近くにまでなるので、漆を乾かすにはちょっと「どぎつい」環境だと思います。(漆は急激に硬化すると「やけ」「縮み」といった厄介な現象が起こりやすくなります)
もうちょっとソフトな環境を用意してあげましょう◎ そう、実は漆は”やさしさ”で乾くのです。よ◎
【 簡易的な漆乾燥用の風呂 】 湿度が保てる空間を用意します。 |
↑ こんな感じでいかがでしょうか?
え!段ボール…。こんなんでもいいんですか??
はい、大丈夫です◎「段ボールなんてダサくて嫌!」という方は↓のページを参考にバージョン・アップさせていってください。
湿度のある場所(65%~)に6時間くらい置いて漆を硬化させてください。
理想的には「漆の乾きかけ」のタイミングで次の接着作業に入れたらステキです。けど、そのタイミングで次の作業に入るのが難しいようでしたら、なるべく1,2日後くらいに次の作業に取り掛かるようにしてください。
とはいえ、↑これは「厳密に言うと」ということですので、1~2週間空いてしまっても「ヤバイ!」ってことにはなりませんのでご安心ください◎
塗り終わったら油で筆を洗います。
▸ 詳しい作業後の筆の洗い方
※ 油で洗わないと筆の中に残った漆が硬化するので次第に筆がゴワゴワしてきてしまいます。
【 終わった後の筆の洗い方 】
※ 極々、ソフトに押さえるようにして筆の中の漆と油を掻き出すようにしてください。強くしごいてしまうと、筆の毛先が痛んで「カール」してしまします。 |
筆は付属のキャップを嵌めて保存します。キャップが無かったらサランラップを丁寧に巻いてください。
キャップがない、もしくはキャップを作りたいという方はこちらを参考にしてください。
▸ 筆のキャップの作り方
テレピン(又はエタノール、灯油など)を垂らして、ウエスやティッシュできれいに拭き取ってください。 caution ! 厳密に言うと、素地をし終わった後の作業板の上には「ごくごく薄っすら」と漆の成分が残っています。ですので、この作業が終わるまではしっかりとゴム手袋をして、ゴム手袋を外したあとは作業板を含めて漆の道具類を触らないようにした方がいいです。 |
【 次の作業を見る 】 |