欠けた斎藤裕美子さんブルーカップの金継ぎのやり方 1/4 錆漆付けまで

金継ぎ修理をする前に欠けた器のチェックをする

※ 口元が欠けたカップの金継ぎ修理の方法を説明していきます。本物の漆を使った修理方法ですので「かぶれる」可能性があります。ご注意ください。

今回は金継ぎの工程のうち、〈欠けた部分の器の素地をやすりで削る~欠けを錆漆で埋める(1回目)まで〉のやり方を解説していきます。

金継ぎとは


欠けたり、割れたりした器を漆で直す日本の伝統技法です。漆で接着し、漆で欠けや穴を埋め、漆を塗って、最後に金粉や銀粉を蒔いてお化粧をします。
本漆金継ぎでは漆を使いますので「かぶれ」のリスクがあります。ですがそのリスクを引き受けてでもやるだけの価値があると思います。なんといっても「大切な想い」の詰まった器が直せるのですから。

それにしてもどうして金継ぎって壊れたところをそのまま目立つように直すのでしょうね。「壊れたまま直っている」「直っているのか壊れたままなのかわからない」、その中途半場な状態をキープするのが目的なのではないか?とさえ思われる時があります。
内田樹先生の文章の中に

コミュニケーションの基本はまず「聴くこと」である。
君たちの耳にはとりあえず「ノイズ」にしかきこえないシグナルを「メッセージ」として読み解くこと、それがコミュニケーションの基礎である。
ノイズをメッセージに繰り上げるためには、聴く君たちの「理解のスキーム」のどこかに「外部へひらくドアをあける」ことが必要だ。
それは「理解できないことばに耳を傾ける」という構えによって示される。

という言葉がありました。

金継ぎという技法を「日本人にしかわからない美の感覚」とか「わび・さび」、「景色」とかの既存のワードに簡単に回収して片付けてしまうのではなく、「これはいったい何のメッセージなんだろう?」と耳を澄ませる姿勢が求められている気がします。

 

器 information


  • 器の作家: 斎藤裕美子さん
  • 器のサイズ/特徴: 直径85㎜×高さ85㎜ /マットだけど締まった感じの釉薬
  • 傷の場所/サイズ: 欠け、口元の縁部分、10㎜×8㎜
  • 金継ぎの仕上げ: 真鍮粉仕上げ(金色)

 

金継ぎする器の壊れ具合を確かめる。今回は欠けの修理

まずは金継ぎ修理する器をしげしげと眺めます。まさしくターコイズブルーというような釉薬の色です。いや、まことにきれいです。この色の器を修理するのは初めてです。

ファーストインプレッションで何か「いい」感じがしました。こういう感覚って大切ですよね。自分にとっても意外な金継ぎができそうな気がします。

修理する器の壊れた部分を確かめる

依頼された傷以外にも損傷がないかチェックします。いろいろな角度から見ます。よくあるのが「ごく小さい欠け」と「うっすらと入ったひび」です。

金継ぎの方法をかけた部分を確かめながら考える

欠けた箇所の形がとんがっています。このラインをそのまま拾うかどうか考えないとです。

▮ 修理の手順・方向性をイメージする

❖ ピカピカしたガラス質の釉薬ではなくマットな釉薬なので、金継ぎの錆漆作業の際にマスキングをするかどうか迷います。今回は「釉薬が締まっている」感じなので錆漆がはみ出してもきれいに取れそうだと判断しました。
→ということでマスキングはおこなわない方向で考えています。

❖ 欠け部分が深くない(パテを盛って直すほどではない)
→なので錆漆2回くらいで欠けを埋めようと思います。

金継ぎの欠けた部分の外側から見て修理方針を立てる

❖ 〈器自体の持っている雰囲気〉…形としては丸みを帯びた柔らかな感じ。釉薬は少しもったりとした重厚な質感で、色がとにかく魅力的です。地中海あたりの海のイメージがしました。夜の海景です。

❖〈依頼主の雰囲気〉…依頼主はこの器の作家・斎藤裕美子さんです。個展のために作った器が欠けてしまいました。3年半ほどずっとこのペルシャブルーの釉薬に惹きつけられて様々な器を作ってきました。アジアの東の果てから遥か彼方、アジア最西端ペルシャの地に想いを馳せた器です。
こういう感覚というのは日本人なら多くの人が共感できるのではないかと思います。遠い異国の地をノスタルジックに思い浮かべる時、それはヨーロッパや南米、アフリカ大陸ではなく、日本人である「私」の身体感覚が最大限遠くまで引き延ばせるぎりぎりの距離、それが「アジア大陸」最西端の地、ペルシャなんだと思います。  実感として感じられるような気がする遥か彼方にある場所を人は求めて止まない。--それは「逃れの町」のようなものかもしれませんね。(いや、まったく違うかもしれませんが)

金継ぎ修理をする器の全体から見て手順を考える  
などなどを考慮して(かなり恣意的になっているかもしれませんが)、金継ぎの仕上がりのライン・形・テクスチャーをイメージします。
→今回は傷のラインをビビットに拾う(ガタガタしている)よりかはシンプルなラインに整理した方がよさそうだなと思いました。

この段階で明確に完成図が見えないことがほとんどです。何となくの方向性がとりあえず立てられればいいと思います。実際に修理していく中で「もうちょい、こうした方がいいな」と思い浮かぶことの方が多いです。

 

step 01 器の素地調整


金継ぎの素地調整で使う道具: リューターのダイヤモンドビット(値段\200~)

 ▸ ダイヤモンドビットのカスタマイズのやり方

 

まずは修理する部分の器の素地にやすりをかけます。

器の欠けた部分を金継ぎの素地調整としてヤスリで研ぐ

 使っているのは棒の先端にダイヤモンドの粒子のついたヤスリです。
本当はリューターという機械にセットして使います。けど、このままでも意外と使い勝手がよろしいのです。

器の欠けのエッジをやすりでほんのり研いでいく。

欠けた箇所のとんがっているエッジを軽く削っていきます。

金継ぎの素地調整では欠けた部分を丁寧に研いでいく

 赤点線の部分を中心にヤスリがけしていきます。

 

step 02 錆漆一回目を付ける


 金継ぎの錆付けで使う道具と材料(▸ 錆漆付けで使う道具・材料の入手先・値段

  • 道具: プラスチック箆、付け箆(▸ 付け箆の作り方)、綿棒、豆皿
  • 材料: 生漆、砥の粉、水、テレピン

錆漆を作ります。 ▸ 詳しい錆漆の作り方

 今回は金継ぎする傷が浅いので錆漆を使います。
錆の盛り厚は1回につき1.5㎜以下くらいがいいと思います。なので今回は2回にわけて欠けた部分を埋めていきます。
傷が深い場合は刻苧漆を使って埋めてください。(▸ 刻苧漆の作り方

金継ぎの錆漆付けの方法では箆先にのせた錆漆を少量

 この金継ぎの工程では欠けた部分に錆漆を付けていきます。

器の欠けた部分に錆漆をのせていく。

ヘラ先にのせた錆漆をかけた部分外側のエッジで「切る」ようにして欠けた部分に置いていきます。ヘラはエッジに沿わせます。

金継ぎの錆付けのやり方としては乗せた錆漆をヘラで押さえて、手前に通す。

 欠け部分に置かれた錆漆をヘラで押さえて広げていきます。
まずは手前にヘラを引いていきます。

器の欠け部分にのせた錆漆を今度は奥の方に箆でもっていく

 次に奥側にヘラを通します。

欠けにのせた錆漆が足りなかったらもう少しヘラにとって、それをのせていく

 錆漆が足りないのでもう少し足します。

金継ぎの錆漆のやり方ではヘラをスライドさせつつ錆漆を欠けのエッジにのせていく

 欠けのエッジで錆漆を切りながらヘラを右下に引いていきます。

ゆっくりとヘラを引きながら欠けた部分に錆漆を付けていく

慣れないうちはゆっくりとでいいので、ヘラの動きに意識を止めながら作業を進めてください。

金継ぎの錆漆付けが完了

 少し凹んでいますが、一回目の錆付けはこんなもので。

金継ぎ修理の錆漆付け工程が終了

 錆漆は厚盛り厳禁です。ご注意ください。

金継ぎんの錆付け作業の説明が終わりました。

これで金継ぎの錆漆付け作業の一回目が終了です。

錆漆自体に水が含まれていますので、特に湿した場所に置く必要はありません。
1~2日硬化を待ってください。

※欠けた箇所に錆漆をつける方法の詳しい(かなりしつこい)ページをつくりました。
ご興味のある方は覗いてみてください。 ▸ 金継ぎで役立つ錆漆付けのコツ

 

 

次の工程を見る ▸ ② 錆漆の削り・研ぎまで

青いカップの他の修理工程を見る

 

 

 

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