ファイツ!!
2020.6 全面リニューアル済み
※ 〈口元が欠けてヒビの入ったマグカップ〉の「伝統的な金継ぎ修理」のやり方を説明していきます。
このページでは金継ぎ修理の工程のうち〈割れた断面をやすりで削る~欠けた箇所に刻苧漆(パテ)を充填するまで〉のやり方を解説していきます。
【マグカップ】
初心者向け
難易度:
充填材:刻苧(パテ)+錆漆(ペースト)
使用粉:真鍮粉(金色の金属粉)
こだわり度:簡単・お手軽
今回のシリーズはあまり「完成度の高さ」にこだわらずに、「そこそこ」に仕上げます◎
■ 道具・材料と購入先
【金継ぎ修理を始めるその前に…】
動画で事前予習
● 今回の修理の参考になりそうな「ダイジェスト・通し動画」です↓
↑これを見れば「少し大きく欠けた器のおおよその金継ぎ修理の流れ」が分かると思います。
● 今回の修理の参考になりそうな部分動画です↓
(「ダイジェスト動画」じゃなくて済みません!)
↑これを見れば「ヒビの入った器のおおよその金継ぎ修理の流れ」が分かると思います。
カブレ対策
ロクブテ
本物の漆を使った修理方法ですので「かぶれる」可能性があります。
※ 万が一、漆が肌に付いた場合はすぐに「油(サラダ油など)」でよく洗って下さい。
油?? そうです。「油」をつけ、ゴシゴシ漆を洗い落としてください。その後、その油を石けんや中性洗剤で洗い流してください。
※ もし、かぶれてしまい、それがひどくなるようでしたら、医者に行って処方してもらってください。
作業を始めるにあたって、まずは装備を…
金継ぎでは本漆を使うので「ディフェンシブ」に行きましょう。
ゴム手袋は必需品です◎ 漆をなめちゃいけません◎
※ 作業後、油分多めのクリームを手、腕など、肌が露出していたところ(夏場は脚・足にも)に塗っておくと、カブレにくかった…というコメントをいただきました。
(塗り忘れたときは、毎回、痒くなった…そうです)
気になる方はやってみてください◎
注意:
修理箇所に油分をつけてしまうと、その箇所だけ漆が乾かなくなります。(手脂でも乾かなくなります)
ご注意ください!
※ 修理箇所に油分が付いてしまった場合は、エタノールで入念に拭きあげるか、台所用中性洗剤で洗えば大丈夫です◎
【金継ぎとは】
金継ぎ(金繕い)とは欠けたり、割れたりした器を本物の漆で直す日本の伝統技法です。
漆で接着し、漆で欠けや穴を埋め、漆を塗って、最後に金粉や銀粉を蒔いて装飾をします。
「金継ぎ」と呼びますが、実は「金」で接着や穴埋めをするわけじゃありません。
ベースは全て漆を使っての作業になります◎
続きの長いお話↓
この「壊れた痕を目立たせる」修理方法は日本独自のものだと思います。
普通は傷って隠したくなるものだと思いますが、なぜ、敢えて金を蒔いて強調したのでしょうね?
修復した箇所に金を蒔いて仕上げる「金継ぎ」は室町時代の茶の湯から始まったようですが、壊れた器を漆で修理すること自体は縄文時代から行われてきました。
祭器の中にわざわざ漆で継いで直したものが多数、見つかっています。
僕たちの感覚からいえば、祭り(神とのやり取りの場?)で使われる器が「修理品」でいいの??と思いますよね。
「壊れた器を使うなんて、神様に失礼じゃない?作り直せばいいのに…」と思ってしまいます。
ただ、この「感覚」というのは「現代に生きる」私たち固有の(ある意味)「偏見」であり、何かを見落としていたり、何かを感じる力を失っているからこそ抱いてしまう感覚なのかもしれません。
勝手な想像を巡らせていいのならば、きっと、「作り直す」ではなく、「継ぎ直す」でなければならなかった理由が何かあるはずだと思うのです。
「壊れたもの、解体したもの(=〈死者の世界/異世界〉に移行したもの)」が「再び繋がり合う、継ぎ合わされる(=〈生者の世界/この世界〉に戻ってくる)」というプロセスをくぐり抜けたものだけが獲得し得る「力」のようなものを古代の人はリアルな身体実感として理解していた。
だからこそ継ぎ直したものも祭事に使っていた…のではないかと推測します。
千宗屋さんの本に、茶の湯の究極的な目的は”直心の交わり”だと書かれています。
直心の交わりを成立させるためには、その場に居合わせた各人それぞれが「自我のフレーム」を手放す、もしくは一度解体する必要があります。
主も客も道具も空間も一度そのアイデンティティがすべてが解体される。そしてばらばらになった破片同士をひとつに継ぎ直すことによってその場に「共身体」のようなものが立ち上がる。
その時、「わたし」も「あなた」もなくなった”直心の交わり”がなされる。
室町の茶人たちは「漆継ぎ」した器の中に、
「解体→再構築」のプロセスを通過したときに立ち上がる不可思議な「力」を具現化したもの
…として再発見した(つまり漆継ぎという技法の中にもともとあったのだと思います)。
その「力」をもっとビビットに表現する手段が「金継ぎ」だったのではないか、と思います。
さらになぜ「金」にしたのか…と書き出すとさらに長くなるのでまた今度にします。
とにかく金継ぎをやってみてください。
器の直しが完成したのに、きっと、「なんかヘン」「なんか不思議」という感覚を覚えます。
手元の傷をしげしげと眺めつつ、その不可思議な体験をぜひ。
【器の情報】
【information】
- 作家: マリナーズのマグカップ。現代の量産品
- 特徴: 磁器、ピカピカの釉薬
- 本体サイズ: 直径80㎜×高さ80㎜
- 破損状態: 欠け(14×11)㎜/ひび 外側(75+7)㎜、内側(80+3)㎜
- 仕上げ方法: 真鍮粉仕上げ
いきなり作業を始める前に、まずは
- 傷の確認(細かいところまで)
- 修理計画を立てる(完成のイメージも作りつつ)
作業をします。
傷の確認
・小さな欠けの有無
・ひびの有無
修理する器の傷の具合を入念にチェックします。(周辺部も要チェック)
自分で気が付いている以外の傷が意外と入っていたりします。
「ちいさな欠け」や「薄っすらと入ったひび」は特に見落としがちです。
いろいろな角度から器に光を当てて、チェック、チェックです◎
(↑”ひび”は当てる光の角度をいろいろと変えて見ていると”見える”ことが多いです)
修理計画を立てる
完成のイメージも作りつつ
・傷の大きさ/深さによる修理工程の確認
・器表面の質感(ツルツルかマットかザラザラか)
傷の具合を見て、例えば…
■ 欠けが大きかったら
・刻苧漆こくそうるし(パテ)で埋めてから
・表面を錆漆さびうるし(ペースト)でコーティング
…となりますし
■ 欠けが小さかったら
・いきなり錆漆
…でオッケーとなります。
また、器の釉薬の具合を見て…
・「ツルツルのガラス質」ならば「マスキングで汚れ防止」をする必要は基本的にはありません。
(絶対に汚したくない人はもちろんやってください◎)
・「ガサガサのマットな表面」だったら、マスキングをした方がいいです。
…などなど、作業に入る前にある程度の「計画」や「完成イメージ」を作っておきます。
ただし、それほど厳密にやる必要はありません。
経験を積んでいくうちにこのあたりの計画は立てやすくなってきますし、完成イメージに関しては作業を進めていくうちに「変更」「修正」を加えていく方が実はいいと思います◎
▪実作業▪
● 違う器ですが、「器チェック」の参考になりそうな動画です↓
4:10~6:48まで再生
それでは今回の依頼品を見ていきます。
マリナーズのマグカップです。
この器は「取っ手」も壊れていましたが、そちらの方は「簡易金継ぎ」で直しました。
ご興味のある方は覗いてみてください↓
口元が「少し大きく欠け」ています。
↑見えづらいですが、薄っすらとひびが入っています。
マグカップの側面ですが、下までひびが入っています。
底にも少しひびが入っています。
マグカップのような「口が狭くて、深いところまで傷が入っている器」は修理が結構、大変です。
口が狭く深い器というのは、内側の作業がすごくやりづらいのです。
- 筆で描く時に、筆が動かしづらい(筆の可動域がかなり制限される)
- 筆で描く時に、描いている箇所が筆に隠れて見えづらい
- 「錆漆」を付けるときも↑これと同様
- 研ぐ時に「手」が入りづらい。動かしづらい→研ぎづらい
このあたりが「やりづらい」ポイントです。
【ヒビの箇所に溝を切る】
「ヒビ」の入っている箇所を、ケガキやリューター(機械)を使って溝を彫ります。
作業の目的
- ヒビの入った箇所に錆漆(漆のペースト)が充填できるだけのスペースを確保するために、ヒビの入った箇所に溝を彫ります。
■ 「ヒビの箇所」に溝を切る理由
もし、ヒビの入った箇所に、下処理をせず直接、器の表面に漆を塗った場合、、、
釉薬(器の表面)と漆との食いつきがそれほどよくないので、使っているうちに漆が剥がれやすくなります。
なので、現在の金継ぎ図書館では以下の「下処理」を施すことをおススメしています。
← 斜め上から見た図 / 断面図 →
①「ケガキ」という道具か、「ダイヤモンドビットを付けたリューター(機械)」で、ヒビの入っている箇所を彫り下げます。(=溝を切る)
※ 溝の深さは「0.5㎜」程度まで彫り込んだ方がいいかな?と思います。
← 斜め上から見た図 / 断面図 →
② 掘り下げたスペースに錆漆(漆のペースト)を充填します。
← 斜め上から見た図 / 断面図 →
③ 錆漆の上に漆を塗ります。
錆漆と漆とは相性がいいので、しっかりと食いつきます。
錆漆が「器の内側に」食い込んでいるので(ほんの僅かですが!)、その上に塗った漆が剥がれることはそうそうありません。
〈使う道具〉
道具 :
① リューターのダイヤモンドビット
▸作り方ページ
② 半丸のダイヤモンドやすり
③ ケガキ
※ 本漆金継ぎで使うおススメの道具・材料の一覧(購入先も)を↓こちらのページにまとめました。
ダイヤモンドビットのカスタマイズのやり方は↓こちらのページをご覧ください。
■ 溝を彫る道具の比較
「ケガキ」「リュータのビット」「リューターマシーン(機械)」を比べてみました。
メリット | デメリット | |
ケガキ (手作業) |
細くて深い溝が彫れる |
|
ダイヤモンド ビット (手作業) |
ケガキに比べると、最初から「食いつき」がよい(と感じる人もいる) |
|
リューター (機械) |
手道具に比べて格段に早く削れる |
|
もちろん、初心者さんがわざわざ「リューターの機械」を買う必要はありません。
手道具の「ケガキ」か「リューターのビット」の2択になるかと思います。
僕自身は「細い溝」を切りたいので、「ケガキ」の方がおススメなのですが、「ケガキは滑りやすくて、ちょっとやりづらかった!」という初級者さんもいたので、ダイヤモンドビットとケガキとではどちらがいいのか…断定できない状態です。
ちなみにその初級者さんはダイヤモンドビットでも手を滑らせて、周りに傷が入っていましたが…(‘;’)。
マシーンのリューターにも結構なデメリットがあるので、僕自身、未だにどれがいいとも言い切れない状態です。
(つまり「ヒビ」の処理は厄介…ってことなんですよね~)
▪実作業▪
● ヒビの彫り下げ
「V字」に彫ることを「薬研彫りやげんぼり」と言います。
ヒビの入っている箇所を少し彫り込んでいきます。
● 違う器ですが、「ヒビの入った箇所の彫り作業」の参考になる動画です↓
4:12~6:45まで再生
1:00~4:45まで再生
今回は「ダイヤモンドビット」で削っていきましたが、「ケガキ」を使ってもオッケーです。
もちろん「機械のリューター」でもOKです。機械は作業が早いです◎
今回は、ヒビがどこに入っていて、どこまで続いているのかが見づらかったので、油性ペンで軽く目印を描いておきました。
器の「外側」のヒビは確認しやすかったのですが、「内側」は暗くて分かりづらかったです。
今回の修理品は「量産品の磁器の器(ツルツル・ピカピカの器)」だったので、油性ペンで描いてもエタノールで簡単に拭き取れます。
ですので、油性ペンを使いました。
ザラザラ・マットな器などに目印を描く場合には「鉛筆」など、もし残っちゃったとしても目立ちづらいものを使ってください。
削っていきます。
ダイヤモンドビットもケガキも基本的には使い方は同じです↓
【ケガキ/ダイヤモンドビット】
の使い方
■■■
- 最初2,3回、力を抜いてヒビの上を「ゆっくりと軽く」なぞります。
その程度の力の入れ具合でも薄っすらと筋が入ります◎ - 浅い「筋」ができると、ケガキを引いた時に横に外れにくくなります。
そうなったら、少しずつ、力を加えてケガキを引いていきます。 - 何度もケガキを引いて、溝を徐々に深くしていきます。
器の内側を削る際に、ケガキの「直線側」が使いづらかったら、こちら↑の「直角側」を使ってください。
器の「底」までヒビが入っているので、削っていきます。
かなり作業がやりづらいです(*_*)
ダイヤモンドビットにうまく力が伝わりづらいので、結構、時間が掛かります。
手間のかかり方を考えると、こういった器の「内側の作業」に関しては「機械のリューター」の方がいいような気もします。
(彫り込む「溝」が太くなりがちなので、手放しで「機械」の方をおススメするわけにもいかないのですが~)
(↑断面図)
こんな感じに↑彫り込んで、溝を作っていきます。
溝の深さは「0.5㎜」程度まで彫り込んだ方がいいかな?と思います。
外側はヒビが見やすいです◎
「左手も添えられる場所」を削る場合は…
「左手の親指」の方でダイヤモンドビット(またはケガキ)を押します。
道具を持っている方の「右手」はほとんど力を入れず、コントロールするだけにします。
こうした方が、道具がコントロールしやすく、ミスが少なくなります。
※ マグカップの「内側」などは左手が入らないので無理ですが、平皿とかお碗などはおおよそ左手がはいるので、上記のように作業してください。
ケガキを使うにしろ、ダイヤモンドビットを使うにしろ、どちらにしても手が滑ってヒビの箇所を外すと深い傷が入ります…(T_T)
ですので、なるべくミスをしないように、ゆっくりと細心の注意をもって作業していきます。
※ 特に磁器のもので、表面がツルツルピカピカしている場合、ヒビの箇所をケガキでなぞろうとしても最初の食いつきが悪く、ツルッと滑りがちです。
めちゃくちゃ慎重に作業してください。(注意していても滑っちゃうのですが…(T_T))
「機械のリューター」も持っているのですが、機械慣れしてないせいなのか、個人的にはケガキの方が「きれいな細いライン」が彫れる気がしています。
基本的に手道具ばかり使っている人間にとっては高速回転系の電動工具って制御不能な「暴れる感じ」がしちゃうんですよね~。
リューター・マシーンを使う場合、特に「形のすぼまった器の内側」というのはかなりやりづらいです。
コップのような形状の場合、機械が入りづらいし、狭い空間では機械の取り廻しがしづらい。入ったとしても「機械自体が邪魔で削っている箇所が見えづらい!」なんてことがあります。
「溝を切る」作業が終わりました。
↑の写真では「溝」が浅いのですが、もっと深く削った方がいいです。
(これを修理していた当時は「溝を切ったところで、漆の食いつきにほとんど差がない」と感じていたので、このような処理をしていました)
溝の深さは「0.5㎜」程度まで彫り込んでください。
作業がおわったら最後、水を固く絞ったウエスで粉塵をきれいに拭き取ってください。
【素地固め】
「欠けた箇所」と「ヒビを削った箇所」に生漆を薄く塗っていきます。
作業の目的
割れたピースを接着する前に、麦漆(漆の接着剤)が器に食いつきやすくなるように下処理をしておきます。
その前に、もしかしたら「マスキング」が必要かも??
【 ザラザラ・マットな器を直している場合 】
▪ ▪ ▪
● 筆の扱いに慣れていなくて、修理箇所以外に「はみ出しちゃいそうな気がする…」という方は、汚れ防止のための「マスキング」をしておいてください。
詳しくは↓こちらのページをご覧ください。
〈使う道具/材料〉
道具:
③ 先が細い小筆
◯ 豚毛の平小筆
⑤ 練りベラ ‣作り方ページ ‣作り方の動画
⑥ 作業板(ガラス板など)
‣作り方ページ ‣作り方の動画
○ ゲル板 ○ サランラップ
材料:
① テレピン ② ティッシュ
④ 生漆 ⑦ サラダ油
※ 本漆金継ぎで使うおススメの道具・材料の一覧(購入先も)を↓こちらのページにまとめました。
※ この作業で使う「小筆」は100均などで購入できる安価な筆にしてください。
- 「割れた断面」、「欠けた面」に漆を塗るには「豚毛」などの「硬い毛」の小平筆がおススメです。
- 今回は「ヒビを削った細い溝のライン」にも漆を塗るので、「先が細くなった小筆」も必要です。
陶器のガサガサした箇所に筆を擦り付けるので、毛先が痛みやすいので、高価な筆だとモッタイナイです。
使用「前」の筆洗い
※ 「豚毛の小平筆」も「先細の小筆」も洗い方は一緒です。
まずは筆をテレピン(または灯油)で洗って筆の中の「油」を洗い出します。
▸ 詳しい作業前の筆の洗い方
どうして筆に「油」が付いてるの??…かといいますと、漆作業で使った筆は最後に油で洗っているからなのです。油で洗うと筆の中に残った微量な漆が乾きません。
漆と油とは相性が悪いのですが、それを利用して、保管するときには油で洗います。
逆に、使う時にはその油を除去します。
作業工程 ① 畳んだティッシュに筆を包む
② ティッシュをギュッと摘まんで、筆の中の油を吸い取る
※ 上の動画内では「①②のティッシュをギュッと摘まんで、筆の中の油を吸い取る」ステップを撮り忘れています!済みません~(T_T) そのうちまた撮影し直します!
③ 作業板の上に数滴テレピンを垂らす
④ その上で筆を捻ったりしてテレピンをよく含ませる
⑤ 筆をティッシュで包む
⑥ ティッシュをぎゅっと押えて、「油+テレピン」を絞り出す
⑦ 「4→5→6」を2~3回繰り返す
① 折り畳んだティッシュに筆を包みます。
② ティッシュの上からギュッと摘まんで、筆の中の油を吸い取ります。
③ 作業盤の上にテレピンを数滴、垂らします。
④ 筆にテレピンを含ませます。
筆は作業盤の上で捻ったりして、しっかりとテレピンと馴染むようにします。
⑤ 再び、ティッシュの上に筆を乗せます。
⑥ ティッシュの上からギュッと摘まんで、「油+テレピン」を絞り出します。
この後、「④→⑤→⑥」を2~3回、繰り返します。
この作業で筆のなかの油分をしっかりと除去します。
筆の中に油が残っていると漆が乾かないことがありますのでご注意ください。
「エタノール」などの揮発性の強いもので洗うと、テレピンよりも油分がしっかりと除去できますが、その分、筆への負担も大きくなり、傷みやすくなります。
ですので、金継ぎ図書館では筆が傷みにくいテレピン、灯油などをおススメしています。
生漆を希釈する
割れた断面に漆を塗るのですが、器の断面に浸み込みやすくするために、生漆に少量のテレピンを混ぜて希釈します。
作業板の上でヘラを使ってよく混ぜ合わせます。
配合比は…
【目分量の体積比】
テレピン 2~3:10 生漆
※おおよそ
※ 【体積比】です。お間違いなく。
~生漆の希釈~
作業工程
① 作業板の上に生漆を適量、出す。
② 作業板の上にテレピンを数的、出す。
③ ヘラでよく混ぜる
「混ぜ混ぜ」作業はそんなに「念入り」にやる必要はありません。
ちゃちゃっと1分くらいでオッケーです◎
▪実作業▪
■ 漆の塗布
それでは作業に入ります。みなさん、「ゴム手袋」してくださいね◎
やらないとカブレちゃうかもしれませんよ。
□ 欠けた箇所への塗布
● 違う器の「素地固め」動画ですが、参考になりそうなのでご覧ください↓
2:41~3:33まで再生
1:34~2:14まで再生
塗ります。
■ 欠けた「断面」といのはガサガサしていて、筆が痛みやすいです。
100均で売っているような「豚毛の平小筆」↑で十分、用が足ります◎
この欠けた箇所に生漆を薄く塗っていきます。
今回、直している器は磁器のカップで、表面が「ツルツル・ピカピカ」です。
こういった器の場合、漆がはみ出しても後で簡単にきれいに拭き取れるので、「はみ出し」を気にせずガンガン塗っていってください。
※ ザラザラ・マットな器の場合、漆がはみ出すと、最悪、拭き取ることができなくなります。
慎重にはみ出さないように塗るか、もしくは漆を塗る前にしっかりと「マスキング」をしておいてください。
マスキングについて、詳しくは↓こちらのページをご覧ください。
□ ヒビの入った箇所への塗布
● 違う器の「素地固め」動画ですが、参考になりそうなのでご覧ください↓
5:52~7:01まで再生
■ 細いラインに漆を塗るので、「先が細くなった小筆」を使います。
100均のものでもいいですし、インターロンの極細筆でもオッケーです。
ヒビの入った箇所には「先細の小筆」で生漆を塗っていきます。
ガサガサ・マットな器の場合には漆がはみ出さないように気を付けて塗ってください。
マグカップの内側も同様に生漆を浸み込ませていきます。
漆を塗り終わったら、次に「拭き取り」作業に移ります。
▪拭き取り作業
折り畳んだティッシュを漆を塗った断面に押し当てます。
今回のように「表面がツルツル・ピカピカの器」の場合は、ティッシュをゴシゴシと擦りつけて、拭き取って大丈夫です◎
※「表面がザラザラ/マットな器」の場合は、ティッシュを押えた時、ズレさにように気を付けてください。
ズレると、修理箇所以外(器の表の面や裏の面)に漆が付いてしまい、それを取り除くのが大変になるからです。
ついた漆が取れない場合もありますので、ご注意ください。
それでは浸み込まなかった余計な漆を拭き取っていきます。
※ 今回は「ザラザラ・マットな器」を想定して丁寧に拭き取ってみたいと思います。
何回か畳んだティッシュで漆の上に優しく押さえ付けます。
押えたティシュがズレないように気を付けてください。
ズレると周りにも漆が付いてしまいます。
※ 今回のこのマグカップは「ツルツル・ピカピカ」の磁器の器なので、周りに漆が付いても簡単に綺麗にできます。
↑こんな感じで漆を吸い取ります。
ティッシュの押える面を変えて、ティッシュに漆がほとんど付かなくなるまで繰り返してください。
この作業はそこまで厳密にやらなくて大丈夫です◎
ヒビに塗った生漆も同様に拭き取ります。
マグカップの内側も同様の作業を行います。
漆を乾かす
作業が終わったら湿度の高い場所に置いて漆を硬化させます。
そう、漆は空気中の水分を取り込んで硬化するのです。不思議な樹液ですね◎
【漆が乾く最適条件】
前後の環境に置く
※ 最適条件より下回っても、少しゆっくりになりますが乾きます◎
え~!
「高」湿度!の場所??
はい、その通りです◎
漆が乾く上記の条件を作るために「箱」を用意します。
手っ取り早く手に入る「段ボール」を例にご説明します。
① まず下にビニール袋を敷いて、段ボールが濡れるのを防ぎます。
次に濡らして「固く絞った」キッチンペーパー(もしくはウエス)を中に置きます。
② 作業が終わった器を入れます。できればウエスから少し離した場所に置きます。
(上の画像よりも、もう少し離れた場所に置いた方がいいです)
③ 蓋を閉めて、湿度が逃げないようにします。
④ 鳩は入らないようにします◎
漆の乾きがよくないようでしたら、こまめに湿度を与えます。(5時間おきとか)
大体の場合は、初めに湿度を与えてあげればしっかりと乾きます。
※【箱】…段ボール、コンテナ、発泡スチロール…等々、何でも構いません。
要するに湿度が逃げない(逃げにくい)ように「閉じた空間」が作れればオッケーです。
※【布類】…水を含ませておくためのものですので、何でも構いません。
使っているうちにカビが生えたり、匂いがしてきたりするので、「キッチンペーパー」が使い勝手がいいようです。(匂ってきたら捨てられますから)
今回の「素地固め」では、漆を乾かす時間は「半日~1日ほど」です。
※ 2日以上~数カ月経ったとしてもほとんど悪影響はないんじゃないか?と思います◎
??何で「湿度の高い」場所に置くの??乾かないんじゃない?…と思われますよね。
実は漆が乾くメカニズムというのが、普通じゃないんです。
…ということなのです。
漆の世界では「硬化」することを「乾く」と呼んでいる…ってことです。
「ラッカーゼ」が元気に働いてくれると、漆が硬化するということでして、、、
【漆が乾く最適条件】
湿度:70~85%
温度:20~30℃
ということになります。
だたし、この条件は「最適条件」ということでして、この条件を上回っていても、下回っていても、乾きます。
しかし、この最適条件から
●「下回るにつれ」と「乾きづらく」なっていき、「大幅に下回る」と「ほぼ乾かなくなる」こともあります。
●「上回るにつれ」と「乾きづらく」なっていき、「大幅に上回る」と「ほぼ乾かなくなる」こともあります。
のでご注意ください。
「段ボールなんてダサくて嫌!」という方は↓のページを参考にバージョン・アップさせていってください。
使用「後」の豚毛筆洗い
※ 「豚毛の小平筆」も「先細の小筆」も洗い方は一緒です。
ただし、「先細の小筆」の方は、「ゲル状の板」など、少し柔らかいものの上でしごくと、毛が痛みづらいです。
漆を使った筆は作業後、「油」で洗います。
作業工程
① 折り畳んだティッシュで漆の付いた筆を包む。
② ティッシュを摘まんでギュッと漆を絞り出す。(数回おこなって、しっかりと絞り出す)
※ 上の動画では②の「ティッシュを摘まんでギュッと漆を絞り出す」作業を撮影し忘れました。そのうち撮り直します!済みません。
③ 筆に油を含ませる。
④ 作業盤の上で捻ったりしながら油を馴染ませる。
⑤ 筆の根元からヘラで「油+漆」をしごき出す。
⑥ ヘラで廃油を掬い、ティッシュに吸わせる。
⑦ 再び油を含ませる
⑧ 作業盤の上で、ヘラを使って絞り出す
⑨ 廃油の中に漆分が(ある程度)含まれなくなるまで…つまり「透明度」が高くなるまで繰り返す。
⑩ 筆をサランラップで包んで保管する。
⑪ 作業盤に数滴テレピンを垂らし、拭きあげる。(油分を除去する)
※ この洗い方は100均等で買った豚毛筆などの安価な筆の洗い方です。「雑」に洗っています。
蒔絵筆やインターロン筆など、ちょっとでも高い筆はこの洗い方をしないでください。毛が痛みます。
① 折り畳んだティッシュに漆の付いた筆を包み込みます。
② 外側からティッシュをぎゅっと摘まんで漆を絞り出す。
これを数回おこなって、しっかりと絞り出します。
この時点でしっかりと漆を絞り出してしまった方が、この後の「油で洗う」時、筆が早く綺麗になります◎
③ 油の入った瓶に筆を入れて、油を含ませます。
④ 作業盤の上で捻ったりしながら筆に油を馴染ませます。
⑤ 筆の根元からヘラで「油+漆」をしごき出します。今回は安価な「豚毛筆」を使っているので、わりかしガシガシやっちゃっていいです◎
⑥ 筆の中の「油+漆」の廃油がしごき出せたら、ヘラで廃油を掬い、、、ティッシュに吸わせます。
こうして廃油をどかしておくと、作業盤の上が常にクリーンな状態で筆の洗い作業ができます◎
この後は「③→④→⑤→⑥」を繰り返します。
廃油の中に漆分が(ある程度)含まれなくなるまで…つまり「透明度」が高くなるまで繰り返します。
今回は安価な「豚毛筆」を使っているので、適当なところで止めておきます。
高価な筆を洗う場合はしっかりと念入りに洗ってください。じゃないと、筆が劣化しますので◎
これで筆洗い作業は完了です◎
この後、筆を仕舞います。
⑨ サランラップを取り出し、その上に筆を置きます。
この時、筆先に「余白」(赤の矢印分くらい)を残しておいてください。
⑩ ラップに筆を巻いていきます。ローリングです。
⑪ 途中でローリングを止め、先ほど残しておいた「余白分」のラップを畳み込みます。
⑫ 最後までラップを巻いて、完成です◎
【 お掃除、お掃除 】
▪ ▪ ▪
全ての作業が終わったら作業板を掃除します。
テレピン(又はエタノール、灯油など)を垂らして、ウエスやティッシュできれいに拭き取ってください。
caution !
厳密に言うと、掃除をし終わった後の作業板の上には「ごくごく薄っすら」と漆の成分が残っています。
ですので、この作業が終わるまではしっかりとゴム手袋をして、ゴム手袋を外したあとは作業板を含めて漆の道具類を触らないようにした方がいいです。
【刻苧漆(パテ)の充填】
欠けて無くなってしまった箇所を成形していきます。
漆で作る成形材には2種類あります。
① パテ状の「刻苧漆こくそうるし」
② ペースト状の「錆漆さびうるし」
…の2種類です。
刻苧or錆漆を使うかの判断基準
←刻苧漆(写真左)/(写真右)錆漆→
欠損箇所を直す素材として「刻苧漆」と「錆漆さびうるし(漆のペースト)」の2種類があります。
「錆漆(ペースト)」を使った方がいいのか、それとも「刻苧漆(パテ)」を使った方がいいのか…の判断基準ですが、下記の表を参考にしてください。
基本的には傷の「面積」ではなく、「深さ」を基準にしてください。
傷の深さ | 使う充填材 |
▪深さ2㎜以上 |
【刻苧漆こくそうるし(パテ)】を使用 |
▪深さ1~2㎜ | 錆漆でも刻苧漆でもどちらでもオッケー◎ ※ 錆漆を充填する場合は一回の盛り厚は1㎜程度まで。 それ以上の深さに充填する場合は数回に分けて充填する |
▪深さ0~1㎜未満 |
【錆漆さびうるし(ペースト)】を使用 |
●「深さ」を基準にするので…
- 充填箇所の面積が狭くても「深ければ」→刻苧漆(パテ)
- 充填箇所の面積が広くても「浅ければ」→錆漆(ペースト)
…というように考えてください。
● 「造形」を必要とされる場合には基本的には「刻苧漆」を使ってください。
↑こういった「形を立体的」に作り出す場合は「粘土のように使える」刻苧漆の方が適しています。
その前に、もしかしたら「マスキング」が必要かも??
【 ザラザラ・マットな器を直している場合 】
▪ ▪ ▪
● ヘラの扱いに慣れていない
● 割れた破片が小さくて、指でつまんだ時に麦漆が修理箇所以外に付いちゃいそう!
…という場合は、汚れ防止のための「マスキング」をしておいてください。
詳しくは↓こちらのページをご覧ください。
〈使う道具/材料〉
道具:
① サランラップ
② 作業板(ガラス板など)
‣作り方ページ ‣作り方の動画
③ 刻苧ベラ ‣作り方ページ ‣作り方の動画
④ 練りベラ ‣作り方ページ ‣作り方の動画
〇 計量スプーン 1/4 (0.25㏄)
材料:
⑤ 生漆 ⑥ 小麦粉
⑦ 木粉 ‣作り方ページ ⑧ 水差し
※ その他、本漆金継ぎで使うおススメの道具・材料の一覧(購入先も)を↓こちらのページにまとめました。
▸ 本漆金継ぎで使う道具・材料ページ
これらの材料を使って「注ぎ口」を成形する「パテ状のもの=刻苧漆こくそうるし」を作ります。
刻苧漆(パテ)の作り方
作業手順
1.小麦粉に少しずつ水を加えつつ練り込み、「耳たぶ~つきたてのお餅」くらいにする
2.生漆を少しずつ「水練り小麦粉」に足しながら、よく練る
3.「ヘラがぎりぎりくっつかなくなるまで」木粉を少しずつ加えていく
それでは「刻苧漆」を作っていきます。
刻苧漆は…
刻苧漆=麦漆(漆の接着剤)+木粉
で出来ています。
配合比は…
【目分量の体積比】
小麦粉 10:10 生漆
↑この割合で「麦漆」を作って
+ 木粉を加える
※ ヘラがぎりぎりくっ付かなくなる程度
※ 【体積比】です。お間違いなく。
それではまずは「麦漆」を作ります。
1.小麦粉、水を出します
2.水を少しずつ足しつつ、練っていきます
※「耳たぶ~突きたてのお餅」くらいの感触になるまで
3.生漆を少しずつ足しつつ、練っていきます
4.完成です◎
初めのうちは失敗しないように、計量スプーンを使うことをおススメします◎
麦漆が作れたら、次に木粉を混ぜていきます。
1.麦漆むぎうるし(接着剤)漆を1割くらい横に取っておきます
(失敗した時のために)
2.木粉を少しずつ足しつつ、練っていきます
3.ちょっとずつ様子を見ながら木粉を足していきます
4.ヘラがぎりぎり「ぱっ」と離れるようになったらオッケーです。
(まだ「べたっ」「ねちょっ」とくっつくようだったら、もう少し木粉を足してください)
※ 木粉が少ない(麦漆の分量が多すぎる)といつまで経っても乾かない刻苧漆(パテ)になってしまいます!
さらに詳しい「刻苧漆の作り方」を見たい方はこちらをご覧ください↓
ヘラで刻苧漆を掬うテクニック
(5:35~6:23を再生)
【刻苧スクイ・テク】
▪ ▪ ▪
1.作業板の上で刻苧漆の塊りを(ある程度)平べったくしておき
→ 塊の左下の端っこに刻苧ベラを置きます。
2.ヘラの先っちょの「右側」を押し込みます。
そうすると刻苧に「切れ目」が入ります。
※ 説明しやすいようにヘラを離して、見せていますが、実際はそうする必要はありません。
3.そのままヘラを左側にスライドさせて、刻苧を切り離します。
4.ヘラ先に少量の刻苧漆がすくい取れています◎
この作業を繰り返しながら、少量ずつ刻苧漆を充填していきます。
慣れてくるとテンポよく作業ができて、それだけで気持ちがよくなります。
<同一動作の反復>というのは集中していくととても心地いいものです。
▪実作業▪
● こちらの修理動画では欠けた箇所を成形するのに2回に分けて刻苧漆を充填しています。参考までにご覧ください↓
1:33~9:00まで再生
※ 1回目の刻苧漆が乾いた時に「削り作業」をおこなっていませんが、これは刻苧漆の「はみ出し/出っ張り」がなかったからです。
あまり参考になりませんね~。すみません!
● 違う器の「刻苧付け」動画ですが、参考になりそうなのでご覧ください↓
4:52~最後まで再生
今回の「口周りの欠けた」箇所ですが…
「傷が深い」うえに「穴(?)」が貫通しているので、「刻苧漆(パテ)」で直すのが定石です。
※ 「錆漆(ペースト)」で直すこともできます。
けど、今回のようなケースはちょっと効率が悪いと思います。
それでは刻苧漆を充填していきます。
貫通して欠けた箇所
の刻苧付け
■■■
① まずは適当な大きさに切ったサランラップを充填する欠けた箇所の内側に当てがいます。
② サランラップの上から欠けた箇所を指で押えます。内側から「指の壁」を作るわけです。
③ 外側から少しずつ刻苧漆を充填していきます。
しっかりとヘラで押し込み、欠けた断面に刻苧漆が密着するようにします。
※「 一回の盛り厚は3㎜程度まで」としておいてください。
④ 内側に当てがっていたサランラップを、今度は外側に当てがいます。
サランラップの上から刻苧漆を指で押え、内側から刻苧ベラで刻苧漆をさらに詰め込んでいきます。
⑤ 最後にサランラップを両面から当てがい、その上から刻苧漆を指でギュッと押し込みます。
刻苧漆を両方から押し込むことで、器の素地にしっかりと密着させます。と同時に形も綺麗になるように指で成形していきます。
サランラップを小さくちぎったものを、刻苧漆を充填する箇所の内側から当てがいます。
さらにサランラップの上からしっかりと指で押さえてください。指で「壁」を作る感じです。
指で押さえたところに刻苧漆を少しずつ盛っていきます。
しっかりと刻苧ベラで押し込んで、欠けた断面に密着させます。
欠けた箇所から「ほんのちょっとはみ出すくらい」、もしくは「ジャストくらい」になるような厚みで刻苧漆を充填します。
刻苧の「盛り上げ」る程度
▪ ▪ ▪
「欠けた箇所」や「穴」などに刻苧を充填する際、「どのくらい盛り上げるか?」ですが、金継ぎ図書館では…
周りの器の高さと「同じ程度(ほぼフラット)」もしくは「それよりもほんの少し高いくらい」
…をおススメしています。
刻苧漆をいっぱい盛り上げたとしても、「刻苧削り作業」↑でほぼフラットに削ってしまいます。
※ 刻苧を「フラット」に盛った場合、乾くと刻苧漆が痩せて少し低くなりますが、その痩せたスペースに「錆漆」を充填しますので、ちょうどよいのです◎
「 一回の盛り厚は3㎜程度まで」としておいてください。
それ以上盛ると、乾かない場合があります。
3㎜以上の深さに充填する場合は、一度盛ったら乾かして、それから二度目をおこなう…というように、数回に分けて充填してください。
※ 刻苧漆に混ぜる木粉の量などを調整することで、実際のところ3㎜以上盛っても大丈夫なのですが、初心者さんは大事をとって「3㎜程度まで」としておいた方が安全です◎
外側から刻苧漆がしっかりと充填できたら、今度はサランラップを外側から当てがい刻苧漆を内側から詰め込んでいきます。
十分な量の刻苧漆が充填できたら、サランラップを両側から覆い被せます。
サランラップの上からさらに指でしっかりと押さえて、器の素地に密着させます。
と同時に形も綺麗になるように指で成形していきます。
刻苧漆を引っ張らないように注意しながらサランラップをそっと剥がします。
どうでしょうか?
今回は刻苧をちょっと盛り気味でしたが、これは硬化した後、削れますので問題ありません。
【 お掃除、お掃除 】
▪ ▪ ▪
全ての作業が終わったら作業板を掃除します。
テレピン(又はエタノール、灯油など)を垂らして、ウエスやティッシュできれいに拭き取ってください。
caution !
厳密に言うと、掃除をし終わった後の作業板の上には「ごくごく薄っすら」と漆の成分が残っています。
ですので、この作業が終わるまではしっかりとゴム手袋をして、ゴム手袋を外したあとは作業板を含めて漆の道具類を触らないようにした方がいいです。
刻苧漆を乾かす
刻苧漆の乾きに2,3週間待ちます。
刻苧漆の乾きに2,3週間待ってください。
(刻苧に含まれる漆の割合、木粉の割合、漆自体の活力、気温などによって乾きのスピードが異なります)
刻苧漆はそれ自体に「水分」が入っているので、とくに湿度のある「漆風呂」に入れなくてもしっかりと硬化してくれます。
ですが、
・「古い生漆」
・「乾きの悪い生漆」
…を使っていた場合は乾きが悪いかもしれません。その場合は初めから湿し風呂に入れて、湿度を与えてください。
始めに湿度を与えて、漆に「闘魂を注入」することが大切です◎
※ 水を固く絞った布を中に入れて湿度を高くしてください。
もうちょい詳しく見たい方は↓こちらのページをご覧ください。
本日の作業はここまでです◎
お疲れ様でした。
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