ファイツ!カワチ!!
※ 金継ぎ(金繕い)修理のやり方を説明していきます。本物の漆を使った修理方法ですので「かぶれる」可能性があります。ご注意ください。
※ 万が一、漆が肌に付いた場合はすぐに「油(サラダ油など)」でよく洗って下さい。
油?? そうです。「油」をつけ、ゴシゴシ漆を洗い落としてください。その後、その油を石けんや中性洗剤で洗い流してください。
今回は金継ぎ工程の内の〈漆を塗る〉までのやり方を解説していきます。そう、ついに「塗る」のです◎
このページは金継ぎ図書館のコンテンツを使って「金継ぎ初心者・川地さんのファースト・チャレンジ」をナビゲートしていく企画です。(がんばれ!カワチ!)
早い話、「インターネット金継ぎ教室」をしちゃおう!ということです。
▸ インターネット金継ぎ教室のルールについての説明
川地さんは「本当」に金継ぎ初心者です。ですので、カワチさんの金継ぎに関する素朴な疑問などが、皆さんのお役にたつのではと考えています。
前回の作業工程を見る
▸ Page 04 /錆漆さびうるし(ペースト)を充填するまで
カワチ製菓とは?
カワチ製菓…??それはお菓子屋さんですか??
そです。お菓子屋さんです。それと金属カトラリーを作る作家さんです。二足の”わらじ”を履いている女性の方です。
↓金継ぎファースト・チャレンジャー
【 profile 】 川地 あや香 岐阜県多治見市生まれ 在学中はフライパンやケーキ型、カトラリーなどを研究 |
↓川地さんの作品。
↑カワチさんの作るカトラリー、器などは「ちょっとズッコケたデザイン」だったり、「形が歪んでいたり」します。精度高くピチッと仕上げる「職人技」とは違います。
だからかもしれませんが、「近寄りやすかったり」、「寄り添ってくれている」感じがする、ちょっと不思議な存在です◎
さらには↓ カワチ製菓さんのInstagram !
おっ!センスいい!!
カワチ写真はかなり面白いです。ぜひ覗いてみてください。
▸ カワチ Instagram へ Go
「カワチ製菓さんとは誰ぞ?」ともっと知りたくなった方はカワチさんのHPを覗いてみてください。↓をクリック
結構、間が空いてしまったので、前回のあらすじです…
割れた破片を接着した後、接着箇所にできたちょっとした隙間を埋めるために「錆漆さびうるし(ペースト)」を詰めてもらいました。
一回目の錆漆をやった後、「ちょっとした凹み」や「隙間」があったので、二回目もやってもらいました。(錆漆は水が入っているので、乾くと目減りしやすいので、錆作業は大体の場合、二回やることになります)
ということで、ご了解いただけましたでしょうか?オッケー、次の作業に進みます◎
09> 錆漆(ペースト)の削り
道具 ①彫刻刀(平丸刀) ②彫刻刀(平刀) ③障子紙用丸刃カッター ④カッターナイフ(大)
▸ 道具と材料の値段/販売店
上記の道具のいずれか、もしくは複数が用意できると作業がやりやすくなります。
おススメは 【 ①と②の彫刻刀 】ですが、「研ぐ」ことができないと、使い捨てになってしまいますので、現実的な初心者用の刃物チョイスとしては 【 ③と④のカッター 】を用意してもらえたらと思います。
③ の障子用丸刃カッターはホームセンターの「障子貼りコーナー」にありました。刃先がRなので(丸味が付いている)、器の曲面部分、特に「器の内側」部分の削りにもある程度ですが、対応できます。
乾いた錆漆さびうるし(ペースト)を刃物で削っていきます。
乾いたのか乾いてないのか、よくわからないんですが…という方は↓こんな感じでチェックしてください。
【 乾いた 】 |
「カリカリ」している。焼けた食パンみたいに。 ・ 棒で押す→ 凹まない、硬い |
【 乾かない 】 |
「しっとり」している ・ 引っ掻く→ 白い線が残らない |
引っ掻いてみる→引っ掻いた線が白くなる→乾いている ◎
しっかりと乾いている場合、「カリカリ」っとして、爪や棒で引っ掻くと引っ掻いた場所が「白く」線が残ります。それから強く押しても「弾力」を感じません。
※ 万が一、錆漆さびうるし(ペースト)が乾いていない場合は…
- 湿度をかなり高めにした場所に置いて2~3週間待つ
(2~3日経っても乾かなかった錆漆は乾くのにすごく時間がかかります。「やり直し」をおススメします) - 錆漆を取り除いて、やり直す
上記のいずれかを選択してください。
やり直す場合は…
詳しくはこちらへ ↓ |
相変わらず前置きが長いのですが、いよいよ作業に取りかかります◎
まずは汚れ防止のために貼っておいたマスキングテープを剥がします。
器の「ツラ位置」より出っ張っている錆漆さびうるし(ペースト)を削っていきます。
刃先を器に当てて、器のカーブに沿わせるように削ります。
「刃物を持っている手」ではない方の手の親指で、刃物の横から押し出すようにアシストします。刃は進行方向に対して、斜めにスライドするようにするとスムーズに削れます。(抵抗が少なくなります)
削る刃の先に、器を持っている方の手を置かないようにします(指が隠れるようにします)。万が一、刃物が滑っても手を怪我しないように気を付けてください。
削るのが楽な
「ガリガリ」と音がしてもビビらなくて大丈夫です◎ これは陶器が削れているのではなく、刃物の方が削られている音です。(ということは、刃物の切れ味がどんどん落ちていく…ということなのですが(涙))
周りに付いてしまった錆もなるべく刃物で削り落としてしまいます。
「口周り」は削りづらいです。器を持っている指の置き場に気を付けながら慎重にやってください。
口周りに付けた錆漆さびうるし(ペースト)は、適当に削っていると「ポロっ」と取れてしまうことがあるので、あまり「圧力」がかからないように、刃物をしっかりとスライドさせながら削ってください。
刃物の裏を器に当てて削ると、ラインが綺麗に揃います◎
器の内側も同様に錆を削っていきます。
削り終わったら、最後に指でなぞってみます。「ん?」って感じる出っ張りがなくなったらオッケーです◎
09> 漆ペーストを研ぐ
道具 ②紙ヤスリ(耐水ペーパー) ③ウエス(布切れ) ④ハサミ(いらなくなったもの) ⑤豆皿(水受け)
材料 ①水
▸ 道具と材料の値段/販売店
※ ハサミは紙ヤスリを切るのに使います。紙ヤスリを切るとハサミが「ばか」になります。他のものが切れなくなりますので、要らなくなったものか、100均で安いものを買ってきてください◎
※ 彫刻刀であまり削れていない(きれいなラインが出てない)場合は、まずは耐水ペーパーの#240くらい(←粗目)を使って研いでください。それで「形」を作ります。
↓
形ができましたら、仕上げに#600~#800程度で軽く研いで、
表面の肌を整えてください。
- ペーパーを1㎝×1㎝くらいに切る
- 三つ折り(二つ折りでもオッケー)にする
- 水をちょっとつける
水をちょっと付けながら研いでいきます。なるべく、修理箇所の上を狙って研いでいきます。(もちろん、その周りも研いでしまうのですが)
刃物でなるべく錆漆さびうるし(ペースト)は削ってあるはずですので、ペーパーでの研ぎはササッとやります。
修理箇所の周りに残っている錆も一緒に研いできれいにしちゃいましょう◎
10> 漆の下塗り
道具 ②ティッシュぺーパー ③面相筆 ④蒔絵筆(赤軸根朱替わり) ⑥練り竹ベラ ▸作り方 ⑦作業板 ▸作り方
材料 ①エタノール(テレピン、灯油など) ⑤精製漆(今回は”黒漆”) ⑧サラダ油
▸ 道具と材料の値段/販売店
カワチさんの持っている金継ぎセットには「生漆」しか入っていないので(精製漆が入っていないので)、こちらの作業をしてください↓
漆の精製が出来たら、その精製漆に今回は「黒顔料」を混ぜてください。
※ カワチさんの今回の「仕上げ希望」が「金色(真鍮)仕上げ」なので、最後の「上塗り」を「赤色の漆」で塗ります。なので、それまでの塗りは「黒色」で塗り重ねていきます。
作業に入る前に、筆をテレピンで洗って筆の中の油を洗い出します。
▸ 詳しい作業前の筆の洗い方
※ 何で筆に「油」がついているの??かと言いますと、作業が終わった後に、油で筆を洗っているからなのです◎ヘンですね、漆って。
【 作業前の筆の洗い方 】
|
筆の準備が済んだら、今度は漆の用意をします。
- 漆のチューブの蓋を開ける。
- 作業板の上に少量の漆を出す。
- 筆に漆を馴染ませる。
- 作業板の上に何本か線を引き、漆の量を調節しつつ、
含み具合をチェックする。
漆の中にゴミがたくさん入っている場合などは濾し紙で漆を濾してきれいにします。必要な方はこちらをご覧ください ↓
ほどよく漆を馴染ませた筆で修理箇所の上をなぞっていきます。
自分が描きやすいポジションになるように、器を持ち替えてください。
修理している部分は全て漆で多い被せます。線のキワまで塗り残しが無いように気を付けてください。
漆は厚くならないように気を付けます。気持ち、「薄目」に塗っていってください。
もし、漆を厚く塗りすぎた場合…
こんな感じになります。シワシワになるわけです。塗膜表面と塗膜の中の方との乾くスピードに「差」があり過ぎるとこうなるのだと思います。多分。
※ ↑これは皆さんをビビらすサンプル画像が欲しかったので、「かなりこってり」と塗りました。ですので、普通の感覚でやっていればこんなに厚塗りすることもないと思います◎ あまり怖がらないでくださいね~
げっ!ホント!? やだー。縮んじゃったらどうすればいいの?
えっとですね、そのまま見て見ぬ振りして1ヶ月くらい放置。(縮んだ箇所の乾きは時間がかかります)
しっかりと中まで硬化した後、研いで塗り直す。です。
もしくは、縮んだ箇所を竹べらや彫刻刀でこそげ取って、テレピンを含ませたウエスできれいに拭き取る。その後、研いで塗り直す。です。はい。
どちらにしろ、すごく面倒です。呪いです。呪われないように気を付けてくださいね。
ちなみに、この「シワシワ現象」は湿度が高すぎて、「急激に乾かした場合」にも起こります。漆風呂の湿度を高くし過ぎたり、塗れた布を漆塗りした箇所のすぐ脇に置いたりしないようにしてください。(↑濡れた布のすぐ脇は、そこだけ局所的に”超・高湿度”エリアになります◎)
ご注意、ご注意◎
「口周り」は塗りづらいですが、しっかりと漆を乗せてください。
器の内側も同様に塗っていきます。
できました◎
塗り残しがないか、漆が厚過ぎる箇所がないか、チェックしてください。
(あまりビビらなくてもいいと思いますが)もし、「これ、どう考えても”厚く”なっちゃったわ(涙)」という箇所があったら、漆を切った筆(漆がほとんど含まれていない筆)でその個所をなぞって、筆の方に含ませて吸い取ってください。
今回のカワチさんの修理している器は、「器の底」まで修理しているので下に置けません。
ということで、器の下に「割り箸」などを2本渡して漆を塗った箇所が下に着かないようにしてください。
↑こんな感じです。何を使っても構いません。とにかく「浮かせて」ください◎
作業が終わったら湿度の高い場所(65%~)に置いて漆を硬化させます。そう、漆は空気中の水分を取り込んで硬化するのです。不思議な樹液ですね◎
湿度が高い場所…って、お風呂場にでも置けばいいんですか??
風呂場…でもいいのですが、風呂場って湿度が100%近くにまでなるので、漆を乾かすにはちょっと「どぎつい」環境だと思います。(漆は急激に硬化すると「やけ」「縮み」といった厄介な現象が起こりやすくなります)
もうちょっとソフトな環境を用意してあげましょう◎そう、実は漆は”やさしさ”で乾くのです。よ◎
【 簡易的な漆乾燥用の風呂 】 湿度が保てる空間を用意します。※ 水を固く絞った布を中に入れて湿度を高くしてください。 |
↑ こんな感じでいかがでしょうか?
え!段ボール…。こんなんでもいいんですか??
はい、大丈夫です◎「段ボールなんてダサくて嫌!」という方は↓のページを参考にバージョン・アップさせていってください。
漆が乾くまで丸二日くらい見ておいてください。
塗り終わったら油で筆を洗います。
▸ 詳しい作業後の筆の洗い方
※ 油で洗わないと筆の中に残った漆が硬化するので次第に筆がゴワゴワしてきてしまいます。
【 終わった後の筆の洗い方 】
※ 極々、ソフトに押さえるようにして筆の中の漆と油を掻き出すようにしてください。強くしごいてしまうと、筆の毛先が痛んで「カール」してしまします。 |
筆は付属のキャップを嵌めて保存します。キャップが無かったらサランラップを丁寧に巻いてください。
キャップがない、もしくはキャップを作りたいという方はこちらを参考にしてください。
▸ 筆のキャップの作り方
【 お掃除、お掃除 】 テレピン(又はエタノール、灯油など)を垂らして、ウエスやティッシュできれいに拭き取ってください。 caution ! 厳密に言うと、素地をし終わった後の作業板の上には「ごくごく薄っすら」と漆の成分が残っています。ですので、この作業が終わるまではしっかりとゴム手袋をして、ゴム手袋を外したあとは作業板を含めて漆の道具類を触らないようにした方がいいです。 |
【カワチさんのお菓子コーナー】
↑カワチ製菓さんのいろいろなお菓子。カワチの作るモノはお菓子も面白いのです。