割れた柳宗理ティーカップの金継ぎ方法 1/3 麦漆の削り・研ぎまで

割れたティーカップの金継ぎ修理

※ 3ピースに割れたティーカップの金継ぎ修理のやり方を説明していきます。本物の漆を使った修理方法ですので「かぶれる」可能性があります。ご注意ください。

今回は金継ぎの工程のうち、〈欠けた部分の器の素地をやすりで削る~麦漆で接着するまで〉のやり方を解説していきます。

金継ぎとは


金継ぎとは欠けたり、割れたりした器を漆で直す日本の伝統技法です。漆で接着し、漆で欠けや穴を埋め、漆を塗って、最後に金粉や銀粉を蒔いてお化粧をします。

 

器 information


  • 器のデザイナー: 柳宗理さん
  • 器の特徴: 磁器、かなりテカテカピカピカしたガラス質の釉薬。
  • 器のサイズ: 直径102㎜、高さ47㎜
  • 破損状態: 割れ3ピース(割れの長さ 総計約250㎜)

 

 持ち主。私です。はい。
なぜ割れたのか?それは…トンカチが当たったからです。なぜトンカチが当たるのか?それは、まぁ、そんな感じです。

割れたティーカップの損傷具合をチェックする

柳宗理デザインのティーカップです。デザインがシャープできれいですね。
市販の器はこの手の素材で作られていること多いと思います。
非常に硬く焼き締まっていて、表面もガラスのようにツルツルしたガラス質です。
ですので、麦漆や錆漆がはみ出しても全く気にする必要はありません。簡単にきれいに取れます。それだけ「漆の食いつきも悪い」ということです。ここは結構、痛いところです。

割れたティーカップの損傷具合をチェックする

 割れた断面のエッジで手を切らないように気を付けてください。
今回、修理するこのカップは底が浅いので作業はしやすそうです。
底の深いマグカップなどはなかなか大変です。

 

 

step 01 素地調整


金継ぎの素地調整で使う道具: リューターのダイヤモンドビット (ホームセンター等で入手可能/価格 \200~)

▸ ダイヤモンドビットのカスタマイズの方法

まずは割れた断面のエッジをやすりで軽く削ります。
「漆の食いつきをよくするため」と「接着でのズレを軽減するため」です。

金継ぎの素地調整作業では割れた断面のエッジをやすりで研いでいく

ダイヤモンドのやすりでジョリジョリ研いでください。エッジを少し丸くします。(面取り)

割れたティーカップの断面をダイヤモンドのビットで研ぐ

 私はマシーンを使わせてもらいます。楽です。

ティーカップの口元の縁部分もしっかりと削る

 特にティーカップ口周りのカドはしっかり研いで、面をつくってください。

接着した時にここのズレが処理しづらいのです。そのズレをうまく軽減させるためにしっかりと削ります。

 

 

step 02 麦漆の接着


麦漆で使う道具と材料

 

 金継ぎの麦漆接着で使う道具と材料

漆を使って接着剤を作ります。 ▸ 麦漆の詳しい作り方

金継ぎ工程の麦漆を塗布する前にあらかじめどのパーツがどの部分に来るか確認しておきます。

金継ぎの接着作業では、割れた断面に薄く麦漆を付けていく

割れた断面に麦漆を塗っていきます。付け箆を使います。

まずは↑画像のように①→②→③と断面のラインに対して直角に麦漆を付けます。付ける麦漆はちょっとずつです。

ティーカップの割れた断面に麦漆をヘラで付けていく

 ある程度の長さに麦漆を付けたら、今度は断面のラインに沿ってヘラを通します。麦漆の厚みがなるべく薄くなるようにします。

麦漆塗布作業が終了

 麦漆が厚いと接着した時にそれだけ隙間に異物が挟まっていることになりますので、ズレも大きくなります。ので薄くです。

金継ぎの麦漆塗りが終わったら、湿した場所に置いてしばらく待つ

 麦漆が乾き始めるまで待ちます。湿した場所(湿度65%~)に置いて乾きを促進させます。持ち運びしやすいように割れた破片を板の上に載せました。

30~50分待ちます。(温度、湿度、使った漆の性質、麦漆の配合によって乾くスピードは変わります)

麦漆が乾き始めるのを待つ

 いらないポストカードや紙の上に余った麦漆を少量、塗っておいて、それをヘラで突っついて乾き具合を確かめてもいいと思います。

麦漆が乾いてくると少し表面の濡れた感じが引けてきて、マットになります。

麦漆が乾き始めるのを待つ

マットになってきています。…といってもあまりよくわからないと思います。

接着します。

割れたティーカップの破片同士をくっつける

麦漆は乾きがゆっくりなので落ち着いて接着作業ができます。
接着する時はしっかりとパーツ同士を押し込みます。密着させます。

この段階では少しズレても構いません。どうせ他のパーツを付けているうちに、またズレてしまいますので。
  麦漆がはみ出るくらいしっかりと破片同士を押し込む

 全部のパーツを付け終わったらズレの修正を行います。
全体を見つつ、ちょっとずつズレを直していきます。が…あちらを直せばこちらがズレ、こちらを直せばあちらがズレ…の繰り返しになることが多いので、そこそこで観念してください。そのうちきっと上手になりますから。(私は今でもズレますけど)

麦漆で接着し終わった器を立てて置いて乾かす

 ズレの修正が終わったら(諦めたら)、器を固定して乾かします(放置します)。
このとき、接着部分に対して重力がかかって圧着していくように考えて、器を固定します。

小さな箱に砂を敷き詰めて、そこに器を少し埋めて安定させて立てるとよいそうです。うずまこ陶芸教室のサブーリ先生に教わりました。彼はイランで遺跡から出土した陶器の修復を少し習ったそうです。サブーリ先生はアタマいいです。

金継ぎの麦漆接着作業が完了しました。

 このまま安置。1~2週間。特に湿した場所に置く必要はありません。

 

 

step 03 麦漆の削り


金継ぎの麦漆削り作業で 使う道具と材料

  • 道具: 彫刻刀など、耐水ペーパー(#320くらい)、水、小皿

 彫刻刀の「丸平(はまぐり)」型を使うと非常に便利です。

 麦漆がしっかりと乾いたら、はみ出した麦漆を刃物で削ります。

金継ぎの麦漆削り作業では、接着ではみ出した麦漆を彫刻刀で削っていく

でろでろと少し麦漆がはみ出しています。これを削り取ります。

ティーカップの外側から作業を始める。麦漆を削る

 器の外側は基本的に彫刻刀の刃裏を使って削ります。

ティーカップ外側の麦漆削り作業が終了

 器の外側が削り終わりました。

今度は内側です。

ティーカップの内側のはみ出した麦漆も彫刻刀で削っていく

 器の内側は彫刻刀の刃表を使います。

金継ぎの麦漆削り作業が完了

ティーカップの内側も削り終わりました。

最後に麦漆をかるく耐水ペーパーで研ぐ

 最後に水をつけた耐水ペーパーでサラサラと軽く研ぎます。
↑画像で使っているのは木賊です。使いやすいですよ。

 次回は錆漆付けです。

 

 

次の修理工程に進む ▸  ②漆の下塗りまで

 

 

 

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