蒔絵粉の種類とその特徴・使い方

投稿日 2018/02/25▸ 更新日 2018/03/20

 

 

覚えられない…

金継ぎでは最後の工程で「蒔絵」と呼ばれる「金粉などを表面に蒔く」作業を行います。この作業を行うから「いかにも金を溶かして修理したよう」に見えるわけです。

蒔絵の作業では「蒔絵粉」と呼ばれる専用の粉粒を使います。
それで、蒔絵粉にはいろいろな種類がありまして、どうもその違いが覚えづらいのです。
だって、全部ただの「粉」ですから、頭の中でごちゃ混ぜになってしまうのです。

はっきり言って私は未だにちゃんと覚えられていません。

ですので、皆さんにご説明するこの機会に一緒に覚えちゃいましょ◎

 

 

蒔絵粉の種類


 

蒔絵で使われる蒔絵粉の種類はだいたい以下の5種類です。

この中で、特に金継ぎでよく使われるのが…消し粉」「平極粉(平粉)」「丸粉です。
※ 「平極粉」と「平目粉」は違うものなのですが、ネーミングが被っているので、すごく混乱します!

 

【蒔絵粉の種類によってこんなに厚みが違うのね】

↑粉の厚み比較図を作ってみました。(2018-03-05)
こう見ると「消し粉」はほんとに薄いですね。

 

 

 

 

蒔絵粉の仕上がりの色味としては、「粗いもの(大きいもの)」ほど「金属的な光沢」になり、「細かいもの」程その光沢は「鈍く(白っぽく)」なります。

 

ワンポイント!

金継ぎで使う場合の「消し粉」「平極粉(平粉)」「丸粉」の作業工程を簡単にまとめておきます。

【消し粉】(一番細かい)
極薄に絵漆を塗る→青息で蒔く→お終い
(漆摺りしない。磨かない。蒔きっ放し)

【平極粉】(少し厚みのある微粉)
極薄に絵漆を塗る→青息で蒔く→漆摺り2回→引砥磨き

【丸粉】(厚みのある球体)
薄く絵漆を塗る→直ぐに蒔く→漆摺り→炭研ぎ→引砥磨き→漆摺り→角粉磨き

消し粉(簡単)→平粉(そこそこ簡単)→丸粉(手間がかかる)

 

 

金粉屋さん


金粉の値段はちょこちょこ値上がりしています。(漆も毎年着実に高くなっています(涙))

今後、「お友達・知り合いの器も直してあげたい」「趣味が高じて、ちょっとした小遣いビジネスになったらいいわね…ウフフ」と考えている方は早めに購入しておいた方がいいと思います◎

WEBショップがしっかりしている金粉屋さん

【浅野商店】(東京)
1gでも購入できます◎
【吉井商店】(金沢)
2gから(かな?)購入できます。値段の確認、購入には会員登録が必要です。

 

※ 2018-03-13現在 金粉1g入りの価格は¥10,000くらいです。(高いっすね!)

※ 金粉は昔からの慣例として「1匁もんめ(=3.75g)」で量り売りしてきたので、1gの小分けで買うと「割高」になります。

※ 金粉1gで何個くらいの器が修理できるのですか?…というと、かなりアバウトな答えになりますが「20個くらいは余裕」でイケます。(小さめの欠け、ちょっとした割れ…を直した場合)

 

 

 

【消し粉】


↑ゴマ塩のような「金消し粉」が描いてあります…

【消し粉の特徴】

  • 金箔を細かく擦り潰して、パウダー状にしたもの(蒔絵粉のなかで最も細かいもの)
  • 厚さ約0.3μ、横方向は平均3μ程度
  • 基本的には研がない、磨かないで、蒔きっ放しで使う
    ※ 会津では擦りを重ねて磨く手法がある(磨き蒔絵)
  • 作業工程に手間が掛からず、少量で広い面積に散布できるので、安価な漆器の加飾に用いられる事が多い
  • 粉に厚みがないので、他の粉と比べると摩耗して下地が出てきやすい
  • 蒔絵の中では一番簡単◎

※ 1mm=1000μm、1μm=0.001mm ←こんなの覚えられない!

 

 

【金継ぎで使う場合の作業工程】

1.延べた絵漆(少量の溶剤を加えて緩めた弁柄漆)を「極薄に」塗る。

 

2.湿し風呂に入れ、15分後くらいに青息がかかる程度に半乾きにする。

 

3.真綿に消し粉を付けて漆描きしたところに擦りつけ、湿し風呂で乾かす。

乾いたらお終いです◎

 

※ 漆で粉を固めたり、磨いたりしません。蒔きっ放し。

 

 

【平極粉】(平粉、延粉←旧名)


【平極粉の特徴】

  • 5~6μの微粉
  • 消し粉よりも厚みのある平らな微粉
  • 平蒔絵に使う(つまり金継ぎで使える)
  • 漆を擦り重ねてから表面を磨く。研ぎ出しはしない
  • 丸粉を使う蒔絵より簡単

※ 1mm=1000μm、1μm=0.001mm

 

 

【金継ぎで使う場合の作業工程】

1.延べた絵漆を「極薄に」塗る。

 

2.湿し風呂に入れ、15分後くらいに青息がかかる程度に半乾きにする。

 

3.真綿に平極粉を付けて漆描きしたところに擦りつけ、湿し風呂で乾かす。

 

4.筆を使って延べ漆(少量の溶剤を加えて緩めた生漆)を塗布し、念入りに拭き切ってから、湿し風呂で乾かす。

 

5.さらに上から生摺りきずり(生漆のまま、溶剤を加えずに擦り漆をすること)をし、よく拭き切り、湿し風呂で乾かす。

 

6.「引砥磨き※1」をほどこし、

仕上とする。

 

※ 漆を擦り重ねてから研磨剤で表面を磨きます。

※1引砥磨き…
ごく少量の油(サラダ油など)を指先に付け、それを蒔絵の上に撫でるようにこすりつけ、その上を「引砥の粉」を付けた指先で磨くこと。最後に粉の付いた指先で拭き擦るように油分を取り除く。

引砥の粉…
仕上げ砥石を刃物で引っ掻いて作った微粉。
「鳴滝砥の粉」(箕輪漆工:500g/¥864- 2018年現在)や「胴摺り粉(白色/中目)」(箕輪漆工:180g/¥3,240- 2018年現在)、「サンジェットP555コンパウンド(極細目)ペースト状」(箕輪漆工:300g/¥1,296- 2018年現在)でも代用可能です。

 

 

【丸粉】


【丸粉の特徴】

  • 球体
  • 研ぎ出したり、磨いたりできる
  • いろいろな大きさの粒があり、号数で分かれている。
    1号(直径約6μ)~17号(300μ=0.3㎜)

※ 1mm=1000μm、1μm=0.001mm
※ 1号 =6μ / 2号= 8μ / 3号= 10μ / 4号= 12μ / 5号=15μ / 6号 0.018mm / 7号 0.02mm / 8号 0.025mm / 9号 0.03mm / 10号 0.035mm/ 11号 0.04mm / 12号 0.045mm / 13号 0.06mm / 14号 0.07mm / 15号 0.1mm
(※実際のサイズは±10%前後の誤差が出ます)

 

 

【金継ぎで使う場合の作業工程】

 

1.柔らかめの(筆目がつかない程度)の絵漆を「薄く」塗る。

 

2.毛房または真綿を使い、直ちに粉を蒔きつける。粉は絵漆の中に浸み込むだけ十分に蒔き込む。その後、湿し風呂に入れて乾かす。

 

3.筆を使って延べ漆(少量の溶剤を加えて緩めた生漆)を塗布し、念入りに拭き切ってから、湿し風呂で乾かす 

 

4.「椿針炭」で粉の上を均すように研ぐ。

その後、引砥磨きをおこなう。

上から生摺りきずり(生漆のまま、溶剤を加えずに擦り漆をすること)をし、よく拭き切り、湿し風呂で乾かす

 

5.「引砥磨き」+「生摺り」(→そして乾かす)を数回繰り返す。

 

6.最後に引砥の代わりに「角粉※2」で磨き上げる。

 

※ 蒔絵粉に「厚み」があるので(漆専用の)炭や目の細かい砥石(クリスタルの#1500、#2000あたり)で研ぐことができ、「きれいな平滑面」が作れる。

※2角粉…
鹿の角を焼いて、砕いて粉末にしたもの。
角粉の代わりに「三和磨粉 クリーム色(極細目)」(箕輪漆工:180g/¥3,888- 2018年現在)、「サンジェット676コンパウンド(超微粒子)ノンシリコン、液体(箕輪漆工:450ml/¥1,836- 2018年現在)でも代用できます。

 

 

 

※ 以下の蒔絵粉は金継ぎではあまり使われることがありません。

  【平目粉】


【平目粉の特徴】

  • 小判型
  • 梨地粉よりも厚く、艶がある
  • 研ぎ出して使う
  • 1号(細)~13号(粗)、直径約60μ~3㎜

 

 

 

【梨地粉】


【梨地粉の特徴】

  • 漆の中に沈めて使う
  • 平目粉よりさらに薄い(厚さ2~3μ)、周囲がギザギザしている
  • 1号(細)~13号(粗)、直径約60μ~0.7mm

 

 

 

 

 

個人的なちょいメモ


 

消し粉蒔絵(消し粉絵)

模様を漆描きし、その乾燥の度合いを測って消し粉を真綿で蒔き付け、蒔き締めして、金色の模様をあらわす手法。

消し粉は非常に細かいため、早蒔きするをすると金粉の使用量も多くなり、発色も悪くなるし、乾き過ぎて蒔けば金粉が付着しなくなる。漆の乾きかげんを見分けるのが消し粉蒔絵のコツである。

 

磨き蒔絵(磨き絵)
平蒔絵の場合も、高蒔絵の場合も、消し粉をいくらか早目に蒔き付けて、よく乾かした後、数回擦り漆をして乾かし、鹿の皮などで磨いたもので、金色の光沢がよいうえ強靭である。

p111 日本漆工 会津漆器 No.389

 

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